JP1/Integrated Management - Manager システム構築・運用ガイド

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3.3.9 統合スコープの仕組み

ここでは,統合スコープの動作の仕組みについて説明します。

統合スコープは仕組みを意識しなくとも利用できるよう設計されていますが,設定をカスタマイズする場合や,高度なシステム設計をする場合には,仕組みを理解しておくことをお勧めします。

<この項の構成>
(1) 統合スコープの仕組みの概要
(2) ホスト情報
(3) 統合スコープによるシステム監視の仕組み
(4) 監視ツリーの自動生成の仕組み
(5) 統合スコープのデータベース

(1) 統合スコープの仕組みの概要

統合スコープは,次のような機能で構成されています。

図3-57 統合スコープの仕組みの概要

[図データ]

(2) ホスト情報

JP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)は,ホスト情報(IPアドレスと対応する実ホスト名,エイリアス名)を,独自に管理するホスト情報DBを持っています。

JP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)が行う処理は,各エージェントホストで発生したJP1イベントを管理したり,定義情報をもとに監視ツリーを自動生成するなどです。このため,各エージェントホストのホスト名やIPアドレスを正しく認識して,各情報を正確に対応づけることが必要です。

ホスト情報DBは,他製品の認識するホスト名とJP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)の認識するホスト名との不一致を防ぐために,独自のホスト情報DBにホスト名の対応づけを格納して処理ができます。

なお,ホスト情報DBに登録されていないホスト情報についてはJP1/Baseのjp1hosts情報,OSのhostsファイル,DNSなどの設定を参照します。

ホスト情報について
  • ホスト情報ファイルの書式
    参照先:マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager リファレンス ホスト情報ファイル(jcs_hosts)」(3. 定義ファイル)
  • ホスト情報を設定や参照するコマンド
    参照先:マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager リファレンス jcshostsimport」(2. コマンド)
    参照先:マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager リファレンス jcshostsexport」(2. コマンド)

 

参考
ホスト名を監視オブジェクトの個別条件に指定する場合,「ホスト名比較」を選択することをお勧めします(参照先:マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager リファレンス 1.4.11 [状態変更条件設定]画面」)。
「と一致する」を選択した場合,JP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)は,受信したJP1イベントの属性値の文字列と個別条件に指定した文字列が完全に一致したときだけ,個別条件に一致したと判断します。
これに対し「ホスト名比較」を選択した場合,JP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)は,保持するホスト情報を参照して比較を行います。
例えば,JP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)のホスト情報DB,またはJP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)が動作するホストのDNS,hostsファイルなどに以下の定義がされていたと仮定します。
111.111.111.111 server1 webserver
上記の環境で「と一致する」を指定した場合と「ホスト名比較」を指定した場合では以下の違いが発生します。

【個別条件に「E.OBJECT_ID」:「server1」「と一致する」を指定した場合】
E.OBJECT_IDがserver1のJP1イベント:個別条件に一致する。
E.OBJECT_IDがwebserverのJP1イベント:個別条件に一致しない。
E.OBJECT_IDが111.111.111.111のJP1イベント:個別条件に一致しない。

【個別条件に「E.OBJECT_ID」:「server1」「ホスト名比較」を指定した場合】
E.OBJECT_IDがserver1のJP1イベント:個別条件に一致する。
E.OBJECT_IDがwebserverのJP1イベント:個別条件に一致する。
E.OBJECT_IDが111.111.111.111のJP1イベント:個別条件に一致する。

(3) 統合スコープによるシステム監視の仕組み

統合スコープは,JP1イベント(システムで発生した事象)を解析し,監視ツリー上の対応する位置を判定して,アイコンの状態を変化させることで,システムで発生した事象をビジュアルに表示します。

このときの処理の流れは,次のようになります。

図3-58 監視オブジェクトの状態変更処理の流れ

[図データ]

