2.9.2 クラスタ運用の環境情報の設定
クラスタ運用に対応するための,JP1/Advanced Shellの環境情報の設定について説明します。
- 〈この項の構成〉
(1) 連携するJP1シリーズ製品をインストール・セットアップする
実行系サーバおよび待機系サーバで連携するJP1シリーズ製品のインストール・セットアップを実施してください。連携するJP1シリーズ製品のインストール・セットアップについては,各製品のマニュアルを参照してください。
(2) JP1/Advanced Shellをインストールする
実行系サーバ,待機系サーバそれぞれのローカルディスク上にJP1/Advanced Shellをインストールしてください。
また,共有ディスク上にはJP1/Advanced Shellをインストールしないでください。
(3) JP1/Advanced Shellの環境情報を設定する
JP1/Advanced Shellをクラスタシステムで運用するには,次の作業を実施してください。
(a) ディレクトリとファイル構成の検討
システムの運用方針に従い,以下の表の項目のディレクトリとファイル構成を検討します。
ディレクトリまたはファイル種別 |
作成基準 |
---|---|
一時ファイル用のディレクトリ |
△ |
スプール用のディレクトリ |
○ |
システム実行ログ用のディレクトリ |
△ |
トレース用のディレクトリ |
× |
システム環境ファイル |
× |
ジョブ環境ファイル |
△ |
ジョブ定義スクリプト |
△ |
ジョブ定義スクリプトから参照するファイル |
△ |
上記以外 |
△ |
- (凡例)
○:共有ディスク上に作成する。
△:システムの運用方針に従い,共有ディスクまたはローカルディスク上に作成する。
×:ローカルディスク上に作成する。
(b) 物理ホストの環境情報を設定する
実行系サーバおよび待機系サーバの物理ホストで,JP1/Advanced Shellの環境情報を設定します。環境情報の設定については,「2.6 JP1/Advanced Shellの環境情報を設定する」を参照してください。
(c) 論理ホストの環境情報を設定する
実行系サーバの論理ホストで,JP1/Advanced Shellの環境情報を次の手順で設定します。
実行に必要なディレクトリを作成する。
「(a) ディレクトリとファイル構成の検討」で検討したディレクトリ構成に従って,JP1/Advanced Shellの実行に必要な次に示すディレクトリを共有ディスク上またはローカルディスク上に作成します。JP1/Advanced Shellの実行に必要なディレクトリの詳細については,「2.6.19 JP1/Advanced Shellで必要なディレクトリを作成する」を参照してください。
一時ファイル用のディレクトリ
スプール用のディレクトリ
システム実行ログ用のディレクトリ
トレース用のディレクトリ
ディレクトリの作成方法を次に示します。
共有ディスク上に作成する場合
実行系サーバから共有ディスクにアクセスできるようにし,共有ディスク上にディレクトリを作成する。
ローカルディスク上に作成する場合
実行系サーバおよび待機系サーバのそれぞれのローカルディスク上にディレクトリを作成する。
環境ファイルを設定する。
JP1/Advanced Shellのシステム環境ファイルで,論理ホストごとの設定をする必要があります。そのためには,条件パラメーターlhost_startとlhost_endの間に,各論理ホストの環境設定パラメーターを設定します。条件パラメーターlhost_startとlhost_endの詳細については,「7.4 条件パラメーター」の「lhost_startパラメーター,lhost_endパラメーター(論理ホストだけで有効なパラメーターを定義する)」を参照してください。
論理ホスト環境で実行するためには,少なくとも次のパラメーターをシステム環境ファイルに設定します。
実行に必要なディレクトリのパラメーターの設定
「(a) ディレクトリとファイル構成の検討」で検討したディレクトリ構成に従って,手順1.で作成したディレクトリの構成をシステム環境ファイルに設定します。これらのディレクトリはシステムの切り替え時にあわせて切り替わるよう,システム環境ファイルだけに指定し,ジョブ環境ファイルには指定しないでください。
JP1/Advanced Shellの実行に必要なディレクトリのパラメーターの詳細については,「2.6.19 JP1/Advanced Shellで必要なディレクトリを作成する」を参照してください。
ユーザー応答機能のパラメーターの設定
