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JP1 Version 12 JP1/IT Desktop Management 2 構築ガイド


1.6.11 エージェントの接続先を自動設定する手順

接続先を決定するための情報をエージェントに配布しておくと、管理対象のコンピュータのIP アドレスから適切な接続先の上位システムを判断して、自動的に設定できます。コンピュータのIP アドレスが変更されると接続先も自動的に変更されるため、コンピュータが移動した場合に便利です。また、管理する機器に割り当てるIPアドレスの範囲ごとに複数の管理用サーバを用意して、1台の管理用サーバで管理する機器の台数が上限を超えないように分散して管理することもできます。ここでは、エージェントの接続先を自動設定する手順について説明します。

この機能は、JP1/IT Desktop Management 2 - Agentで使用できます。なお、中継システム、UNIX エージェントおよびMacエージェントでは使用できません。

メモ

この機能を使用する場合、マルチポーリングの設定(エージェント設定の[通信設定]−[複数の上位システムへのポーリングの設定])はしないでください。ただし、配布用の上位システムを切り替える機能を使用する場合は、マルチポーリングの設定をしてください。

メモ

パッケージセットアップマネージャの起動中にエージェントの接続先変更が動作した場合、パッケージセットアップマネージャの画面の更新を促すダイアログが表示され、新しい接続先に切り替わります。

メモ

この機能は、Citrix XenApp、Microsoft RDSサーバでは、サポートしていません。

〈この項の構成〉

(1) 接続する上位システムを自動的に設定・変更する

接続先の上位システムを自動的に設定・変更するには、あらかじめ接続先設定ファイル(itdmhost.conf)を作成し、管理対象のコンピュータに配布します。配布後の特定のタイミングで、接続先が自動的に再設定されます。

接続先設定ファイルを作成する

接続先設定ファイルは、接続する上位システムを決定するためのファイルです。このファイルは、管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲と対応する接続先の上位システムの組み合わせを定義しています。例えば、IPアドレスが「172.16.22.1〜172.16.22.255」のコンピュータの接続先は東京支部の管理用サーバ、IPアドレスが「172.17.22.1〜172.17.22.255」のコンピュータの接続先は名古屋支部の管理用サーバというように定義します。接続先設定ファイルの作成方法の詳細については、「(2) 接続先設定ファイル(itdmhost.conf)の作成」を参照してください。

作成した接続先設定ファイルをJP1/IT Desktop Management 2 - Managerのデータフォルダに格納しておくと、インストールセットの作成時にインストールセットに取り込まれます。

接続先設定ファイルを管理対象のコンピュータに配布する

接続先設定ファイルが取り込まれたインストールセットを使用してJP1/IT Desktop Management 2 - Agentをインストールすると、管理対象のコンピュータの次のフォルダに接続先設定ファイルが格納されます。

JP1/IT Desktop Management 2 - Agentのインストール先フォルダ\MASTER\DB

パッケージとして接続先設定ファイルを登録し、そのパッケージを配布するジョブを作成すれば、対象のコンピュータに配布することもできます。その場合の配布先は上記になるように設定してください。

管理対象になる前のコンピュータの場合は、手動で格納してもかまいません。

接続先が決定されるタイミング

接続先設定ファイルを管理対象のコンピュータに格納したあと、ポーリング(エージェントからのジョブの問い合わせ)が実行されるのを待つか、または管理対象のコンピュータのOSを再起動してください。接続先設定ファイルの内容に従って、エージェントが接続する上位システムが設定されます。

エージェントの接続先が決定されるポーリングは次の3種類です。

一度設定したあとでも、次の操作をしたあとにポーリングが実行されるのを待つか、またはOSを再起動すると接続先が再設定されます。

管理対象のコンピュータを移動してIPアドレスを変更した場合、ポーリングが実行されるのを待つか、またはOSを再起動するだけで適切な上位システムに接続先が変更されます。エンドユーザは接続先の変更を意識する必要がありません。

接続先設定ファイルによってエージェントの接続先の自動設定・変更が起きると、ログがエージェントごとにインストール先フォルダ\LOG\USER.LOGファイルに取得されます。接続先の自動変更に関するログについては、「JP1/IT Desktop Management 2 配布機能 運用ガイド」の接続先の自動変更関連のログの説明を参照してください。

ヒント

エージェントに複数のIPアドレスが設定されている場合、OSが決めた優先度が一番高いIPアドレスを取得して、接続する上位システムを決定します。その上位システムへの接続に成功した場合に、エージェントの接続先として設定されます。

接続先の自動変更と他機能との関係

接続先設定ファイルを使用した接続先の自動変更は、JP1/IT Desktop Management 2の他機能と併用できない場合があります。次の点に注意してください。

接続先設定ファイルによる接続先の設定を無効にするには、次のどれかの対処をしてください。どの場合でも、エージェントに上位接続先情報ファイルが存在しなければエージェント設定で指定した接続先に接続されるようになり、上位接続先情報ファイルが存在する場合は上位接続先情報ファイルに指定された接続先に接続されるようになります。

