4.3.8 チケット管理

Ops Iでは、運用時に発生するリクエストやインシデントなどの対応をチケットによって管理することで、効率よくITサービスの運用・管理を行うことができます。チケット管理は主にタスクアプリケーションまたはリクエストアプリケーションのチケットタブで、チケットの作成、確認、および更新を行います。また、チケット間の関連付けも行うことができます。
YAMLファイルの定義、API実行、およびITSMアプリケーションのOTOBOと連携することで、チケット画面のカスタムや、チケット操作にあわせたメールの通知や受信の設定をすることもできます。

(表)チケット管理の設計項目と概要

項目 定義手段 設計のポイント
ロールによる表示と操作権限 GUI チケットの表示・操作範囲を、ユーザーまたはグループごとに整理し、割り当てるロールを検討します。
チケットのタイプ GUI チケット管理する事象や対応のプロセスによって、使用するチケットのタイプを整理します。
チケット画面のカスタム※1 YAMLファイル あらかじめ用意されているチケットのタイプに対する、フィールドの追加・削除やステータスの変更について検討します。
担当窓口の設計※2 GUI チケットを振り分ける担当窓口(キュー)を検討します。
チケットの監視者※3 GUI 担当者、担当グループ、および作成者以外でチケットの閲覧や通知受け取りが可能となる、チケット監視者について検討します。
通知※3 GUI、ITSMアプリケーション 通知方法、通知タイミング、通知先、メール通知の内容について検討します。
インポート、エクスポート GUI チケットのcsvエクスポートの要否、および他製品から移行する場合など、チケットのインポートの要否を検討します。
SLAの管理※4 ITSMアプリケーション インシデントチケットに対するSLAを検討します。
承認フロー※5 Rest API、GUI 承認フローを有効にするタイプ、承認を必要とするステータス、承認後および却下後のステータス遷移について検討します。
※1:チケットのカスタムの詳細については「チケット画面のカスタム」を参照してください。
※2:担当窓口の作成、編集方法の詳細については「JP1 Cloud Service 運用統合 利用ガイド(ITSM操作編)」の「[管理]>担当窓口の作成・編集」を参照してください。
※3:チケットの監視者、チケットの通知の詳細については「チケットの通知機能」を参照してください。
※4:SLAの管理の詳細については「SLAの管理機能」を参照してください。
※5:承認フローの詳細については「承認フロー」を参照してください。

(1)概要

チケット管理では、リクエストやインシデントなどITILのプロセスにしたがって、それぞれのタイプのチケットを作成し、チケット情報のステータスや担当者を遷移させてチケットの対応をします。また、各チケットの作業メモ画面を利用してユーザー同士でやりとりができます。

チケットは、その目的やプロセスが完了するとクローズします。たとえば、インシデントタイプのチケットの場合は、そのインシデントが解決するとクローズします。インシデントに対して作業メモで議論された内容や、チケット詳細情報の結論フィールドに調査結果や対処などを記録できます。これにより、また同様のインシデントが発生した場合などの参考情報として活用することもできます。
このように、多くのチケットの中から参考情報や関連するチケットを検索するため、高度なフィルタ機能とGUIによるチケット検索や確認を可能とするチケットブラウザー画面を提供します。詳細については「チケット」を参照してください。また、チャットパネル(Co-Operatorチャットパネル)からチケットを検索することができます。詳細は「AI拡張機能」を参照してください。

また、インシデントタイプのチケットはSLAの管理機能により、解決に向けた目標期限の遵守状況を確認できます。

(図)チケット管理の概念図

(図)チケット管理の概念図 (図)チケット管理の概念図

【チケット管理のユースケース】

  1. お客様からの問合せがあり、問合せチケットを作成する
    • 資料を添付ファイルでチケットにひもづける
    • 関連情報を関連リンクでチケットにひもづける
  2. 問合せを確認し、インシデントチケットを作成する
    • 作業メモを利用し、担当者で情報共有を行う
    • SLAの管理機能で対応目標に対する遵守状況を監視する
  3. 障害復旧を行うために変更(障害復旧)チケットを作成する
    1. 一時的な対処の計画を立てる
    2. 計画が承認され、実行する
    3. 一時的な対処がされたことを確認する
  4. 原因の調査を行うため、問題チケットを作成する
    • 必要に応じて作業ごとにタスクチケットを作成して対応する
  5. 根本原因の対応を行うため、変更(通常)チケットを作成する  
    1. 変更の計画を立てる
      1. リスク調査をするためにタスクチケットを作成する
      2. 担当者がリスク調査をする
      3. 調査が完了する
    2. 調査結果を反映した計画を立てる
    3. 計画が承認され、実行する
  6. 関連チケットの完了後、お客様に確認の上、問合せチケットを完了する


