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Cosminexus V11 BPM/ESB基盤 サービスプラットフォーム システム構築・運用ガイド


付録G.4 ローリングアップデートの場合の移行手順

ローリングアップデートとは,システムを全面停止しないで,更新インストールで移行する方法です。

ローリングアップデートで移行できるのは,バージョンが07-50以降のときだけです。07-50より前のバージョンを移行する場合は,11-20を新規にインストールして移行してください。移行時の注意事項については,「(15) ローリングアップデートで移行する場合の注意事項」を参照してください。

また,ローリングアップデートで移行する場合,2台以上のHCSCサーバでロードバランスクラスタを構成している必要があります。

次の図に示す「(1) リポジトリのエクスポート(運用環境)」〜「(13) リクエストの送信制御の解除(ロードバランサ)」の手順に従って,サービスプラットフォームを07-50以降のバージョンから11-20へ移行してください。

図G‒3 ローリングアップデートの場合の移行手順

[図データ]

図G-3の「(1) リポジトリのエクスポート(運用環境)」〜「(13) リクエストの送信制御の解除(ロードバランサ)」の手順の詳細を次に示します。2台目以降のHCSCサーバに対しては,「(14) 2台目以降のHCSCサーバ(実行環境)に対しての作業」の手順も実行してください。

なお,手順内で使用するコマンドの詳細については,マニュアル「サービスプラットフォーム リファレンス」の「5. コマンド(運用環境・実行環境)」を参照してください。また,開発環境で実施する作業の詳細については,マニュアル「サービスプラットフォーム 開発ガイド 基本開発編」を参照してください。

注意事項
  • バージョン07-60以降では,開発環境と運用環境で同じリポジトリを共有できません。旧バージョンでリポジトリを共有していた場合,開発環境と運用環境で別々のリポジトリを用意して,移行してください。移行手順については,マニュアル「サービスプラットフォーム 開発ガイド 基本開発編」の「付録A.3 旧バージョンで開発環境と運用環境のリポジトリを共有していた場合の移行手順」を参照してください。

  • ローリングアップデートでの移行が完了するまで,旧バージョンのシステムに対して,次の操作はできません。

    ・cscsvsetupコマンドで,新規にHCSCサーバをセットアップする

    ・csccompodeployコマンドで,新規にHCSCコンポーネントを配備する

〈この項の構成〉

(1) リポジトリのエクスポート(運用環境)

バージョンアップ前の運用環境のリポジトリをエクスポートして,いったん退避します。複数のリポジトリを使用している場合は,すべてのリポジトリをエクスポートして退避します。

cscrepctlコマンド(-exportオプション)を運用環境で実行して,バージョンアップ前のリポジトリをエクスポートしてください。

リポジトリのエクスポート方法の詳細については,「4.2 リポジトリのエクスポート」を参照してください。

(2) 開発環境および運用環境のインストール

開発環境および運用環境で,11-20のサービスプラットフォームをインストールしてバージョンアップします。

開発環境は,新規インストールまたは更新インストールのどちらかの方法でインストールします。運用環境は更新インストールでインストールします。

新規にインストールする場合

付録G.2 新規にインストールする場合の移行手順」の「(2) HCSCコンポーネントの削除(運用環境)」〜「(6) HCSCサーバの構築(運用環境)」の作業を実施します。

更新インストールする場合

付録G.3 更新インストールする場合の移行手順」の「(2) 各環境の更新インストール」〜「(5) 製品のアンインストール」の作業を実施します。

開発環境および運用環境をインストールするときの前提条件を次に示します。

前提条件
  • HCSCサーバがセットアップ済みであること

  • サービスプラットフォームおよびReliable Messagingが停止していること

  • 組み込みデータベースを使用している場合,組み込みデータベースを停止していること

  • HCSCサーバ,J2EEサーバ,およびHCSCコンポーネントが停止していること

注意

更新インストールをする場合,次の点に注意してください。

  • インストールする環境で,J2EEサーバ,Management Server,PRFなどのサービスプラットフォーム実行環境が稼働中の場合は,すべていったん停止してから更新インストールしてください。

  • 組み込みデータベースを使用しているときは,組み込みデータベースを停止してから更新インストールしてください。

(3) J2EEサーバのクラスパスの変更(開発環境)

09-00より前のバージョンから移行する場合,J2EEサーバ用オプション定義ファイル(usrconf.cfg)に次に示す定義があれば削除してください。定義の変更はSmart Composer機能または運用管理ポータルの使用をお勧めします。

(4) 旧オプションアダプタの定義ファイルの移行(開発環境)

