Hitachi Command Suite ユーザーズガイド
Hitachi Dynamic Tiering(HDT)機能を使用すると,データの格納先として適切なドライブが自動的に選択されるようになり,ボリュームの最適化を実現できます。
HDTプールは高速なドライブ(例:FMC,FMD,SSD,FCドライブ,SASドライブ)と低速なドライブ(例:SATAドライブ)を混在させて構成します。HDTプールを作成するときは,階層1から性能の高い順にドライブが割り当てられます。HDTプール全体の容量を確保するために,階層3にドライブタイプやRAIDレベルが異なるドライブを混在させて運用することもできます。格納されるデータは,アクセス頻度に応じてプール内でページ単位に再配置されます。アクセス頻度が高いデータは高速なドライブに配置され,アクセス頻度が低いデータは低速なドライブに配置されるようになります。
Hitachi Command Suite(HCS)では,HDTプールのモニタリングやデータ再配置に関して,運用に合わせたきめ細かい設定ができます。業務の状況やアプリケーションの特性に合わせた設定をすることで,データ配置が最適化され,ボリュームの性能やコストパフォーマンスの向上を図れます。
HCSを使用すると,HDTに関する次の設定ができます。
- HDTプールのモニタリングとデータ再配置
HDTプールをモニタリングし,その結果に基づいてデータを再配置します。モニタリングと再配置は,実施時刻や実行周期をあらかじめ指定して自動で実施することも,業務に応じた任意のタイミングで手動で実施することもできます。
データの再配置については,速度も指定できます。業務データのI/O性能を高くしたい場合は,再配置速度を遅くすることで再配置で掛かる負荷を軽くするなど,運用に合わせた制御ができます。- HDTプールのハードウェア階層に対する空き領域率の指定
HDTプールの作成時や編集時に,各ハードウェア階層に対して,使用容量の増加に備えた新規割り当て用空き領域率,およびストレージシステムが作業領域として使用する再配置用バッファー領域率を指定できます。ただし,デフォルト値を変更すると性能が低下するおそれがあるため,デフォルト値のまま運用することをお勧めします。- HDTボリュームの階層ポリシー設定およびデータ配置の優先度設定
HDTプール内では,I/Oの多いデータが優先的に高速なハードウェア階層へ自動で配置されます。業務上重要なデータが高速なハードウェア階層に配置されるよう,HDTボリュームに対して次の設定をすることで,運用に合わせたデータ配置の制御ができます。これらの設定が完了したら,階層ポリシーの設定状態や各ハードウェア階層の使用容量を定期的に確認して,リソースが適切に配置されているか確認します。想定以上にコストが掛かっていたり性能が低下していたりする場合は,設定を変更します。
- 階層ポリシーの設定
重要度の高いデータはI/Oが少ない場合でも常に一定以上の高速なハードウェア階層へ配置されるように,階層ポリシーを設定して配置先のハードウェア階層を固定できます。また,階層ポリシーをカスタマイズして,各ハードウェア階層の容量の割合を定義できます。高速なハードウェア階層に必要以上にデータが配置されないようにして管理コストを削減するなど,性能とコストのバランスを考慮してデータ配置を制御できます。- 新規ページ割り当て階層の設定
階層ポリシーに設定したハードウェア階層のうち,上位,中間,または下位のどのハードウェア階層から優先的に新規のページを割り当てるか指定できます。通常,上位の階層が割り当てられたあとに下位の階層が割り当てられるため,容量の限られた上位階層に重要度の低いデータが割り当てられるおそれがあります。この項目を設定することで,上位の階層に重要度の高いデータを優先的に割り当てられます。- 再配置プライオリティの設定
HDTボリュームに対し,データ再配置時に優先的に再配置されるよう指定できます。
データ再配置はHDTボリュームのLDEV ID順に実行されているため,I/O負荷の状況やデータ容量によっては,実行周期内に再配置が完了しない場合があります。再配置プライオリティを設定することで,重要度の高いHDTボリュームの再配置が優先的に実行されるよう指定できます。- リアルタイム階層制御
active flash機能を使用すると,階層化されたHDTボリュームのページの性能がモニタリングされ,短期間に起きたI/O 負荷の変化に応じてデータが適切な階層に移動されます。- 階層配置の最適化
IOPHプロパゲーションを利用すると,ホストからのアクセスがないボリュームのHDTプールに性能モニタリングの情報を伝播させることで,階層配置を最適化できます。設定はCLIで実施します。- 外部HDTプールボリュームの階層ランクの編集
HDTプールを構成するHDTプールボリュームに外部ボリュームが含まれている場合,外部LDEV階層ランクを,性能別に高,中,低として定義できます。Tiered Storage Managerのライセンスが登録されている場合は,次のことも実施できます。
- HDTプールの運用状況の評価・分析
[モビリティ]タブでHDTプールの運用状況を評価・分析できます。- HDTプールのモニタリングとデータ再配置のスケジュール設定
HDTプールのモニタリングやデータ再配置の開始時間や停止時間のスケジュールをテンプレートとして登録しておき,設定できます。- HDTボリュームのデータ再配置の有効・無効設定
HDTボリュームごとに,データ再配置の対象にするかどうかを設定できます。データを優先的に再配置したいアプリケーションがあるときは,ほかのアプリケーションが使用しているボリュームのデータを再配置の対象から除外するなど,アプリケーションの特性や運用状況に応じてデータの再配置を制御できます。- HDTボリュームの階層プロファイル適用によるデータ配置の復元
HDTボリュームのデータ配置が最適化されているときにページ単位のデータ配置をプロファイルとして保存し,運用に応じて適用することで,過去のデータ配置を復元できます。例えば,1つのHDTボリュームをアクセス特性が異なる複数の処理(オンライン処理とバッチ処理など)で使用している場合,それぞれの処理に適したプロファイルを作成しておき,処理を始める前に適用します。これによって,特性に合ったデータ配置を処理の開始前に復元でき,I/Oの低下を防げます。スケジュールを設定しておくと,アプリケーションの運用に合わせて定期的にプロファイルの更新や適用ができます。HDTプールの階層1に配置されていたページだけがプロファイル適用の対象となります。
参考
- ストレージシステムがVSP 5000シリーズ,VSP G1000,G1500およびVSP F1500の場合,Hitachi Dynamic Tiering for Mainframeのボリュームについては,ハードウェア階層などHDTプール特有の情報が表示されない画面があります。
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