JP1/Automatic Job Management System 2 解説
JP1/AJS2のスケジュールのシミュレーションには,次の二つがあります。
- スケジュールシミュレーション
- 実行シミュレーション
[デイリースケジュール]ウィンドウや[マンスリースケジュール]ウィンドウの実行結果リストに表示される予実績情報は,スケジュールシミュレーションと実行シミュレーションによって算出されたスケジュールを表示しています。また,ajsshowコマンドの-b,-e,-v,-wオプションで出力される予実績情報も,スケジュールシミュレーションと実行シミュレーションによって算出されたスケジュールを出力します。
それぞれのシミュレーションについて説明します。
- <この項の構成>
- (1) スケジュールシミュレーション
- (2) 実行シミュレーション
ジョブネットの実行登録によってスケジュール確定した実行予定は,JP1/AJS2のデータベースに格納されます。計画実行登録の場合は,実行登録後の初回の実行予定が格納され,以降はジョブネットの実行開始時に次回の実行予定世代が生成され,データベースに格納されます。期間指定による確定実行登録の場合は,指定した期間内にある世代分だけ実行登録時にデータベースに格納されます。未来世代数指定による確定実行登録の場合,実行登録時には指定した世代分の実行予定を格納し,以降はジョブネットの世代が実行されるたびに指定した世代数分の実行予定を保持するように次の実行予定世代がデータベースに格納されます。
このとき,計画実行登録の場合と,未来世代数指定による確定実行登録の場合には,スケジュール確定していない実行予定があります。これは,ジョブネットのスケジュール定義に基づいたシミュレーションによって算出された,仮のスケジュールです。これを擬似予定といいます。ジョブネットのスケジュール定義に基づいて実行予定をシミュレートすることを,スケジュールシミュレーションといいます。
図4-20 計画実行登録されたジョブネットのスケジュールシミュレーション例
この例では,8/9の次回実行予定がスケジュール確定されてデータベースに格納されたスケジュール,8/10以降の実行予定がスケジュールシミュレーションによって生成された擬似予定となります。
ajsshowコマンドで実行する場合の例を次に示します。なお,コマンド実行を実行する時刻を,2006/08/09 08:00とします。/Netの開始予定時刻は12:00とし,計画実行登録されているものとします。
- (例)
ajsshow -i "start=%BB type=%ii %JJ" -b 2006/8/9 -e 2006/8/11 /Net start=2006/08/09 12:00 type=計画登録 /Net start=2006/08/10 12:00 type=擬似予定 /Net start=2006/08/11 12:00 type=擬似予定 /Net
- 擬似予定がスケジュールされない場合
- 擬似予定はスケジュールとして確定していない実行予定です。計画実行登録では,ジョブネットの実行開始時に次回の実行予定が確定します。このため,次のような場合にジョブネットの次回実行予定が「開始時刻待ち」状態や「保留中」状態のまま実行されないで,擬似予定として算出されていた時刻を過ぎると,擬似予定はスケジュールされません。
- JP1/AJS2のサービス停止中
- ジョブ,ジョブネットの保留中
- メンテナンスモードによる縮退中
- 擬似予定がスケジュールされない例を次の図に示します。
図4-21 擬似予定がスケジュールされない例
- この例では,8:00に実行開始予定のジョブネットはメンテナンス中であるため,メンテナンスモードが解除されるのを待って,実行開始されます。一方,9:00の実行開始予定(擬似予定)は,8:00のジョブネット実行開始時点でスケジュールが確定するはずですが,8:00実行予定のジョブネットが9:00を超過しても実行されなかったため,擬似予定はスケジュールされません。
- 擬似予定の注意事項については「3.4.3(2) スケジューリング方式」,「10.2.3(4) 擬似予定よりあとの日時に変更する場合」も参照してください。
スケジュールシミュレーションとは別に,ジョブネットの開始予定時刻やジョブネットに定義されたジョブ同士の順序性などから,ジョブネットの開始時刻,終了時刻を算出するシミュレーションがあります。これを実行シミュレーションといいます。
実行シミュレーションは,現在時刻,ジョブネットの開始予定時刻,実行状態,過去の実行時間,ユニットの順序性やユニットの種別など,さまざまな情報を基に,より実運用に近い形でジョブネットやジョブの開始予定時刻,終了予定時刻をシミュレートします。まだ一度も実行されていないジョブネットの場合は,[環境設定]ダイアログボックスの「初回実行時間」に設定されている時間(単位:秒)(ajsshowコマンドの場合は60(単位:秒))をジョブネットの最初に定義されているジョブの実行所要時間として計算し,ジョブネットおよびその下位のユニットの開始予定時刻や終了予定時刻をシミュレートします。
なお,実行シミュレーションは,[環境設定]ダイアログボックスでシミュレーションを行うか,行わないかを設定します。[環境設定]ダイアログボックスでの設定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 操作ガイド 13.3.27 [環境設定]ダイアログボックス」を参照してください。ajsshowコマンドの場合は,[環境設定]ダイアログボックスの設定は関係しません。
