JP1/Integrated Management - Manager システム構築・運用ガイド

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3.3.2 監視ツリー

ここでは,監視ツリーについて説明します。

<この項の構成>
(1) 監視ツリーの構成
(2) 監視ノードの状態
(3) 状態変更条件
(4) イベント発行条件

(1) 監視ツリーの構成

監視ツリーは,監視オブジェクトと監視グループ,および仮想ルートノードから構成されます。

表3-18 監視ツリーの構成要素

項目 説明
監視オブジェクト 統合スコープによって監視している対象です。
監視オブジェクトには,監視する条件として,監視対象が特定の条件になった場合にアイコンをエラー状態にするなどの条件が設定されています。
監視対象に関連したJP1イベントを受信すると,監視条件に一致するか判定し,条件が一致するとアイコンの状態を変化させます。
監視グループ 監視オブジェクトをグループ化するためのものです。
監視グループには,監視オブジェクトまたは監視グループを含めることができます。
上位の監視グループに含まれる下位の監視オブジェクトまたは監視グループがJP1イベントを受けて状態が変化すると,上位の監視グループも状態が変化します。
仮想ルートノード 監視ツリーの監視範囲設定を有効にしたときにだけ表示されます(詳細については「3.3.4(3)監視ツリーの監視範囲設定」を参照してください)。
例えば,監視ツリーの監視範囲設定が有効になった状態で,JP1ユーザー「jp1ope」がJP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)にログインすると,次の図のように仮想ルートノードが監視ツリーの最上位に表示されます。
[図データ]
上図のように仮想ルートノードには,人を模したアイコンが表示されます。また,仮想ルートノード名は,JP1/IM - Manager(JP1/IM - Central Scope)にログインしたときのJP1ユーザー名となります。
仮想ルートノードは,監視グループや監視オブジェクトと異なり,情報の編集([プロパティ]画面での編集)や状態の変更といった操作ができません(仮想ルートノード下の監視ノードの状態が変化すると,仮想ルートノードの状態もそれに合わせて変化しますが,仮想ルートノードの状態を直接変更することはできません。下位の監視ノードの状態を変更する必要があります)。

監視オブジェクトと監視グループを総称して監視ノードと呼びます。

(2) 監視ノードの状態

監視オブジェクトおよび監視グループは,監視対象で発生したJP1イベントをもとにして,監視対象の状態を管理します。

監視ノードには次の2種類の状態があります。

監視ノードは,初めは「初期状態」と呼ぶ状態です。初期状態とは,監視ノードがどのような状態か情報を持っていないことを意味しています。

監視状態が「監視」になっている監視オブジェクトで,例えば,障害が発生して重大度が緊急のJP1イベントが発行された場合,そのJP1イベントをJP1/IM - Managerが受信すると, 監視オブジェクトの状態を変更します。どのようなときに監視オブジェクトの状態を変更するかは,状態変更条件と呼ぶ条件によって決まります。

監視オブジェクトの状態が変更されると,その状態は上位の監視グループへと順に伝わります。監視グループの状態より,伝わった状態の優先度が高い場合や,下位の監視ノードの状態が監視グループの状態変更条件に合致した場合は,監視グループの状態が変化します。

監視状態が「非監視」の監視オブジェクトの場合は,障害などのJP1イベントを受信しても,監視ノードの状態は変更されません。監視状態を「監視」に変更すると,監視対象からのJP1イベントによって,監視ノードの状態が変わるようになります。なお,監視ツリーを自動生成すると,監視ノードは「非監視」の状態になっています。

(備考)

(3) 状態変更条件

状態変更条件は,監視ノードの状態を変更する条件です。監視オブジェクトと監視グループの両方で設定できますが,それぞれの状態変更条件には違いがあります。

監視オブジェクトの状態変更条件
監視オブジェクトの状態を,どのようなJP1イベントを受信したときに変更するか(例:重大度が警告である特定のJP1イベントを受信したら,状態を警告にする)を決める条件です。

