15.4.6 IPv6ホストに対応するシステム構成
JP1/IMは,IPv6ホストで稼働するJP1/Baseを管理できます。ホスト情報の収集,プロファイルの管理,コマンド実行,JP1イベントの表示など,JP1/Baseが稼働するIPv6ホストに対して,IPv4ホストで稼働するJP1/Baseと同様の管理ができます。
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IPv6ホスト
IPv6アドレス形式のIPアドレスだけを設定したホストを示します。
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IPv4ホスト
IPv4アドレス形式のIPアドレスだけを設定したホストを示します。
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IPv4・IPv6ホスト
IPv4アドレス形式のIPアドレスおよびIPv6アドレス形式のIPアドレスの両方を設定したホストを示します。
このように,IPv4ホスト,IPv6ホスト,およびIPv4・IPv6ホストが混在するネットワーク環境をIPv6環境と呼びます。
図に示すとおり,ビューアーホストとマネージャーホスト間は,IPv4アドレスで通信します。エージェントホストとマネージャーホスト間は,IPv4アドレスまたはIPv6アドレスで通信します。
IPv4アドレス形式のIPアドレスおよびIPv6アドレス形式のIPアドレスは,次のように表記します。
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IPv4アドレスの例
11.22.33.44
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IPv6アドレスの例
0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
IPv4射影アドレスおよびIPv4互換アドレスは,指定できません。また,機能によってIPv6アドレスの省略形式は,指定できません。IPv6アドレスの省略形式を指定できる機能については,「15.4.6(3) IPv6環境での対応の可否」を参照してください。
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11.22.33.44をIPv4射影アドレスで表記した例
::ffff:11.22.33.44
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11.22.33.44をIPv4互換アドレスで表記した例
::11.22.33.44
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2012:0007:0008:0000:0000:0000:000a:000bを省略した形式の例
2012:7:8::a:b
- 〈この項の構成〉
(1) IPv6環境のシステム構成を監視する場合の前提条件
マネージャーホストがどのネットワーク環境かによって前提条件が異なります。
なお,クラスタ構成の場合は,実行系と待機系のシステム構成を同一にしてください。
(a) マネージャーホストがIPv4ホストの場合
マネージャーホストがIPv4ホストの場合は,IPv6ホストおよびIPv4・IPv6ホストを管理対象にできません。
(b) マネージャーホストがIPv6ホストの場合
マネージャーホストがIPv6ホストの場合は,サポートしていません。
(c) マネージャーホストがIPv4・IPv6ホストの場合
- マネージャーホスト
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IPv4・IPv6ホストである
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JP1/IM - Managerのバージョンが10-00以降である
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JP1/Baseのバージョンが10-00以降で,jp1hosts2情報を定義している
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JP1/Baseのjp1hosts2定義には,マネージャーホストのIPv4アドレスおよびIPv6アドレスを定義している
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OSがWindows Server 2022,Windows Server 2019,Windows Server 2016,またはLinuxである
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- ビューアーホスト
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IPv4ホストまたはIPv4・IPv6ホストである
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IPv4・IPv6ホストで稼働するJP1/IM - Viewの場合,IPv4アドレスを使用する
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- エージェントホスト
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IPv4ホスト,IPv6ホスト,またはIPv4・IPv6ホストである
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JP1/Baseのバージョンが10-00以降である
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IPv6ホストまたはIPv4・IPv6ホストで稼働するJP1/Baseの場合,jp1hosts2情報を定義している
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IPv6ホストまたはIPv4・IPv6ホストで稼働するJP1/Baseの場合,OSがWindows Server 2022,Windows Server 2019,Windows Server 2016,またはLinuxである
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- リモートの監視対象ホスト,仮想化システム構成
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IPv4ホストである
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JP1/IM - Managerが他製品と連携している場合,連携製品がIPv4ホストの場合だけ連携できます。IPv6ホストの場合は連携できません。ただし,BJEXまたはJP1/ASと連携して応答待ちイベントを管理する場合は,連携製品がIPv6ホストでも連携できます。
(2) IPv6環境を管理する場合のJP1/IM - Managerのシステムの最大構成
1台のJP1/IM - Managerが管理できるエージェントホストは,エージェントホストが,IPv4ホスト,IPv6ホストまたはIPv4・IPv6ホストに関係ありません。
システムの最大構成については,「付録D.4(1) JP1/IM - Managerの制限値一覧」を参照してください。
(3) IPv6環境での対応の可否
ここでは,JP1/IM - Managerのバージョンが10-00以降の場合に,IPv6環境に対応する機能を説明します。
(a) ログイン
接続ホスト名に,IPv6アドレスを指定できません。IPv4アドレスまたはIPv4アドレスを名前解決できるホスト名を指定してください。
(b) イベント監視
発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)または送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)がIPv6アドレスのJP1イベントを表示,指定できます。
- イベントのフィルタリング
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フィルタリングするJP1イベントの条件に,IPv6アドレスの発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)を指定できます。指定できるフィルターは,イベント取得フィルター(拡張モードの共通除外条件)です。IPv6アドレスは,次に示すとおり,0〜9およびa〜fの4桁の16進数でイベント条件に指定できます。
