分散トランザクション処理機能 TP1/Connector for .NET Framework 使用の手引

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3.1.2 サービス定義

サービス定義は,次のUAPからSPP.NET,またはSPPに対してサービス定義を使用してRPCを実行する場合に定義します。

サービス定義は,サービス定義のファイルとサービス定義が参照するデータ型定義のファイルから構成されます。この節では,サービス定義の定義方法の詳細について説明します。サービス定義を使用したRPCについては,マニュアル「TP1/Client for .NET Framework 使用の手引」を参照してください。

<この項の構成>
(1) データ型定義ファイル
(2) サービス定義ファイル
(3) サービス定義からXMLスキーマへのマッピング

(1) データ型定義ファイル

データ型定義とは,RPCでやり取りされる入力データや出力データの形式をメッセージ単位で定義するものです。

サービス定義から参照するデータ型定義ファイルは,次に示す形式で独立したファイルとして定義します。

(a) 形式
 
struct データ型定義名称 {
        データ型 メンバ名称[配列指定];
    〔〔データ型 メンバ名称[配列指定];〕…〕
};
〔〔struct データ型定義名称 {
        データ型 メンバ名称[配列指定];
    〔〔データ型 メンバ名称[配列指定];〕…〕
};〕…〕
(b) 説明
●データ型定義名称  〜〈31文字以内の識別子〉
データ型定義に付ける名称を指定します。
指定された名称がカスタムレコードクラスのクラス名となります。
●データ型
メンバ名称で示される変数に対するデータ型を指定します。
クライアントスタブ生成コマンド(spp2cstub)は,定義された各メンバのデータ型を次の表に示すように,.NET Frameworkのデータ型に対応づけてカスタムレコードクラスを生成します。
また,データの内容を次の表に示すように変換します。

表3-4 データ型の変換規則と変換内容

データ型定義ファイルで定義されたデータ型 データ型の説明 カスタムレコードクラスで定義される.NET Frameworkのデータ型 データ変換の内容
char 文字列 System.String charは.NET FrameworkのSystem.Stringに対応づけられます。カスタムレコードを入力データとして使用する場合,スタブ生成コマンドに指定したエンコード方式に従ってバイト配列に変換しデータを扱います。
バイト配列に変換した結果が32バイトで,データ型定義がchar a[30]の場合,2バイトは破棄されます。
int 32ビット符号付き整数 System.Int32 intは.NET FrameworkのSystem.Int32に対応づけられます。
カスタムレコードを入力データとして使用する場合,スタブ生成コマンドに指定されたエンディアンでバイト配列に変換して,RPCの要求メッセージに設定します。
カスタムレコードを出力データとして使用する場合,応答メッセージから4バイトをスタブ生成コマンドに指定されたエンディアンで読み込み,データにセットします。
short 16ビット符号付き整数 System.Int16 shortは.NET FrameworkのSystem.Int16に対応づけられます。カスタムレコードを入力データとして使用する場合,指定されたエンディアンでバイト配列に変換して,RPCの要求メッセージに設定します。
カスタムレコードを出力データとして使用する場合,RPCの応答メッセージから2バイトをスタブ生成コマンドに指定されたエンディアンで読み込み,データにセットします。
long 32ビット符号付き整数 System.Int32 longは.NET FrameworkのSystem.Int32に対応づけられます。
カスタムレコードを入力データとして使用する場合,スタブ生成コマンドに指定されたエンディアンでバイト配列に変換して,RPCの要求メッセージに設定します。
カスタムレコードを出力データとして使用する場合,応答メッセージから4バイトをスタブ生成コマンドに指定されたエンディアンで読み込み,データにセットします。
byte バイナリデータ System.Byte byteは.NET FrameworkのSystem.Byteにマッピングします。
一次元配列指定にだけ使用できます。
struct 構造体 class(インナークラス) データ型定義でstructとして定義されるデータ型のことを構造体と呼びます。
structはインナークラスに対応づけられます。
データ型がint,long,またはstructの場合は,先頭からのオフセットが4の整数倍でなければなりません。また,shortの場合は,先頭からのオフセットが2の整数倍でなければなりません。
なお,スタブ生成コマンドでは,自動的にバウンダリ調整をしないため,先頭からのオフセットが正しい整数倍でない場合,エラーとなるので注意が必要です。
バウンダリ調整については,「(d) バウンダリ調整」を参照してください。
 
データ型がstructの場合は,次に示すように定義します。
 
struct 構造体名称 {
        データ型 メンバ名称[配列指定];
    〔〔データ型 メンバ名称[配列指定];〕…〕
} メンバ名称[配列指定];
 