監視グループの状態変更条件
監視グループの状態を,下位の監視ノードがどのような状態になったときに変更するか(例:下位の三つの監視ノードのうち,二つがエラーになったときに,状態をエラーにする)を決める条件です。
条件を設定していない場合は,下位監視ノードの状態の中でいちばん優先度の高い状態になります。

以降では,監視オブジェクト,監視グループそれぞれの状態変更条件について説明します。

(a) 監視オブジェクトの状態変更条件

監視オブジェクトの状態変更条件は,次のようになっています。

図3-33 監視オブジェクトの状態変更条件

[図データ]

監視ツリーを構成している監視オブジェクトは,それぞれ状態変更条件を持っています。JP1/IM - Managerは,JP1イベントを受信すると,各監視オブジェクトの状態変更条件を確認します。状態変更条件に合致し,かつ,現在の状態より優先度の高い状態になる監視オブジェクトがあれば,その監視オブジェクトの状態を変更します。これによって,発生したJP1イベントと,対応する監視ツリー上の監視オブジェクトを対応づけて,システムの状態をビジュアルに表示します。

監視オブジェクトの状態変更条件は,次のように,条件名,状態,共通条件,個別条件によって構成されます。JP1イベントに対する条件は,共通条件と個別条件に分かれ,それぞれ複数の条件を指定できます。

システム監視オブジェクトの例によって,具体的な状態変更条件の設定内容を説明します。

図3-34 システム監視オブジェクトの例「AJS2監視」(一部抜粋)

[図データ]

この図はマニュアル「JP1/Integrated Management - Manager リファレンス 6. システム監視オブジェクト一覧(統合スコープ用)」から,JP1/AJS2の「AJS2監視」システム監視オブジェクトの説明を一部抜粋したものです。

図の例では,「ジョブネット警告のイベント(AJS2)」という状態変更条件が定義されています。まず,「AJS2監視」の監視オブジェクトに共通する条件(共通条件)として,イベントIDが4108(ジョブネットが警告終了したという意味です)が発生した時に,監視オブジェクトの状態を「警告」することが定義されています。また,監視オブジェクトごとに設定される個別条件として,監視オブジェクトが持つ基本情報(監視対象を特定するための情報)に対応した条件が指定されており,これによって監視ツリー上のどの監視オブジェクトの状態を変更するかを特定します。

このように,監視オブジェクトの種類(製品別など)に共通して使う共通条件と,個々の監視オブジェクトを特定するための個別条件を組み合わせて,監視オブジェクトの状態変更が行われます。

監視オブジェクトの状態変更条件をメモリーに常駐させる機能
JP1/IM - Managerは,JP1イベントを受信すると,各監視オブジェクトの状態変更条件が各監視オブジェクトの状態変更条件と合致しているかどうかの確認を行います。一度に大量のJP1イベントを受信すると,その分ディスクアクセス回数が増えるため,監視オブジェクトの状態に反映されるまでに時間が掛かることがあります。監視オブジェクトの状態変更条件をメモリーに常駐させる機能を有効にすることで,イベント受信時の統合スコープの処理での,ディスクアクセス回数を削減できます。
この機能を有効にした場合,監視オブジェクトの状態変更条件が,すべてメモリー上に展開されます。そのため,この機能を有効にする場合は,その分のメモリーを確保する必要があります。メモリー所要量を見積もった上,十分なメモリーが確保できる場合は,この機能を設定することを推奨します。
メモリー所要量の見積もり式については,JP1/IM - Managerのリリースノートを参照してください。機能の設定方法については,「12.7.5 状態変更条件メモリー常駐機能の設定」を参照してください。

(b) 監視グループの状態変更条件

監視グループは監視ノードをグループ化しています。このため,グループ化している監視ノードの状態によって,監視グループの状態も変化します。監視グループの状態変更条件は,次のようになっています。

図3-35 監視グループの状態変更条件

[図データ]

JP1/IM - Managerが,特定のJP1イベントを受信し,監視オブジェクトの状態を変更すると,その状態は上位の監視グループに伝わっていきます。デフォルトの設定では次のような動作をします。

図3-36 監視グループの状態変更の動作(デフォルト設定時)

[図データ]