図中の番号に従って説明します(図中の丸付き番号は,次に示す番号にそれぞれ対応しています)。

  1. エージェントホストでJP1イベントが発生し,イベントサービスに登録されます。
  2. イベントサービスに登録されたJP1イベントは,上位のマネージャーホストへ転送されます。転送する上位ホストは,構成管理機能の構成定義によって決められます。
    マネージャーホストでは,イベントフロー制御サービスがイベントサービスからJP1イベントを取得します。イベントフロー制御サービスは,JP1/IMで処理するJP1イベントを一手に扱う機能です(JP1イベントの取得,JP1/IM - Manager内でのJP1イベント制御の仕組みについては「3.2.1(3)JP1/IM - Manager内部のJP1イベント制御の仕組み」を参照してください)。
  3. そして,JP1/IM - Manager(セントラルスコープサービス)にJP1イベントが渡されます。セントラルスコープサービスでは,JP1イベントを解析し,重大度の判定や,監視ツリー上の位置との対応づけを処理します。
    なお,監視オブジェクトDBによって管理します。
  4. JP1/IM - Viewのセントラルスコープ・ビューアーによって,[監視ツリー]画面や[ビジュアル監視]画面の上に,システムの事象がビジュアルに表示されます。

このように,システムの各エージェントホストで動作するJP1イベントを,JP1/IMマネージャーへと集約し,システムをビジュアル化した監視画面に表示します。

(4) 監視ツリーの自動生成の仕組み

監視ツリーの自動生成の処理は,選択したテンプレートの種類によって変わります。業務指向ツリー,サーバ指向ツリーを選択した場合とシステム構成ツリーを選択した場合に分けて説明します。

(a) 業務指向ツリー,サーバ指向ツリーを選択した場合の処理の流れ

監視ツリーの自動生成で,業務指向ツリー,またはサーバ指向ツリーのテンプレートを選択した場合の処理の流れを次の図を例に説明します。

図3-59 監視ツリーの自動生成の処理の流れ(業務指向ツリー,サーバ指向ツリー選択時)

[図データ]

図中の番号に従って説明します(図中の丸付き番号は,次に示す番号にそれぞれ対応しています)。

  1. ビューアーホストの画面からマネージャーホスト上のJP1/IM - Managerに監視ツリーの自動生成を指示します。自動生成の指示を受けたJP1/IM - Managerは,マネージャーホスト上のJP1/Baseに対し,監視ツリーの構成要素となる監視オブジェクト(定義情報)を収集するよう指示を出します。
  2. 収集指示を受けたマネージャーホスト上のJP1/Base(定義収集・配布機能)は,構成定義を参照して,管理対象となっているJP1/Baseに対して収集指示を出します。
  3. 収集指示を受けたエージェントホスト上のJP1/Baseは,同ホスト内のJP1/Baseの定義収集・配布機能に対応した連携製品に対して定義情報を渡すよう要求を出します。
  4. 要求を受けた連携製品は,定義情報をエージェントホスト上のJP1/Baseに渡します(この定義情報が監視オブジェクトの元データとなります)。
  5. エージェント上のJP1/Baseは,渡された定義情報をマネージャーホスト上のJP1/Baseに転送します。
  6. マネージャーホスト上のJP1/Baseは,受け取った定義情報をJP1/IM - Managerに渡します。JP1/IM - Managerは,渡された定義情報を監視オブジェクトとして整理し直します。
    なお,この時点ではJP1/IM - Managerが管理するオブジェクトDBには反映されません。
  7. JP1/IM - Managerは,整理し直した監視オブジェクトの情報をJP1/IM - Viewに渡します。JP1/IM - Viewの画面には,渡された監視オブジェクトの情報がツリー形式で表示されます。
    ツリー構成および監視オブジェクトの定義に問題がなければ,JP1/IM - Viewからマネージャーホストに反映することで,そのまま監視できます。手を加える場合は,JP1/IM - View上でツリー構成および監視オブジェクトの定義を変更したあと,マネージャーホストに反映します(変更については,「3.3.4 監視ツリーの編集」を参照)。