(例)0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
英字部分を英大文字にしたり,IPv4射影アドレス,IPv4互換アドレス,およびIPv6アドレスの省略形式を指定したりはできません。
また,[共通除外条件設定(拡張)]画面で[選択イベント条件入力]ボタンをクリックすると,イベント一覧で選択しているJP1イベントの発行元IPアドレスがイベント条件に自動的に設定されます。ただし,JP1/IM - Viewのバージョンが10-00より前の場合,共通除外条件の発行元IPアドレスがIPv6アドレスのときは,[共通除外条件設定(拡張)]画面で[選択イベント条件入力]ボタンをクリックしても,発行元IPアドレスは自動的に設定されません。手動でIPv6アドレスをフィルターの条件に指定してください。また,JP1/IM - Viewのバージョンに関係なく,手動の場合は,イベント条件の指定形式に従って指定してください。
なお,IPv4アドレスを管理する場合と同様に,送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)は,フィルターの条件に指定できません。
- イベントの詳細表示
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[イベント詳細]画面および[イベント詳細(編集)]画面の[イベント属性]に,IPv6アドレスの発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)を表示できます。IPv6アドレスは,次に示すとおり,0〜9およびa〜fの4桁の16進数で表示されます。
(例)0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
なお,IPv4アドレスを管理する場合と同様に,送信先IPアドレスは表示されません。JP1/IM - Viewが10-00より前の場合,発行元IPアドレスおよび送信先IPアドレスがIPv4またはIPv6アドレスに関係なく,[イベント属性]に表示されません。
- イベントガイドの表示
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JP1イベントを比較する条件として,発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)または送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)にIPv6アドレスを指定できます。IPv4アドレスを管理する場合と同様に,イベントガイドメッセージの変数として発行元IPアドレスおよび送信先IPアドレスは指定できません。
- イベント検索
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検索ホスト名にIPv6アドレスやIPv6アドレスを名前解決できるホスト名を指定できます。
検索ホスト名には,次に示すIPv6アドレスを指定できます。
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0〜9およびa〜fの4桁の16進数
(例)0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
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0〜9およびA〜Fの4桁の16進数
(例)0011:2233:4455:6677:8899:AABB:CCDD:EEFF
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IPv6アドレスの省略形式
(例)2012:7:8::a:b
業務グループの参照・操作制限を使用している場合,IM構成管理で管理しているホスト名(ドメイン名)を指定してください。また,検索ホストにマネージャーホストを指定する場合は,マネージャーホストのホスト名またはIPv4アドレスを指定してください。
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- イベントのレポート出力
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発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)または送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)がIPv6アドレスのJP1イベントをcsvファイルに出力できます。IPv6アドレスは,次に示すとおり,0〜9およびa〜fの4桁の16進数でcsvファイルに出力されます。
(例)0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
レポートの出力項目およびイベント条件に,IPv4アドレスを管理する場合と同様に,発行元IPアドレスおよび送信先IPアドレスを指定できません。
- 対処状況の変更
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jcochstatコマンドで対処状況を変更するときに,-hオプションに,IPv6アドレスを指定できません。
- 相関イベントの発行
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相関イベントの発行元IPアドレスおよび送信先IPアドレスは,マネージャーホストのIPv4アドレスとなります。
(c) コマンド実行および自動アクション
IPv6ホストの管理対象ホストに対して,管理対象ホスト上でコマンド実行や自動アクションを実行できます。実行ホスト名には,次に示すIPv6アドレスを指定できます。
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0〜9およびa〜fの4桁の16進数
(例)0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
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0〜9およびA〜Fの4桁の16進数
(例)0011:2233:4455:6677:8899:AABB:CCDD:EEFF
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IPv6アドレスの省略形式
(例)2012:7:8::a:b
JP1/Baseで指定できない値を指定した場合は,実行が失敗します。なお,業務グループの参照・操作制限を使用している場合,IM構成管理で管理しているホスト名(ドメイン名)を指定してください。
- 自動アクションの実行条件
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自動アクションの実行条件には,発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)を指定できます。IPv4アドレスを管理する場合と同様に,送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)は指定できません。発行元IPアドレスは,次に示すとおり,0〜9およびa〜fの4桁の16進数で指定してください。英字部分は,英小文字で指定してください。
(例)0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
英字部分を英大文字にしたり,IPv4射影アドレス,IPv4互換アドレス,およびIPv6アドレスの省略形式を指定したりはできません。
- コマンド実行および自動アクションのイベント情報の引き継ぎ
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発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)がIPv6アドレスのJP1イベントの属性情報をコマンドの実行内容に引き継げます。引き継がれる変数は,EVIPADDR(発行元IPアドレス)およびEVBASE(イベント基本情報)です。IPv6アドレスは,次に示すとおり,0〜9およびa〜fの4桁の16進数でコマンドの実行内容に出力されます。
(例)0011:2233:4455:6677:8899:aabb:ccdd:eeff
