9.4.2 JP1/BaseによるJP1イベントの管理
JP1イベントは,JP1/Baseのイベントサービス機能で制御され,JP1/Base独自のデータベースであるイベントDBに保管されます。
JP1イベントは,次のような属性に分けて,事象を記録します。
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基本属性(すべてのJP1イベントが持つ属性)
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拡張属性(発行元が任意に指定できる属性。共通情報と固有情報がある)
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共通情報(JP1イベントによって形式が統一されている情報)
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固有情報(共通情報以外の各製品固有の情報)
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基本属性の属性名にはB.IDのように先頭に「B.」を,拡張属性の属性名にはE.SEVERITYのように「E.」を付けて区別する場合があります。
これらの属性に分かれて,次のような情報が記録されています。
- (例)自動アクション実行要求時のJP1イベント(一部の情報だけ)
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基本属性
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イベントID(B.ID):000020E0
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メッセージ(B.MESSAGE):
「KAVB4430-I イベント...に対するアクションの実行を要求しました」
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拡張属性の共通情報
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重大度(E.SEVERITY):Information
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プロダクト名(E.PRODUCT_NAME):/HITACHI/JP1/IM/JCAMAIN
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拡張属性の固有情報
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アクション実行ホスト(E.EXECHOST):jp1-manager
:
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このようにシステムで発生した事象を,JP1イベントとして記録します。
JP1イベントについては,マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager コマンド・定義ファイル・APIリファレンス」の「3. JP1イベント」,およびマニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のJP1イベントの説明を参照してください。
(1) JP1イベントによる事象の一元管理
JP1/Baseは,JP1イベントとして表現された事象を管理します。
また,ログファイル上のメッセージやSNMPトラップなどで表現された事象を,JP1イベントへの変換機能によってJP1/Baseに取り込んで管理できます。
このようにJP1/Baseは,JP1イベントによって,JP1シリーズだけではなく幅広い製品によって扱われている事象を管理できます。
JP1イベントとして発行される事象
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JP1イベント(JP1シリーズの各製品が発行)
システムの運用をさまざまな角度で運用管理するJP1シリーズの各製品は,それぞれが管理する事象をJP1イベントとして発行します。これらのJP1イベントを管理することで,システムで発生する事象を幅広く管理できます。
JP1シリーズ各製品が発行するJP1イベントの詳細については,各製品のマニュアルを参照してください。
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JP1イベント(JP1イベント発行コマンドが発行)
JP1/Baseは,JP1イベントを発行するコマンド(jevsend,jevsendd)を提供しています。シェルスクリプトなどで容易にJP1イベントを発行でき,ユーザーが運用管理に利用できます。なお,発行するJP1イベントをJP1/IMで管理するには,コマンドの引数に重要度を指定(例:-e SEVERITY=Error)してください。JP1/IMは重大度の設定されたJP1イベントを監視対象としているためです。
参照先:マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のコマンドの章
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JP1/SES形式のイベント
JP1/SES形式のイベント(バージョン5以前の製品であるJP1/SESやJP1/AJSが取得できるイベント)を,JP1/Baseで管理できます。
デフォルト設定のJP1/IMでは,JP1/SES形式のイベントは監視できません。JP1/IMはJP1イベントの拡張属性の重大度が設定されているものを監視対象としますが,JP1/SES形式イベントには基本属性しかないためです。
JP1/IMでJP1/SES形式のイベントを監視するには,イベント取得フィルターでJP1/SES形式イベントを取得するよう設定するか,JP1/Baseの拡張機能によってJP1/SES形式のイベントに拡張属性を付けてください。
参照先:「4.2 JP1イベントのフィルタリング」
参照先:マニュアル「JP1/Base 関数リファレンス」のJP1/SES形式のイベントを変換する,の説明
JP1/SES形式のイベントには,コードセットが含まれません。このため,JP1/SES形式のイベントを監視する場合には,システム全体の言語環境をJP1/SES形式のイベントの文字コードで統一する必要があります。
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JP1イベント(イベント発行関数の利用)
JP1/Baseは,ユーザーアプリケーションのプログラムで利用できる,イベント発行関数を提供しています。これを使って,ユーザープログラムから直接JP1イベントを発行することもできます。