(b) システム構成ツリーを選択した場合の処理の流れ

監視ツリーの自動生成で,システム構成ツリーのテンプレートを選択した場合の処理の流れを次の図を例に説明します。

図3-60 監視ツリーの自動生成の処理の流れ(システム構成ツリー選択時)

[図データ]

図中の番号に従って説明します(図中の丸付き番号は,次に示す番号にそれぞれ対応しています)。

  1. ビューアーホストの画面からマネージャーホスト上のJP1/IM - Managerに監視ツリーの自動生成を指示します。自動生成の指示を受けたJP1/IM - Managerは,マネージャーホスト上のJP1/Baseに対し,監視ツリーの構成要素となる監視オブジェクト(定義情報)を収集するよう指示を出します。
  2. 収集指示を受けたマネージャーホスト上のJP1/Base(定義収集・配布機能)は,システム情報管理サーバ上のJP1/Baseに対して収集指示を出します
     
    注※ JP1/IM - Central Information Masterは,JP1/IMのシステム構成上,JP1/IM - Managerインストールホストよりも上位のマネージャーホストやJP1/IM - Managerの監視範囲と異なる,別システムに導入されることがあります。
    このため,ほかの連携製品から定義情報を収集する場合と異なり,JP1/Baseの構成管理が持つホスト情報を参照しません。どこから定義情報を収集するかを決めるため, JP1/IM - ManagerでJP1/IM - Central Information Masterのホスト指定が必要です(JP1/IM - Central Information Master連携時の注意は「6.2.1(1)注意事項」参照)。
  3. 収集指示を受けたシステム情報管理サーバ上のJP1/Baseは,同ホスト内のJP1/IM - Central Information Masterに対して定義情報を渡すよう要求を出します。
  4. 要求を受けたJP1/IM - Central Information Masterは,定義情報を同ホスト内のJP1/Baseに渡します(この定義情報が監視オブジェクトの元データとなります)。
  5. システム情報管理サーバ上のJP1/Baseは,渡された定義情報をマネージャーホスト上のJP1/Baseに転送します。
  6. マネージャーホスト上のJP1/Baseは,受け取った定義情報をJP1/IM - Managerに渡します。JP1/IM - Managerは,渡された定義情報を監視オブジェクトとして整理し直します。
    なお,この時点ではJP1/IM - Managerが管理するオブジェクトDBには反映されません。
  7. JP1/IM - Managerは,整理し直した監視オブジェクトの情報をJP1/IM - Viewに渡します。JP1/IM - Viewの画面には,渡された監視オブジェクトの情報がツリー形式で表示されます。
    ツリー構成および監視オブジェクトの定義に問題がなければ,JP1/IM - Viewからマネージャーホストに反映することで,そのまま監視できます。手を加える場合は,JP1/IM - View上でツリー構成および監視オブジェクトの定義を変更したあと,マネージャーホストに反映します(定義の変更については,「3.3.4 監視ツリーの編集」を参照)。

(5) 統合スコープのデータベース

統合スコープのデータベースには,監視オブジェクトDBと,ホスト情報DBがあります。

統合スコープのデータベースの情報は,次の表に示すコマンドにより取得,反映ができます。

表3-25 データベース情報の取得,反映コマンド

コマンド名 使用目的
jcsdbexportコマンド 監視オブジェクトDBの情報取得
jcsdbimportコマンド 監視オブジェクトDBへの情報反映
jcshostsexportコマンド ホスト情報DBの情報取得
jcshostsimportコマンド ホスト情報DBへの情報反映

jcsxxexportコマンドを利用してDB情報を確認したり,jcsxxexportコマンド,jcsxximportコマンドを併用して,ほかのサーバに環境を移行したりできます。

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