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1.12.2 ホストバスアダプタとポートが多対多で接続されている場合の手順の流れ

次の図のネットワーク(これより先、仮にネットワークBと呼びます)では、プロダクションサーバと開発用サーバがストレージシステムに接続されています。プロダクションサーバのホストバスアダプタ(wwn01)は、ストレージシステムの4つのポート(1A、1C、2Aおよび2C)と接続しています。一方、開発用サーバに内蔵されている2つのホストバスアダプタ(wwn02とwwn03)も、ストレージシステム側の4つのポートと接続しています。

次の図で、SPM名はシステム管理者がホストバスアダプタに付けた名前を示しています。Server Priority Managerを利用すると、システム管理者はそれぞれのホストバスアダプタを識別しやすくするためにSPM名を割り当てられます。例えば、ホストのオペレーティングシステムや設置場所などにちなんだSPM名を付けられます。

[図データ]

ネットワークBのように、ホストバスアダプタとポートが多対多で接続されている場合は、次の順序に従って操作します。

手順1:ホストバスアダプタのWWNを調べる

Server Priority Managerを利用する前に、システム管理者はサーバホストに内蔵されているホストバスアダプタのWWNWWNを調べておく必要があります。WWNは、各ホストバスアダプタを識別するために使われる16桁の16進数です。WWNを調べる方法については、システム構築ガイドを参照してください。

手順2:ホストバスアダプタとストレージシステムのポートの間のトラフィックをすべてモニタリング対象にする

Server Priority Managerを利用する場合、システム管理者は、ストレージシステム側ポートに接続するすべてのホストバスアダプタを、モニタリング対象に設定しなくてはなりません。ホストバスアダプタをモニタリング対象に設定するには、[優先ポート制御]画面の[WWN]タブを開いて、各ポートに接続するホストバスアダプタを[モニター対象]アイコン下に配置します。

ネットワークBの場合、ストレージシステム側の4つのポートは、どれも3つのホストバスアダプタ(wwn01、wwn02、およびwwn03)と接続しています。そのため、 次の図に示すように、4つ全部のポートアイコン下で、wwn01、wwn02、およびwwn03のホストバスアダプタのアイコンを[モニター対象]アイコン下に配置してください。

注意

[モニター対象外]アイコンの下にホストバスアダプタが配置されていると、Server Priority Managerはそのホストのパフォーマンスを測定したり制御したりできなくなります。このため、必ず[モニター対象]アイコンの下にホストバスアダプタを配置してください。

一度設定したあとに、ストレージシステムのポートやホストバスアダプタを追加した場合、それらとの接続のトラフィックはモニタリング対象外になっています。その場合は、先に述べた手順に従って、すべてのホストバスアダプタとポート間のトラフィックをモニタリング対象に設定し直してください。

[図データ]

手順3:ホストバスアダプタに優先度を設定する

Server Priority Managerを利用する場合、システム管理者は[優先ポート制御]画面の[WWN]タブを利用して、ホストバスアダプタに優先度を設定しなくてはなりません。

ネットワークBの場合、プロダクションサーバは優先度が高く、開発用サーバは優先度が低いといえます。このため、システム管理者はホストバスアダプタwwn01の優先度を高く設定し、ホストバスアダプタwwn02とwwn03の優先度を低く設定する必要があります。

ホストバスアダプタの優先度を指定するには、次の手順に従います。

  1. [優先ポート制御]画面の[WWN]タブを表示する。

  2. ホストバスアダプタ(wwn01、wwn02、wwn03)の接続先となっている4つのポート(1A、1C、2A、2C)のうち、どれか1つを選択する。

  3. wwn01の優先度を高く設定し、wwn02とwwn03の優先度を低く設定する。

    例:ポート1Aを選択してホストバスアダプタの優先度を設定すると、 次の図のようになります。[Prio.]は優先度が高いことを示し、[Non-Prio.]は優先度が低いことを示します。なお、ポート1Aを選択してホストバスアダプタの優先度を設定すると、その設定内容は他のポート(1C、2A、2C)にも自動的に適用されます。

[図データ]

優先度の高いホストバスアダプタ(wwn01)を優先WWN優先WWNと呼び、優先度の低いホストバスアダプタ(wwn02とwwn03)を非優先WWN非優先WWNと呼びます。

手順4:ポートとホストバスアダプタの間のトラフィックを測定する

次に、Performance Monitorを利用して、ポートとホストバスアダプタの間のトラフィックを測定(モニタリング)します。トラフィックには、I/Oレートと転送レートの2種類があります。I/Oレートは、ストレージシステムへの1秒当たりの入出力アクセス回数です。転送レートは、ホストとストレージシステム間の1秒当たりのデータ転送量です。トラフィックの測定結果を確認するときは、I/Oレートまたは転送レートのどちらかを選んで、画面に表示します。

