Cosminexus 簡易構築・運用ガイド

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4.1 システムの構成

ここでは,Smart Composer機能で構築,運用するシステムの概要や,システムを構成する要素について説明します。

Smart Composer機能で構築,運用するシステムは,負荷分散機,J2EEサーバなどが動作するアプリケーションサーバマシン,データベースが構築されているデータベースサーバマシン,アプリケーションサーバ全体を運用管理するための機能を集約したサーバである運用管理サーバマシンなどで構成されます。J2EEアプリケーションを実行するシステムの概要を次の図に示します。

図4-1 J2EEアプリケーションを実行するシステムの概要

[図データ]

Smart Composer機能では,システム内のサーバやサービスユニットの構成をWebシステムという概念で管理します。Webシステムは,人事システムや給与システムなどの一つの業務システムに対応し,Management Serverが管理,運用する運用管理ドメイン内に複数配置できます。なお,異なるWebシステム間でも,同じ負荷分散機や,同じサーバマシン(ホスト)を共有できます。異なるWebシステム間で同じ負荷分散機を共有する場合の設定は,使用する負荷分散機によって異なります。負荷分散機を共有する場合の設定については,「6.17.1(2) 異なるWebシステムのサービスユニットを1台のサーバマシンに配置する場合」を参照してください。また,同じホストを共有する場合の設定については,「6.17 サーバマシン内に複数のサービスユニットを配置する場合に必要な設定」を参照してください。

運用管理ドメイン内では,Webシステムおよびサーバマシン(ホスト)をIDで識別して管理しています。このため,Webシステムおよびサーバマシン(ホスト)のIDは,運用管理ドメイン内で一意になるように設定してください。

参考
Smart Composer機能では,Management Serverを運用管理サーバマシンに配置する運用管理サーバモデルで,システムを構築します。ただし,JP1/SC/DPMを利用すると,Management Serverをアプリケーションサーバマシン(ホスト)ごとに配置するホスト単位管理モデルでも,システムを構築できます。JP1/SC/DPMを利用したシステム構成については,「4.4 JP1/SC/DPMを利用して構築する場合のシステム構成」を参照してください。

また,Smart Composer機能では,Webシステム内のサーバマシンの集合や,サーバの集合を,それぞれ物理ティア,サービスユニットという論理的なまとまりで扱っています。また,サービスユニット内に配置する論理サーバの構成は,物理ティアの種類によって決まります。次に,物理ティアおよびサービスユニットについて説明します。

<この節の構成>
(1) 物理ティア
(2) サービスユニット

(1) 物理ティア

同一のデプロイメント(プロセスの配置,J2EEアプリケーションやリソースアダプタのデプロイ,定義設定)を適用するサーバマシンの集合を物理ティアといいます。J2EEアプリケーションを実行するシステムで使用できる物理ティアには,combined-tier,http-tier,j2ee-tier,sfo-tier,ctm-tier,およびfree-tierの6種類があります。

参考
構築するシステム構成(Webフロントシステムまたはバックシステム)によって,指定できる物理ティアが異なります。システム構成と指定できる物理ティアの関係については,「4.3 システム構成パターン」を参照してください。
(a) combined-tier

業務サービス用の物理ティアで,アプリケーションサーバマシンの中に,Webサーバ,J2EEサーバ,およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の三つの論理サーバを配置する構成です。combined-tierのシステム構成については,「4.3.1 WebサーバとJ2EEサーバを同じサーバマシンに配置する構成」を参照してください。

(b) http-tier

業務サービス用の物理ティアで,Webサーバ側のマシンの集合です。

Webサーバマシンの中に,Webサーバ,およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の二つの論理サーバを配置する構成です。http-tierは,WebサーバとJ2EEサーバを配置するマシンを分けたい場合に,j2ee-tierと組み合わせて利用します。http-tierのシステム構成については,「4.3.2 WebサーバとJ2EEサーバを別のサーバマシンに配置する構成」を参照してください。