上位接続先情報ファイルによる接続先の設定も無効にする場合は、上記の接続先設定ファイルを上位接続先情報ファイルに読み替えてどれかの対処をしてください。

(2) 接続先設定ファイル(itdmhost.conf)の作成

接続先設定ファイルは、itdmhost.confという名称のテキストファイルです。作成方法を次に説明します。

接続先設定ファイルの形式

接続先設定ファイルには、管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲と対応する接続先の組み合わせを、1行につき1件定義します。各項目間は「,」(コンマ)で区切ってください。行の先頭に「;」(セミコロン)を付けると、その行はコメントと見なされます。なお、最終行の改行はしないでください。また、ファイルの文字コードにはUTF-8を使用してください。

接続先設定ファイルの形式を次に示します。

[ITDM]
最小のIPアドレス,最大のIPアドレス,接続先
最小のIPアドレス,最大のIPアドレス,接続先
  :
[DM]
最小のIPアドレス,最大のIPアドレス,接続先,接続種別[,マルチキャスト
配布用アドレス最小のIPアドレス,最大のIPアドレス,接続先,接続種別[,マルチキャスト
配布用アドレス]
  :

接続先設定ファイルの設定項目を次の表に示します。

セクション

項目

説明

入力できる値

省略可否

ITDM

エージェントが接続する管理用サーバを設定します。

必須

最小のIPアドレス

管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲で最小のIPアドレスを指定します。

半角数字で「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式

必須

最大のIPアドレス

管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲で最大のIPアドレスを指定します。

半角数字で「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式

必須

接続先

接続先の管理用サーバのホスト名またはIPアドレス※1を指定します。

ホスト名の場合は半角英数字255文字以下

IPアドレスの場合は半角数字で「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式

必須

DM

リモートインストールマネージャを使用した配布用の上位システムを設定します。

必須

最小のIPアドレス

管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲で最小のIPアドレスを指定します。

半角数字で「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式

必須

最大のIPアドレス

管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲で最大のIPアドレスを指定します。

半角数字で「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式

必須

接続先※2

リモートインストールマネージャを使用した配布用の接続先となる上位システムのホスト名またはIPアドレス※1を指定します。

ホスト名の場合は半角英数字64文字以下

IPアドレスの場合は半角数字で「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式

必須

接続種別※2

接続先が管理用サーバであれば「netmdm」を、中継システムであれば「netmdmw」を指定します。

必須

マルチキャスト配布用アドレス

管理対象のコンピュータにジョブをマルチキャスト配布したい場合、接続先に設定しているマルチキャストアドレスを指定します。

半角数字で「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式(範囲は224.0.1.0〜239.255.255.255)

省略可

注※1 ホスト名またはIPアドレスのどちらで指定するかは、管理用サーバのセットアップ時に[アドレス解決の設定]で指定した運用キーの内容に一致させてください。

注※2 1行に接続先と接続種別のセットを最大8個まで指定できます。複数の接続先と接続種別を指定した場合、先に指定した接続先の方が優先順位が上位となります。

接続先設定ファイルについての注意事項を次に示します。

接続先設定ファイルの作成例

接続先設定ファイルの作成例を次に示します。

;接続先設定
[ITDM]
172.17.12.1,172.17.12.250,manager01
172.17.13.1,172.17.13.250,manager02
0.0.0.0,255.255.255.254,manager04
[DM]
172.17.12.1,172.17.12.250,dmsub01,netmdmw,dmsub02,netmdmw,dmman01,netmdm
172.17.13.1,172.17.13.250,dmman01,netmdm,dmman02,netmdm
0.0.0.0,255.255.255.254,dmman02,netmdm

この例では、管理対象のコンピュータのIPアドレスが「172.17.13.6」の場合、接続先の管理用サーバは「manager02」という名前のホストで、リモートインストールマネージャを使用した配布用の上位システムは「dmman01」または「dmman02」という名前の管理用サーバになります。

なお、接続先設定ファイルの各セクションの最終行に、すべてのIPアドレスを範囲とする「0.0.0.0〜255.255.255.254」を定義しておくと、該当するIPアドレスがなかった場合の接続先となります。この例では172.17.12.1〜172.17.12.250、172.17.13.1〜172.17.13.250以外のコンピュータの接続先は、管理用サーバが「manager04」で、リモートインストールマネージャを使用した配布用の上位システムが「dmman02」になります。また、複数の接続先を指定した場合、先に指定した接続先の優先順位が上位となります。この例では、「dmsub01」や「dmman01」が優先順位1位となります。

ヒント

接続先設定ファイルを作成したあと、ファイルフォーマットを満たしているかどうかをcheckitdmhostコマンドでチェックできます。checkitdmhostコマンドについては、「8.13 checkitdmhost(接続先設定ファイルのフォーマットチェック)」を参照してください。

接続先設定ファイルを配布したあとの注意事項

接続先設定ファイルを管理対象のコンピュータに配布して接続先が設定されたあと、接続先ホストのIPアドレスを変更するときは、それまで適用していた接続先設定ファイルを該当する管理対象のコンピュータから削除しておいてください。削除しないと、接続先ホストのIPアドレス変更を契機に接続先の自動変更が動作し、想定した上位システムとは別の接続先が設定されることがあります。