Hitachi

高信頼化システム監視機能 HAモニタ Linux(R)(x86)編


5.5.4 リセットパスの構成

リセットパスは,実行系で障害が発生した場合に,系の入出力のリセットを指示するために使用します。共有ディスクのSCSIリザーブをする場合,およびLANの通信可否による系切り替え制御機能を使用する場合には使用しません。

リセットパスには,リセット専用のTCP/IP LAN(リセット専用LAN)を使用します。ブロードキャストで通信できるLANを使用してください。

BladeSymphonyまたはHA8000xMモデル以前の場合,各系の障害管理プロセサをリセット専用LANに接続します。HA8000xNモデル以降,またはRV3000の場合,各系のBMCおよび障害管理プロセサとなる管理サーバをリセット専用LANに接続します。

また,HAモニタから障害管理プロセサへリセットを指示するため,さらに各系のLANアダプタをリセット専用LANに接続します。

リセット専用LANは,トラフィック増加による系リセットの遅延や失敗を防止するため,ほかの業務で使用するLANとは分け,専用のLANにしてください。これによって,障害管理プロセサへの不当なアクセスも防止できます。

重要

監視パスとリセットパスを共用しないでください。単一点障害で両機能が使用できなくなるおそれがあります。

ただし,BladeSymphonyの場合,使用できるLANアダプタの数に制限があります。運用上しかたがないときは,監視パスを複線化する目的に限って共用してください。

ここでは,リセットパスの構成について検討する内容,および系切り替え構成間でリセットパスを共用する場合の注意事項について説明します。

〈この項の構成〉

(1) リセットパスの構成について検討する内容

リセットパスの構成は,使用するマシンの機種や系切り替え構成によって異なります。ここでは,リセットパスの構成について説明します。マシンの機種については「(1) プロセサ」を,系切り替え構成の種類については「2.1 系切り替え構成」を参照してください。

リセットパスの構成について検討する内容を次の表に示します。

表5‒8 リセットパスの構成について検討する内容

検討する内容

説明

障害管理プロセサとリセットパスの接続方法

障害管理プロセサには,システムのLANポートとは別のLANポートがあります。そのLANポートをリセットパスに接続することで,障害管理プロセサをリセットパスに接続します。

LANポートの搭載位置は機種によって異なります。詳細については,ハードウェアのマニュアルを参照してください。

リセットパスの二重化

リセットパスそのものは二重化できません。Linuxのカーネル拡張パッケージであるbondingパッケージなどを使用して,リセットパスが接続されているLANアダプタを二重化してください。

LANアダプタを二重化することで,LANアダプタに障害が発生した場合にもう一方のLANアダプタを使用して系切り替えができます。

なお,VMware ESXiで仮想化する場合,VMware ESXiの機能で,LANアダプタを冗長化することを推奨します。

RV3000の場合は,管理サーバが二重化されています(主系管理サーバおよび待機系管理サーバ)。どちらかが停止した場合は,HA Monitor Connectorが自動的に予備の管理サーバに切り替えます。

日立サーバ論理分割機構の利用有無(BladeSymphony)

日立サーバ論理分割機構を利用してLPAR間で系切り替え構成にする場合,一つのLPARが一つの系になります。したがって,各LPARからそれぞれリセットパスに接続する必要があります。

HA8000xNモデル以降,またはRV3000を使用している場合は,障害管理プロセサをBMCに読み替えてください。

リセットパスの接続構成の例を次に示します。

(2) 系切り替え構成間でリセットパスを共用する場合の注意事項

マシンの機種がBladeSymphony,HA8000,またはRV3000の場合,システム内で互いに監視し合わない系切り替え構成を複数構築すると,ハードウェアの制約上,複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用することがあります。

このようなネットワーク構成で環境設定を誤ると,HAモニタは系同士を正しく識別できません。そのため,系障害時に障害と無関係な系がリセットされたり,HAモニタが異常終了したりするおそれがあります。ここでは,HAモニタが系同士を正しく識別するための設定時の注意事項を,次の場合に分けて説明します。