上記の図に示したとおり,監視グループは下位の監視ノードの状態の中でいちばん優先度の高い状態に変わります。したがって,例えば最上位の監視ノードが「エラー」になっているときは,下位のすべての監視ノードに「エラー」より優先度の高い状態の監視ノードはありません。

デフォルトの設定でも問題はありませんが,特殊な条件下のシステム(ロードバランサーを用いて負荷分散しているシステムなど)での運用の場合は,監視グループの状態変更条件を定義することで,より詳細な監視ができるようになります。

監視グループの状態変更条件は,次のように,条件名,状態,子ノードの状態,比較条件によって構成されます。

このように,条件名,状態,子ノードの状態,比較条件を設定することで,監視グループの状態変更をカスタマイズできます。

また,監視グループの状態変更条件を定義すると,次のように監視グループのアイコン表示が変化します。アイコンによって,状態変更条件が定義されているかどうかを識別できます。

図3-39 アイコン表示の変化(例)

[図データ]

なお,ビジュアルアイコンには「P」は付加されません。ツリー表示領域のアイコンで識別してください。

(4) イベント発行条件

監視ノードは,状態が変わったときにJP1イベントを発行できます。

イベント発行条件には,監視ノードが,どの状態に変わったときにJP1イベントを発行するかを定義します。ただし,状態が「初期状態」に変わったときには,JP1イベントを発行できません。

発行されるJP1イベントは,イベントID=00003FB0 です。

このJP1イベントの詳細は以下のとおりです。この情報は「JP1/Integrated Management - Manager リファレンス 4. JP1イベント」から引用したものです。

表3-20 イベントID:00003FB0の詳細(リファレンスから引用)

属性種別 項目 属性名 内容
基本属性 発行元イベントサーバ名 SOURCESERVER イベントが発行されたイベントサーバ名。
メッセージ MESSAGE KAVB7900-I 監視ノード名の状態が状態から状態に変わりました。
拡張属性 共通情報 重大度 SEVERITY Information
プロダクト名 PRODUCT_NAME /HITACHI/JP1/IM/SCOPE
オブジェクトタイプ OBJECT_TYPE SERVICE
オブジェクト名 OBJECT_NAME IM_CS
事象種別 OCCURRENCE STATUS_CHANGE
固有情報 監視ノードID MON_NODE_ID 監視ノードのID
監視ノード種別 MON_NODE_NAME 監視ノードの名称
監視ノードの状態※1 MON_NODE_STATUS 監視ノードのStatusID
状態変更の元となったJP1イベントの情報※2 属性名 属性値(基本属性にはJCS_B_が,拡張属性にはJCS_E_の接頭字が付加される)。

注※1 「監視ノードの状態(E.MON_NODE_STATUS)」には,JP1イベントを発行した監視ノードの状態が,StatusIDと呼ぶ次の数値により格納されます。

例えば,監視ノードの状態が緊急に変化した時に発行されたJP1イベントは,監視ノードの状態(E.MON_NODE_STATUS)=800になります。

注※2 「状態変更の元となったJP1イベントの情報」は,JP1/IM - Viewで確認することはできません。なお,「状態変更の元となったJP1イベントの情報」には,状態変更の契機となったJP1イベントの情報が属性名-属性値の組み合わせですべて格納されます。この結果,00003FB0がJP1イベントの最大値(10,000バイト)を超えた場合,最大値を超えない分だけ,状態変更の契機となったJP1イベントの情報を格納します。また,拡張属性が100個を超える場合も,100個以内に収まる範囲内でJP1イベントの情報を格納します。属性名が26文字までの属性が格納されます。27文字以上の属性名の属性は格納されません。


(ヒント)監視ノードごとの自動アクションをするには

監視ノードの状態変更によって,自動アクションをするには,次のようにします。

このとき,監視ノードの状態を変更する契機になったJP1イベントの情報は,表の「状態変更の元となったJP1イベントの情報」にあるように,イベントID=00003FB0のJP1イベントに含まれています。例えば,元のイベントのメッセージ(B.MESSAGE)は,E.JCS_B_MESSAGEという属性名で使用できます。

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