JP1/Automatic Job Management System 2 解説
JP1/AJS2で自動化する業務を構成する一つ一つの要素をジョブネットワーク要素といいます。それぞれのジョブネットワーク要素について説明していきます。
- <この項の構成>
- (1) ジョブ
- (2) ジョブネット
- (3) ジョブネットコネクタ
- (4) ジョブグループ
- (5) プランニンググループ
業務を構成するジョブネットワーク要素の最小単位をジョブといいます。JP1/AJS2では,幾つかの処理に実行順序を付けて一つの業務を定義しますが,その一つ一つの処理がジョブに当たります。
一つ一つのジョブは,次の図のように実行順に並べて順序づけをします。
このとき,ジョブAをジョブBの先行ジョブといいます。また,ジョブCをジョブBの後続ジョブといいます。ジョブの順序づけについては,「3.1.3 ジョブフローの作成方法」で説明します。
ジョブには,保留,種別,実行先サービス,打ち切り時間,終了遅延監視,所有者,JP1資源グループ,実行ユーザー種別などの属性情報を定義できます。ここでは,保留,種別,実行先サービス,打ち切り時間,および終了遅延監視について説明します。所有者,JP1資源グループ,および実行ユーザー種別については,「8.2 ユニットへのアクセスを制限するための設定」を参照してください。
- 保留
ジョブの実行を保留するように,あらかじめ設定しておくことができます。保留するように設定したジョブは,保留解除の操作を行うことで実行開始できます。
- 種別
ユニットをリカバリーユニットにするかどうかを設定できます。ユニットの種別は[通常]または[リカバリ]から選択します。デフォルトは[通常]です。
種別に[リカバリ]を設定したジョブのことをリカバリージョブと呼び,先行するユニットが異常終了したときに実行されます。
また,種別に[リカバリ]を設定したジョブネットのことをリカバリージョブネットと呼びます。リカバリージョブとリカバリージョブネットのことを合わせてリカバリーユニットと呼びます。
- 実行先サービス
ジョブの実行先サービスを選択できます。選択できる種類は[JP1/AJS2]と[JP1/AJS2 Queueless Agent]です。デフォルトは[JP1/AJS2]です。PCジョブ,UNIXジョブ,またはアクションジョブをキューレスジョブとして定義する場合は,[JP1/AJS2 Queueless Agent]を選択します。キューレスジョブについては,「5.1.2 キューレスジョブ」を参照してください。
- 打ち切り時間
ジョブの打ち切り時間を設定し,ジョブの実行が開始されてからの経過時間によってジョブの実行を打ち切ることができます。例えば,打ち切り時間を「10分」とした場合,ジョブが実行開始してから10分を経過しても終了しないときに,そのジョブの実行を打ち切ります。打ち切り時間は,1〜1,440(単位:分)の範囲内で設定します。
- 終了遅延監視
ジョブの実行所要時間を設定し,ジョブの実行が開始されてからの経過時間によって終了遅延を監視できます。実行所要時間は,1〜1,440(単位:分)の範囲内で設定します。例えば,実行所要時間を「10分」とした場合,ジョブが実行開始してから10分を経過しても終了しないときに終了遅延を検知します。遅延が検出されたジョブは「実行中(遅延)」状態となります。終了すると「終了状態(遅延)」(「正常終了(遅延)」など)となります。また,遅延を検出したタイミングでメッセージ「KAVS0248-I」が出力されます。メッセージの内容については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 メッセージ 2.3 KAVSで始まるメッセージ(スケジューラーに関するメッセージ)」を参照してください。メッセージの出力先と出力条件については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 メッセージ 1.3(3) KAVSで始まるメッセージの出力先」を参照してください。
終了遅延監視は,ORジョブ,判定ジョブ,およびシナリオ管理グループ配下のジョブには指定できません。
なお,ジョブの終了遅延監視の詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 8.1.22 ジョブ実行所要時間による終了遅延監視機能に関する注意事項」を参照してください。
ジョブにはさまざまな種類があり,処理の形態に合わせて定義するジョブを選べます。ジョブの種類には,次のものがあります。
- 標準ジョブ
- ORジョブ
- 判定ジョブ
- イベントジョブ
