JP1/Automatic Job Management System 2 解説

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4.2.3 ジョブネットの保存世代数の管理

保存世代数とは,ジョブネットの実行結果として保存される世代数のことです。保存世代数は,ルートジョブネットに設定できます。保存世代数を設定すると,設定した世代分(回数分)の実行結果を[デイリースケジュール]ウィンドウや[マンスリースケジュール]ウィンドウ,またはajsshowコマンドで確認できます。ajsshowについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsshow」を参照してください。保存世代数は,1から99まで設定できますが,マネージャーのスケジューラーサービス環境の設定によって最大999世代まで保存世代数を持つことができます(保存世代数の拡張機能)。マネージャーのスケジューラーサービス環境の設定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 14.1.3 スケジューラーサービス環境設定パラメーターの定義内容」の"MAXSAVEGEN"を参照してください。ただし,保存世代数を増加すると「保存世代数*登録ユニット数」で求まるレコード数だけ増加し,登録解除などデータベースアクセスを行うあらゆる操作に多大な影響を及ぼすため,最大保存世代数を拡張する場合は,システム性能への影響を十分配慮した上で保存世代数を設定してください。また,保存された世代で不要なものについては,そのつど削除(日付指定により登録解除)してください。特に起動条件を設定したジョブネットについては,起動条件を監視する世代と条件成立によって実行される世代の双方で保存世代が管理されるため,保存世代数を拡張した場合の影響が顕著に現れます。なお,保存世代数の拡張機能は,使用しているJP1/AJS2 - Managerのバージョンが06-71以前の場合は使用できません。

保存世代数に設定した世代数を超えた過去の実行結果は,自動的に削除されます。これを保存世代数の管理といいます。ジョブネット実行時の保存世代数の管理例および注意事項を次に示します。

<この項の構成>
(1) 保存世代数管理の例
(2) 実行中の世代が保存世代数を超えた場合の保存世代数管理の例
(3) 起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数管理の例
(4) 起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数を増やす場合の注意事項
(5) 起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数を小さくする場合の注意事項

(1) 保存世代数管理の例

ジョブネットの保存世代数の管理は,次の世代の実行開始時に行われます。

保存世代数管理の例を次に示します。

図4-11 ジョブネットの保存世代数管理

[図データ]

この例では,ジョブネットの保存世代数が「3」と設定されているため,4世代目の実行開始時に1回目に実行された世代が削除されます。

(2) 実行中の世代が保存世代数を超えた場合の保存世代数管理の例

「実行中」状態の世代や,多重起動させないように設定しているため「開始時刻待ち」状態になっている世代は,保存世代数を超えたために削除されるということはありませんが,これらの世代についても保存世代数の対象としてカウントされています。「実行中」状態の世代や「開始時刻待ち」状態の世代が保存世代数を超えている状態で実行を終了した場合は,実行結果が保存世代数より多く残されることがあります。この場合は,次に保存世代数管理の処理がされるときに,保存世代数を超過した分の世代が削除されます。

このような場合の例を次に示します。

図4-12 「実行中」の世代が保存世代数を超えた場合の保存世代数管理(再実行時)

[図データ]

この例では,ジョブネットの保存世代数が「2」と設定されていますが,世代が「実行中」状態の間は保存世代数を超えても削除されることはありません。次の実行予定世代の開始時に保存世代数管理が行われ,実行を開始した世代を含めたときに保存世代数「2」を超えた世代が(古いものから順に)削除されます。

(3) 起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数管理の例

起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数の管理は,起動条件を監視する世代(「監視中」状態の世代)と,起動条件の成立によって実行される世代(「起動条件待ち」状態の世代)があり,それぞれで保存世代管理が行われます。

起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数管理の例を次に示します。

図4-13 起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数管理

[図データ]

起動条件が設定されているジョブネットを実行登録した場合,開始時刻に到達すると,起動条件を監視する世代が生成されます(図中の1-0,2-0,3-0の世代)。これと同時に「起動条件待ち」状態の世代が生成され,起動条件が成立するとこの世代が実行されます(図中の1-1〜1-4,2-1〜2-3,3-1〜3-4)。

起動条件を監視する世代の保存世代数管理は,通常のジョブネットと同様に1-0,2-0,3-0の世代がカウントされますが,保存世代数を超過して削除される場合は,その世代が「監視中」状態の間に条件が成立して実行された世代も一まとまりで削除されます。ただし,起動条件を監視する世代が終了する時点で,実行中の世代(条件成立で実行される世代)があるものは,保存世代数を超過しても削除されません。

一方,起動条件の成立によって実行される世代の保存世代数管理は,起動条件の成立時に行われます。この場合の保存世代数管理の対象は,一つの「監視中」状態の世代が監視していた起動条件が成立して実行される世代になります。起動条件が成立するとそれまで「起動条件待ち」状態だった世代が「実行中」状態となり,次の起動条件の成立を待つ「起動条件待ち」状態の世代が新しく生成されます。この世代も対象としてカウントされ,保存世代数を超過した世代が削除されます。

