19.22.3 システム構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)
AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)を次の図に示します。
- 〈この項の構成〉
(1) 前提ソフトウェア
AWS環境でのコールドスタンバイ構成の場合,実行系と待機系には次のソフトウェアが必要になります。
-
HAモニタ
HADBでは,HAモニタのモニタモードの機能を使用し,実行系の障害を監視しています。実行系で障害が発生した場合,HAモニタの系切り替え機能を使用して,待機系に系切り替えをします。
HAモニタの前提バージョンは,HADBサーバのOSがRHEL 7またはRHEL 8の場合は01-75以降です。HADBサーバのOSがRHEL 9の場合は01-78以降です。
実行系と待機系にインストールするHAモニタのバージョンは同じにしてください。
-
DRBD バージョン9以降
ネットワークを通じて,複数のサーバ間のハードディスク(ブロックデバイス)を複製するソフトウェア(OSS)です。
AWS環境でのコールドスタンバイ構成の場合,別々のアベイラビリティゾーンに実行系と待機系のインスタンスを用意します。このため,データベースを各系で保持し,レプリケートして内容を同期させる構成(HAモニタでのレプリケーション構成)にする必要があります。そのため,インスタンス間でのデータベースのレプリケーションにDRBDを使用します。
(2) サーバ構成
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」で示す構成例の場合,別々のアベイラビリティゾーンにインスタンスを1つずつ合計2つ用意し,各インスタンスにHADBサーバを1つずつ配置します。各HADBサーバは,2つの系(hadb01およびhadb02)で構成され,実行系はhadb01,待機系はhadb02になります。
各インスタンスの性能(CPU,メモリサイズなど)は同じである必要はありません。ただし,インスタンスの性能が異なる場合,系が切り替わったあとにSQL文の処理性能に差異が発生するおそれがあります。そのため,できる限り実行系と待機系のインスタンスの性能を同じにすることを推奨します。
- メモ
-
ここでの説明は,全インスタンスでインスタンスタイプr5b.xlargeを使用していることを前提としています。
(3) ネットワーク構成
AWS環境でのコールドスタンバイ構成の場合,次に示す4つのネットワークを使用します。
-
クライアント−サーバ間ネットワーク
-
監視パス
-
AWSエンドポイントへのネットワーク
-
ディスクレプリケーションパス(DRBD用ネットワーク)
- ■クライアント−サーバ間ネットワーク
-
HADBクライアントとHADBサーバ間の通信で使用するネットワークです。
HADBクライアントは,エイリアスIPアドレスを使用してHADBサーバに接続します。そのため,マニュアルHAモニタ パブリッククラウド編の【AWS】リソースの引き継ぎを参照して,エイリアスIPアドレスを設定してください。
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」でのIPアドレス,およびポート番号の設定例を次の表に示します。
表19‒14 クライアント−サーバ間ネットワークのIPアドレスとポート番号の設定例 項番
設定対象
IPアドレス
ポート番号
1
クライアントマシン
10.196.108.111
設定不要
2
サーバマシンhadb01(実行系)
10.196.108.11
23650
3
サーバマシンhadb02(待機系)
10.196.108.12
23650
4
エイリアスIPアドレス
10.196.108.143
23650
- ■監視パス
-
HAモニタの監視パスとして使用するネットワークです。
ネットワーク構築をする際,複線にする必要がある場合は,LinuxのBonding機能を使用してください。
Bonding機能の詳細については,OSのマニュアルを参照してください。HAモニタの監視パスの設定については,マニュアルHAモニタ パブリッククラウド編の監視パスの設定を参照してください。
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」でのIPアドレス,およびポート番号の設定例を次の表に示します。
表19‒15 監視パスのIPアドレスとポート番号の設定例 項番
設定対象
IPアドレス
ポート番号
1
サーバマシンhadb01(実行系)のHAモニタの監視パス
172.16.0.11
7777
2
サーバマシンhadb02(待機系)のHAモニタの監視パス
172.16.0.12
7777
- ■AWSエンドポイントへのネットワーク
-
AWS環境の場合,HAモニタは系(インスタンス)のリセットを,AWSのエンドポイントに障害が発生した系のインスタンスの強制停止を指示することで実現しています。そのため,AWSのエンドポイントへの接続が必要となります。詳細については,マニュアルHAモニタ パブリッククラウド編の【AWS】AWSの設定を参照してください。
- ■ディスクレプリケーションパス(DRBD用ネットワーク)
-
DRBDのデータベースの複製で使用するネットワークです。
ディスクレプリケーションパスの設定については,マニュアルHAモニタ パブリッククラウド編の【AWS】【Azure】レプリケーションソフト(DRBD)の設定を参照してください。
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」でのIPアドレス,およびポート番号の設定例を次の表に示します。
表19‒16 ディスクレプリケーションパスのIPアドレスとポート番号の設定例 項番
設定対象
IPアドレス
ポート番号
1
サーバマシンhadb01(実行系)のディスクレプリケーションパス
172.16.0.21
7789
2
サーバマシンhadb02(待機系)のディスクレプリケーションパス
172.16.0.22
7789
(4) ストレージ構成
AWS環境でのコールドスタンバイ構成の場合,次のファイルシステムおよびディスクを準備してください。
-
系ローカルのファイルシステム
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」の場合,LOC011~LOC021が該当します。
-
系切り替え対象のファイルシステム
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」の場合,FS011〜FS014,およびFS021〜FS024が該当します。
-
DBエリアファイル用のディスク