論理ホスト環境でユーザー応答機能を使用する場合は,システム環境ファイルに,論理ホスト用のユーザー応答機能のパラメーターを設定してください。
ユーザー応答機能のパラメーターの詳細は,「2.8.1 ユーザー応答機能を使用するための環境ファイルの設定」を参照してください。
物理ホストおよび論理ホストを指定したシステム環境ファイルの設定例を次に示します。ここで,「/shdsk1/lhost001」「/shdsk2/lhost002」は共有ディスク上のディレクトリ,「/lhost001」「/lhost002」「/phost」はローカルディスク上のディレクトリです。
### ### 物理ホストおよび論理ホストで共通の設定 ### #-adsh_conf USERREPLY_JP1EVENT_INTERVAL 500 ### ### 物理ホストおよび論理ホストごとの設定 ### #### specify parameter for only logical host (lhost001). #-adsh_conf lhost_start lhost001 #-adsh_conf LOG_DIR "/shdsk1/lhost001/log" #-adsh_conf SPOOL_DIR "/shdsk1/lhost001/spool" #-adsh_conf TEMP_FILE_DIR "/shdsk1/lhost001/temp" #-adsh_conf TRACE_DIR "/lhost001/trace" #-adsh_conf HOSTNAME_JP1IM_MANAGER IMlhost001 #-adsh_conf USERREPLY_WAIT_MAXCOUNT 5 #-adsh_conf lhost_end #### specify parameter for only logical host (lhost002). #-adsh_conf lhost_start lhost002 #-adsh_conf LOG_DIR "/shdsk2/lhost002/log" #-adsh_conf SPOOL_DIR "/shdsk2/lhost002/spool" #-adsh_conf TEMP_FILE_DIR "/shdsk2/lhost002/temp" #-adsh_conf TRACE_DIR "/lhost002/trace" #-adsh_conf HOSTNAME_JP1IM_MANAGER IMlhost002 #-adsh_conf USERREPLY_WAIT_MAXCOUNT 5 #-adsh_conf lhost_end #### specify parameter for physical host. #-adsh_conf phost_start #-adsh_conf LOG_DIR "/phost/log" #-adsh_conf SPOOL_DIR "/phost/spool" #-adsh_conf TEMP_FILE_DIR "/phost/temp" #-adsh_conf TRACE_DIR "/phost/trace" #-adsh_conf HOSTNAME_JP1IM_MANAGER IMphost001 #-adsh_conf USERREPLY_WAIT_MAXCOUNT 10 #-adsh_conf phost_end
論理ホスト用のユーザー応答機能管理サービスを登録する。【Windows限定】
論理ホスト環境でユーザー応答機能を使用する場合は,実行系サーバおよび待機系サーバで論理ホスト用のユーザー応答機能管理サービスを登録する必要があります。登録はadshmsvcdコマンドおよびadshmsvceコマンドで実行できます。論理ホストに対応したサービスを登録する場合,-installオプションと-lhostnameオプションを指定してコマンドを実行します。
コマンドが正常に終了すると,登録したサービスが[サービス]管理ツールに表示されます。
例えば,実行系サーバの実行環境に論理ホストとしてlhost001を使用する場合,次のコマンドを実行します。
adshmsvce -install -lhostname lhost001
この例の場合,コマンドが正常に終了すると,[AdshmSvcE_ lhost001]が[サービス]管理ツールに表示されます。
実行系サーバと待機系サーバのファイル構成を確認する。
「(a) ディレクトリとファイル構成の検討」で検討したファイル構成に応じて,次の作業を実施してください。
ローカルディスク上に作成する場合
