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 ボリューム管理 クイックリファレンス


3.3.5 パリティグループの容量拡張設定有効時のプール構築ガイドライン

容量拡張設定が有効なパリティグループに属するLDEVを使用したプールの導入、環境構築、運用、および保守について解説します。

〈この項の構成〉

(1) パリティグループの容量拡張設定を有効にできるかどうかを確認する

容量拡張設定が有効なパリティグループを新規導入する場合、パリティグループの用途から容量拡張設定が有効で使用できるかどうかを確認します。容量拡張が可能なパリティグループでも、用途が次に示す条件のうち1つでも該当する場合、容量拡張設定は有効にできません。

また、容量拡張が可能なパリティグループでも、用途が次に示す条件に該当する場合、容量拡張設定の適用は推奨しません。

(2) 購入するドライブの容量を見積もる

容量拡張設定が有効なパリティグループに属するLDEVを使用したプールを作成するために、必要な容量を見積もります。圧縮機能をサポートしているドライブを新規購入する場合、またはすでに容量拡張設定が有効なパリティグループを使用していて容量を追加購入する場合について、それぞれの容量の見積もり方法を解説します。

(3) ドライブの容量を見積もる(新規購入の場合)

背景

圧縮機能をサポートしているドライブを新規購入してプールの作成またはプール容量を拡張する場合、次のワークフローに従って、購入する容量を見積もります。

なお、圧縮機能をサポートしているドライブに移行するデータがすでにある場合、Hitachiデータ削減見積ツール(hidr_estimator)で容量の削減率(%)や圧縮比などが確認できます。以降、このツールをhidr_estimatorツールと呼びます。hidr_estimatorツールは、実際のデータ削減アルゴリズムを使用して、指定されたドライブやファイルのデータをサンプリングして削減率(%)や圧縮比などを計算します。ストレージシステムおよび圧縮機能をサポートしているドライブを導入する前に、実際にお客様の環境にあるデータを読み込んで削減率(%)や圧縮比などを計算すれば、容量拡張設定による効果の有無を高い精度で確認できます。

hidr_estimatorツールは、サーバホストにインストールして使用します。hidr_estimatorツールについては、日立サポートサービスにお問い合わせください。

[図データ]

図中の番号の手順について、次に説明します。

メモ

容量拡張設定が有効なパリティグループに使用するドライブの容量を見積もる場合、データを格納する容量の見積もり以外にマージン容量を見積もります。マージン容量として、必要なドライブ容量の20%程度を追加してください。なお、マージン容量とは、次に示す要因によるドライブ使用量の増加見込み容量の合計です。

  • ストレージシステムの管理情報の増加見込み容量

  • 見積もり値からの削減率(%)の悪化を吸収するための増加見込み容量

操作手順

  1. 仮想ボリュームに書き込みたいデータ量を見積もります。

    仮想ボリュームに書き込みたいデータ量は、従来と同様に見積もってください。

  2. データの削減率(%)を見積もります。次に示す2通りの方法があります。

    • 圧縮機能をサポートしているドライブに移行するデータがすでにある場合、hidr_estimatorツールによって削減率(%)を見積もります。hidr_estimatorツールの実行結果を参照して、プール使用量の削減効果を確認します。ただし、削減率(%)が20%未満の場合、後述する手順3の見積もりで「購入する必要があるドライブの容量」にマージンを含んだ容量を確保する必要があるため、マージン容量と削減効果が相殺されてしまいます。したがって、削減率(%)が20%未満の場合はパリティグループの容量拡張設定を無効にして、仮想ボリュームに書き込みたいデータ量と同じ容量のドライブを見積もることを推奨します。

      hidr_estimatorツールを使用する場合、サーバホストにこのツールをインストールする必要があります。

    • 圧縮機能をサポートしているドライブに移行するデータがない場合、またはhidr_estimatorツールが実行できない環境の場合、データの削減率(%)は0%と見なします。

  3. 購入する必要があるドライブの容量を見積もります。

    圧縮機能をサポートしているドライブに移行するデータがすでにある場合、次の式で算出します。算出した容量のドライブを購入してください。そして、容量拡張設定が有効なパリティグループ、LDEV、およびプールを作成してください。

    購入する必要があるドライブの容量 = 仮想ボリュームに書き込みたいデータ量 × ( 100 [%] - (削減率 [%] - 10 [%])) × 110 [%]

    上記の式に含まれるマージンの値を次に示します。

    • 10[%]:削減率(%)の悪化による増加見込み容量のマージンです。

    • ×110[%]:ストレージシステムの管理情報による増加見込み容量のマージンです。

    メモ

    Dynamic Tieringまたはactive flashにて、圧縮機能をサポートしているドライブで階層1を構成する場合、上記の式の「仮想ボリュームに書き込みたいデータ量」には、見積もり値を1.2倍した値を設定してください。この値は、次の式で算出します。