ネットワークBの場合は、次の順序に従って、ポートとホストバスアダプタの間のトラフィックを測定します。

上記の手順に従って、それぞれのポートとホストバスアダプタの間のI/Oレートを測定したところ、どのポートでも次の図のような結果が出たとします。この測定結果によると、ポート1Aと優先WWN(wwn01)の間では、I/Oレートが400IO/s前後で安定していました。また、ポート1Aと非優先WWN(wwn02とwwn03)の間では、I/Oレートが100IO/s前後で安定していました。しかし、非優先WWN(wwn02とwwn03)でI/Oレートが100IO/sから200IO/sへ上昇するにつれて、優先WWN(wwn01)ではI/Oレートが400IO/sから200IO/sへと低下しています。この場合、優先度の高いプロダクションサーバのパフォーマンスが低下していることを示しています。このネットワークの管理者であれば、優先WWN(wwn01)のI/Oレートを元どおり400IO/sのまま維持したいと考えるはずです。

[図データ]

手順5:ポートと非優先WWN間のトラフィックに上限値を設定する

優先WWNのパフォーマンスの低下を防ぐには、ポートと非優先WWN間のトラフィックに上限値を設定します。

上限値を初めて設定するときは、ピーク時のトラフィックの90パーセント程度にしておくことをお勧めします。

例:ネットワークBでは、ポート1Aと非優先WWN(wwn02とwwn03)間のI/Oレートのピークが200IO/sでした。他の3つのポートと非優先WWNの間でのI/Oレートのピークも200IO/sなので、4つのポート全体でI/Oレートのピークは800IO/sとなります。したがって、非優先WWNのI/Oレートには720IO/sという上限値を設定します。

上限値を画面上で指定するには、次の手順に従います。

  1. 4つのポートのうち、どれか1つを選択する。

  2. 非優先WWN(wwn02とwwn03)に対して、720IO/sという上限値を設定する。

次の図は、ポート1Aと非優先WWN(wwn02とwwn03)の間のトラフィックに720IO/sという上限値を設定した例です。設定が終了すると、他のポートと非優先WWNの間のトラフィックにも720IO/sという上限値が自動的に適用されます。

[図データ]

手順6:上限値の適用結果を確認する

上限値をストレージシステムに適用したら、再びトラフィックを測定します。

トラフィックを測定したら、優先WWNのトラフィックを再び画面に表示して、望みどおりのサーバ性能が得られたかどうかを確認します。

ネットワークBの場合、システム管理者は優先WWNのI/Oレートを400IO/sにしたいと考えていました。もし優先WWNのI/Oレートが400IO/sになっていれば、望みどおりのプロダクションサーバ性能が得られたことになります。

もし望みどおりのプロダクションサーバ性能が得られなかった場合は、上限値を現在よりも小さい値に変更して、ストレージシステムに適用します。例えばネットワークBの場合、上限値を720IO/sにしてもwwn01のI/Oレートが400IO/sに達しなかった場合は、I/Oレートが400IO/sに達するまで上限値の変更を繰り返します。

注意

非優先WWNの上限値を0などの非常に小さい値に設定すると、I/O性能が大幅に低下することがあります。I/O性能が低下すると、ホストがストレージシステムにアクセスできなくなるおそれがあります。

手順7:必要であれば、しきい値を設定する

しきい値を利用したい場合は、[優先ポート制御]画面の[WWN]タブでしきい値を設定します。

しきい値は、優先WWNの数に関係なく、ストレージシステム1台につき1つだけ設定できます。例えば、ネットワーク上に3つの優先WWNがあり、しきい値が100IO/sだとすると、すべての優先WWNのI/Oレート合計値が100IO/sを下回ったときに、非優先WWNの上限値が無効になります。

上限値を無効にするためにセルに0を設定すると、セルにはハイフン(-)が表示されて、設定した優先WWNではしきい値が無効になります。すべての優先WWNでしきい値が無効な場合、しきい値制御は実行されなくなり、上限値制御だけが実行されます。

しきい値の設定の有無

非優先WWNの上限値に0以外を設定

非優先WWNの上限値に0を設定

優先WWNにしきい値の設定あり

優先WWNにしきい値を設定した場合、I/Oレートまたは転送レートの値によって次の制御が実行されます

  • すべての優先WWNでI/Oレートまたは転送レートの合計値がしきい値を上回ると、すべての非優先WWNの上限値が有効になる

  • すべての優先WWNでI/Oレートまたは転送レートの合計値がしきい値を下回ると、すべての非優先WWNの上限値が無効になる

優先WWNに対するしきい値制御は実行されません

優先WWNにしきい値の設定なし

常に上限値の設定が有効になります