この例では,ジョブネットの保存世代数が「2」と設定されているため,世代1-0では2回目の起動条件成立によって世代1-3が生成される(「起動条件待ち」状態の世代となる)時点で世代1-1が削除され,3回目の起動条件成立によって世代1-2が削除されます。その後,起動条件の有効範囲内での条件成立はなかったため,世代1-0では世代1-3と世代1-4が残ります。また,次の世代の開始時刻に到達して世代2-0が実行開始された時点では,起動条件を監視する世代は世代1-0と世代2-0だけなので,世代1-0および世代1-3,1-4はまだ削除されません。世代2-0では,世代2-1が削除され,世代2-2,2-3が残ります。世代3-0が実行開始されると,起動条件を監視する世代が「2」を超えるので,世代1-0および1-3,1-4は削除されます。

このように,起動条件を設定したジョブネットは,起動条件を監視する世代だけでなく,その世代の中で実行される世代についても保存世代数の管理が行われるため,条件成立によって実行される回数を考慮した上で保存世代数を設定する必要があります(「起動条件待ち」状態の世代も保存世代数管理の対象となることから,保存世代数を「1」とした場合は,直前の実行結果がすぐに削除されてしまうことがあるため,起動条件を設定しているジョブネットの保存世代数には,「2」以上の世代を設定されることをお勧めします)。

ただし,起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数を増やす場合には,次のことに注意する必要があります。

(4) 起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数を増やす場合の注意事項

一つの起動条件を監視する世代で数十回〜数百回起動条件が成立するジョブネットがあるため,保存世代数に多大な数を設定してしまうと,条件成立によって実行される世代だけでなく,起動条件を監視する世代についても設定した世代数分が保存されることになります。例えば,1日に100回条件が成立するため,保存世代数を100としてジョブネットを毎日実行した場合,起動条件を監視する世代が100世代と,1日に条件成立する世代数100世代*100日分の合計10,100世代が保存されます。つまり,保存世代数の約2乗分の世代が保存されることになります。

「保存世代数*登録ユニット数」で求まる数だけレコード数が増加し,登録解除などデータベースアクセスを行うあらゆる操作に多大な影響を及ぼすため,保存世代数はシステム性能への影響を十分考慮した上で設定してください。保存世代数と性能の関係については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 8.1.3 保存世代数と性能との関係」を参照してください。

また,保存の必要がない起動条件を監視する世代をこまめに登録解除し,保存世代数の増加によるむだなレコード数の肥大化を防ぐよう考慮して運用してください。

図4-14 レコード数の肥大化防止のための登録解除例

[図データ]

この例では,毎日実行するジョブネットに起動条件を設定し,一日当たり10回起動条件が成立するので,一日分の実行結果を保存するために保存世代数を10世代としています。このジョブネットを実行登録して10日が経過すると,世代は全部で110世代(監視中の世代*10日分+1日の条件成立10世代*10日分)保存されることになりますが,実行結果は一日分保存できればよいので,例えば8/10の実行終了時点では,8/1から8/9までの実行結果99世代分が不要な世代となります。そこで,8/1から8/9の不要な世代を削除するために,この期間のジョブネットを登録解除します。これにより,保存世代数は8/10分の11世代だけとなり,データベースアクセスを行う操作性能への影響を減少させることができます。

このように,起動条件の成立回数が多いために保存世代数に大きな値を設定した場合は,毎日,当日分のジョブネット実行が終了した時点で,前日分の実行結果を登録解除することをお勧めします。

なお,登録解除については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 操作ガイド 7.5 実行登録の解除」およびマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsleave」を参照してください。

(5) 起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数を小さくする場合の注意事項

実行登録済みの起動条件付きジョブネットの保存世代数を現在の設定値より小さい値に変更する場合の注意事項について説明します。

保存世代数を現在の設定値より小さくした場合,設定を変更したあとに次回予定が監視中になって保存されている起動条件を監視する世代の数が保存世代数を超えると,「(変更前の保存世代数変更後の保存世代数)*(変更前の保存世代数+1)」分の世代が一度に削除されます。そのため,保存世代数に大きな値を設定している場合,保存世代数の値を大幅に小さくすると一度に削除される世代数が多くなり,運用に影響が及びます。

保存世代数を小さい値に変更した場合の世代の削除例を次の図に示します。

図4-15 保存世代数を小さい値に変更した場合の世代の削除例

[図データ]

[図データ]

例えば,この例のように保存世代数を「10」としていて10世代分(110世代)が保存されている状態から保存世代数を「2」に変更した場合,一度に削除される世代数は「88」となります。

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