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JP1 Version 11 JP1/Advanced Shell 


2.9.1 クラスタ運用の前提条件とサポート範囲

JP1/Advanced Shellは,クラスタシステムでは論理ホスト環境で動作し,系切り替え時にジョブを実行する環境を引き継ぐことができます。ただし,系切り替え時に実行中のジョブを継続して実行することはできません。系切り替え後にジョブを再実行する場合は,手動でジョブを再実行してください。

JP1/Advanced Shellを論理ホスト環境で実行する場合,共有ディスクや論理IPアドレスの割り当て・削除・動作監視がクラスタソフトによって制御されている必要があります。また,次に示す前提条件を満たすよう,システム構成や環境設定を行ってください。

〈この項の構成〉

(1) 論理ホスト環境の前提条件

JP1/Advanced Shellを論理ホスト環境で実行する場合,論理IPアドレスと共有ディスクについて,次に示す前提条件があります。

表2‒32 論理ホスト環境の前提条件

論理ホストの構成要素

前提条件

共有ディスク

  • 実行系サーバから待機系サーバへ引き継ぎ可能な共有ディスクが使用できること。

  • JP1/Advanced Shellのプログラムが起動する前に,共有ディスクが割り当てられること。

  • ユーザー応答機能管理デーモン・サービスを実行中に,共有ディスクの割り当てが解除されないこと。

  • ユーザー応答機能管理デーモン・サービスを停止したあとに,共有ディスクの割り当てが解除されること。

  • 共有ディスクが,不当に複数のノードから使用されないよう排他制御されていること。

  • システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。

  • 系切り替え時に稼働中のプログラムを計画停止した場合,ファイルに書き込んだ内容が保証されて引き継がれること。

  • 系切り替え時に共有ディスクを使用中のプロセスがあっても,強制的に系切り替えができること。

  • 共有ディスクの障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトで制御すること。回復処置の延長でユーザー応答機能管理デーモン・サービスの起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからユーザー応答機能管理デーモン・サービスに起動や停止の実行要求をすること。

論理IPアドレス

  • 引き継ぎ可能な論理IPアドレスを使って通信できること。

  • 論理ホスト名から論理IPアドレスが一意に求められること。

  • ユーザー応答機能管理デーモン・サービスを起動する前に,論理IPアドレスが割り当てられること。

  • ユーザー応答機能管理デーモン・サービスを実行中に,論理IPアドレスが削除されないこと。

  • ユーザー応答機能管理デーモン・サービスを実行中に,論理ホスト名と論理IPアドレスの対応が変更されないこと。

  • ユーザー応答機能管理デーモン・サービスを停止したあとに,論理IPアドレスが削除されること。

  • ネットワーク障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,ユーザー応答機能管理デーモン・サービスが回復処理を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でユーザー応答機能管理デーモン・サービスの起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからユーザー応答機能管理デーモン・サービスに起動や停止の実行要求をすること。

  • 同一の物理ホストで複数の論理ホストを起動する場合,論理ホストごとに1つずつのIPアドレスを割り当てられること。

(2) 物理ホスト環境の前提条件

JP1/Advanced Shellを論理ホストで運用するクラスタシステムでは,各サーバの物理ホスト環境が次に示す前提条件を満たしている必要があります。

表2‒33 物理ホスト環境の前提条件

物理ホストの構成要素

前提条件

サーバ本体

  • 2台以上のサーバ機によるクラスタ構成になっていること。

  • 実行する処理に応じたCPU性能があること(例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できるCPU性能があること)。

  • 実行する処理に応じた実メモリ容量があること(例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できる実メモリ容量があること)。

ディスク

  • システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。

ネットワーク

  • 物理ホスト環境のユーザー応答機能管理デーモン・サービスを使用する場合,物理ホスト名(hostnameコマンドの結果)に対応するIPアドレスで通信が可能なこと(クラスタソフトなどによって通信ができない状態に変更されないこと)

  • ユーザー応答機能管理デーモン・サービスの動作中に,ホスト名とIPアドレスの対応が変更されないこと(クラスタソフトやネームサーバなどによって変更がされないこと)。

  • Windowsの場合,ホスト名に対応したLANボードがネットワークのバインド設定で最優先になっていること(ハートビート用などほかのLANボードが優先になっていないこと)。

OS,クラスタソフト

  • 系切り替え後も同じ処理ができるよう,各サーバの環境が同一の設定であること。

  • JP1/Advanced Shellがサポートするクラスタソフトおよびバージョンであること。

  • JP1/Advanced Shellおよびクラスタソフトが前提とするパッチやサービスパックが適用済みであること。

注※

クラスタソフトによっては,物理ホスト名(hostnameコマンドで表示されるホスト名)に対応するIPアドレスで通信ができなくなる構成の場合があります。この場合,物理ホスト環境のユーザー応答機能管理デーモン・サービスは動作できません。論理ホスト環境のユーザー応答機能管理デーモン・サービスだけを使用してください。

(3) JP1/Advanced Shellがサポートする範囲

クラスタシステムでJP1/Advanced Shellを運用する場合,JP1/Advanced Shellがサポートする範囲はJP1/Advanced Shell自体の動作だけです。論理ホスト環境(共有ディスクおよび論理IPアドレス)の制御はクラスタソフトの制御に依存します。

また,論理ホスト環境および物理ホスト環境の前提条件が満たされていない,または論理ホスト環境の制御に問題がある場合は,JP1/Advanced Shellが正常に動作しないことがあります。この場合は,物理ホスト環境および論理ホスト環境の前提条件を見直す,またはクラスタソフトの設定を見直してください。

(4) 論理ホスト名の条件

論理ホスト名の条件を次に示します。