- アクションジョブ
- カスタムジョブ
それぞれのジョブの特性について,次に説明します。
標準ジョブとは,実行ファイルと実行先のホスト名などを指定して処理を実行させるジョブです。標準ジョブには次の3種類があります。
それぞれのジョブの内容と,定義できる処理(指定できる実行ファイル)を次の表に示します。
表3-1 標準ジョブの内容と定義できる処理
ジョブの種類 ジョブの内容 定義できる処理 UNIXジョブ UNIXホストで処理を実行させる。
- 実行ファイル
- シェルスクリプト
PCジョブ Windowsホストで処理を実行させる。
- .exeファイル
- .comファイル
- .cmdファイル
- .batファイル
- .sptファイル※(JP1/Scriptで作成したスクリプトファイル)
- アプリケーションに関連づけられているファイルタイプ(拡張子)を持つデータファイル
QUEUEジョブ 特定のキューにジョブを送って処理を実行させる。
次の場合に使用する。
- 用途別にキューを使い分けたい場合
- ほかのシステム(JP1/NQSEXECやJP1/OJEなど)と連携する場合
- 実行ファイル
- シェルスクリプト
- .exeファイル
- .comファイル
- .cmdファイル
- .batファイル
- .sptファイル※(JP1/Scriptで作成したスクリプトファイル)
- アプリケーションに関連づけられているファイルタイプ(拡張子)を持つデータファイル
- 注※
- .sptファイルを指定した場合,実行先ホスト側にもJP1/Scriptがインストールされていないと実行されません。
なお,標準ジョブを使用したジョブネット定義については,「3.2.1 ファイルを指定して処理を実行する(標準ジョブを使ったジョブネットの定義例)」を参照してください。
ORジョブとは,事象の発生を監視するジョブ(イベントジョブ)を先行ジョブとして複数定義しておき,それらが監視する事象が一つでも発生した場合に後続ジョブを実行させるジョブです。ORジョブの先行ジョブとして定義できるジョブは,イベントジョブに限ります。
図3-4 ORジョブを使用したジョブネット例
複数定義したイベントジョブのうち,最初に事象が発生したジョブが終了すると,それ以外のイベントジョブは「計画未実行」状態となって事象発生の監視を打ち切ります。
なお,ORジョブを使用したジョブネット定義については,「3.2.2 複数の条件のうち一つが成立したら処理を実行する(ORジョブを使ったジョブネットの定義例)」を参照してください。
判定ジョブとは,実行する条件に合致しているか,していないかを判定するジョブです。判定ジョブの判定によって実行されるジョブを従属ジョブといいます。判定ジョブには,従属ジョブを実行させるための判定条件を設定します。条件が成立した場合は従属ジョブが実行され,そのあとに後続ジョブが実行されます。条件に合致しない場合は,従属ジョブを実行しないでそのまま後続ジョブを実行します。ただし,従属ジョブが異常終了した場合,後続ジョブは実行されません。
図3-5 判定ジョブを使用したジョブネット例
判定ジョブによる判定方法には,次の三つがあります。
- 先行ジョブの終了コードによる判定
判定値を設定し,先行ジョブの終了コード(戻り値)と比較した結果がどのような場合に従属ジョブを実行させるかを定義します。
設定できる条件は,次のとおりです。
- 終了コードが判定値より大きい
- 終了コードが判定値以上
- 終了コードが判定値より小さい
- 終了コードが判定値以下
- 終了コードが判定値と等しい
- 終了コードが判定値と等しくない
- ファイルの有無による判定
ファイル名を指定し,指定したファイルがマネージャーホストにあるか,ないかによって従属ジョブを実行させるかどうかを定義します。
設定できる条件は,次のとおりです。
指定したファイルがネットワークファイルの場合は,次の条件のファイルを指定したときだけファイルの有無による判定ができます。
- ファイルが存在する
ファイルがある場合に,従属ジョブを実行します。
- ファイルが存在しない
ファイルがない場合に,従属ジョブを実行します。
- Windowsの場合
- JP1/AJS2サービスのアカウントをユーザーアカウントに設定し,UNCで参照できるファイル。
ただし,ネットワークにアクセスできない場合はファイルがないものとして扱われるため,通信障害などによって正しく判定できないことがあります。
- UNIXの場合
- NFSマウントで参照できるファイル。
マネージャーホストとは別のホストにあるネットワークファイルの有無を判定したい場合は,マネージャーホスト上にファイルを配置してから判定ジョブを実行することをお勧めします。
