Hitachi

高信頼化システム監視機能 HAモニタ Linux(R)(x86)編


5.5.3 監視パスの構成

監視パスは,実行系と待機系との間で,互いの系を監視したり,系切り替えのための情報を交換したりするために使用します。

なお,HAモニタ Extensionを使用して,一つの系切り替え構成での系の最大数を33以上に設定する場合には,監視パスに必要な条件が異なります。詳細については,「5.2.3 系の最大数を変更する場合の考慮点(HAモニタ Extension使用時)」を参照してください。

〈この項の構成〉

(1) 監視パスの接続方法

監視パス専用のTCP/IP LANを用意します。TCP/IP LANは,どの系切り替え構成でも使用できますが,専用のIPアドレスとポート番号が必要です。

監視パスは,LANアダプタを介して,監視し合う系同士(実行系と待機系)のプロセサ間を接続します。実行系と待機系,およびそれらを接続する監視パスは,同じネットワーク上に構成してください。一つの実行系に対して複数の待機系がある場合,実行系とすべての待機系を監視パスで接続し,同じネットワーク上に構成します。

(2) 監視パスの複線化

監視パスが1本の場合,監視パスに障害が発生すると,HAモニタが監視パスの障害を系障害と判断して,系切り替えを実行するおそれがあります。このような単一点障害での系切り替えを避けるために,監視パスを必ず複線化してください。また,1本以上は監視専用のパスにしてください。監視パスが1本の場合,系切り替え続行可否の判定が確実に行えない場合があります。

使用しているマシンの機種がBladeSymphonyの場合は,増設できるLANアダプタの数は限られます。そのため,監視パスを複線化するに当たって,監視パスと業務用LAN,および監視パスとリセットパスの兼用を考慮する必要がある場合があります。

共有ディスクのSCSIリザーブをする場合は,監視パスと業務用LANを兼用することを推奨します。多重障害によって複線化している監視パスが通信できなくなり,系切り替えを実施した場合に,切り替え元のHAモニタがリザーブの消滅を検知するまでの間,エイリアスIPアドレスが両系に付与された状態になることがあります。監視パスと業務用LANを兼用すると,切り替え元の系がエイリアスIPアドレスで通信することが少なくなります。

監視パスは6本まで複線化できます。監視パスを複線化しておくと,1本の監視パスに障害が発生しても,ほかのパスで系の監視を続行できます。また,次のどちらかの運用を選択できます。

なお,Linuxのカーネル拡張パッケージであるbondingパッケージやVMware ESXiの機能などを使用してLANアダプタを冗長化すれば,監視パスの複線化をしなくても単一点障害での系切り替えを避けることができます。ただし,LANアダプタの切り替えに時間が掛かるため,HAモニタの環境設定のpatrolオペランドに設定する値はLANアダプタの切り替え時間よりも大きくする必要があります。

(3) 複線化した監視パスに割り当てるIPアドレス

監視パスには,専用のIPアドレスとポート番号が必要です。監視パスを複線化するため,次のことに注意してください。

ネットワークアドレスは,ネットワーク番号とサブネット番号で構成されます。

  1. ネットワーク番号を監視パスごとに分ける場合

    指定できるIPアドレスに,制約はありません。IPアドレスの組み合わせの例を次に示します。

    表5‒5 IPアドレスの組み合わせの例(ネットワーク番号を監視パスごとに分ける場合)

    LAN

    IPアドレス

    ネットマスク

    ネットワーク番号

    サブネット番号

    ホスト番号

    LAN1

    100.2.1.130

    255.255.255.0

    100

    2.1

    130

    LAN2

    101.2.1.130

    255.0.0.0

    101

    なし

    2.1.130

  2. 同じネットワーク番号を割り当て,サブネットを監視パスごとに分ける場合

    同じネットマスクを指定する必要があります。

    すべての監視パスに同じネットワーク番号を割り当て,監視パスごとに異なるサブネットで構成するネットワークでは,異なるネットマスクを設定しないでください。例えば,次に示すIPアドレスの組み合わせは,ネットワーク番号が同じであり,かつネットマスクが異なるため,監視パスを複線化できません。

    表5‒6 監視パスを複線化できない例

    LAN

    IPアドレス

    ネットマスク

    ネットワーク番号

    サブネット番号

    ホスト番号

    LAN1

    100.2.1.130

    255.255.255.0

    100

    2.1

    130

    LAN2

    100.2.2.130

    255.255.0.0

    100

    2

    2.130

    次に示すIPアドレスの組み合わせは,ネットワーク番号およびネットマスクが同じであるため,監視パスを複線化できます。

    表5‒7 監視パスを複線化できる例

    LAN

    IPアドレス

    ネットマスク

    ネットワーク番号

    サブネット番号

    ホスト番号

    LAN1

    100.2.1.130

    255.255.255.0

    100

    2.1

    130

    LAN2

    100.2.2.130

    255.255.255.0

    100

    2.2

    130

    同じネットワーク番号を割り当て,サブネットを監視パスごとに分けて複線化したネットワーク構成を次の図に示します。

    図5‒7 監視パスを複線化したネットワーク構成

    [図データ]