15.9.2 JP1/IMが監視するシステム全体のメンテナンス実施例
ここでは,JP1/IMが監視するシステム全体のメンテナンスの実施例について説明します。
次の図に示すような,JP1/IMが監視するシステムの階層構成(IM構成)(統合マネージャー×1,拠点マネージャー×2,エージェント×4)でメンテナンスを実施します。
JP1/IMが監視するシステムの構成は,JP1/Baseの構成管理機能によって定義されています。システムの階層構成の定義については,「9.4.3 システムの階層構成の管理」を参照してください。
- 〈この項の構成〉
(1) システム全体のメンテナンスの実施順序
システムの階層構成の定義に従って,上位ホストから下位ホストの順序でメンテナンスを実施します。ここでは,次のように実施順序を決定します。
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統合マネージャー(mgr1)
-
拠点マネージャー(m1)
-
拠点マネージャー(m2)
-
エージェント(a1,a2)
-
エージェント(a3,a4)
図15‒22 メンテナンスの実施順序
統合マネージャー(mgr1),拠点マネージャー(m1またはm2),エージェント(a1,a2,a3またはa4)の順序でメンテナンスを実施することにより,不要なイベントの取得,必要なイベントの取得漏れを回避できます。
- 重要
-
マネージャー(この場合はmgr1)のメンテナンスは,必ず最初に行ってください。そのほかのホストについても,システムの階層構成に従って順序を決定してください。
(2) 統合マネージャー(JP1/IM - Manager)側での設定
不要イベントのフィルタリング,JP1/IM - Manager停止中のJP1イベント取得のため,JP1/IM - Managerの機能を利用し,設定しておきます。
(a) イベント取得開始位置の設定
イベント取得開始位置は,jcoimdefコマンドを使用します。JP1/IM - Managerの起動前にさかのぼってイベントを取得する設定は,次の二つがあります。
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jcoimdef -b -1
JP1/IM - Managerの前回停止時の状態からJP1イベントを取得する。
-
jcoimdef -b xxx (xxxは時間を表します。1〜144(時間)の範囲で設定します)
JP1/IM - Managerの起動から指定された時間さかのぼって,JP1イベントを取得する。
なお,JP1/IM - Managerの起動後に発行されたJP1イベントから取得する設定もありますが,今回の例では明示的に開始位置を指定する必要があるため,適用できません。
イベント取得開始位置の設定の詳細については,「15.7.10 イベント取得開始位置の設定の検討」を参照してください。jcoimdefコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager コマンド・定義ファイル・APIリファレンス」の「jcoimdef」(1. コマンド)を参照してください。
(b) イベント取得フィルターの共通除外条件の設定
イベント取得フィルターに対して,一時的に取得対象外または自動アクションの実行対象外とするJP1イベントの条件を共通除外条件に定義します。共通除外条件は,[イベント取得条件一覧]画面で追加,編集できます。通常運用のイベント取得フィルターの条件を変更する必要はありません。
「図15-21 JP1/IMが監視するシステムの階層構成」に示した統合マネージャー(mgr1),拠点マネージャー(m1→m2),エージェント(a1,a2→a3,a4)の順で,メンテナンスを実施する場合の共通除外条件は,通常運用のイベント取得フィルターとは別に,設定内容ごとに四つ必要になります。共通除外条件の定義内容は次のようになります。なお,メンテナンス対象ホストの不要なイベントを取得対象外または自動アクションの実行対象外とするのは,統合マネージャー(mgr1)だけという前提です。
共通除外条件のID |
メンテナンス対象ホスト |
共通除外条件に定義する条件 |
---|---|---|
1 |
拠点マネージャー(m1) |
登録ホストm1を含む |
2 |
拠点マネージャー(m2) |
登録ホストm2を含む |
3 |
エージェント(a1,a2) |
登録ホストa1,a2を含む |
4 |
エージェント(a3,a4) |
登録ホストa3,a4を含む |
拠点マネージャーでも同様のフィルタリングをしたい場合は,上記の内容を参考にして,イベント取得フィルターに共通除外条件を設定してください。なお,共通除外条件でJP1イベントをアクションの実行対象外にするには,共通除外条件を拡張モードに変更する必要があります。また,共通除外条件を拡張モードに変更して使用すると,条件群の適用期間を指定できるようになります。イベント取得フィルターの共通除外条件については,「4.2.7 共通除外条件」を参照してください。