09-00より前で使用していたオプションアダプタを移行する場合,次の作業を実施してください。

(a) TP1アダプタの定義ファイルの移行

TP1アダプタ実行環境プロパティファイルをコピーします。コピー対象のファイルと,コピー先のディレクトリを次に示します。

コピー対象:<TP1アダプタのインストールディレクトリ>\config\*.properties

コピー先:<サービスプラットフォームのインストールディレクトリ>\CSC\custom-adapter\TP1\config\

(b) ファイルアダプタの定義ファイルの移行

ファイルアダプタ実行環境プロパティファイルをコピーします。コピー対象のファイルと,コピー先のディレクトリを次に示します。

コピー対象:<ファイルアダプタのインストールディレクトリ>\config\*.properties

コピー先:<サービスプラットフォームのインストールディレクトリ>\CSC\custom-adapter\File\config\

(c) Object Accessアダプタの定義ファイルの移行

Object Accessアダプタ実行環境プロパティファイルをコピーします。コピー対象のファイルと,コピー先のディレクトリを次に示します。

コピー対象:<Object Accessアダプタのインストールディレクトリ>\config\*.properties

コピー先:<サービスプラットフォームのインストールディレクトリ>\CSC\custom-adapter\OA\config\

(d) Message Queueアダプタの定義ファイルの移行

Message Queueアダプタ実行環境プロパティファイルをコピーします。コピー対象のファイルと,コピー先のディレクトリを次に示します。

コピー対象:<Message Queueアダプタのインストールディレクトリ>\config\*.properties

コピー先:<サービスプラットフォームのインストールディレクトリ>\CSC\custom-adapter\MQ\config\

(e) FTPアダプタの定義ファイルの移行

FTPアダプタコマンド定義ファイルとFTPアダプタ実行環境プロパティファイルをコピーします。コピー対象のファイルと,コピー先のディレクトリを次に示します。

コピー対象:<FTPアダプタのインストールディレクトリ>\config\*.properties

コピー先:<サービスプラットフォームのインストールディレクトリ>\CSC\custom-adapter\FTP\config\

(5) 製品のアンインストール

09-00より前のバージョンから移行する場合,次の製品をアンインストールします。これらは09-00以降でサービスプラットフォームに同梱されるため,アンインストールすることをお勧めします。

(6) リポジトリのインポート・エクスポート(開発環境・運用環境)

(1) リポジトリのエクスポート(運用環境)」でエクスポートしたリポジトリ情報を開発環境にインポートします。インポートによって,古いバージョンで作成したリポジトリ情報が今バージョンに引き継がれます。そのあと,開発環境のリポジトリ情報を運用環境にインポートし,運用環境にもリポジトリ情報を引き継ぎます。

リポジトリのインポート・エクスポートで実施する作業は,「(2) 開発環境および運用環境のインストール」で開発環境をインストールした方法によって次のように異なります。

新規にインストールした場合

付録G.2 新規にインストールする場合の移行手順」の「(7) リポジトリのインポート(開発環境)」〜「(9) リポジトリのインポート(運用環境)」の作業を実施します。

更新インストールした場合

付録G.3 更新インストールする場合の移行手順」の「(6) リポジトリのインポート(開発環境)」〜「(8) リポジトリのインポート(運用環境)」の作業を実施します。

(7) リクエストの送信制御(ロードバランサ)

バージョンアップするHCSCサーバに対してリクエストを送信しないように,ロードバランサを設定します。その際,仕掛かり中のリクエストがないことを確認してください。なお,設定方法は各ロードバランサの仕様によって異なります。

(8) 実行環境のインストール

実行環境で,11-20のサービスプラットフォームをインストールしてバージョンアップします。

実行環境は,新規インストールまたは更新インストールのどちらかの方法でインストールします。

新規にインストールする場合

付録G.2 新規にインストールする場合の移行手順」の「(2) HCSCコンポーネントの削除(運用環境)」〜「(6) HCSCサーバの構築(運用環境)」の作業を実施します。

更新インストールする場合

付録G.3 更新インストールする場合の移行手順」の「(2) 各環境の更新インストール」〜「(5) 製品のアンインストール」の作業を実施します。

(9) サービスプラットフォームおよびReliable Messagingの移行(実行環境)

次の手順でサービスプラットフォームおよびReliable Messagingを移行してください。09-00より前のバージョンから移行する場合は,次の作業も必要です。

サービスプラットフォームの移行方法の詳細については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 保守/移行編」の「10. 旧バージョンのアプリケーションサーバからの移行(J2EEサーバモードの場合)」を参照してください。

(10) 実行環境のバージョンアップ(運用環境)