実行系サーバと待機系サーバで,参照するファイルの構成とファイルの中身を同じにする必要があります。手順2.で作成したシステム環境ファイルなど,実行系サーバのローカルディスク上に作成したファイルを,待機系サーバの同一のパスにコピーしてください。
共有ディスク上に作成する場合
実行系サーバから共有ディスクにアクセスできるようにし,作成してください。
- 重要
作成したファイルは,実行系サーバおよび待機系サーバのどちらからもアクセスできるように権限を設定してください。特に,特定のユーザーやグループにアクセス権限を設定している場合は,実行系サーバと待機系サーバでユーザー名とユーザーID(UID),グループ名とグループID(GID)を同じにする必要があります。
(4) クラスタソフトへの登録【Windowsの場合】
論理ホストのユーザー応答機能管理サービスをクラスタソフトに登録して,クラスタソフトからの制御で起動・停止するように設定します。ただし,論理ホスト環境でユーザー応答機能を使用しない場合は,登録は不要です。
(a) クラスタソフトへの登録
Windowsの場合,クラスタソフトに登録するのは,論理ホスト用のサービスとして登録された次の名称のサービスです。
名前 |
サービス名 |
---|---|
AdshmSvcE_論理ホスト名 |
ユーザー応答機能管理サービス |
登録方法の詳細については,各クラスタソフトのマニュアルを参照してください。クラスタソフトに登録したユーザー応答機能管理サービスは,クラスタソフトの操作で起動または停止してください。
(b) 起動停止順序の設定
論理ホストのユーザー応答機能管理サービスを実行するには,共有ディスクおよび論理IPアドレスが使用可能になっている必要があります。また,起動停止の際の順序は,連携するJP1シリーズ製品と依存関係があります。
論理ホストの起動時
共有ディスクおよび論理IPアドレスを割り当てて使用可能にする。
連携するJP1シリーズ製品(JP1/AJSを除く)のサービスを起動する。※
ユーザー応答機能管理サービスを起動する。
JP1/AJSのサービスを起動する。
論理ホストの停止時
JP1/AJSのサービスを停止する。
ユーザー応答機能管理サービスを停止する。
連携するJP1シリーズ製品(JP1/AJSを除く)のサービスを停止する。※
共有ディスクおよび論理IPアドレスの割り当てを解除する。
- 注※
連携するJP1シリーズ製品間のサービスの起動停止順序は,各製品のマニュアルを参照してください。
(5) クラスタソフトへの登録【UNIXの場合】
論理ホストのユーザー応答機能管理デーモンをクラスタソフトに登録して,クラスタソフトからの制御で起動・停止するように設定します。ただし,論理ホスト環境でユーザー応答機能を使用しない場合は,登録は不要です。
(a) クラスタソフトへの登録
ユーザー応答機能管理デーモンをクラスタソフトへ登録する場合に必要な情報を次の表に示します。
登録する機能 |
説明 |
---|---|
起動 |
ユーザー応答機能管理デーモンを起動します。
|
停止 |
ユーザー応答機能管理デーモンを停止します。
|
動作監視 |
ユーザー応答機能管理デーモンが正常に動作していることを監視します。
|
adshmdctlコマンドについては,「8. 運用時に使用するコマンド」の「adshmdctlコマンド(ユーザー応答機能管理デーモンを起動および停止する)【UNIX限定】」を参照してください。
- 重要
ユーザー応答機能管理デーモンが何らかの障害によって共有メモリを解放しないまま終了した場合,次回の起動に失敗します。この場合,「8. 運用時に使用するコマンド」の「adshmdctlコマンド(ユーザー応答機能管理デーモンを起動および停止する)【UNIX限定】」の「機能」の説明に従って対処してください。
(b) 起動停止順序の設定
論理ホストのユーザー応答機能管理デーモンを実行するには,共有ディスクおよび論理IPアドレスが使用可能になっている必要があります。また,起動停止の際の順序は,連携するJP1シリーズ製品と依存関係があります。
論理ホストの起動時
共有ディスクおよび論理IPアドレスを割り当てて使用可能にする。
連携するJP1シリーズ製品(JP1/AJSを除く)のデーモン・サービスを起動する。※
ユーザー応答機能管理デーモンを起動する。
JP1/AJSのサービスを起動する。
論理ホストの停止時
JP1/AJSのサービスを停止する。
ユーザー応答機能管理デーモンを停止する。
連携するJP1シリーズ製品(JP1/AJSを除く)のデーモン・サービスを停止する。※
共有ディスクおよび論理IPアドレスの割り当てを解除する。
- 注※
連携するJP1シリーズ製品間のサービスの起動停止順序は,各製品のマニュアルを参照してください。