    仮想ボリュームに書き込みたいデータ量手順1で見積もった仮想ボリュームに書き込みたいデータ量 × 120%

    仮想ボリュームに書き込みたいデータ量を1.2倍にして見積もる理由を次に示します。

    Dynamic Tieringまたはactive flashは、階層再配置による圧縮機能をサポートしているドライブ(階層1)の容量の枯渇を防ぐため、20%のバッファ領域を確保するようにページを割り当てます。一方、容量拡張設定を無効にした場合、Dynamic Tieringまたはactive flashは、20%のバッファ領域を確保せずにページを割り当てます。

    このため、圧縮機能をサポートしているドライブ(階層1)の容量が同じ場合、容量拡張設定が有効の場合に格納されるデータ量は、容量拡張設定が無効の場合に格納されるデータ量よりも少なくなります。

    これを防ぐため、手順1で見積もった仮想ボリュームに書き込みたいデータ量を1.2倍した容量を使用することで、容量拡張設定が無効の場合と同程度のデータ量が圧縮機能をサポートしているドライブ(階層1)に配置されます。詳細については、関連項目を参照してください。

    メモ

    14TBの圧縮機能をサポートしているドライブを使用し、かつ手順2で見積もったデータの削減率(%)が75%を超えている場合、上記の式の「削減率 [%] 」には75%を設定してください。

    圧縮機能をサポートしているドライブに移行するデータがない場合、またはhidr_estimatorツールが実行できない環境の場合、仮想ボリュームに書き込みたいデータ量と同じ容量のドライブが必要です。仮想ボリュームに書き込みたいデータ量と同じ容量のドライブを購入してください。そして、容量拡張設定が無効なパリティグループ、LDEV、およびプールを作成してください。

(4) Hitachiデータ削減見積ツール(hidr_estimator)を使用してデータの削減率(%)を見積もる

圧縮機能をサポートしているドライブに移行するデータがすでにある場合、hidr_estimatorツールに見積もり対象のドライブを指定して実行するとデータの削減率(%)が出力されます。hidr_estimatorツールの実行例を次に示します。

[図データ]

圧縮機能をサポートしているドライブの容量の見積もり式で削減率(%)に使用する値は、[HAFDC2 Compression]のSaving % (Except Zero data)を推奨します。実行例に表示されている項目について、説明します。

(5) ドライブの容量を見積もる(追加購入の場合)

背景

圧縮機能をサポートしているドライブを追加購入してプール容量を拡張する場合、次のワークフローに従って、購入する容量を見積もります。

[図データ]

図中の番号の手順について、次に説明します。

操作手順

  1. 仮想ボリュームに追加で書き込みたいデータ量を見積もります。

    仮想ボリュームに追加で書き込みたいデータ量は、従来と同様に見積もってください。

  2. データの削減率(%)を確認します。

    [プール]画面に、データの削減率が表示されます。[プール]画面の[プール]タブに表示されている[削減効果]の[削減率]を参照してください。

  3. 必要なドライブの容量を見積もります。

    次の式で容量を算出します。

    必要なドライブの容量 = 仮想ボリュームに追加で書き込みたいデータ量 × ( 100 [%] - (削減率 [%] - 10 [%]) )

    上記の式に含まれるマージンの値を次に示します。

    • 10[%]:削減率(%)の悪化による増加見込み容量のマージンです。

    上記の式で算出した必要なドライブの容量、およびプールの空き容量から、追加購入するドライブの容量を見積もります。

    メモ

    14TBの圧縮機能をサポートしているドライブを使用し、かつ手順2で確認したデータの削減率(%)が75%を超えている場合、上記の式の「削減率 [%] 」には75%を設定してください。

  4. プールの空き容量を確認します。

    [プール]画面の[プール]タブに表示されている、[FMD容量]を参照してください。プールの空き容量は、[合計]から[使用量]を差し引いた値です。

  5. 追加購入するドライブの容量を見積もります。

    手順4で、必要なドライブの容量が確保できた場合、この手順は実行不要です。容量が確保できなかった場合、次の式で必要なドライブの容量を算出します。

    購入する必要があるドライブの容量 = (必要なドライブの容量手順4で確認したプールの空き容量) × 110[%]

(6) 容量拡張設定が有効なパリティグループ、LDEV、およびプールを作成する

背景

プール使用量の削減効果があると確認できた場合、容量拡張設定が有効なパリティグループ、LDEV、およびプールを作成します。次のワークフローに従って操作してください。なお、プール使用量の削減効果がない場合、この節の操作は実行しないでください。

注意

容量拡張設定が有効なパリティグループにLDEVを作成した場合、作成したすべてのLDEVをプールに追加してください。プールに追加されないLDEVがある場合、ドライブ障害時のデータ復旧に失敗するおそれがあります。必ずすべてのLDEVをプールに登録してください。プールに追加されないLDEVがある場合、ドライブの障害時にリプレースした圧縮機能をサポートしているドライブにデータを復旧するときに、これらのLDEVも復旧対象になります。この場合、復旧対象のデータサイズが復旧前よりも増えてしまうため、次の懸念があります。