共通除外条件の設定の詳細については,拡張モードを使用するかどうかによって設定画面が異なります。マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager 画面リファレンス」の次の説明を参照してください。
-
共通除外条件:3.15 [共通除外条件設定]画面
-
共通除外条件(拡張モードを使用する場合):3.16 [共通除外条件設定(拡張)]画面
(3) 拠点マネージャーおよびエージェントでのJP1/Baseの設定
転送先のホストの停止時間を考慮して,イベント転送のリトライの設定をします。この場合は,拠点マネージャー(m1,m2),エージェント(a1,a2,a3,a4)で設定します。リトライ期間はデフォルトで3,600秒です(60分間,一定間隔でリトライします)。転送先ホストのJP1/Baseの停止時間がこれを超える場合は調整してください。
詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
(4) メンテナンスの実施手順
ここでは,メンテナンス時の手順について説明します。
(a) 統合マネージャーのメンテナンス手順
統合マネージャー(mgr1)のメンテナンスは,次の順序で実施します。
-
JP1/IM - Managerを停止する。
-
JP1/Baseを停止する。
-
JP1/IM - ManagerおよびJP1/Baseのメンテナンスをする。
JP1/IM - Managerの設定情報のバックアップ,リカバリー,ディスク容量の管理などについてはマニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager 運用ガイド」の「1. JP1/IMシステムのメンテナンス」を,JP1/Baseについては,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のメンテナンスの説明を参照してください。
-
JP1/Baseを起動する。
-
JP1/IM - Managerを起動する。
なお,拠点マネージャーのJP1/IM - Managerをメンテナンスする場合も同様の手順です。
(b) 拠点マネージャー,エージェント(JP1/Base)のメンテナンス手順
拠点マネージャー(m1,m2)やエージェント※(a1,a2,a3,a4)のメンテナンスを実施するときには,統合マネージャー(mgr1)のイベント取得フィルターの共通除外条件を切り替えて,不要なイベントをフィルタリングします。
注※ エージェントとしてJP1/Baseを使用している場合が該当します。
メンテナンスの実施順序と,イベント取得フィルターの共通除外条件の切り替えのタイミングは次の図のようになります。
イベント取得フィルターの共通除外条件の切り替えは,jcochfilterコマンド,[システム環境設定]画面,または[イベント取得条件一覧]画面からできます。
- イベント取得フィルターの共通除外条件の切り替え手順
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マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager 運用ガイド」の「6.5.3 適用するイベント取得フィルターを切り替える」を参照。
- jcochfilterコマンドの詳細
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マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager コマンド・定義ファイル・APIリファレンス」の「jcochfilter」(1. コマンド)を参照。
- [システム環境設定]画面の詳細
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マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager 画面リファレンス」の「3.11 [システム環境設定]画面」を参照。
- [イベント取得条件一覧]画面の詳細
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マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager 画面リファレンス」の「3.14 [イベント取得条件一覧]画面」を参照。
なお,拠点マネージャー,エージェントにインストールされている製品によって,メンテナンス手順,バックアップファイルなどが異なります。メンテナンスの実施時には,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」またはJP1イベントを発行するそれぞれの製品のマニュアルを参照してください。
- メモ
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jcochfilterコマンドを使用してイベント取得フィルターを切り替える場合,JP1/AJSのスケジュールやカレンダーの機能を利用して,指定した時間に自動的にイベント取得フィルターを切り替えることができます。これによって,監視状態を自動的に移行するような運用もできます。