- 変数比較による判定
ルートジョブネット,または先行ジョブから引き継いだ引き継ぎ情報がどのような場合に従属ジョブを実行させるかどうかを定義します。
判定できる引き継ぎ情報は次のものです。
先行ジョブの引き継ぎ情報と判定ジョブの判定値を数値,文字のどちらで扱うかを選択できます。
- イベントジョブで設定された引き継ぎ情報
- 実行登録時のマクロ変数値指定によって設定された引き継ぎ情報
設定できる条件は,次のとおりです。
判定値の形式が「数値」の場合
判定値の形式が「文字列」の場合
- 変数の値が判定値より大きい
- 変数の値が判定値以上
- 変数の値が判定値より小さい
- 変数の値が判定値以下
- 変数の値が判定値と等しい
- 変数の値が判定値と等しくない
- 変数の値が判定値と等しい
- 変数の値が判定値を含む
- 変数の値が判定値と等しくない
- 変数の値が存在する
- 変数の値が存在しない
先行ジョブの終了コードで判定する場合は,一つの判定ジョブに対して一つの先行ジョブを定義します。また,一つの判定ジョブに対して一つの従属ユニットを定義します。
先行ユニットにジョブネットを定義すると,そのジョブネットの戻り値は常に「0」として扱われるため,判定結果が常に同じになります。そのため,終了コードによる判定条件を設定している場合は,先行ユニットはジョブである必要があります。
一方,ファイルの有無や変数比較で判定する場合は,先行ユニットがジョブである必要はありません。判定ジョブをジョブネットの先頭に定義したり,ネストジョブネットを先行ユニットに定義したりできます。ただし,変数比較による判定ジョブをジョブネットの先頭に定義した場合は,次に示すときには判定の対象となる値がないため,判定結果は偽となります。
- 実行登録時にマクロ変数値を指定していないとき
- 起動条件付きジョブネットで起動条件のイベントジョブにマクロ変数が定義されていないとき
判定ジョブを使用したジョブネット定義については,「3.2.3 先行ジョブの結果でそのあとの処理を動的に変える(判定ジョブを使ったジョブネットの定義例)」を参照してください。
イベントジョブとは,事象(イベント)の発生を監視するジョブです。ジョブフローやジョブネットの起動条件などにイベントジョブを定義することによって,事象の発生を契機にジョブやジョブネットを実行させることができます。ジョブネットの起動条件については,「3.5 起動条件の定義」を参照してください。
図3-6 イベントジョブを使用したジョブネット例
イベントジョブには,次の8種類があります。
- JP1イベント受信監視ジョブ
- ファイル監視ジョブ
- メール受信監視ジョブ
- メッセージキュー受信監視ジョブ
- MSMQ受信監視ジョブ
- ログファイル監視ジョブ
- Windowsイベントログ監視ジョブ
- 実行間隔制御ジョブ
それぞれのジョブの内容を次に示します。
表3-2 イベントジョブの種類
イベントジョブ名 ジョブの内容 JP1イベント受信監視ジョブ JP1/Baseから特定のイベントを受け取ったときにイベントジョブが終了する。 ファイル監視ジョブ 特定のファイルが作成,削除,または更新されたときにイベントジョブが終了する。 メール受信監視ジョブ 特定のメールを受信したときにイベントジョブが終了する。 メッセージキュー受信監視ジョブ※ TP1/Message QueueまたはMQSeriesから特定のメッセージを受信したときにイベントジョブが終了する。 MSMQ受信監視ジョブ MSMQから特定のメッセージを受信したときにイベントジョブが終了する。 ログファイル監視ジョブ JP1/Baseのログファイルトラップ機能と連携し,指定したログファイルに,特定の情報が書き込まれたときにイベントジョブが終了する。 Windowsイベントログ監視ジョブ JP1/Baseのイベントログトラップ機能と連携し,Windowsイベントログファイルに特定の情報が書き込まれたときにイベントジョブが終了する。 実行間隔制御ジョブ 指定した時間が経過したらイベントジョブが終了する。
- 注
- メール受信監視ジョブ,メッセージキュー受信監視ジョブ,MSMQ受信監視ジョブは,JP1/AJS2とそれぞれのプログラムとの連携が必要です。プログラムとの連携については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 連携ガイド」を参照してください。
- 注※
- Linuxは対象外です。
イベントジョブの動作は,JP1ユーザーの権限およびジョブに定義されている権限(所有者,JP1資源グループ,実行ユーザー種別)には依存しません。Windowsの場合は,JP1/AJS2サービスのアカウント権限に依存するため,JP1/AJS2サービスにあらかじめ権限を設定しておく必要があります。
