JP1/Integrated Management - Service Support システム構築・運用ガイド
JP1/IM - Service Supportでは,プロセスワークボードごとに,ユーザー,ロールの役割に応じてアクセス権を割り当てられます。アクセス権には,案件の作成,編集,クローズなど,案件の操作に対するものと,案件のステータスに応じた細かな編集権限に対するものがあります。
「4.2 対象システム,プロセスの決定と体制作り」の表4-1を例に,各作業担当に必要なアクセス権を割り当てた場合,次のようになります。
また,「4.2 対象システム,プロセスの決定と体制作り」の表4-2を例に,各作業担当に必要なアクセス権を割り当てた場合,次の表のようになります。
表4-3 アクセス権の割り当て例
プロセス | 作業担当 | アクセス対象の案件 | アクセス権 |
---|---|---|---|
インシデント管理 | インシデント担当者 | インシデント | 案件の作成 案件の参照 案件ステータス(受付,調査中,対応依頼中,承認済み,クローズ) 案件のクローズ |
問題点 | 案件の参照 エスカレーション |
||
インシデント管理者 | インシデント | 案件の参照 案件ステータス(審議中) 案件の承認 |
|
問題点 | 案件の参照 | ||
問題管理 | 問題管理担当者 | インシデント | 案件の参照 |
問題点 | 案件の作成 案件の参照 案件ステータス(受付,調査中,対応依頼中,承認済み,クローズ) 案件のクローズ |
||
変更点 | 案件の参照 エスカレーション |
||
問題管理者 | インシデント | 案件の参照 | |
問題点 | 案件の参照 案件ステータス(審議中) 案件の承認 |
||
変更点 | 案件の参照 | ||
変更管理 | 変更管理者 | 問題点 | 案件の参照 |
変更点 | 案件の参照 案件の作成 案件のステータス(受付,承認済み,レビュー中,クローズ) 案件のクローズ |
||
リリース案件 | 案件の参照 | ||
CABメンバー (変更諮問委員会メンバー) |
変更点 | 案件の参照 案件ステータス(受付,計画中) |
|
CAB代表 (変更諮問委員会代表) |
変更点 | 案件の参照 案件の承認 案件ステータス(審議中,対応依頼中) |
|
リリース案件 | 案件の参照 エスカレーション |
||
リリース管理 | リリース管理者 | 変更点 | 案件の参照 |
リリース案件 | 案件の参照 案件の作成 案件の承認 案件のステータス(受付,審議中,承認済み,クローズ) 案件のクローズ |
||
リリース担当者 (計画立案者) |
リリース案件 | 案件の参照 案件ステータス(受付,計画中) |
|
リリース担当者 (調達者) |
リリース案件 | 案件の参照 案件ステータス(承認済み) 案件の承認 |
|
リリース担当者 (実装チーム) |
リリース案件 | 案件の参照 案件ステータス(承認済み) |
|
構成変更担当者 | リリース案件 | 案件の参照 案件ステータス(対応依頼中) 案件の承認 |
なお,設定の際には,プロセスワークボード単位でアクセス権を設定することになります。このため,表4-3の内容をプロセスワークボードごとに整理し直す必要があります。表4-3のうち,インシデント管理プロセスに対するアクセス権を整理した表を次に示します。
表4-4 インシデント管理プロセスへのアクセス権設定
アクセス権 | 割り当てユーザー,ロール | |
---|---|---|
プロセスワークボード管理者※1 | JP1管理者※2 | |
案件へのアクセス権※3 | 案件の作成 | インシデント担当 |
案件の編集 | − | |
案件の参照 | インシデント担当,インシデント管理者,問題管理担当,問題管理者 | |
案件の削除 | − | |
エスカレーション | − | |
案件の承認 | インシデント管理者 | |
案件のクローズ | インシデント担当 | |
案件ステータス(受付) | インシデント担当 | |
案件ステータス(調査中) | インシデント担当 | |
案件ステータス(審議中) | インシデント管理者 | |
案件ステータス(承認済み) | インシデント担当 | |
案件ステータス(対応依頼中) | インシデント担当 | |