データ型定義でstructとして定義されるメンバは,その構造体名称がそのままインナークラスのクラス名称になり,メンバ名称がインナークラスの型を持つプロパティ名称になります。
ここで指定するデータ型,メンバ名称,配列要素数はデータ型定義に従います。また,この構造体のデータ型定義先頭からのオフセットは,4の整数倍でなければなりません。また,構造体自身のサイズも4の整数倍でなければなりません。
ただし,構造体を構成するメンバ(構造体の中に構造体がある場合は,そのメンバも含む)がすべてcharまたはbyteの場合は,任意のオフセットおよび任意のサイズを定義できます。
データ型定義でstructとして定義される配列型は,可変長構造体配列として扱えます。可変長構造体配列については,「(e) 可変長構造体配列」を参照してください。
●構造体名称  〜〈31文字以内の識別子〉
構造体に付ける名称を指定します。
構造体名称の先頭文字は半角英字とします。2文字目以降は半角英数字および半角アンダスコア(_)が使用できます。
●メンバ名称  〜〈31文字以内の識別子〉
メンバ名称を指定します。
メンバ名称の先頭文字は半角英字で指定してください。
●配列指定
配列要素数  〜〈符号なし整数〉((1〜8388608))
メンバがデータ型の配列の場合,配列要素数を指定します。
データ型がint,short,long,またはstructのときは,一次元配列が指定できます(配列指定なしも指定できます)。
データ型がbyteのときは,一次元配列だけ指定できます。
データ型がcharのときは,二次元配列まで指定できます。
一次元配列
[配列要素数]
二次元配列
[配列要素数][配列要素数]
(c) データ型定義の定義例
 
struct in_data {
 long I_basho[3];
 long I_kakaku;
 long I_tokuchou;
};
 
struct out_data {
 char o_name[20];
 char o_basho[16];
 char o_tokuchou[20];
 long o_kakaku;
 char o_inf[80];
};
 
struct out_data2 {
 char o_name[20];
 char o_basho[16];
 char o_tokuchou[20];
 long o_kakaku;
 char o_inf[80][20];
};
 
struct put_data {
 int  o_num;
 struct data {
  char o_name[20];
  char o_basho[16];
  char o_tokuchou[20];
  long o_kakaku;
  char o_inf[80];
 } data_t[100];
};
(d) バウンダリ調整

バウンダリ調整とは,データ型定義の各変数を決められたバイト境界に配置することをいいます。バウンダリ調整は,コンパイラが自動的に行います。

例えば,次に示すような構造体を使用している場合,先頭からのオフセットを正しくするため,実際はOS,およびコンパイラによって,dataとnumの間に1バイトの補正が入ります。

構造体の定義例
 
struct s_data {
    char data[3];
    long num;
} s_data_t
 
バウンダリ調整後の定義例
 
struct s_data {
  char data[3];
    <1バイト>
    long num;
} s_data_t
 

この例の場合には,次のように修正して使用してください。

修正前
 
struct s_data {
    char data[3];
    long num;
} s_data_t;
 
修正後
 
struct s_data {
    char data[3];
    char wk;
    long num;
} s_data_t;
 
ポイント
OpenTP1 for .NET Framework以外のOpenTP1システムで使用していた構造体をデータ型定義として使用する場合などは,バウンダリ調整に注意してください。
(e) 可変長構造体配列

データ型がstructで,配列型の場合は,可変長構造体配列として扱えます。可変長構造体配列は次に示す形式で定義します。

可変長構造体配列の形式
 
int 配列要素数を示すメンバ名称
struct 構造体名称 {
                   データ型 メンバ名称[配列指定];
                  〔〔データ型 メンバ名称[配列指定];〕…〕
} メンバ名称[配列要素数を示すメンバ名称:配列の最大要素数];
 

可変長構造体配列を指定する場合は,可変長構造体配列の配列要素数を「データ型がint型の配列要素数を示すメンバ名称:配列の最大要素数」という形式で記述します。構造体名称,データ型,メンバ名称および配列指定については,「(b) 説明」を参照してください。

可変長構造体配列の定義例
 
struct put_data {
                 int o_num;
                 struct data{
                             char o_name[20];
                             char o_basho[16];
                             char o_tokuchou[20];
                             long o_kakaku;
                             char o_inf[80];
                             } data_t[o_num:100];
                 };
 