(c) j2ee-tier

業務サービス用の物理ティアで,J2EEサーバ側のマシンの集合です。

アプリケーションサーバマシンの中に,J2EEサーバ,およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の二つの論理サーバを配置する構成です。

j2ee-tierは,http-tierと組み合わせて利用する場合と,http-tierと組み合わせないで利用する場合があります。別マシンに配置したWebサーバを使用してクライアントからのリクエストを受け付けたい場合は,http-tierと組み合わせて利用します。J2EEサーバだけでクライアントからのリクエストを受け付けたい場合は,http-tierと組み合わせないで,j2ee-tierだけで利用します。それぞれの場合について,次に示します。

http-tierと組み合わせて利用する場合
WebサーバとJ2EEサーバを配置するマシンを分けたい場合に,http-tierと組み合わせて利用します。j2ee-tierのシステム構成については,「4.3.2 WebサーバとJ2EEサーバを別のサーバマシンに配置する構成」を参照してください。

http-tierと組み合わせないで利用する場合
J2EEサーバだけでクライアントからのリクエストを受け付けたい場合,インプロセスHTTPサーバ機能を使用します。インプロセスHTTPサーバ機能を使用する場合のj2ee-tierのシステム構成については,「4.3.3 インプロセスHTTPサーバ機能を使用する構成」を参照してください。なお,インプロセスHTTPサーバ機能の概要については,マニュアル「Cosminexus 機能解説」のインプロセスHTTPサーバによるリクエストの受け付けに関する説明を参照してください。
(d) sfo-tier

セッションフェイルオーバ用の物理ティアで,セッションフェイルオーバサーバマシンの中に,セッションフェイルオーバサーバ(SFOサーバ),およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の二つの論理サーバを配置する構成です。セッションフェイルオーバサーバは,セッションフェイルオーバ機能を使用する場合に必要になります。sfo-tierは,WebフロントシステムのJ2EEサーバを配置したほかの物理ティアと組み合わせて利用します。sfo-tierのシステム構成については,「4.3.5 セッションフェイルオーバ機能を使用する構成」を参照してください。

(e) ctm-tier

CTM用の物理ティアで,次に示すマシンの中に,CTM関連の論理サーバや,J2EEサーバなどを配置する構成です。CTMを使用する場合に必要になります。

CTMドメインマネジャ,CTMおよびスマートエージェントは,CTMを利用したシステムを構築する場合に必要になります。ctm-tierは,ほかの物理ティアとは別のWebシステムに属し,バックシステムとして単独で利用できます。ctm-tierのシステム構成については,「4.3.6 CTMを使用する構成」を参照してください。

(f) free-tier

ほかのどの物理ティアの構成にも当てはまらない構成です。ほかの物理ティアとは異なり,システムを構築する場合には使用しないで,運用管理ポータルなどで構築したシステムをほかの環境に移行する場合に使用します。運用管理ポータルなどを使用して構築したシステムの内容を簡易構築定義ファイルに出力する場合,ほかのどの物理ティアの構成にも当てはまらない構成が含まれていると,その構成がfree-tier構成として出力されます。

free-tier構成には,Webシステム名,およびサービスユニット名がありません。そのため,free-tier構成を含むシステムに対して,Smart Composer機能のコマンドでできる操作は,システムの構築,起動および停止です。そのほかの操作は,Smart Composer機能のコマンドでは実施できません。

(2) サービスユニット

業務サービスを提供する,閉じた部分系などのサーバの集合をサービスユニットといいます。サービスユニットは,サーバの起動・停止,J2EEアプリケーションの入れ替え時の閉塞処理,スケールアウトなどの単位となります。

サービスユニットは,1台のサーバマシンに複数配置でき,サーバマシン内のサーバは,サービスユニット単位で増やすことができます。また,異なるWebシステムのサービスユニットを,1台のサーバマシンに配置することもできます。複数のサービスユニットを配置するシステム構成の詳細については,「4.3.7 サーバマシン内に複数のサービスユニットを配置する構成」を参照してください。