イベントジョブを使用したジョブネット定義については,「3.2.4 事象の発生を契機に処理を実行する(イベントジョブを使ったジョブネットの定義例)」を参照してください。
なお,イベントジョブで受信したイベント情報を後続ジョブ中に変数(マクロ変数)として定義しておき,後続ジョブまたは後続ジョブネットに引き継ぐことができます。イベント情報の引き継ぎについては,「3.2.4(6) イベントジョブの受信情報の引き継ぎ」を参照してください。
アクションジョブとは,特定の処理を実行するジョブです。イベントジョブと組み合わせることによって,事象の発生を契機にJP1イベントやメールを送信したり,状態を通知したりなどの処理(アクション)を実行させることができます。
図3-7 アクションジョブを使用したジョブネット例
アクションジョブには次の7種類があります。
それぞれのジョブの内容を次の表に示します。
表3-3 アクションジョブの種類
アクションジョブ名 ジョブの内容 JP1イベント送信ジョブ JP1イベントをJP1/Baseのイベントサービスに登録する。 メール送信ジョブ メールを送信する。 メッセージキュー送信ジョブ※ TP1/Message QueueまたはMQSeriesのメッセージを送信する。 MSMQ送信ジョブ MSMQのメッセージを送信する。 JP1/Cm2状態通知ジョブ JP1/Cm2/NNMまたはhp OpenView NNMに状態を通知する。 ローカル電源制御ジョブ※ JP1/Power Monitorと連携して,ローカル電源制御ジョブを実行したホストをシャットダウンする。 リモート電源制御ジョブ※ JP1/Power Monitorと連携して,ネットワーク上のホストの電源を投入したり,システムを終了したりする。
- 注※
- Linuxは対象外です。
なお,メール送信ジョブ,メッセージキュー送信ジョブ,MSMQ送信ジョブ,JP1/Cm2状態通知ジョブ,ローカル電源制御ジョブ,リモート電源制御ジョブは,JP1/AJS2とそれぞれのプログラムとの連携が必要です。プログラムとの連携については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 連携ガイド」を参照してください。
アクションジョブを使用したジョブネット定義については,「3.2.5 先行ジョブの終了や事象の発生を契機にJP1イベントを送信する(JP1イベント送信ジョブを使ったジョブネットの定義例)」を参照してください。
カスタムジョブとは,JP1/AJS2以外のプログラムがJP1/AJS2と連携して処理を実行するジョブです。JP1/AJS2 - Viewの「カスタムジョブ登録」を行うことで,JP1/AJS2のジョブとして扱えるカスタムジョブアイコンが作成され,JP1/AJS2以外のプログラムでの処理をジョブとしてJP1/AJS2上で定義できるようになります。
なお,カスタムジョブには,Windows版のJP1シリーズ製品と連携するために「標準カスタムジョブ」というものが標準提供されています。
「標準カスタムジョブ」を次に示します。
表3-4 標準カスタムジョブの一覧
カスタムジョブ名 連携するプログラム名 カスタムジョブの機能 JP1FTP JP1/FTP JP1/FTPと連携してファイルを転送する。 JP1AMR3 JP1/AJS2 for Enterprise Applications JP1/AJS2 for Enterprise Applicationsと連携して,R/3(R)システムのバックグラウンドジョブを自動実行する。 JP1AMR3BW JP1/AJS2 for Enterprise Applications JP1/AJS2 for Enterprise Applicationsと連携して,BWシステムのインフォパッケージを実行する。 JP1AMOAP JP1/AJS2 for
