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Cosminexus V11 アプリケーションサーバ システム設計ガイド


3.1.3 システム構成の考え方

ここでは,システム構成を検討するときの基本的な考え方について説明します。アプリケーションサーバで構築する実行環境は,複数のプロセスで構成されます。また,各プロセスには,提供する機能ごとに,複数のレイヤがあります。このレイヤを,機能レイヤといいます。

実行環境では,各機能レイヤをそれぞれ異なるサーバに配置できます。配置は,システムの規模や目的に応じて検討する必要があります。

機能レイヤの配置例を次の図に示します。

図3‒5 機能レイヤの配置例

[図データ]

ここでは,次の機能レイヤを実行環境に配置する場合の構成の考え方について説明します。

〈この項の構成〉

(1) WebサーバとWebコンテナ(J2EEサーバ)の配置

Webサーバは,Webコンテナに対するHTTPリクエストのディスパッチ処理のほか,業務処理に含まれる静的コンテンツの処理を実行します。Webコンテナは,J2EEサーバの一部として動作して,サーブレットおよびJSPを実行するための基盤になる機能です。WebサーバとWebコンテナは同じホストまたは異なるホストに配置できます。なお,Webサーバを経由しないでJ2EEサーバのNIO HTTPサーバに直接アクセスする場合は,Webサーバは不要です。

これを踏まえた上で,次の説明を参照して,システム構成を決定してください。

(2) CTMとEJBコンテナ(J2EEサーバ)の配置

CTMは,OLTP技術を用いて,クライアントからのリクエストをスケジューリングする機能です。EJBコンテナは,J2EEサーバの一部として動作して,Enterprise Beanの実行および通信,トランザクション管理などのシステムレベルのサービスを提供するための基盤になる機能です。

CTMでは,EJBコンテナに対して送信されたIIOPリクエストのスケジュール処理と負荷分散処理を実行します。CTMはIIOPリクエストを処理するために特化された機能レイヤなので,EJBコンテナと別のホストに配置する必要はありません。IIOPリクエストの負荷分散は,CTM間のデータ転送で実現されます。ただし,CTMによる負荷分散の対象になるのは,Stateless Session Beanだけです。

CTMとEJBコンテナの関係は,1対多にして,それぞれロードバランスクラスタ構成にすることをお勧めします。これによって,スループットが向上します。また,拡張性と性能が高いシステムを構築できます。また,クラスタ構成にすれば障害発生時の部分縮退や部分回復ができるようになるので,信頼性と可用性も向上します。

これを踏まえた上で,次の説明を参照して,システム構成を決定してください。

(3) JCAとEISの配置

JCAは,既存システムやデータベースなどのEISと接続するためのサポート機能を提供します。

EISに対して,JCAではコネクションプーリング処理をします。EISを一つのサーバで構築している場合,JCAとEISの関係は,多対1になります。EISを複数のサーバで構築している場合は,JCAとEISの関係は多対多になります。JCAでは,EISとの接続で障害が発生した場合に,自動回復する機能を持っているので,信頼性と可用性が確保されています。

(4) ネーミングサービスの配置

ネーミングサービスは,名前からオブジェクトを利用できるようにするネーミング管理機能を提供します。ネーミングサービスは,TPBrokerによって提供されるサービスです。J2EEサーバのインプロセスで起動することをお勧めします。

インプロセスで起動することによって,アプリケーションサーバ内のプロセス数が削減できます。また,個別プロセスとしての起動処理や停止処理が不要になり,運用性が向上します。

(5) 運用管理プロセスの配置

Management Serverは,アプリケーションサーバ全体を運用管理するための機能を集約したサーバです。システムの運用管理,監視の対象範囲となるドメイン内に一つ配置します。

ここでは,J2EEサーバなどのほかのプロセスとは別のホストに配置した構成を使用して説明していますが,同じホストに配置した構成にすることもできます。

運用管理,監視の対象になるプロセスを配置したホストには,それぞれ運用管理エージェントを起動します。運用管理エージェントは,運用管理サーバからの指示を受けて,各ホストで操作を実行します。

運用管理者は,Smart Composer機能またはManagement Serverのコマンドを使用して,運用管理を実行します。これらのコマンドは,Management Serverを配置したホストで実行します。

参考

開発環境やテスト環境で運用管理を実行する場合には,必要に応じて次の機能も使用できます。

  • 運用管理ポータル

    WebブラウザからManagement Serverを配置したホストにアクセスして実行します。

なお,運用管理ポータルを使用する場合は,必要に応じて管理クライアントマシンを用意してください。

運用管理プロセスを配置した構成については,「3.9 運用管理プロセスの配置を検討する」を参照してください。