なお,システム構築時には,ここで設定したIPアドレスが重複していないかどうかを確認する必要があります。IPアドレスの重複チェックについては,「6.25.1 複数系切り替え構成間での設定・定義のチェック」を参照してください。

メモ

次に示す,HAモニタのほかの適用OS,およびマシンの機種での系切り替え構成も対象です。

  • AIX(EP8000)

  • HP-UX(IPF)(BladeSymphony)

(a) 障害管理プロセサを共用する場合(BladeSymphony)

BladeSymphonyのモデルによって,SVPのHAモニタ連携設定で系切り替え構成ごとにポート番号を分ける設定ができる場合と,できない場合があります。それぞれについて,設定方法を次に示します。

系切り替え構成ごとにポート番号を分ける設定ができるモデルの場合

異なる系切り替え構成間での通信をしないよう,系切り替え構成ごとにポート番号を分ける設定をすることを推奨します。ポート番号を分けない設定もできますが,誤ってホストアドレスの設定を重複させてしまった場合に,系障害時に障害と無関係な系がリセットされたり,HAモニタが異常終了したりするおそれがあります。

図5‒12 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(SVPを共用する場合)

[図データ]

このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合,各シャーシのSVPは,異なる系切り替え構成にある系二つと接続されているため,系切り替え構成間でSVPを共用する構成となります。このような場合は,次の設定をしてください。

  • 自系のホストアドレスは,全系で異なる値を設定してください。別シャーシにある系でも,ホストアドレスによって系を識別できるよう,異なる値にします。

    ホストアドレスは,HAモニタの環境設定のaddressオペランドで設定してください。なお,誤って重複した値を指定してしまった場合は,メッセージKAMN414-Eが出力されます。「7.5.14 addressオペランドの指定値の重複に対処する」を参照して対処してください。

  • リセットパスのポート番号とSVPのポート番号が重複しないように設定してください。

  • リセットパスのポート番号は,系切り替え構成ごとに違う値を設定してください。ただし,仮想化をする場合,同一装置上の系では,同じ値を設定してください。

  • SVP のポート番号は,系切り替え構成ごとに違う値を設定してください。ただし,仮想化をする場合,同一装置上の系では,同じ値になります。

設定例については,「(3) 2シャーシ/4系(Basicモード)の構成」を参照してください。

なお,N+Mコールドスタンバイ構成の場合は,これまでに説明してきた注意事項に加えて,パーティション名は全系で異なる値を設定してください。設定例については,「(6) N+Mコールドスタンバイ構成」を参照してください。

系切り替え構成ごとにポート番号を分ける設定ができないモデルの場合

複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成で,系切り替え構成間で障害管理プロセサであるSVPを共用する場合の例を次に示します。

図5‒13 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(SVPを共用する場合)

[図データ]

このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合,各シャーシのSVPは,異なる系切り替え構成にある系二つと接続されているため,系切り替え構成間でSVPを共用する構成となります。このような場合は,次の設定をしてください。

  • 自系のホストアドレスは,全系で異なる値を設定してください。別シャーシにある系でも,ホストアドレスによって系を識別できるよう,異なる値にします。

    ホストアドレスは,HAモニタの環境設定のaddressオペランドで設定してください。なお,誤って重複した値を指定してしまった場合は,メッセージKAMN414-Eが出力されます。「7.5.14 addressオペランドの指定値の重複に対処する」を参照して対処してください。

  • リセットパスのポート番号は,全系で同じ値を設定してください。別シャーシにあっても,SVPを共用する系にはすべて同じ値を設定します。

  • SVPのポート番号は,すべて同じ値を設定してください。

  • リセットパスのポート番号とSVPのポート番号が重複しないように設定してください。

設定例については,「(3) 2シャーシ/4系(Basicモード)の構成」を参照してください。

なお,N+Mコールドスタンバイ構成の場合は,これまでに説明してきた注意事項に加えて,パーティション名は全系で異なる値を設定してください。設定例については,「(6) N+Mコールドスタンバイ構成」を参照してください。