Oracle E-Business SuiteJP1/AJS2 for Oracle E-Business Suiteと連携して,Oracle E-Business Suiteシステムのリクエストを自動実行する。 MFJOB※1 HITACHI JOB ENTRY - CLIENTMF JP1/OJEと連携して,メインフレームでジョブを実行する。 VOS3JOB※1 JP1/OJE for VOS3 JP1/OJEと連携して,メインフレーム(VOS3)でジョブを実行する。 VOS1JOB※1 JP1/OJE for VOS1 JP1/OJEと連携して,メインフレーム(VOS1)でジョブを実行する。 VOS1NET※1 JP1/OJE for VOS1 JP1/OJEと連携して,メインフレーム(VOS1)でジョブを実行する。 VOSKJOB※1 JP1/OJE for VOSK JP1/OJEと連携して,メインフレーム(VOSK)でジョブを実行する。 VOSKNET※1 JP1/OJE for VOSK JP1/OJEと連携して,メインフレーム(VOSK)でジョブを実行する。 DMSV※2 HITSENSER Data Mart Server HITSENSER Data Mart Serverと連携して,データマートの作成・変更・運用のプロセスをスケジュール実行する。 COSMNGSV※2 Cosminexus Manager Cosminexus Managerと連携して,WebサーバやJ2EEサーバなどの論理サーバを起動・停止する。 COSMNGAP※2 Cosminexus Manager Cosminexus Managerと連携して,業務アプリケーションを起動・停止する。 WS_PC,WS_UX JP1/AJS2 for Web Service Webアプリケーションサーバと連携し,Webサービスを実行する。 AJSPDFS※2 JP1/AJS2 for 活文PDFstaff 活文PDFstaffと連携してPDF変換を行う。
- 注※1
- WindowsホストのJP1/AJS2 - Managerで実行する標準ジョブ(PCジョブ)として定義できます。UNIXジョブとしては定義できません。
- 注※2
- カスタムジョブのジョブ種別にはPCジョブを指定する必要があります。
このほか,カスタムジョブにはPCジョブとUNIXジョブのアイコンだけをユーザー任意のアイコンに変更した「カスタムPCジョブ」,「カスタムUNIXジョブ」があります。
なお,JP1/AJS2でカスタムジョブを使用するためには,セットアップが必要です。詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 連携ガイド 5. カスタムジョブ」を参照してください。
幾つかのジョブの集まりに順序づけしたものをジョブネットといいます。ジョブネットのうち,最上位のジョブネットをルートジョブネット,ルートジョブネットの下位に定義されたジョブネットをネストジョブネットといいます。
JP1/AJS2で自動化される業務は,ルートジョブネット単位で実行されます。したがって,ルートジョブネットにはジョブネットをJP1/AJS2に実行予定をスケジュールするために必要な情報を定義します。スケジュール情報の定義については,「3.4 スケジュールの定義」で説明します。
ルートジョブネットにスケジュール情報を定義すると,その下位のユニットもルートジョブネットのスケジュール情報に基づいてスケジューリングされますが,ネストジョブネットについては,個別にスケジュール情報を定義することもできます。したがって,一つのジョブネットの中に定義された各処理のうち,運用スケジュールが異なるものがある場合などには,ネストジョブネットを作成して個別にスケジュール情報を定義できます。ネストジョブネットのスケジュール定義については,「10.1.3 ジョブネットの一部のジョブにほかのジョブと異なるスケジュールを設定する」で説明します。
また,ルートジョブネットでは,スケジュール情報とともにジョブネットをスケジューリングするための情報として,次の項目について設定できます。
- 多重起動
- 保存世代数
- 優先順位※
- 打ち切り時間
- スケジューリング方式
- ジョブネット監視※
- 実行順序制御
- 注※
- ネストジョブネットにも設定できます。
ここでは,保存世代数,優先順位,打ち切り時間,およびジョブネット監視について説明します。なお,多重起動とスケジューリング方式については「3.4.3 多重起動とスケジューリング方式」で,実行順序制御については「10.4 ジョブネットコネクタを使用したルートジョブネットの実行順序制御」で説明します。
- 保存世代数
定義したジョブネットをJP1/AJS2上で自動化(実行登録)すると,ジョブネットはスケジュール情報に基づいた実行予定ごとにオブジェクト化されます。これをジョブネットの世代といいます。