シミュレーションを行わない場合は,ジョブネットのスケジュールルールに基づいて開始予定時刻が表示され,ジョブネットの終了予定時刻は[環境設定]ダイアログボックスの「初回実行時間」を実行所要時間として算出します。ただし,その下位の個々のユニットはシミュレーションされないで,ジョブネットと同じ時刻が表示されます。シミュレーションを行う場合と行わない場合の,開始予定時刻と終了予定時刻の違いを次に示します。
図4-22 実行シミュレーションの有無による開始予定時刻と終了予定時刻の違い
この例では,[環境設定]ダイアログボックスの「初回実行時間」に「1,200秒(デフォルト)」が設定されているものとします。また,実行登録後にまだ一度もジョブネットが実行されていないものとします。
実行シミュレーションを行う場合は,Job1,Job2の順でジョブが実行されるように定義されているので,Job1の終了時刻がJob2の開始時刻になります。個々のユニットは「初回実行時間」で所要時間(1,200秒=20分)がシミュレートされるので,Job1は12:00〜12:20,Job2は12:20〜12:40となります。したがって,Job1,Job2が定義されているジョブネットNetの実行時間は12:00〜12:40になります。
シミュレーションを行わない場合は,ジョブネットNetには「初回実行時間」に設定されている値で終了時刻が算出されますが,その下位に定義されている個々のユニットにはシミュレートされないので,ジョブネットNet,Job1,Job2はすべて12:00〜12:20と表示されます。
ajsshowコマンドに-b,-eまたは-v,-wオプションを指定した場合,常に実行シミュレーションを行います。-Bオプションまたは実行IDを指定した場合,実行シミュレーションを行いません。指定するオプションによる出力の違いを次に示します。
図4-23 ajsshowコマンドに指定するオプションによる出力の違い
この例では,実行登録後にまだ一度もジョブネットが実行されていないものとします。
ajsshowコマンドに-b,-eまたは-v,-wオプションを指定した場合,Job1,Job2の順でジョブが実行されるように定義されているので,Job1の終了時刻がJob2の開始時刻になります。個々のユニットの初回実行時間は所要時間(60秒=1分)でシミュレートされるので,Job1は12:00〜12:01,Job2は12:01〜12:02となります。したがって,Job1,Job2が定義されているジョブネットNetの実行時間は12:00〜12:02になります。
ajsshowコマンドの使用例を次に示します。コマンドを実行する時刻を2006/08/09 08:00とします。
- (例1)
ajsshow -i "start=%BB end=%OO %JJ" -b 2006/8/9 -e 2006/8/9 -R /Net start=2006/08/09 12:00 end=2006/08/09 12:02 /Net start=2006/08/09 12:00 end=2006/08/09 12:01 /Net/Job1 start=2006/08/09 12:01 end=2006/08/09 12:02 /Net/Job2ajsshowコマンドに-Bオプションまたは実行IDを指定した場合は,ジョブネットNetの初回実行時間は所要時間(60秒=1分)で終了時刻が算出されますが,その下位に定義されている個々のユニットはシミュレーションされないので,ジョブネットNet,Job1,Job2はすべて12:00〜12:01と表示されます。
- (例2)
ajsshow -i "start=%BB end=%OO %JJ" -B 20060809001 -R /Net start=2006/08/09 12:00 end=2006/08/09 12:01 /Net start=2006/08/09 12:00 end=2006/08/09 12:01 /Net/Job1 start=2006/08/09 12:00 end=2006/08/09 12:01 /Net/Job2
- 補足事項
- 実行シミュレーションを行っている場合は,ジョブネットが「異常終了」または「異常検出実行中」状態の場合,その後続ユニットは実行されないものとしてスケジュール表示されます。実行シミュレーションを行っていない場合は,後続ユニットも実行されるものとしてスケジュール表示されます。
- スケジューリング方式(スケジュールスキップ,多重スケジュール)についての実行シミュレーションは行われません。
- 起動条件が設定されているジョブネットで,まだ生成されていない「起動条件待ち」世代についての実行シミュレーションは行われません。
- 実行シミュレーションを行う場合でホストリンクジョブネットが「異常検出実行中」のとき,後続ユニットは実行されるものとして表示されます。
- ジョブネットコネクタを使用したジョブネットの場合,ジョブネットコネクタの実行シミュレーションはそれ自身の統計情報を基に行われます。統計情報は登録解除すると削除されるので,ジョブネットコネクタ側のルートジョブネットまたは接続先のジョブネットのどちらか一方だけを登録解除した場合,そのあとの実行シミュレーションにずれが生じることがあります。
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