(b) 障害管理プロセサを共用する場合(HA8000xNモデル以降,またはRV3000)

複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成で,系切り替え構成間で障害管理プロセサを共用する場合の例を次に示します。

図5‒14 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(障害管理プロセサを共用する場合)

[図データ]

このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合,系切り替え構成間で障害管理プロセサを共用する構成となります。このような場合は,次の設定をしてください。

  • 自系のホストアドレスは,全系で異なる値を設定してください。ホストアドレスは,HAモニタの環境設定のaddressオペランドで設定してください。なお,誤って重複した値を指定してしまった場合は,メッセージKAMN414-Eが出力されます。「7.5.14 addressオペランドの指定値の重複に対処する」を参照して対処してください。

  • リセットパスのポート番号,および障害管理プロセサのポート番号を次のように設定してください。

    • 一組の系切り替え構成内のすべての系で,同じ値を設定してください。

    • 系切り替え構成ごとに異なる値を設定してください。ただし,VMwareによる仮想化をする場合,同一装置上の系では,同じ値を設定してください。

  • リセットパスのポート番号,および障害管理プロセサのポート番号が重複しないように設定してください。

設定例については,「(2) 系切り替え構成が二組の場合」を参照してください。

(c) 障害管理プロセサを共用しない場合(BladeSymphonyまたはHA8000)

複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成で,系切り替え構成間で障害管理プロセサであるSVPを共用しない場合の例を次に示します。

図5‒15 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(障害管理プロセサを共用しない場合)

[図データ]

このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合,異なる系切り替え構成間でSVPは共用されません。このような場合は,次のどちらかの設定をしてください(両方の設定をしても問題ありません)。

  • 自系のホストアドレスは,全系で異なる値を設定してください。別シャーシにある系でも,ホストアドレスによって系を識別できるよう,異なる値にします。

    ホストアドレスは,HAモニタの環境設定のaddressオペランドで設定してください。なお,誤って重複した値を指定してしまった場合は,メッセージKAMN414-Eが出力されます。「7.5.14 addressオペランドの指定値の重複に対処する」を参照して対処してください。

  • リセットパスのポート番号は,系切り替え構成ごとに異なる値を設定してください。一組の系切り替え構成内の系間には同じ値を設定します。また,SVPのポート番号も,系切り替え構成ごとに異なる値を設定してください。

    リセットパスのポート番号とSVPのポート番号が重複しないように設定してください。

設定例については,BladeSymphonyの場合は「(4) 4シャーシ/4系(Basicモード)の構成」を,HA8000の場合は「(2) 系切り替え構成が二組の場合」を参照してください。

なお,N+Mコールドスタンバイ構成の場合は,これまでに説明してきた注意事項に加えて,パーティション名は全系で異なる値を設定してください。設定例については,「(6) N+Mコールドスタンバイ構成」を参照してください。

(d) N+Mコールドスタンバイ構成で予備のサーバモジュールを共用する場合(BladeSymphony)

ここでは,次のすべての場合に当てはまるネットワーク構成について説明します。

  • 複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用する場合

  • N+Mコールドスタンバイ構成で予備のサーバモジュールを共用する場合

このようなネットワーク構成の例を次に示します。

図5‒16 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(N+Mコールドスタンバイ構成で予備のサーバモジュールを共用する場合)

[図データ]

このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合は,次の設定をしてください。

  • 自系のホストアドレスは,全系で異なる値を設定してください。別シャーシにある系でも,ホストアドレスによって系を識別できるよう,異なる値にします。

    ホストアドレスは,HAモニタの環境設定のaddressオペランドで設定してください。なお,誤って重複した値を指定してしまった場合は,メッセージKAMN414-Eが出力されます。「7.5.14 addressオペランドの指定値の重複に対処する」を参照して対処してください。

  • リセットパスのポート番号は,全系で同じ値を設定してください。また,SVPのポート番号も,全系で同じ値を設定してください。

  • パーティション名は,全系で異なる値を設定してください。

設定例については,「(6) N+Mコールドスタンバイ構成」を参照してください。