「保存世代数」は,ルートジョブネットの実行結果を何世代分保存しておくかを設定するもので,ルートジョブネットにだけ設定できます。保存世代数を設定すると,設定した世代分(回数分)の実行結果を[デイリースケジュール]ウィンドウや[マンスリースケジュール]ウィンドウ,またはajsshowコマンドで確認できます。ajsshowについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsshow」を参照してください。保存世代数は,1から99まで設定できますが,マネージャーのスケジューラーサービス環境の設定によって最大999世代まで保存世代数を持つことができます(保存世代数の拡張機能)。マネージャーのスケジューラーサービス環境の設定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 14.1.3 スケジューラーサービス環境設定パラメーターの定義内容」の"MAXSAVEGEN"を参照してください(ただし,保存世代数を増加すると,登録解除などの操作に多大な時間が掛かることがあるため,最大保存世代数を拡張する場合は,システム性能への影響を十分配慮した上で保存世代数を設定してください。また,保存された世代のうち不要なものについては,そのつど削除されることをお勧めします。なお,保存世代数の拡張機能は,お使いのJP1/AJS2 - Managerのバージョンが06-71以前の場合は使用できません)。
保存世代数に設定した世代数を超えた過去の実行結果は,自動的に削除されます。例えば,保存世代数を1回とした場合,このジョブネットが1日に数回実行されたとしても1回分の実行結果しか確認できません。したがって,起動条件によって1日のうちに数回実行されるようなジョブネットについては,保存世代数を多めに見積もって設定しておく必要があります。
なお,保存世代数の詳細については,「4.2.3 ジョブネットの保存世代数の管理」を参照してください。
- 優先順位
ジョブネットのジョブを実行したときのプロセスの優先順位を設定できます。ルートジョブネットに設定した優先順位は,その下位のジョブやネストジョブネットでは仮定値として扱われます。ジョブ(標準ジョブだけ)やネストジョブネットに個別に設定することもできます。
優先順位の設定値に対するWindowsでの優先順位とUNIXでの優先順位について,次に示します。
表3-5 優先順位の設定値とWindows,UNIXでの値の意味
優先順位の設定値 Windowsでの実行優先順位※1 UNIXでの実行優先順位※2 1 対話処理と比較して低い
JP1/AJS2サービスのnice値+20 2 JP1/AJS2サービスのnice値+10 3 対話処理と同等 JP1/AJS2サービスのnice値 4 対話処理と比較して高い
JP1/AJS2サービスのnice値-10 5 JP1/AJS2サービスのnice値-20
- 注※1
- Windowsの場合,優先順位は3段階になります。次の三つの優先順位クラスを設定してジョブのプロセスを起動します。
- 優先順位の設定値が[1]または[2]の場合は,システムがアイドル状態のときに実行されます。
(Windowsで規定されるIDLE_PRIORITY_CLASSを設定します)
- 優先順位の設定値が[3]と場合は,一般的なプロセスとして実行されます。
(Windowsで規定されるNORMAL_PRIORITY_CLASSを設定します)
- 優先順位の設定値が[4]または[5]の場合は,上記の優先順位クラスを割り当てられたプロセスのスレッドより先に実行されます。
(Windowsで規定されるHIGH_PRIORITY_CLASSを設定します)
- 注※2
- UNIXの場合,nice値のデフォルトとして,jajs_spmdを実行した際のJP1/AJS2サービスのnice値を基準とします。特に設定されていない場合のnice値は20が仮定されます。
- 優先順位の設定値が[1]でnice値が20の場合,優先順位の値は次のようになります。
- 39 ≒ 20(初期値)+ 20(増分値)
- nice値の範囲(0〜39)を超える場合,最大値は39,最小値は0です。
- なお,実行先サービスを[JP1/AJS2 Queueless Agent]とした場合,nice値は固定の値を設定します。nice値には実行優先順位の低い順から39,30,20,10,または0のどれかを設定します。nice値を変更する場合は,これらのnice値に対応したジョブの実行優先順位を指定してください。
- 打ち切り時間
ルートジョブネットは,登録してから実行が開始されるまで「開始時刻待ち」状態となりますが,スケジューラーサービスが起動していない,または保留設定などで実行開始予定日時になっても実行が開始されない場合に,開始予定日の基準時刻からどのくらい経過した時点で「開始時刻待ち」状態を打ち切るかを設定するものです。「開始時刻待ち」状態を打ち切ると,そのジョブネットは「繰り越し未実行」状態になります。打ち切り時間は,次の中から設定できます。
