JP1/Integrated Management - Manager システム構築・運用ガイド

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3.2.2 JP1イベントのフィルタリング

JP1/IMおよびJP1/Baseでは,フィルタリングによって,必要なJP1イベントを選択して処理を行っています。例えば,管理が必要なJP1イベントだけをマネージャーホストに転送したり,ビューアーで表示するJP1イベントを選択するなどを行います。

JP1/IM,JP1/Baseでは次の図に示す5種類のフィルターを提供しています。これらを組み合わせることで,必要なJP1イベントを選択して処理できます。

図3-7 JP1/IM,JP1/Baseで提供するフィルター

[図データ]

各フィルターについて,JP1イベント発行元から適用されるフィルターの順に説明します。

<この項の構成>
(1) 転送フィルター
(2) イベント取得フィルター
(3) ユーザーフィルター
(4) 重要イベントフィルター
(5) 表示フィルター
(6) フィルターの条件定義

(1) 転送フィルター

転送フィルターは,JP1/Baseが別ホストに転送するJP1イベントを選択するためのフィルターです。このフィルターは,エージェントホストのJP1/Baseごとに一つだけ設定できます。

JP1/IMでは,各エージェントホストで発生したJP1イベントを,マネージャーホストに転送することで,各ホスト内で発生した事象を集中監視しています。このとき,転送するJP1イベントは,上位のマネージャーホストで管理が必要なものを選択して転送します。転送する対象のJP1イベントは,転送フィルターによって指定します。また,マネージャーホストの負荷を抑えたい場合や,ネットワークの伝送容量が少ない場合など,転送するJP1イベントの量を減らすときの調整に使う場合もあります。

転送フィルターは,各JP1/Baseにあります。転送設定ファイルは,各ホストで編集するか,またはマネージャーホストから転送設定情報を一括配布することで設定します。

(2) イベント取得フィルター

イベント取得フィルターは,JP1/IM - Manager(のイベントフロー制御サービス)がJP1/Baseから取得するJP1イベントを選択するためのフィルターです。このフィルターは,マネージャーホストごとに複数設定できます。ただし,適用できるのは一つだけです。

イベント取得フィルターを使って,JP1/IM - Managerで取得する必要があるJP1イベントを選択します。JP1/IM - Managerで取得する必要があるJP1イベントとは,次のものを指します。

例えば,JP1/IMのマネージャーホストで,正常イベントを大量に発行する製品を運用する場合(JP1/AJS2がジョブ正常実行のイベントを発行する場合など),システムの運用監視に必要なJP1イベントが埋もれてしまうおそれがあります。このような場合に,正常イベントを取得しないように選択するのが,イベント取得フィルターです。

イベント取得フィルターは,JP1/IM - Managerにあり,JP1/IM - Viewから設定できます。イベント取得フィルターは,JP1イベントの監視や自動アクション,監視オブジェクトの状態監視など,JP1/IMの機能すべてに影響を与えるフィルターです。

(備考)
  • JP1/SES形式のイベントをJP1/IM - Viewに表示したい場合は,イベント取得フィルターの設定でJP1/SESイベントを取得するように変更する必要があります。デフォルト設定では表示しません。
  • 旧バージョンでイベント取得フィルター(互換用)を使用していた場合,フィルターの位置・動作が異なります。詳細については,次を参照してください。
    参照先:「7.2.1(2)バージョン7のJP1/IM - Central Consoleからのバージョンアップについて
    参照先:「7.2.4(2)バージョン6のJP1/IMからのバージョンアップについて
  • イベント取得フィルターは,次のサービスにも適用されます。
    ・相関イベント発行サービス
    ・インシデント登録サービス
    上記二つのサービスは,デフォルトで起動しない設定となっていますが,起動するとイベントフロー制御サービスに適用されているフィルター内容が,そのまま適用されます。
    なお,イベント取得フィルター(互換用)を使用していた場合,上記二つのサービスはフィルターなしの状態で動作します。
    相関イベント発行サービスについては「3.2.3 相関イベントの発行」を参照してください。
    インシデント登録サービスの機能概要については「4.1 JP1/IM - Incident Masterとの連携」を,機能詳細についてはマニュアル「JP1/Integrated Management - Incident Master」を参照してください。