参照先:マニュアル「JP1/Base 関数リファレンス」の独自イベントを発行する,の説明
イベント変換機能によってJP1イベントに変換する事象
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ログファイルの情報
ログファイルにアプリケーションプログラムが出力する情報を,JP1/Baseのログファイルトラップ機能によってJP1イベントに変換し,JP1/Baseで管理できます。
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Windowsのイベントログの情報
Windowsのイベントログに出力される情報を,JP1/Baseのイベントログトラップ機能によってJP1イベントに変換し,JP1/Baseで管理できます。
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SNMPトラップ
バージョン8以前のJP1/Cm2/NNMまたはバージョン7.5以前のHP NNMが管理するSNMPトラップを,JP1/BaseのSNMPイベント変換機能によってJP1イベントに変換し,JP1/Baseで管理できます。
参照先:マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のイベント変換機能の設定に関する章
- メモ
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JP1/Cm2/NNMiまたはHP NNMiのNNMiインシデントの変換については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Event Gateway for Network Node Manager i」を参照してください。
(2) JP1イベントの転送によるマネージャーでの集中管理
JP1/IMは,マネージャーのイベントDBに登録されたJP1イベントをJP1/Baseから取得することでシステムを監視します。
システムの各ホストでは,発生したJP1イベントのうち,JP1/IMのマネージャーで管理する必要がある重要なイベントを,JP1/Baseのイベント転送機能によって転送します。このようにして,JP1/IMは,システムで発生した事象(管理が必要な重要な事象)を集中的に管理します。
(a) JP1イベントの転送
JP1/Baseのイベント転送機能によって,JP1イベントをあるホストからほかのホストへ転送できます。この機能によって,JP1/IMはマネージャーへJP1イベントを転送し,JP1イベントを集中管理しています。
転送するJP1イベントはJP1/Baseイベントサービスの転送設定ファイル(forward)で定義します。JP1/IMではこれを,転送フィルターと呼んでいます。
各ホストからマネージャーへ転送するJP1イベントは,管理が必要な重要なイベントだけにします。すべてマネージャーに転送する運用は避けてください。デフォルトの転送設定では,JP1イベントの重大度が,緊急(Emergency),警戒(Alert),致命的(Critical),エラー(Error),警告(Warning)のものを,構成管理機能で定義したマネージャー・エージェント階層に従って上位ホストに転送されるように設定されています。
JP1イベントが上位の管理ホストに転送されていく様子を次の図に示します。
なお,転送設定の内容を変更する方法には,各ホストの転送設定ファイルを直接編集する方法と,JP1/Baseの定義収集・配布機能を使って上位ホストから一括配布する方法があります。
(b) JP1イベントの転送のリトライ
JP1イベントの転送がネットワークの障害や転送先イベントサービスの停止などのために失敗した場合,イベントサービスが自動的にリトライできるように設定できます。転送のリトライの設定は,JP1/Baseのイベントサーバ設定ファイル(conf)で設定します。
参照先:マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のイベントサービス環境の設定に関する章
(c) 構成管理に沿ったイベント転送
JP1/Baseの構成管理の機能で,マネージャーおよびエージェントの構成を定義すると,構成定義に従って上位のマネージャーへとJP1イベントが転送されるよう自動的に設定されます。構成定義ファイルの定義を変更すると,それに伴って各ホストのJP1イベント転送設定を自動的に更新します。
参照先:「9.4.3 システムの階層構成の管理」
(d) 定義収集・配布機能の利用
JP1イベントの転送設定情報は,JP1/Baseの定義収集・配布機能を利用してシステムの階層構成で定義された上位ホストから下位ホストに配布できます(システム階層構成の概要については,「9.4.3 システムの階層構成の管理」を参照)。メンテナンスによるホストの一時停止や障害発生多発ホストからのイベント転送を抑止したいなど,一時的に他ホストからのイベント転送を抑止したい場合に,JP1/Baseの定義収集・配布機能が利用できます。マネージャーから転送設定情報を,JP1/Baseのコマンドを使って各ホストに配布することで転送設定ファイル(forward)を更新できます。また,配布に成功した時点で各ホストの転送設定がリロードされ,更新された情報を基にイベント転送を行うようになります。
参照先:「9.4.5 定義情報の収集と配布」
(3) CSVファイル出力による履歴や統計としての利用
JP1イベントが蓄積されるイベントDBの内容は,JP1/Baseのjevexportコマンドを使ってCSVファイルに出力して確認できます。
JP1/IMは,緊急度の高い重要なJP1イベントをマネージャーに集め,JP1/IM - Viewによって集中的に監視することによって,システムの運用管理を実現しています。逆に言えば,緊急度の低いJP1イベントについては,各ホストのイベントDBに記録されますが,マネージャーへ転送してJP1/IM - Viewで参照することはしません。
しかし,例えばジョブ正常終了,といった緊急ではないJP1イベントを,運用の履歴や統計情報として利用する場合があります。このような場合,JP1/Baseのjevexportコマンドを使って,CSVファイルに出力して利用してください。
jevexportコマンドについては,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のコマンドに関する章を参照してください。
また,統合監視DBを使用している場合,JP1/IMのjcoevtreportコマンドを使って,統合監視DBに保存されたJP1イベントをCSVファイルに出力します。
jcoevtreportコマンドについては,マニュアル「JP1/Integrated Management 3 - Manager コマンド・定義ファイル・APIリファレンス」の「jcoevtreport」(1. コマンド)を参照してください。