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」の場合,LU011〜LU015,LU021〜LU025,WRK011およびWRK021が該当します。
「図19‒7 AWS環境でのコールドスタンバイ構成例(クラウドストレージ機能を使用しない場合)」の場合,次の表に示すファイルシステムおよびディスクを,各インスタンスのそれぞれのストレージに準備してください。
項番 |
格納先 |
名称 |
対象インスタンス |
用途 |
---|---|---|---|---|
1 |
EBS(gp2) |
LOC011 |
サーバマシンhadb01(実行系) |
系ローカルのファイルシステム |
2 |
LOC021 |
サーバマシンhadb02(待機系) |
||
3 |
EBS(gp3) |
FS011~FS014 |
サーバマシンhadb01(実行系) |
系切り替え対象のファイルシステム |
4 |
FS021~FS024 |
サーバマシンhadb02(待機系) |
||
5 |
LU011~LU015 |
サーバマシンhadb01(実行系) |
DBエリアファイル用のディスク |
|
6 |
LU021~LU025 |
サーバマシンhadb02(待機系) |
||
7 |
WRK011 |
サーバマシンhadb01(実行系) |
作業表用DBエリアファイル用のディスク |
|
8 |
WRK021 |
サーバマシンhadb02(待機系) |
||
9 |
EFS |
- |
- |
共有ファイルシステム |
- (凡例)
-
-:該当しません。
- ■EBS(gp2)の使い方
-
EBS(gp2)は,系ローカルのファイルシステムとして使用します。各インスタンスのOS用の領域(ルートボリューム)として使用するEBS(gp2)上のファイルシステム(/home下など)に,次のディレクトリを作成します。
-
サーバディレクトリ
-
統一フォーマット用監査証跡の出力先ディレクトリ(監査証跡機能を使用する場合に必要)
-
- ■EBS(gp3)の使い方
-
EBS(gp3)は,系切り替え対象のファイルシステム,およびDBエリアファイル用のディスクとして使用します。
-
系切り替え対象のファイルシステム
次の4つの系切り替え対象のファイルシステムを実行系および待機系の両方に作成してください。
-
DBディレクトリ用のファイルシステム
-
作業用一時ファイルを格納するファイルシステム※
-
同義語辞書の同義語辞書ファイルを格納するファイルシステム(同義語検索を使用する場合に必要)
-
監査証跡ファイルを出力するファイルシステム(監査証跡機能を使用する場合に必要)
- 注※
-
作業用一時ファイルを格納するファイルシステムを系切り替え対象としない場合は,実行系と待機系のそれぞれの系ローカルのファイルシステム上に作業用一時ファイルの格納先を用意してください。
系切り替え対象の各ファイルシステムのVG名称,およびLV名称は次のようになります。
-
FS011およびFS021(DBディレクトリ用のファイルシステム)
VGの名称:vg_hadb01
LVの名称:hadb_db
-
FS012およびFS022(作業用一時ファイルを格納するファイルシステム)
VGの名称:vg_hadb02
LVの名称:hadb_workarea
-
FS013およびFS023(同義語辞書の同義語辞書ファイルを格納するファイルシステム)
VGの名称:vg_hadb03
LVの名称:hadb_syndict
-
FS014およびFS024(監査証跡ファイルを出力するファイルシステム)
VGの名称:vg_hadb04
LVの名称:hadb_audit
上記のファイルシステムを作成するLVは,次の手順で作成してください。
-
FS011~FS014,およびFS021~FS024は,同じ内容となるように常時同期させる必要があるため,ファイルシステムごとに準備したEBS(gp3)を下位デバイスとしてDRBD論理デバイスを定義してください。
-
1.のDRBD論理デバイスをPVとして,VGを作成してください。
-
2.のVG内にLVを作成してください。
-
-
DBエリアファイル用のディスク
実行系および待機系の両方に,次のDBエリアごとにEBS(gp3)を準備します。
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マスタディレクトリ用DBエリア(LU011,LU021)
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ディクショナリ用DBエリア(LU012,LU022)
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システム表用DBエリア(LU013,LU023)
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データ用DBエリア(LU014,LU015,LU024,LU025)
LU011~LU015,およびLU021~LU025は,同じ内容となるように常時同期させる必要があるため,LU011~LU015,およびLU021~LU025を下位デバイスとしたDRBD論理デバイスを定義してください。
また,作業表用DBエリアADBWRKを構成するディスクであるWRK011とWRK021用に,実行系および待機系の両方にEBS(gp3)を用意します。ただし,WRK011とWRK021は,DRBDで同期させる必要はありません。
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- ■EFSの使い方
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全インスタンスでNFSとして使用できるEFSに,次のファイルシステムを配置します。
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データインポートで使用する入力データファイルを格納するファイルシステム
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ADB_CSVREAD関数で使用するCSVファイルを格納するファイルシステム(ADB_CSVREAD関数を使用した検索をする場合に必要)
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監査証跡の保存先ディレクトリを作成するファイルシステム(監査証跡機能を使用する場合に必要)
実行系と待機系で,同じパスのディレクトリにマウントしてください。
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