JP1/Integrated Management - Service Support システム構築・運用ガイド

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1.2 JP1/IM - Service Supportの特長

ここでは,JP1/IM - Service Supportの特長を説明します。

<この節の構成>
(1) ユーザーからの問い合わせやシステム障害を解決が必要な案件として一元管理
(2) 過去の事例を基にした素早い回避策の提示を支援
(3) 案件の内容に応じて別プロセスに対応依頼
(4) 案件の発生から解決までの運用プロセスの改善を支援
(5) 各プロセスで対応する作業担当者の管理
(6) システム全体の案件の状況を管理

(1) ユーザーからの問い合わせやシステム障害を解決が必要な案件として一元管理

ユーザーからの問い合わせやシステム内で発生した障害事象,そこから派生するさまざまな問題を,解決が必要な案件として登録,一元管理できます。

案件の一元管理の概要を次の図に示します。

図1-3 案件の一元管理の概要

[図データ]

案件は,WWWブラウザー,コマンドまたはメールを使って登録できます。WWWブラウザーは主にユーザーからの問い合わせを受けたとき,コマンドは主にシステム障害時にその障害を案件として自動登録するとき,メールはJP1/IM - Service Supportにログインしないで簡単に案件を登録したいときなどに使用します。なお,JP1/IM - Service Supportは,システム障害を検知したり,検知を受けてコマンドを自動実行したりする機能はサポートしていないため,コマンドやメールによって案件を自動登録する場合には,JP1/IM - Managerなどの運用管理製品と連携する必要があります。

登録された案件は,案件管理DBと呼ばれるデータベースで一元管理されます。案件管理DBに登録された案件は,WWWブラウザーから参照,更新できます。更新すると,古い情報は履歴として案件管理DBに蓄積され,その案件に対する作業履歴として,あとから参照できます。

WWWブラウザー上で案件は,システム,プロセスごとに分類された状態で表示され,フィルタリング機能によって必要な案件だけを表示できます。また,解決期限が近づいている案件を,関係者にメールで通知することもできます。これらの機能によってJP1/IM - Service Supportを使用するユーザーは,案件の登録状況や解決状況を簡単に把握でき,案件を解決する活動に専念できます。

参考
JP1/IM - Service Supportでは,プロセスごとに入力項目の異なる,案件情報入力用のテンプレートを用意しています。これは,各プロセスで管理が必要な情報が異なるためです。
このマニュアルでは,これらのテンプレートのことを案件フォームと呼びます。案件フォームは,ユーザーの運用に合わせてカスタマイズできます。また,案件のステータスもカスタマイズできるので,運用に合わせて案件を処理する流れも変更できます。

(2) 過去の事例を基にした素早い回避策の提示を支援

過去に発生した案件の対処事例を参照することで,障害要因の一次切り分けや対処方法の調査に掛かる時間を短縮でき,障害や問い合わせに対し,素早く対処できます。

過去の対処事例を基にした案件の対処例を次の図に示します。

図1-4 過去の対処事例を基にした案件の対処例

[図データ]

障害連絡を受けた場合,作業履歴として残すため,必ずJP1/IM - Service Supportに登録します。登録後,調査を開始し,類似案件が過去に発生していないか検索します。JP1/IM - Service Supportでは,案件の発生日時や優先度,担当者の作業状況など,案件のさまざまな属性を条件に指定して,検索条件に一致する案件だけを表示できます。

検索した結果,類似案件があった場合は,そのときの対処事例を参考に今回の対処を作成します。また,関連案件として類似案件を追記します。JP1/IM - Service Supportでの作成完了後,回避策を連絡者に提示し,対処してもらいます。

(3) 案件の内容に応じて別プロセスに対応依頼

案件の内容に応じてほかのプロセス対応部署にその案件の対応を依頼できます。対応依頼時に自動でメール通知するなど,ほかのプロセス対応部署へのスムーズな引き継ぎを支援します。

案件の対応依頼例を次の図に示します。

図1-5 案件の対応依頼例

[図データ]

登録された案件から該当する案件だけを選択,別プロセスに登録することで,別プロセスの担当者に対応を依頼できます。また,そのときに別プロセスの担当者にメールを自動送信できます。

JP1/IM - Service Supportでは,これを案件のエスカレーションと呼びます。案件のエスカレーションでは,依頼先の部署で必要になると思われる案件情報をそのまま引き継げます。また,エスカレーションした案件は,関連案件として依頼先部署での作業状態を確認できます。