案件ステータス(クローズ) | インシデント担当 |
次に示す例を参考に,アクセス権の割り当てルールを決めてください。
企業内システムのインシデント管理,問題管理,変更管理,リリース管理をする情報管理部門の担当者や,さらにその上位の管理者などが,サービスサポートの運用状況を管理するためには,それぞれに適切な権限を割り当てる必要があります。
ここでは,次の図に示すとおり,企業内システムの情報管理部門の担当者を「対象システム管理者」,その上位組織の管理者を「情報システム管理者」として,それぞれの運用状況を確認する運用とした場合を例に説明します。
図4-3 企業内システムの情報管理部門およびその上位組織での運用例
情報システム管理者は,企業内システム全体の案件の状況を参照して,問題のあるシステムがないかどうかを確認します。長期化している案件の目立つシステムなどの問題点があった場合は,該当するシステムの管理者に対策を指示します。
対象システム管理者は,担当しているシステムの案件の状況を参照して,問題のあるプロセスがないかどうかを確認します。審議中の案件が多いプロセスや,対策期限の迫っている案件があるプロセスなどを確認して,該当するプロセスの管理者をフォローします。
このような運用をする場合,それぞれの管理者に必要な権限を次の表に示します。
表4-5 作業状況を管理するために必要な権限
管理者名 | 必要な権限 | 説明 |
---|---|---|
情報システム管理者 | 全システムを参照する権限 | 「作業管理ロール」に所属することで,JP1/IM - Service Supportで管理する対象システム,プロセスすべての作業状況を確認できる。 |
対象システム管理者 | システムN内の全プロセスの参照権限 | システムN内のプロセスワークボードすべてに対してアクセス権「案件の参照」権限が必要。 |
該当プロセスの管理者 | 担当プロセスの参照権限 | システムN内の該当するプロセスワークボードに対してアクセス権「案件の参照」権限が必要。 |
プロセス間のエスカレーションルート(エスカレーションの経路)は,各プロセス内での処理とは別に検討が必要です。エスカレーションルートは,各プロセスワークボードの担当者に「エスカレーション」権限を設定することで決められます。運用を開始する前にエスカレーションルートを決め,それに合わせた権限設定をしてください。
ここでは,次の図に示すエスカレーションルートで運用する場合を例に説明します。
図4-4 エスカレーションルート例
この例のエスカレーションルートは,インシデント管理,問題管理,変更管理,リリース管理の順で,エスカレーションできるユーザーは,各プロセス担当者全員となっています。この場合,次の流れで権限の設定をします。
なお,エスカレーションルートが変更になった場合は,次の図に示すように,エスカレーション先の各プロセスでエスカレーションを許可するための設定を見直す必要があります。
図4-5 エスカレーションルートの変更
案件の処理の流れに沿って異なる担当者を割り当てる運用とする場合,JP1/IM - Service Support上でスムーズに引き継ぎができるよう,アクセス権を適切に割り当てることが重要です。ここでは,案件を処理する体制に応じて,想定する運用例を四つ説明します。これらを参考に設計してください。
調査担当者だけで案件を処理する場合,次の図に示すようにアクセス権を割り当てます。この例では,個人の作業内容を自己管理する体制での案件処理を想定しています。
図4-6 調査担当者だけで案件の処理をすべて実施する運用例
図4-6で示した案件処理ごとの,案件処理後の案件のステータスおよび担当者の対応を次に示します。
処理の順序 | 内容 | 案件の ステータス |
案件の担当者 |
---|---|---|---|
1 | 調査担当者が問い合わせを受け付け,案件を作成する。 | 受付 | 調査担当者 |
2 | 調査担当者が調査状況に合わせて案件を更新する。 | 調査中 | 調査担当者 |
3 | 調査担当者が問い合わせ者に回答する。 | 調査中 | 調査担当者 |
4 | 調査担当者が問い合わせ者に回答後,案件をクローズする。 | クローズ | 調査担当者 |