参考
サービスユニットを配置するサーバマシンには,構築済みのWebシステムなどで使用しているマシンを指定することもできます。

サービスユニットには,サービスユニットを配置するサーバマシンが属する物理ティアによって,業務サービスを提供するものや,セッション情報を管理するものなどがあります。サービスユニットの種類と,サービスユニットを構成するプロセスを次の表に示します。なお,構築するシステムごとに配置するプロセスについては,「4.3 システム構成パターン」を参照してください。

表4-1 サービスユニットの種類と,サービスユニットを構成するプロセス

物理ティアの種類 サービスユニットの種類 サービスユニットを構成するプロセス 1サービスユニットに配置できる数
combined-tier 業務サービス用のサービスユニット J2EEサーバ 1
Webサーバ 1
PRFデーモン 1
ユーザサーバ 0〜n
http-tier 業務サービス用のサービスユニット Webサーバ 1
PRFデーモン 1
ユーザサーバ 0〜n
j2ee-tier 業務サービス用のサービスユニット J2EEサーバ 1
PRFデーモン 1
ユーザサーバ 0〜n
sfo-tier セッションフェイルオーバ用のサービスユニット SFOサーバ 1
PRFデーモン 1
ユーザサーバ 0〜n
ctm-tier CTM用のサービスユニット CTMドメインマネジャ 1
CTM 1
スマートエージェント 1
J2EEサーバ 1〜32
PRFデーモン 1
ユーザサーバ 0〜n
統合ネーミングスケジューラサーバ用のサービスユニット CTMドメインマネジャ 1
CTM 1
スマートエージェント 1
PRFデーモン 1
ユーザサーバ 0〜n

注※ http-tierはj2ee-tierと組み合わせて使用します。サービスユニットは,http-tierとj2ee-tierに属するサーバマシンに配置するサーバの組み合わせで構成されます。詳細については,「4.3.2 WebサーバとJ2EEサーバを別のサーバマシンに配置する構成」を参照してください。

次に,サービスユニットを構成する各プロセスについて説明します。

(a) J2EEサーバ

J2EEサーバは,J2EEアプリケーションの実行基盤となるプロセスです。

(b) Webサーバ

Webサーバは,Webブラウザからのリクエスト受信,およびWebブラウザへのデータ送信に関連する処理を実行するプロセスです。

(c) PRFデーモンパフォーマンストレーサ

アプリケーションサーバは,リクエストを処理するときにトレース情報をバッファへ出力します。PRFデーモン(パフォーマンストレーサ)は,バッファに出力されたトレース情報をファイルに出力するためのI/Oプロセスです。

(d) ユーザサーバ

ユーザが定義する任意のプロセスです。ユーザサーバは,論理ユーザサーバとして定義することで,Management Serverで運用・管理できるようになります。論理ユーザサーバを特定のサービスユニットに関連づけると,サービスユニットの起動/停止と同時に,ユーザサーバも起動したり,停止したりできます。

参考
複数のユーザサーバを,一つのサービスユニットに関連づけることができますが,一つのユーザサーバを,複数のサービスユニットに関連づけることはできません。
(e) SFOサーバセッションフェイルオーバサーバ

セッションフェイルオーバ機能を使用する場合に,J2EEサーバ間のセッション情報を管理するためのプロセスです。

(f) CTMドメインマネジャ

同じCTMドメイン内のCTMデーモンの情報を管理するプロセスです。CTMデーモンを配置したホスト上に一つずつ配置します。CTMドメインは,複数のCTMデーモン間で,それぞれに登録された業務処理プログラムの情報やスケジュールキューの負荷情報を交換して,情報共有と負荷分散をする範囲のことで,ドメイン名称で識別されます。

(g) CTM

J2EEアプリケーション内のStateless Session Beanに対するリクエストをスケジューリングするためのプロセス群です。CTMを使用すると,クライアントからのリクエストを適切に分散し,スケジューリングできます。CTMは,次に示すプロセスから構成されています。

(h) スマートエージェント

Cosminexus TPBrokerで提供されている,動的な分散ディレクトリサービスを提供するプロセスです。異なるネットワークセグメントにあるCTMデーモンに情報を配布する場合に使用されます。詳細については,マニュアル「Borland(R) Enterprise Server VisiBroker(R) デベロッパーズガイド」を参照してください。