JP1/Automatic Job Management System 2 解説

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5.1.1 キューとエージェント

ここでは,キューとエージェントを使ったジョブ実行の仕組みを説明します。キューは,PCジョブ,UNIXジョブ,QUEUEジョブ,アクションジョブ,およびカスタムジョブで使用します。キューとエージェントの仕組みの概要を次の図に示します。

図5-1 キューとエージェントの仕組み

[図データ]

<この項の構成>
(1) キューとは
(2) エージェントとは
(3) ジョブ実行の流れ
(4) 各ジョブの実行環境

(1) キューとは

キューは,同時に実行されるジョブの数が多くなり過ぎないよう,実行登録されたジョブを一時的にためておくところです。キューには,一つまたは複数のエージェントが接続されています。PCジョブやUNIXジョブのようにエージェントホスト名を指定してジョブを実行する場合は,エージェントホスト名と同じ名前の内部的なキューにジョブが登録されます。このキューをデフォルトキューといいます。デフォルトキューにも複数のエージェントを接続することができます。

キューに登録されたジョブは,キューの中に順番に並べられ,そのキューに接続されているエージェントに対して順次転送され,実行されます。

キューに登録できるジョブの最大値は,任意に定義できます。また,複数のジョブを同時に実行できます。しかし,システムの能力を超えた数のジョブを実行すると,実行性能が低下したり,リソース不足でエラーが発生したりします。例えば,システム搭載メモリーに適した数以上のジョブを同時に実行すると,スワップが多発して実行性能が大幅に低下します。さらに多くのジョブを実行するとメモリー不足のためジョブが異常終了するなどのエラーが発生します。

キューは,このような状況を防ぎ,効率良くジョブを実行できるようにします。同時に実行するジョブ数が増えると,キューは制限値を超えたジョブを待たせて順番にエージェントへ転送します。

注意事項
ジョブで指定した排他実行リソースがほかのジョブで使用されていた場合など,ジョブを転送できない状況にあると,ジョブを転送する順番が入れ替わります。その場合,キューに登録した順番にジョブが実行されません。

キューの仕組みを次の図に示します。

図5-2 キューの仕組み

[図データ]

(2) エージェントとは

エージェントは,ジョブを実行するホストです。「エージェント」という言葉には,エージェントホストとしてシステム構成上の意味を持つ場合と,エージェントとして機能や制御の意味を持つ場合があります。ジョブは,キューから,キューに接続したエージェントに順次転送され,エージェントで実行されます。

エージェントで同時に実行できるジョブの数は,任意に定義できます。同時に実行できるジョブ数(ジョブ実行多重度)も,キューに登録できる最大ジョブ数と同様に,システムの能力に合わせた設定が必要です。

また,キューに複数のエージェントを接続する場合,エージェントの優先順位を指定できます。優先順位を指定すると,エージェントのジョブ実行多重度に対する実行中ジョブ数の割合が高くなった場合に,次に優先順位の高いエージェントへジョブを配信します。詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 8.2.9(1) キューに複数接続した実行ホスト(エージェントホスト)へのジョブの配信方法」を参照してください。

また,同一マシン(一つのIPアドレス)に対して複数のエージェントをエイリアスとして定義し,特性の異なるジョブを別のエージェントに登録することで,一つのマシン上でジョブを振り分けることができます。詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 3.2.2(5) 同一マシンを複数の実行ホストとして使用する方法」を参照してください。

(3) ジョブ実行の流れ

ジョブ実行時の処理の流れを,マネージャーとエージェントの関係を含めて,次の表で説明します。ただし,この表は,ジョブが正常終了した場合についてだけ説明しています。実際には,ジョブが異常終了した場合など,ほかの状態もあります。

表5-1 ジョブ実行時の処理の流れ

ジョブの状態 説明
キューイング [図データ]  実行登録を受け付けたジョブをキューに登録する。ジョブがキューに登録されると,ジョブの状態は「キューイング」になる。
実行中 [図データ]  ジョブをキューから取り出し,エージェントに転送して実行指示をする。
[図データ]  ジョブに定義された実行ファイルまたはスクリプトを,OS上で起動する。ジョブが起動されると,ジョブの状態は「実行中」になる。その後,ジョブの実行が終了するのを待つ。
[図データ]  ジョブが終了すると,エージェントはジョブの終了コードおよび実行結果を受け取る。
正常終了 [図データ]  ジョブの終了コードおよび実行結果をエージェントからマネージャーに転送する。マネージャーがジョブの終了コードおよび実行結果を受け取ると,ジョブの状態は「終了」になる。

(4) 各ジョブの実行環境

ジョブを実行したときに適用される実行環境を,ジョブの種類ごとに説明します。

なお,運用に合わせてジョブ実行環境を変更する場合の詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 3.5.3 ジョブ実行環境の構成定義情報を変更する」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 13.4.6 ジョブ実行環境の構成定義情報を変更する」(UNIXの場合)を参照してください。

(a) QUEUEジョブ

QUEUEジョブは,キューを指定して実行します。ジョブは,指定されたキューに登録され,キューに接続されたエージェントで実行されます。

次のような場合に,QUEUEジョブを使用します。

JP1/AJS2上でQUEUEジョブを使用する場合は,jpqimportコマンドを使って,キューを定義する必要があります。また,jpqqueaddコマンドなどを使えば,JP1/AJS2サービスの運用中にキューやエージェントの構成を変更できます。jpqimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 20. セットアップ時に使用するコマンド jpqimport」を参照してください。また,jpqqueaddなどのコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス」を参照してください。また,ほかのシステム(JP1/NQSEXECやJP1/OJEなど)と連携する場合は,ほかのシステムにあらかじめキューを作成しておく必要があります。ほかのシステムとの連携の詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 連携ガイド」を参照してください。

(b) PCジョブ,UNIXジョブ,アクションジョブ,およびカスタムジョブ

PCジョブ,UNIXジョブ,アクションジョブ,およびカスタムジョブは,実行するエージェントホストを指定して実行します。これらのジョブは,エージェントごとに持っているデフォルトキューに登録されます。デフォルトキューは,同時に実行されるジョブの数を制御しながら,指定のエージェントにジョブを転送し,実行します。各エージェントは,対応するデフォルトキューを一つ持っています。

PCジョブ,UNIXジョブ,アクションジョブ,およびカスタムジョブを使用する場合は,jpqimportコマンドを使って,エージェントを定義する必要があります。また,jpqagtaddコマンドなどを使えば,システムの運用中にキューやエージェントの構成を変更できます。jpqimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 20. セットアップ時に使用するコマンド jpqimport」を参照してください。また,jpqagtaddなどのコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス」を参照してください。

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