(2)チケット管理の基本知識

チケット管理をする上での基本知識を以下に示します。


【ロールによる表示と操作権限】

チケットタブの表示、チケットタブでのチケットの表示や操作範囲は付与されているロールによって決まります。

■ チケットタブ機能をもつアプリケーション
チケットタブはタスクアプリケーションまたはリクエストアプリケーションから表示することができます。チケットタブは一部を除き、どちらのアプリケーションでも同じものを提供しています。タスクアプリケーションを使用するユーザーは基本的にPrimitiveロールのitsm_user以上のロールを割り当てます。リクエストアプリケーションは全ユーザーが表示できます。
タスクアプリケーションおよびリクエストアプリケーションの詳細と対応ロールについては「タスク、リクエスト」と「Ops I上のロールとサポート機能の対応関係」を参照してください。

■ チケットの表示と操作
Primitiveロールのitsm_user、itsm_manager、またはitsm_adminロールが割り当たっているユーザーは、すべてのチケットの表示と操作が可能です。それ以外のロールはチケットの作成・閲覧・更新および作業メモの記事の作成・閲覧がロールごとに制限されます。


ロールごとのチケットの表示と操作範囲の詳細について以下に示します。複数のPrimitiveロールが1つのPre-Installedロールに割り当てられている場合、アクセス権の優先順位が高い順に、明示的拒否、明示的許可、暗黙的拒否となります。
「自分のチケット」は、チケット詳細情報のフィールド「担当者」、「担当グループ」、および「作成者」のいずれかに自分自身が割り当てられているチケットのことです。「担当グループ」は自分が所属するグループが割り当たっていることを指します。
「自顧客」は、チケット詳細情報のフィールド「顧客」に自分が所属する顧客が割り当てられているチケットのことです。
表の見方の詳細は「Ops I上のロールとサポート機能の対応関係」を参照してください。

(表)チケット操作のACL(Primitiveロール)

(表)チケット操作のACL(Primitiveロール) (表)チケット操作のACL(Primitiveロール)


(表)チケット操作のACL(Pre-Installedロール)

(表)チケット操作のACL(Pre-Installedロール) (表)チケット操作のACL(Pre-Installedロール)


【チケットタイプ】

チケットタイプは以下の8種類用意しています。「(図)チケット管理の概念図」のように、チケットごとの作業内容にあわせてタイプを指定します。チケットタイプは「Ops Iタイプ変数名(Ops Iタイプラベル名)」の形式で記載しています。Ops Iタイプ変数名はYAML定義やAPIの設定で使用します。Ops Iタイプラベル名は、Ops IのGUIで表示されるタイプ名です。

(表)チケットタイプ

チケットタイプ 説明
incident
(Incident)
インシデントチケット
ユーザーからの問合せや障害など、ITサービスに影響するさまざまな事象を管理します。
request
(Request)
リクエストチケット
ITサービスに対するユーザーからの要求を管理します。ワークフロー作成時に自動的に作成されるリクエストタイプのチケットとは、報告元フィールドの表示で区別できます。
task
(Task)
タスクチケット
他のチケットの対応に必要な作業を管理します。他のチケットの子チケットとして使用します。
problem
(Problem)
問題チケット
起きている問題を管理します。
rfc
(RFC)
変更チケット
ITサービスに対する変更を管理します。変更の内容により以下の変更種別を使い分けます。
  • normal:通常(事前に許可、定義されていない通常の変更)
  • emergency:緊急(予期しないエラーなどに対する緊急変更)
  • breakfix:障害復旧(障害復旧のための変更)
  • standard:標準(事前に許可、定義済でリスクが低い定常的な変更)
release
(Release)
リリースチケット
ITサービスに対して許可された変更の実施作業を管理します。
case
(Case)
問合せチケット
お客様からの質問や問題を解決するための情報を管理します。
unclassified
(Unclassified)
未分類チケット
いずれのタイプにも該当しない場合に使用します。

チケットのタイプによって、表示されるフィールドが異なります。詳細は「チケットのタイプ一覧」から各タイプの詳細を参照してください。
すべてのタイプのチケットに以下の機能があります。

  • 作業メモ:ユーザー同士のやり取りができます。「作業メモ」を参照してください。
  • 添付ファイル:チケットにファイルを添付できます。「作業メモ」、「添付ファイル」を参照してください。
  • 関連リンク:チケットに関連するリンクを設定できます。「関連リンク」を参照してください。
  • 関連レコード:関連するチケットやワークフローを表示します。「関連レコード」、「チケット間の関連」を参照してください。
  • サービスカタログ:登録されているカタログアイテム一覧を表示し、ワークフローの実行が可能です。「サービスカタログ」を参照してください。
  • 承認フロー:チケットに承認フローを設定できます。「承認フロー」を参照してください。

インシデントチケットにはSLAの管理機能があります。詳細は「SLAs」、「SLAの管理機能」を参照してください。

【ワークフロー実行時に自動作成されるチケット】

ワークフロータブのワークフロー一覧画面のカラムタイトル「チケット番号」をONにすると、チケット番号列が表示されます。チケット番号をクリックすると、チケット詳細画面に遷移します。