「1日」または「2日」を設定した場合は,開始予定日の基準時刻から1日または2日経過した時点で「開始時刻待ち」や「保留中」の状態を打ち切り,「繰り越し未実行」状態になります。また,ルートジョブネットのスケジュール定義を48時間制で運用し,ルートジョブネットの開始予定時刻が翌日の場合は,打ち切り時間の指定が「1日」であっても「2日」が仮定されます。
- システム設定に従う
- 1日
- 2日
- 無制限
なお,デフォルトは「システム設定に従う」で,マネージャーホストの「マネージャー環境設定」で「繰り越し方法」に設定している内容(デフォルトは1日)が適用されます。
- ジョブネット監視
ジョブネットの実行所要時間を設定し,ジョブネットの実行開始からの経過時間による終了遅延を監視できます。例えば,ジョブネットの実行所要時間を「30分」とした場合,ジョブネットが実行開始してから30分を経過しても終了しないときに終了遅延を検知します。実行所要時間は,1〜2,879(単位:分)の範囲内で設定します。
なお,JP1/AJS2 - Viewおよび接続先のJP1/AJS2 - Managerのバージョンが06-71以前の場合は使用できません。
なお,JP1/AJS2のジョブネットには次のものがあり,必要に応じて定義できます。
- リモートジョブネット
- マネージャージョブネット
- ホストリンクジョブネット
それぞれの特性について次に説明します。
リモートジョブネットとは,自マネージャーホストで定義したジョブネットを転送して別のマネージャーホストで実行させるジョブネットをいいます。リモートジョブネットを使うと,リモートジョブネットの下位にあるジョブネットおよびジョブの実行時のJP1/AJS2 - Managerの負荷を分散できます。
リモートジョブネットは,転送先マネージャーホストで即時実行登録され,リモートジョブネット配下のユニットに設定されているスケジュール情報は無視されます。なお,リモートジョブネットの転送先ホスト側では,定義内容の追加や変更はできません。また,転送元ホストでジョブネットの保存世代数を超えた場合は,自動的に削除されます。
リモートジョブネットを定義する際は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 8.1.9 リモートジョブネットの注意事項」もあわせて参照してください。
マネージャージョブネットとは,別のマネージャーホストに定義されたジョブネットを参照するためのジョブネットです。
マネージャージョブネットには,参照先のマネージャーホスト名と参照するジョブネットを定義します。定義できるジョブネットはルートジョブネットに限ります。これにより,自マネージャーホストに接続したJP1/AJS2 - Viewからマネージャージョブネットとして定義した他マネージャーホストのジョブネットを参照できます。
メインフレームのジョブスケジューラーがJP1/AJS2 for Mainframeと連携している場合,メインフレームのジョブネットからJP1/AJS2との連携に必要な部分を切り取ったものをJP1/AJS2 for Mainframe上で「ネットグループ」として扱うことができます。ネットグループは,運用に応じてメインフレームのジョブネットを選択するスコープの役割を持ちます。「ホストリンクジョブネット」は,さらにこのJP1/AJS2 for Mainframeのネットグループをリンクさせるユニットになります。
メインフレームのジョブネットとJP1/AJS2 for Mainframeのネットグループ,JP1/AJS2のホストリンクジョブネットの関係を次に示します。
図3-8 ホストリンクジョブネットとメインフレームのジョブネットの階層関係
ホストリンクジョブネットを利用すると,JP1/AJS2 for Mainframeのネットグループを介してメインフレーム側のジョブネットを透過的に扱うことができるため,メインフレーム側のジョブネットの一部をホストリンクジョブネットとしてJP1/AJS2上のジョブネットに定義し,JP1/AJS2からメインフレーム側のジョブネットやジョブを監視したり,開始・終了を制御したりできます。
ただし,メインフレームのジョブネットはメインフレーム上で管理されており,メインフレームのジョブスケジューラーによってスケジューリングされているため,JP1/AJS2上でスケジュールに関する設定はできません。したがって,ホストリンクジョブネットは,すでにメインフレームのジョブスケジューラーで構築されている運用内容を監視したり,部分的な実行順序と連携したりする場合の使用に限ります。また,メインフレームのジョブネットやジョブを操作するには,メインフレーム側でコマンドを実行する必要があります。JP1/AJS2でメインフレーム側のジョブを制御したい場合は,JP1/OJEを利用した,QUEUEジョブでの運用構築を行ってください。