複数のイベント取得フィルターの設定について
イベント取得フィルターは,複数設定できます。
例えば,営業時間用と夜間用など,時間帯によって取得対象ホストやJP1イベントを変更したい場合に,営業時間用と夜間用のイベント取得フィルターを設定して切り替える運用ができます。

 

注意
イベント取得フィルターを切り替えた場合,JP1/IM - Managerは,イベント取得フィルター条件の変更を通知するJP1イベント(イベントID:00003F13,00003F14,00003F20)を発行します。これらのJP1イベントのメッセージには,「切り替え後のフィルター名」「切り替え前にJP1/IM - Managerが最後に受信したイベントの到着時刻とイベントDB内通し番号」が記載されます。
JP1イベント(イベントID:00003F13,00003F14,00003F20)は,メッセージに記載された到着時刻およびイベントDB内通し番号に該当するイベントの次にJP1/IM - Managerが受信したイベントから,切り替えたイベント取得フィルターが有効になったことを通知するイベントです。このため,イベント取得フィルターの切り替えとこれらのJP1イベントの発行契機は同じではありません。
例えば,イベント取得フィルターの切り替えの際に,大量にほかのJP1イベントが発行された場合,イベント取得フィルター条件の変更を通知するJP1イベント(イベントID:00003F13,00003F14,00003F20)が遅れて表示されることがあります。このような場合,切り替え後のイベント取得フィルターで取得した最初のJP1イベントは,[イベントコンソール]画面上で,変更を通知するこれらのJP1イベントよりも前に表示されます。
切り替え後のイベント取得フィルターで取得した,最初のJP1イベントを確認するには,JP1イベント(イベントID:00003F13,00003F14,00003F20)のメッセージで,切り替え前に最後に取得したJP1イベントを確認してください(それ以後表示されるJP1イベントが,切り替え後のイベント取得フィルターで取得したJP1イベントになります)。
JP1イベント(イベントID:00003F13,00003F14,00003F20)の詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager リファレンス 4. JP1イベント」を参照してください。ただし,イベント取得フィルターが互換モードで動作している場合は,これらのJP1イベントは発行されません。

(3) ユーザーフィルター

ユーザーフィルターは,JP1ユーザーごとに監視できるJP1イベントを選択(制限)するためのフィルターです。このフィルターは,マネージャーホストごとに複数設定できます。ただし,適用できるのは,JP1ユーザーごとに一つだけです。

JP1/IMでは,JP1/IM - Viewでマネージャーホストにログインし,システムの運用監視を行います。このとき,JP1ユーザーごとに監視する範囲を制限したり,または大規模なシステムを複数のJP1ユーザーで分割して監視する場合があります。このような場合に,ユーザーフィルターを使って,JP1ユーザーごとの[イベントコンソール]画面に表示するJP1イベントを選択できます。

ユーザーフィルターは,JP1/IM - Managerにあり,JP1/IM - Viewから設定できます。なお,ユーザーフィルターは,[イベントコンソール]画面の[イベント監視]ページ,[重要イベント]ページ,および[イベント検索]ページのすべてに影響を与えるフィルターです。

(4) 重要イベントフィルター

重要イベントフィルターは,管理が必要な重要なJP1イベントを選択するためのフィルターです。

このフィルターは,マネージャーホストごとに一つだけ設定できます。重要イベントフィルターの設定情報は,マネージャーホストで管理されるため,複数のビューアーホストから接続した場合でも,それぞれに同じ重要イベントフィルターが適用されます。

JP1イベントの中には,緊急の連絡や障害の報告など,重要でオペレーターの迅速な対処が求められるものがあります。JP1/IMでは,このようなJP1イベントを重要イベントと呼びます。

重要イベントは,専用画面である[イベントコンソール]画面の[重要イベント]ページで管理します。

重要イベントが発生すると,JP1/IM - Viewのアラームランプが点滅し,ユーザーに重要イベントが発生したことを通知してくれます。また,[重要イベント]ページで,重要イベントの対処状況を管理できます。

重要イベントフィルターのデフォルトは,重大度が「緊急(Emergency)」「警戒(Alert)」「致命的(Critical)」「エラー(Error)」のJP1イベントが重要イベントとして定義されています。