送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)の属性情報は,IPv4アドレスを管理する場合と同様に,引き継げません。
- イベント発行元ホスト名の取得方法
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イベント発行元ホスト名の取得方法として,発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)からイベント発行元ホスト名を求められます。発行元IPアドレスがIPv6アドレスの場合も,同様です。
イベント発行元ホスト名の取得方法については,マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager コマンド・定義ファイル・APIリファレンス」の「自動アクション環境定義ファイル(action.conf.update)」(2. 定義ファイル)を参照してください。
なお,発行元IPアドレスは,転送すると値が保障されません。詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」の基本属性の説明を参照してください。
(d) IM構成管理
エージェントホストの場合,IPv6ホストを管理できます。また,IPv6ホストのホスト情報を収集・管理したり,JP1/Baseのプロファイルを管理したりできます。
リモート監視対象ホストの場合,IPv6ホストを管理できません。
(e) 連携製品
- 連携製品のモニター起動
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発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)または送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)がIPv6アドレスのJP1イベントから連携製品のモニターを起動できます。ただし,IPv4・IPv6ホストが混在するシステムを監視する場合は,連携製品のアプリケーションの仕様を確認してください。なお,モニター画面呼び出し定義ファイルのサブキー定義および呼び出しインターフェース定義には,発行元IPアドレスおよび送信先IPアドレスを指定できません。モニター画面呼び出し定義ファイルについては,マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager コマンド・定義ファイル・APIリファレンス」の「自動アクション環境定義ファイル(action.conf.update)」(2. 定義ファイル)を参照してください。
- インシデント登録
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マネージャーホストのイベントDBまたは統合監視DBに登録されている発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)または送信先IPアドレス(B.DESTIPADDR)がIPv6アドレスのJP1イベントをJP1/Service Supportに登録できます。ただし,発行元IPアドレスおよび送信先IPアドレスの属性情報をJP1/Service Supportに登録するインシデントに設定できません。
(f) WWWブラウザー
WWWブラウザーの接続ホスト名に,IPv6アドレスは指定できません。
(g) メール通知機能
メール通知機能と通信するメールサーバのIPアドレスに,IPv6アドレスは指定できません。
(4) システム構成変更時の確認事項
(a) マネージャーホストをIPv4ホストからIPv4・IPv6ホストに変更するときの確認事項
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マネージャーホストのOSが,IPv6アドレスをサポートしているOSか確認してください。
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マネージャーホストのJP1/Baseが,IPv6アドレスをサポートしているか確認してください。
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JP1/IM - Managerにログインするとき,ビューアーホストで接続先ホストのIPv4アドレスを取得できるように,接続先ホストを見直してください。
(b) 監視対象ホストをIPv4ホストからIPv6ホストに変更するときの確認事項
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監視対象ホストのOSが,IPv6アドレスをサポートしているOSか確認してください。
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監視対象ホストのJP1/Baseが,IPv6アドレスをサポートしているか確認してください。
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イベントをフィルタリングする場合,イベント取得フィルター(拡張モードの共通除外条件)に発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)を指定しているときは,IPv6アドレスでフィルタリングする必要があるか共通除外条件の設定を確認してください。
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イベントを検索する場合,IPv6アドレスの検索ホストとマネージャーホスト間でIPv6プロトコル通信ができるか確認してください。
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対処状況を変更する場合,jcochstatコマンドを実行するホストで,接続先ホストのIPv4アドレスを取得できるように,接続先ホストを見直してください。
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コマンド実行および自動アクションの実行内容に発行元IPアドレス(B.SOURCEIPADDR)の属性情報を引き継いでいる場合は,IPv6アドレスが属性情報として引き継がれても問題ないか見直してください。
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自動アクションの実行条件に,発行元IPアドレスの条件を指定している場合は,IPv6アドレスでフィルタリングする必要があるか実行条件を見直してください。
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イベント発行元ホスト名の取得方法で「local」を指定している場合,IPv6アドレスのホスト名の名前解決をする必要があるか確認してください。
(c) JP1/Baseの設定
見直し項目については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
(5) システム構成の変更
(a) マネージャーホストをIPv4ホストからIPv4・IPv6ホストに変更する
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JP1/Base
jp1hosts情報からjp1hosts2情報へ移行してください。手順の詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
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JP1/IM - Manager
変更する必要はありません。
(b) 監視対象ホストをIPv4ホストからIPv6ホストに変更する
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監視対象ホストのJP1/Base
JP1/Baseのバージョンを10-00以降に上書きインストールしてください。
そのあと,jp1hosts情報からjp1hosts2情報へ移行してください。手順の詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
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マネージャーホスト
マネージャーホストでも,IPv6ホストを使用できるように設定する必要があります。手順の詳細については,「15.4.6(5)(a) マネージャーホストをIPv4ホストからIPv4・IPv6ホストに変更する」を参照してください。