  • プールの削減率を大幅に悪化させるおそれがあります。

  • データをコピーする圧縮機能をサポートしているドライブ容量を枯渇させて、データ復旧が失敗するおそれがあります。

  • 圧縮機能をサポートしているドライブ容量の枯渇に伴い、キャッシュのライトペンディング率が高止まりして、ストレージシステムへのアクセスロストを引き起こすおそれがあります。

また、次のLDEVをフォーマットしないまま運用を続けた場合、圧縮機能をサポートしているドライブ容量は消費されたままとなり、ドライブ容量の枯渇、キャッシュのライトペンディング率の高止まり、さらにはストレージシステムへのアクセスロストを引き起こすおそれがあります。

これらのプールに未登録のLDEVは、必ず事前にフォーマット(クイックフォーマットは実行できません)してから、削除してください。

  • 容量拡張設定を有効にする前に、通常ボリュームとして使用していたLDEV

  • プール容量の縮小によって、プールから削除したLDEV

容量拡張設定が有効なパリティグループに作成したLDEVを、プールのプールボリュームとして使用すると、プールの使用量に応じてシステムが自動でLDEVを作成し、プールボリュームとしてプールに追加します。 詳細は「1.2.4 Dynamic ProvisioningDynamic Tieringactive flash、およびThin Imageのプールの要件」の「プールボリュームの自動追加機能を使用するプールの要件」を参照してください。

[図データ]

図中の番号の手順について、次に説明します。

操作手順

  1. 既存の容量拡張が可能なパリティグループがあるかどうかを判定します。

    既存の容量拡張が可能なパリティグループがある場合、手順2に進んでください。容量拡張が可能なパリティグループがない場合、手順3に進んでください。

  2. 既存のパリティグループの容量拡張設定を有効にします。

    [パリティグループ編集]画面で、容量拡張設定を有効にします。

  3. 購入した新規の圧縮機能をサポートしているドライブの容量を使用して、容量拡張設定が有効なパリティグループを作成します。

    パリティグループを作成する場合、[パリティグループ作成]画面を操作します。

  4. プールボリュームとして使用するLDEVを作成します。

    [LDEV作成]画面を操作して、LDEVを作成します。1個のLDEVの容量は、プールボリュームの最大容量の2.99TBを推奨します。1個のパリティグループに定義するLDEVの個数は、次の式を使用して算出します。

    LDEVの個数 = ↑容量拡張設定が有効なパリティグループの容量 ÷ 2.99TB

    ↑で囲まれた部分は、小数点以下を切り上げることを示します。

  5. プールを作成します。またはプールを拡張します。

    作成したすべてのLDEVをプールに追加します。

    メモ

    1つのパリティグループから作成されたすべてのLDEVを、1つのプールに追加してください。

    メモ

    プールを構成する容量拡張設定が有効なパリティグループ1つにつき、プールの容量が約120GB減少します。プールの容量が減少するまで、時間がかかることがあります。

(7) プール容量を監視する

ユーザによるプールの容量の監視または関連するSIMの報告によって、プールの容量が不足している場合、仮想ボリュームに追加で書き込みたいデータ量を見積もる必要があります。次のワークフローに従って作業してください。

[図データ]

(8) プール容量不足の際に追加するドライブの容量を見積もる

次のワークフローに従って作業してください。

メモ

14TBの圧縮機能をサポートしているドライブを使用し、かつデータの削減率(%)が75%を超えている場合、図中の「必要なドライブの容量」を算出する式の「削減率 [%] 」には75%を設定してください。

[図データ]

(9) 容量拡張設定を有効にしたパリティグループの運用を取りやめる

背景

容量拡張設定が有効なパリティグループの運用を取りやめる場合、次の手順を実施してください。

[図データ]

操作手順

  1. プール縮小を実行して、[拡張領域使用]が[該当]のプールボリュームをプールから削除します。

  2. [拡張領域使用]が[該当]のLDEVをフォーマットします。

  3. [拡張領域使用]が[該当]のLDEVを削除します。

    メモ

    手順1が失敗した場合は、プールを拡張します。プール拡張によって、[拡張領域使用]が[該当]のプールボリューム容量の合計よりも大きな容量を追加します。このとき、[拡張領域使用]が[非該当]のLDEVを追加してください。

(10) パリティグループの容量拡張設定を無効にする

背景

パリティグループの容量拡張設定を無効にする場合、次の手順を実施してください。

[図データ]

操作手順

  1. プール縮小を実行して、すべての[容量拡張]が[有効]のプールボリュームをプールから削除します。

  2. [容量拡張]が[有効]のパリティグループをフォーマットします。

    メモ

    必ず、「1.18.4 パリティグループをフォーマットする」に記載されている手順を実行してください。

  3. [拡張領域使用]が[該当]のすべてのLDEVを削除します。

  4. パリティグループの[容量拡張]を[有効]から[無効]に変更します。

    メモ

    手順1が失敗した場合は、プールを拡張します。プール拡張によって、[容量拡張]が[有効]のプールボリューム容量の合計よりも大きな容量を追加します。このとき、[容量拡張]が[無効]のLDEVを追加してください。