可変長構造体配列を使用する場合は,次の点に注意してください。

(f) 注意事項

(2) サービス定義ファイル

サービス定義とは,サービスの入出力データに対応するデータ型定義を定義するものです。

サービス定義ファイルは,次に示す形式で独立したファイルとして定義します。

(a) 形式
 
#include "データ型定義ファイル名"
〔〔#include "データ型定義ファイル名"〕
…〕
 
interface サービス定義名称 {
      サービス名称(入力データ型定義名, 出力データ型定義名);
  〔〔サービス名称(入力データ型定義名, 出力データ型定義名);〕…〕
}
(b) 説明
●データ型定義ファイル名  〜〈ファイル名〉
このサービス定義で参照するデータ型定義が定義されているファイル名を指定します。ファイル名は次のどちらかの形式で指定します。
  • 拡張子を含んだファイル名だけを指定する。
  • 相対パスまたは絶対パスを含んだファイル名で指定する。
なお,パス指定時の区切り文字には「/」または「\」が使用できます。
●サービス定義名称  〜〈31文字以内の識別子〉
このサービス定義に付けるサービス定義名称を指定します。
任意に名称を付けることができます。デフォルトではこの名称からクライアントスタブなどのクラス名が生成されます。
●サービス名称  〜〈31文字以内の識別子〉
このサービス定義に含めるサービス名称を指定します。
対象となるユーザサーバが持つサービス名称を指定してください。
●入力データ型定義名  〜〈31文字以内の識別子〉
各サービスの入力データに対応するデータ型定義名称を指定します。
入力データ型定義名は,このサービス定義ファイルの#includeディレクティブで指定したデータ型定義ファイルで定義されたデータ型定義名称でなければなりません。
●出力データ型定義名  〜〈31文字以内の識別子〉
各サービスの出力データに対応するデータ型定義名称を指定します。
出力データ型定義名は,このサービス定義ファイルの#includeディレクティブで指定したデータ型定義ファイルで定義されたデータ型定義名称でなければなりません。
ただし,出力データがない場合は,出力データ型定義名にはDC_NODATAを指定してください(非応答型RPCの場合だけ使用できます)。
(c) サービス定義の定義例
サービス定義の定義例1(業務1のサービス定義)
 
#include "mydata.h"
/* 業務1のサービス定義 */
interface GYOUMU1 {
    GETDATA1(in_data, out_data);
    GETDATA2(in_data, out_data2);
}
サービス定義の定義例2(業務2のサービス定義)
 
#include "datas/mydata.h"
/* 業務2のサービス定義 */
interface GYOUMU2 {
    GET_DATA1(in_data, out_data);
    PUT_DATA1(put_data, DC_NODATA);  /* 非応答型 */
}
データ型定義の定義例(mydata.h)
 
struct in_data {
 long I_basho[3];
 long I_kakaku;
};
struct out_data {
 char o_name[20];
 char o_basho[16];
 long o_kakaku;
 char o_inf[80];
};
struct out_data2 {
 char o_name[20];
 char o_basho[16];
 long o_kakaku;
 char o_inf[80][20];
};
struct put_data {
 int  o_num;
 struct data {
  char o_name[20];
  char o_basho[16];
  long o_kakaku;
  char o_inf[80];
 } data_t[100];
};
(d) 注意事項

(3) サービス定義からXMLスキーマへのマッピング

クライアントスタブ生成コマンド(spp2cstub)で-Xオプションを指定して,サービス定義からクライアントスタブを生成すると,引数および戻り値がXmlDocumentクラス(System.Xml.XmlDocument)となるサービスメソッドがクライアントスタブに追加されます。サービスメソッドの引数および戻り値のXmlDocumentクラスに指定できるXMLの形式は,クライアントスタブと一緒に生成される入力データ用XMLスキーマおよび出力データ用XMLスキーマで定義されます。

データ型定義の内容を基にして,次の図のように入力データ用XMLスキーマおよび出力データ用XMLスキーマに定義されます。入力データ用XMLスキーマのファイル名は,「〈対応する入力データ型定義名称〉.xsd」となり,出力データ用XMLスキーマのファイル名は,「〈対応する出力データ型定義名称〉.xsd」となります。

クライアントスタブ生成コマンド(spp2cstub)によって出力されるXMLスキーマは,XMLスキーマ仕様「XML Schema Definition language(XSD)1.0」に従います。なお,名前空間URIとして「http://www.w3.org/2001/XMLSchema」が指定されます。

図3-2 サービス定義,データ型定義,およびサービスメソッド用スキーマの関係

[図データ]

注※
サービス定義で指定した入力データ型定義,出力データ型定義ごとに,入力データ用XMLスキーマ,出力データ用XMLスキーマが生成されます。