なお,JP1/AJS2 - View 06-00でホストリンクジョブネットを表示させた場合,ホストリンクジョブネットはジョブネットとして表示されますが,操作しないでください。ホストリンクジョブネットを操作する場合は,バージョン06-51以降のJP1/AJS2 - Viewで操作してください。
ホストリンクジョブネットの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 メインフレーム 運用・操作編」,「JP1/Automatic Job Management System 2 メインフレーム リファレンス編」を参照してください。
ジョブネットコネクタは,ルートジョブネットの実行順序を制御するためのユニットです。
ジョブネットコネクタには,次の二つの機能があります。
- ルートジョブネットの終了を待ち合わせる
ルートジョブネットが正常終了するのを待ちます。ルートジョブネットが異常終了した場合,ジョブネットコネクタは異常検出実行中となり,終了しないで待ちます。
- ルートジョブネットを自身の実行開始と同期して開始させる(オプション機能)
ジョブネットコネクタが実行状態になったらルートジョブネットの実行を開始します。
図3-9 ジョブネットコネクタの機能
ジョブネットコネクタは,ジョブネット配下にジョブネットワーク要素の一つとして定義できます。また,ジョブネットコネクタを使って実行順序を制御できるのは,ルートジョブネットまたはプランニンググループ直下のルートジョブネットです。
ジョブネットコネクタの詳細については,「10.4 ジョブネットコネクタを使用したルートジョブネットの実行順序制御」を参照してください。
ジョブグループとは,ジョブネットをまとめたり分類したりして体系的に管理するためのユニットです。ジョブグループの下に,さらにジョブグループを作ってネストすることもできます。
図3-10 ジョブグループ
ジョブグループには,JP1/AJS2運用上のカレンダー情報(運用日・休業日の設定,基準日・基準時刻の設定)を定義できます。カレンダー情報の定義については,「3.3 JP1/AJS2運用上のカレンダー定義」を参照してください。
なお,ジョブグループはジョブネットの管理ユニットであり,ジョブグループ自体を実行したりすることはできません。
マネージャージョブグループとは,別のマネージャーホストに定義されたジョブグループ,またはプランニンググループを参照するためのジョブグループです。
マネージャージョブグループには,参照先のマネージャーホスト名と参照するジョブグループまたはプランニンググループを定義します。これにより,自マネージャーホストに接続したJP1/AJS2 - Viewからマネージャージョブグループとして定義した他マネージャーホストのジョブグループまたはプランニンググループを参照できます。
JP1/AJS2では,複数のジョブネット(ルートジョブネット)を,実行期間を指定することによって計画的に切り替えることができます。プランニンググループは,このような運用をする場合に使用するユニットです。
例えば,8/1から8/5まではジョブネットAを実行し,8/6からジョブネットBに切り替えて8/10まで実行するという場合は,まずプランニンググループを作成し,その直下にジョブネットA,ジョブネットBを作成します。ジョブネットAには8/1〜8/5,ジョブネットBには8/6〜8/10のように期間を指定して実行すると,自動的に二つのジョブネットを切り替えて運用を継続します。
図3-11 プランニンググループの使用例
プランニンググループを使用したジョブネットの計画切り替えについては,「10.3 プランニンググループを使用したルートジョブネットの計画切り替え」を参照してください。
プランニンググループは,スケジューラーサービス(AJSROOT)またはジョブグループの直下に作成できます。また,プランニンググループの直下には,ルートジョブネットまたはリモートジョブネットに限り作成できます。
なお,プランニンググループには,JP1/AJS2運用上のカレンダー情報を定義できます。カレンダー情報の定義については,「3.3 JP1/AJS2運用上のカレンダー定義」を参照してください。
Copyright (C) 2006, 2010, Hitachi, Ltd.
Copyright (C) 2006, 2010, Hitachi Software Engineering Co., Ltd.