JP1/Integrated Management - Rule Operation システム構築・運用ガイド
JP1/IM - RLのルールとは,障害回復手順の一つ一つを構成要素とした個々の処理や,分岐条件および対処までを一つの組み合わせとする一連の手順です。
障害回復手順の構成要素とは,事象の検知,状態確認,分岐,判断待ち,対処を指します。
- <この項の構成>
- (1) ルールの定義
- (2) ルールの運用
- (3) 自動アクションとしての利用
(1) ルールの定義
JP1/IM - RLは,障害回復手順の構成要素を可視化し,部品図形に置き換えてビジュアルに定義します。これをルールの定義と呼びます。ルールの定義では,一連の手続きの組み合わせをチャート形式で定義します。例えば,次のようなルールを定義します。
- 「状態確認」でのコマンドの順序
- 「分岐」でのコマンド戻り値に応じた複数方向への分岐
- 「時刻分岐」の実行時刻に応じた複数方向への分岐
- 「判断待ち」の判断結果による分岐
- 「対処」での具体的なコマンドの組み合わせ
なお,JP1/IM - RLでは,ルールの定義で使用するそれぞれの構成要素をルールエレメントと呼びます。
JP1/IM - RLのルールの定義例を次に示します。このルールに定義する内容は,次のとおりです。
- ルールに定義する内容
- アプリケーションから異常を示すJP1イベントが発行されたら,アプリケーションの状態を確認し,アプリケーションの再起動,またはシステム管理者への通知を行います。
図1-5 JP1/IM - RLのルールの定義例
上図は,アプリケーションの異常検知から,再起動で対処するか,別の管理者へ通知するかといった最終的な対処までのルールを定義した例です。
次に,JP1/IM - RLのルールで定義する事象と,ルールエレメントに定義する内容を示します。
表1-1 JP1/IM - RLのルールで定義する事象とルールエレメントに定義する内容
事象 ルールエレメントに定義する内容 事象の検知 事象を検知するために,事象を通知するJP1イベントの条件を定義します。
(例)
- メモリー不足の検知
- ディスク容量の不足の検知
- 性能負荷の増大の検知
- セキュリティ障害の検知
- ハードウェア障害の検知
- ソフトウェア障害の検知 など
状態確認 事象の状態や影響範囲などを確認するコマンドを定義します。
(例)
- 事象の確認(事象が本当に発生しているかを確認する)
- 影響の調査(事象の影響範囲を調査する)
- 対策手段の調査(実施可能な対策であるかを調査する)
- 過去の事例調査(過去の履歴から対応可能であるかを調査する) など
分岐 状態確認の結果によって処理を分岐するよう定義します。
- 状態確認コマンドの実行結果に対する分岐処理
- 一連のコマンドを実行するときの順序と場合分け など
判断待ち 事象がどのような状態の場合に,上位の責任者に対処の判断を仰ぐかを決めた上で,判断待ちを通知するJP1イベントの内容と,対処内容を定義します。 対処 対処を実行するコマンドやバッチファイルを定義します。
(例)
- 事象自体の回復(リカバリー処理の実施など)
- 暫定対処(縮退運転など)
- 影響範囲の限定と対応措置(問題のある機器のネットワーク切断など)
- システム管理者への通知(メールや通報システムによる通知) など
これらの事象を組み合わせて,障害回復手順の一つ一つを構成要素とした個々の処理や,分岐条件および対処までを一つの組み合わせとする一連の手順を定義します。
(2) ルールの運用
定義した一つのルールは,同様の対処手順で対処できる複数のシステムへ適用できます。例えば,あるアプリケーションが,旅費管理システム,人事管理システムなど複数のシステムで使われている基幹アプリケーションである場合を想定します。この場合,同じ状態確認コマンドや対処コマンドを利用できるため,同じルールを適用することができます。運用では,それぞれのシステムでサーバが異なるので,それぞれのサーバから発生した障害事象を示すJP1イベントによって,それぞれルールが起動されます。
図1-6 複数のシステムへのルールの適用
ルールをシステムに適用すると,ルールは起動を待機する状態となります。ルールの起動条件の合致するJP1イベントを受信することでルールは起動され,一連の対処手順を実行します。
定義されたルールを対象システムと対応づけること,対応づけたあとのルールの実行状況を監視すること,ルールの実行結果を確認する作業を,ルールの運用と呼びます。
(3) 自動アクションとしての利用
JP1/IM - RLのルールは,コマンドの実行順序だけを組み合わせて定義すれば,障害対処手順だけでなくJP1/IM - Managerの自動アクション機能に相当する機能としても利用できます。
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