(3)チケット間の関連

チケットは関係があるチケット同士を関連付けることができます。関連付いているチケットは、[チケットタブ]-[チケットブラウザー画面]-任意の[チケット詳細画面]-[関連レコード]に表示されます。
チケット間の関係には、「親子関係」と「標準関係」の2種類あります。

(図)チケット間の親子関係と標準関係の関連

(図)チケット間の親子関係と標準関係の関連 (図)チケット間の親子関係と標準関係の関連


【親子関係】

あるチケットを親チケットとした場合、親チケットの作業をする中でのタスクとして派生したチケットが子チケットになります。例えば、インシデントチケット対応でワークフロー実行をした場合、インシデントチケットが親チケット、ワークフローのリクエストチケットが子チケットという親子関係になり、2つのチケットが自動的に関連付けられます。このように親子関係は、関連付いているチケットのそれぞれの作業に依存性があります。
チケット詳細情報の「親チケット」に任意のチケットを指定することでも親子関係として関連付けできます。

1つの親チケットに対して複数の子チケットを関連付けることは可能ですが、1つの子チケットに対して複数の親チケットを関連付けることはできません。


【標準関係】

標準関係は、それぞれのチケットの作業に依存性がなく、参考情報や内容の似ているチケットなどを関連付けたものです。例えば、あるインシデントの原因が、チケット作業に依存性がないワークフロー実行だった場合に、インシデントチケットとワークフローのリクエストチケットを関連付けたものが、標準関係になります。
標準関係の関連付けはOTOBOで実施します。操作方法については、OTOBOのマニュアルを参照してください。OTOBOのマニュアルおよびバージョン、エディションについては付録「OSSのバージョンおよびエディション、参照先のマニュアル」を参照してください。


【関連レコードのチケットタブ】

チケット間の関連付けがされているものは、関連レコードのチケットタブにあるチケットタブにチケット一覧が表示されます。親子関係のチケットが関連付いている場合、開いているチケットに対して親チケットと子チケットが表示されます。表示例を以下に図示します。

(図)関連レコードに表示される親子関係チケットの例

(図)関連レコードに表示される親子関係チケットの例 (図)関連レコードに表示される親子関係チケットの例



(4)その他の機能

メールによるチケット作成、チケット管理をするうえで活用できるチケットのインポート、エクスポート機能を提供します。

【メールによるチケット作成】

メールを用いたチケット作成機能により、顧客ユーザーからのメール受信を契機にチケットを自動で作成できます。
複数のメールアドレスを担当窓口ごとに使い分けることによって、メールを受信したアドレスにあわせてチケットの担当窓口を振り分けることも可能です。担当窓口の作成、編集方法の詳細については「JP1 Cloud Service 運用統合 利用ガイド(ITSM操作編)」の「[管理]>担当窓口の作成・編集」を参照してください。

メールによるチケット作成は、お客様が準備するメールサーバを利用して、受信したメールからチケットを作成します。
メール受信時の自動応答は、通知機能の設定によって送信元メールアドレスが異なります。

  • Ops Iの通知機能:
    noreply.opsi@itg.hitachi.co.jp
  • メールサーバを利用した通知機能:
    お客様が準備する受信用メールアドレス

詳細は「JP1 Cloud Service 運用統合 利用ガイド(ITSM操作編)」の「ユースケース>通知とメールによるチケット作成のユースケース」を参照してください。
メールによるチケット作成の設計ポイントと処理の流れの例を以下に示します。

(表)メールによるチケット作成の設計ポイントと処理の流れの例

設計のポイント 処理の流れの例
使用するメールサーバ・認証方式の情報、チケットの振り分けルールを事前に整理します。
1.10分に1回、ユーザーのメールサーバのPOP3/IMAPを確認する
2.メールサーバにメールがあればOTOBOに受信する
3.メールの振り分けルールを作成してある場合はメールの振り分けをし、チケットを作成する


【チケットのインポートとエクスポート】

OTOBOを使用することで、他製品から移行する場合などに、csv形式のファイルで管理されたチケットを一括でインポートすることができます。また、チケット全体を一括、またはチケットタイプごとなどでcsv形式のファイルとしてエクスポートすることができます。タイプごとに対応した件数などレポートとして必要な情報の取得などに活用できます。
インポートとエクスポートの設計のポイントを以下に示します。

(表)インポートとエクスポートの設計のポイント

項目 設計のポイント
インポート 対象とするチケットのカラムおよび、OTOBO側のチケット定義とのマッピングを整理します。
エクスポート 対象とするチケットのフィルタ条件、およびエクスポートするカラムとフォーマットを整理します。

操作方法については、OTOBOのマニュアルを参照してください。OTOBOのマニュアルおよびバージョン、エディションについては付録「OSSのバージョンおよびエディション、参照先のマニュアル」を参照してください。


項構成

4.3.8.1 チケットの通知機能
4.3.8.2 SLAの管理機能
4.3.8.3 チケットの承認機能