運用環境から実行環境のバージョンアップを実施します。

(a) 前提条件

実行環境をバージョンアップするには,次の条件を満たしている必要があります。

  • Management Serverが起動していること

  • 組み込みデータベースを使用している場合,組み込みデータベースが起動していること

  • リポジトリのバージョンがインストールバージョンと一致していること

    リポジトリのバージョンがインストールバージョンと一致していない場合は,開発環境でバージョンアップしてから,運用環境に「cscrepctl -import <リポジトリZIP>」でリポジトリを更新してください。

前提条件を満たしていない場合,上記の順番で起動,停止,およびバージョンアップを実施してください。

(b) バージョンアップ方法

cscenvupdateコマンドを実行して,リポジトリとHCSCサーバをバージョンアップします。

cscenvupdate -csc <バージョンアップするHCSCサーバ名>

(11) HCSCサーバの起動(運用環境)

バージョンアップしたHCSCサーバを起動します。

(12) HCSCコンポーネントの開始(運用環境)

(10) 実行環境のバージョンアップ(運用環境)」で起動したHCSCサーバに配備されているHCSCコンポーネントを開始します。

(13) リクエストの送信制御の解除(ロードバランサ)

バージョンアップしたHCSCサーバに対してリクエストを送信するように,ロードバランサを設定します。なお,設定方法は各ロードバランサの仕様によって異なります。

(14) 2台目以降のHCSCサーバ(実行環境)に対しての作業

ロードバランスクラスタを構成しているすべてのHCSCサーバに対して,「(7) リクエストの送信制御(ロードバランサ)」〜「(13) リクエストの送信制御の解除(ロードバランサ)」の作業を実施します。

なお,旧バージョンで使用していたリポジトリ情報を開発環境でバージョンアップ前後に変更し,そのリポジトリ情報を使用して運用する場合のバージョンアップ方法については,マニュアル「サービスプラットフォーム 開発ガイド 基本開発編」の「付録A 旧バージョンからの移行」を参照してください。

(15) ローリングアップデートで移行する場合の注意事項

(a) 08-70以前にローリングアップデートする場合

次の条件がすべて該当すると,cscenvupdateコマンドの実行時に異常終了することがあります。

  • データベースおよびReliable Messagingがある構成でセットアップしている場合で,データベースにはHiRDBを使用している。

  • ビジネスプロセスを使用している。

  • クラスタ内で最初のアップデートである。

  • 08-70以前からのローリングアップデートである。

この場合に,正常に運用する方法および運用例を次に示します。

  • 運用方法

    稼働しているすべてのHCSCサーバに対して,次に示す1.〜4.の操作を実行してください。

    1. 実行履歴参照コマンドおよび運用操作をするGUIを停止する。

    2. HCSCサーバにリクエストを送信しないようにする。

    3. HCSCサーバの受付(標準受付およびユーザ定義受付)を停止する。

    4. すべてのリソースアダプタのプールを破棄する(cjclearpoolコマンドを利用)。

    この操作を実行した状態で,バージョンアップしたHCSCサーバに対してcscenvupdateコマンドを実行してください。2台目以降のアップデートは,1.〜4.の手順を実行する必要はありません。また,1回目のcscenvupdateコマンドの正常終了を確認したあとに,1.〜3.の手順で停止した各機能は,2台目以降の操作タイミングとは無関係に再開可能となります。

  • 運用例

    次に示す構成およびバージョンアップを想定します。

    • 3台のクラスタ構成(HCSCサーバA,HCSCサーバB,HCSCサーバC)で運用している。

    • HCSCサーバBおよびHCSCサーバCが稼働中に,HCSCサーバAに対してcscenvupdateコマンドを実行する。

    この場合に,正常に運用する方法を次に示します。

    1. 実行履歴参照コマンドおよび運用操作をするGUIを停止する。

    2. HCSCサーバBおよびHCSCサーバCにリクエストを送信しないようにする。

    3. HCSCサーバB,HCSCサーバCの受付(標準受付およびユーザ定義受付)を停止する。

    4. cjclearpoolコマンドを利用して,HCSCサーバBおよびHCSCサーバCのすべてのリソースアダプタのプールを破棄する。

    5. HCSCサーバAに対してcscenvupdateコマンドを実行する。

(b) 09-00以降にローリングアップデートする場合

次の条件がすべて該当すると,cscenvupdateコマンドの実行時に異常終了することがあります。

  • データベースおよびReliable Messagingがある構成でセットアップしている。

  • ビジネスプロセスを使用している。

  • クラスタ内で最初のアップデートである。

この場合,オンラインを停止させてから「付録H.4 ローリングアップデートで運用環境のリポジトリを移行する手順」に示す手順でローリングアップデートしてください。