(4) 案件の発生から解決までの運用プロセスの改善を支援

蓄積した案件の情報は,CSVファイルに出力できます。出力したCSVファイルは,問い合わせや障害の発生傾向の分析などに利用できます。日,週,月単位での案件の発生頻度や,案件が多発するシステムを分析することで,システムの根本的な問題の解決を支援します。

また,案件の受付時間,案件の調査や対処に掛かった時間などを分析することで,解決が遅延した原因として,対処人員や対処方法に問題がなかったかを調べられます。

蓄積した案件の情報を基に,分析レポートを作成する場合の例を次の図に示します。

図1-6 案件の情報の分析レポートへの利用

[図データ]

CSVファイルに出力できる案件の情報は,案件数の集計データおよび案件情報の2種類です。案件数の集計データは,GUIからCSVファイルに出力できます。なお,CSVファイルに出力した集計データから分析レポートを作成するときに,JP1/IM - Service Supportがサンプルで提供しているマクロを利用することもできます。

案件情報はGUIまたはコマンドを使って,CSVファイルに出力できます。表計算ソフトや分析ツールなどを使って,出力したCSVファイルを分析レポートとして利用します。

(5) 各プロセスで対応する作業担当者の管理

JP1/IM - Service Supportは,JP1/IM - Service Supportを操作するユーザーのために,次の三つの管理機能を用意しています。これらを組み合わせて使用することで,適切な権限を,作業担当者ごとに与えることができます。

(a) ユーザー情報の管理

JP1/IM - Service Supportには,JP1/IM - Service Supportを操作するユーザーの情報を管理する機能があります。JP1/IM - Service Supportにログインするために必要となるユーザーIDやパスワードのほか,所属組織やメールアドレス,電話番号など,ユーザー個々の情報も管理できます。

(b) ロールの管理

JP1/IM - Service Supportで管理するユーザーを,JP1/IM - Service Supportでの作業分担に合わせてグループ化できます。これをロールと呼びます。

ロールを定義することで,ロール単位で操作対象にアクセス権限を割り当てられます。

例えば,チームを組んでAシステムのインシデント対応をする場合,「Aシステム-インシデント担当」のようなロールを作ることで,複数人が共通の権限で作業に当たれます。

なお,ロールには,ユーザーが作成,定義できるユーザー作成ロールと,システムで定義されているシステムロールの2種類があります。ユーザー作成ロールは上記例のように運用に合わせてユーザーが作成するロール,システムロールはJP1/IM - Service Supportの環境を構築する際に利用するロールです。

(c) アクセス権の管理

JP1/IM - Service Supportでは,個々のユーザー,ロールに対し,各プロセスで管理される案件へのアクセス権を細かく割り当てられます。

例えば,インシデント担当部署のメンバーには,インシデント管理プロセスでのフルコントロール権限を,問題管理などのほかのプロセスには参照権限だけを割り当てるといった運用ができます。また,各プロセス内でも担当者には案件の作成,編集権限を,管理者には審査,承認権限を,といった細かな権限割り当てができます。

(6) システム全体の案件の状況を管理

案件管理DBで一元管理している案件の情報を基に,システム全体の案件の状況を管理できます。案件の状況は,プロセスごとに案件の状態別に集計されます。この集計結果から,JP1/IM - Service Support上で処理されている案件の状況を,一括して管理できます。

また,案件の状況は,各ユーザーのアクセス権限に応じて表示される内容を制限できます。そのため,それぞれの作業分担に合った集計結果から,案件が滞留しているプロセスや,処理期限の迫っている案件を確認することもできます。作業分担に応じた案件状況の管理について,次の図に示します。

図1-7 作業分担に応じた案件状況の管理

[図データ]

JP1/IM - Service Supportで管理するシステム全体の案件状況を管理する情報システム管理者は,全システムの案件の集計結果を参照します。情報システム管理者は,各システムの状況を比較して,特定のシステムに集中している負荷の分散を図るなど,システムの問題点を解消できます。

また,システムC担当のシステム管理者は,自分の管理しているシステムの案件の集計結果を参照します。システムCのシステム管理者は,インシデント管理のプロセスで未処理案件が滞留していることを確認して,プロセスワークボード管理者に解決を指示できます。