重要イベントフィルターのカスタマイズによって,重大度を選択できます。また,重要イベントに相当する重大度のJP1イベントのうち,イベントIDなどで特定のJP1イベントを重要イベントから除くこともできます。

重要イベントフィルターは,JP1/IM - Viewにあり,JP1/IM - Viewから設定できます。なお,重要イベントフィルターは,[イベントコンソール]画面の[重要イベント]ページに影響を与えるフィルターです。

(5) 表示フィルター

表示フィルターは,[イベントコンソール]画面の[イベント監視]ページに表示されるJP1イベントのうち,一時的に特定のJP1イベントだけを表示したい場合に使用します。このフィルターは,ビューアーホストの監視ユーザーごとに複数設定でき,簡単な操作で切り替えられます。

表示フィルターは,JP1/IM - Viewにあり,JP1/IM - Viewから設定できます。なお,表示フィルターは,[イベントコンソール]画面の[イベント監視]ページに影響を与えるフィルターです。

(6) フィルターの条件定義

各フィルターに定義するフィルター条件には,除外条件と通過条件の2種類があります。除外条件は,表示(取得)したくないJP1イベントの条件の集まりで,通過条件は,表示(取得)したいJP1イベントの条件の集まりです。また,除外条件と通過条件とは別に,イベント取得フィルターには,条件群の有効・無効を切り替えられる共通除外条件があります。フィルター条件の優先度は,優先される順に,共通除外条件,除外条件,通過条件となります。

除外条件,通過条件,および共通除外条件には,複数の条件を組み合わせた条件群を複数定義できます。条件群は一つ以上の条件の集まりで,定義した条件すべてが成立したときにその条件群は成立します(条件群内の条件同士の関係はAND条件)。

フィルターに除外条件または通過条件の条件群を複数定義した場合,除外条件の条件群のどれかに一致するJP1イベントは除外され,通過条件の条件群のどれかに一致するJP1イベントはフィルターを通過して,上位制御(「図3-7 JP1/IM,JP1/Baseで提供するフィルター」を参照)に渡されます(除外条件または通過条件内の条件群同士の関係はOR条件)。

図にすると次のようになります。

図3-8 フィルターによる他制御へのイベント送信

[図データ]

フィルターの条件定義は,JP1/Baseの転送フィルターを除き,JP1/IM - Viewを使って設定します。

(a) 共通除外条件(イベント取得フィルター限定)

共通除外条件は,イベント取得フィルターの一部であり,取得したくないJP1イベントの条件の集まりです。有効と無効を切り替えられるため,メンテナンス実施時に,イベント取得フィルターの通過条件および除外条件を変更することなく,メンテナンス対象ホストで発生するJP1イベントを一時的に除外できます。また,複数のイベント取得フィルターを切り替えて運用する場合でも,どのイベント取得フィルターに対しても有効となります。

共通除外条件は,イベント取得フィルター内で定義されている除外条件よりも優先され,除外条件は通過条件よりも優先されます。なお,共通除外条件を定義する場合は,JP1/IM - Manager上のJP1/Baseのバージョンが08-50以降が前提です。

イベント取得フィルターの共通除外条件,除外条件,および通過条件の関係を次の図に示します。

図3-9 イベント取得フィルターのフィルター条件の関係

[図データ]

(b) 除外条件

除外条件は,条件に一致したJP1イベントを除外するフィルター条件です。定義した条件群のどれかに一致するJP1イベントは,フィルターを通過しません。除外条件は,通過条件よりも優先されます。なお,除外条件を定義する場合は,JP1/IM - Manager上のJP1/Baseのバージョンが08-50以降が前提です。

除外条件は,イベント取得フィルター,ユーザーフィルター,重要イベントフィルター,表示フィルター,およびイベント検索で定義できます。

(c) 通過条件

通過条件は,条件に一致したものを表示(取得)するフィルター条件です。定義した条件群のどれかに一致するJP1イベントだけがフィルターを通過します。

通過条件は,イベント取得フィルター,ユーザーフィルター,重要イベントフィルター,表示フィルター,およびイベント検索で定義できます。

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