調査担当者が案件の処理をし,管理者が承認する運用の場合,次の図に示すようにアクセス権を割り当てます。この例では,個人の作業内容を別の人が承認する体制での案件処理を想定しています。
図4-7 調査担当者が案件の処理をし,管理者が承認する運用例
図4-7で示した案件処理ごとの,案件処理後の案件のステータスおよび担当者の対応を次に示します。
処理の順序 | 内容 | 案件の ステータス |
案件の担当者 |
---|---|---|---|
1 | 調査担当者が問い合わせを受け付け,案件を作成する。 | 受付 | 調査担当者 |
2 | 調査担当者が調査状況に合わせて案件を更新する。 | 調査中 | 調査担当者 |
3 | 調査担当者が管理者に承認依頼をする。 | 審議中 | 管理者 |
4 | 管理者が案件を承認する。承認却下の場合は案件のステータスを「調査中」に変更する。 | 承認済み/調査中 | 調査担当者 |
5 | 調査担当者が問い合わせ者に回答する。 | 承認済み | 調査担当者 |
6 | エスカレーションが必要な場合,調査担当者が案件をエスカレーションする。 | 対応依頼中 | 調査担当者 |
7 | 調査担当者が問い合わせ者に回答後,案件をクローズする。 | クローズ | 調査担当者 |
案件の受付,調査,承認をそれぞれ別の担当者が処理する運用の場合,次の図に示すようにアクセス権を割り当てます。この例では,作業内容に合わせて対応者を細分化した体制での案件処理を想定しています。
図4-8 案件の受付,調査,承認をそれぞれ別の担当者が処理する運用例
図4-8で示した案件処理ごとの,案件処理後の案件のステータスおよび担当者の対応を次に示します。
処理の順序 | 内容 | 案件の ステータス |
案件の担当者 |
---|---|---|---|
1 | 案件管理者が問い合わせを受け付け,案件を作成する。 | 受付 | 案件管理者 |
2 | 案件管理者が調査担当者に調査を依頼する。 依頼を受けて,調査担当者が調査状況に合わせて案件を更新する。 |
調査中 | 調査担当者 |
3 | 調査担当者が承認者に承認依頼をする。 | 審議中 | 承認者 |
4 | 承認者が案件を承認する。承認却下の場合は案件のステータスを「調査中」に変更する。 | 承認済み/調査中 | 調査担当者 |
5 | 調査担当者が問い合わせ者に回答する。 | 承認済み | 案件管理者 |
6 | エスカレーションが必要な場合,調査担当者が案件をエスカレーションする。 | 対応依頼中 | 調査担当者 |
7 | 調査担当者が問い合わせ者に回答後,案件をクローズする。 | クローズ | 案件管理者 |
案件の受付,調査,承認,クローズをそれぞれ別の担当者が処理する運用の場合,次の図に示すようにアクセス権を割り当てます。この例では,「(c) 案件の受付,調査,承認をそれぞれ別の担当者が処理する運用の場合」の体制を,さらに細分化した体制での案件処理を想定しています。
図4-9 案件の受付,調査,承認,クローズをそれぞれ別の担当者が処理する運用例
図4-9で示した案件処理ごとの,案件処理後の案件のステータスおよび担当者の対応を次に示します。
処理の順序 | 内容 | 案件の ステータス |
案件の担当者 |
---|---|---|---|
1 | 受付担当者が問い合わせを受け付け,案件を作成する。 | 受付 | 受付担当者 |
2 | 受付担当者が調査担当者に調査を依頼する。 依頼を受けて,調査担当者が調査状況に合わせて案件を更新する。 |
調査中 | 調査担当者 |
3 | 調査担当者が承認者に承認依頼をする。 | 審議中 | 承認者 |
4 | 承認者が案件を承認する。承認却下の場合は案件のステータスを「調査中」に変更する。 | 承認済み/調査中 | 調査担当者 |
5 | 調査担当者が問い合わせ者に回答する。 | 承認済み | 案件管理者 |
6 | エスカレーションが必要な場合,調査担当者が別プロセス対応者にエスカレーションを依頼する。 | 承認済み | 別プロセス対応者 |
7 | 別プロセス対応者が案件をエスカレーションする。 | 対応依頼中 | 別プロセス対応者 |
8 | 調査担当者が問い合わせ者に回答後,案件をクローズする。 | クローズ | 案件管理者 |
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