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JP1 Version 12 JP1/IT Desktop Management 2 配布機能 運用ガイド


3.4.3 エージェントの接続先の自動変更

接続先を決定するための情報をエージェントに配布しておくと、管理対象のコンピュータのIPアドレスから適切な接続先の上位システムを判断して、自動的に設定できます。コンピュータのIPアドレスが変更されると接続先も自動的に変更されるため、コンピュータが移動した場合に便利です。ここでは、エージェントの接続先の自動変更について説明します。

この機能は、JP1/IT Desktop Management 2 - Agentで使用できます。

ただし、Citrix XenApp、Microsoft RDSサーバではサポートしていません。

〈この項の構成〉

(1) 接続する上位システムを自動的に設定・変更する

接続先の上位システムを自動的に設定・変更するには、あらかじめ上位接続先情報ファイルdmhost.txt)を作成し、管理対象のコンピュータに配布します。配布後の特定のタイミングで、接続先が自動的に再設定されます。

メモ

上位接続先情報ファイル(dmhost.txt)を使用する場合と同様のことが接続先設定ファイル(itdmhost.conf)を使用してもできます。接続先設定ファイル(itdmhost.conf)については、マニュアル「JP1/IT Desktop Management 2 構築ガイド」のエージェントの接続先を自動設定する手順の説明を参照してください。

(a) 上位接続先情報ファイルを作成する

上位接続先情報ファイルは、接続する上位システムを決定するためのファイルです。このファイルは、コンピュータのIPアドレスの範囲と対応する接続先上位システムの組み合わせを定義しています。例えば、IPアドレス「172.16.22.1〜172.16.22.255」のコンピュータの接続先は東京支部のPC、IPアドレス「172.17.22.1〜172.17.22.255」のコンピュータの接続先は名古屋支部のPC、というように定義します。作成方法の詳細については、「3.4.3(2) 上位接続先情報ファイル(dmhost.txt)の作成」を参照してください。

作成した上位接続先情報ファイルをJP1/IT Desktop Management 2 - Managerのデータフォルダに格納しておくと、インストールセットの作成時にインストールセットに取り込まれます。

(b) 上位接続先情報ファイルを管理対象のコンピュータに配布する

上位接続先情報ファイルが取り込まれたインストールセットを使用してJP1/IT Desktop Management 2 - Agentをインストールすると、管理対象のコンピュータの次のディレクトリに上位接続先情報ファイルが格納されます。

JP1/IT Desktop Management 2 - Agentのインストール先ディレクトリ\MASTER\DB

パッケージとして上位接続先情報ファイルを登録し、そのパッケージを配布するジョブを作成すれば、対象のコンピュータに配布することもできます。次の設定でパッケージしてください。

[システム条件]パネルの「インストール先ディレクトリ」の設定

ドライブ:「なし(空白)」

ディレクトリ:「%ITDM2AGT%\MASTER\DB」

管理対象になる前のコンピュータの場合は、手動で格納してもかまいません。

メモ

上位接続先情報ファイル(dmhost.txt)と接続先設定ファイル(itdmhost.conf)の両方が存在する場合は、上位接続先情報ファイル(dmhost.txt)は無視されます。

(c) 接続先が変更されるタイミング

上位接続先情報ファイルを管理対象のコンピュータに格納したあと、ポーリングが実行されるのを待つか、または管理対象のコンピュータのOSを再起動してください。上位接続先情報ファイルの内容に従って、エージェントが接続する上位システムが設定されます。

エージェントの接続先を自動変更するポーリングは次の2種類です。

  • システム起動を基準としたポーリング

    エージェント設定の[基本設定]で、[システム起動を基準としたポーリングをする]のチェックボックスをオンにしている場合

  • 時刻を指定してポーリング

    エージェント設定の[基本設定]で、[時刻を指定してポーリングする]のチェックボックスをオンにしている場合

一度設定したあとでも、次の操作をしたあとにポーリングが実行されるのを待つかまたはOSを再起動すると接続先が再設定されます。

  • 管理対象のコンピュータのIPアドレス変更

  • 上位接続先情報ファイルの編集または上書き

    接続先情報を変更した上位接続先情報ファイルをエージェントに再配布するか、各エージェントのインストール先ディレクトリ\MASTER\DBに格納されている上位接続先情報ファイルを直接編集して上書きし、コンピュータを再起動すると接続先が変更されます。

管理対象のコンピュータを移動してIPアドレスを変更した場合、ポーリングが実行されるのを待つかまたはOSを再起動するだけで適切な上位システムに接続先が変更されます。エンドユーザは接続先の変更を意識する必要はありません。

上位接続先情報ファイルによってエージェントの接続先の自動設定・変更が起きると、ログがPCごとにインストール先フォルダ\LOG\USER.LOGファイルに取得されます。

(d) 接続先の自動変更と他機能との関係

上位接続先情報ファイルを使用した接続先の自動変更は、JP1/IT Desktop Management 2の他機能と併用できない場合があります。次の点に注意してください。

管理対象のコンピュータの起動時にエージェントのインストール先フォルダ¥MASTER¥DB¥下に上位接続先情報ファイルが存在する場合は、エージェント設定で設定した配布用の上位システムではなく、上位接続先情報ファイルに指定された接続先情報に基づいて上位システム(管理用サーバまたは中継システム)に接続されます。

上位接続先情報ファイルによる接続先の設定を無効にするには、次のどれかの対処をしてください。どの場合でも、結果として、dmhostで指定した接続先に接続されるようになります。

  • 中身が空の上位接続先情報ファイルをエージェントに配布する

  • 各エージェントのインストール先ディレクトリ¥MASTER¥DB¥下に格納されている上位接続先情報ファイルを削除する

  • 各エージェントのインストール先ディレクトリ¥MASTER¥DB¥下に格納されている上位接続先情報ファイルの名前をdmhost.txt以外に変更する

(2) 上位接続先情報ファイル(dmhost.txt)の作成

上位接続先情報ファイルは、dmhost.txtという名称のテキストファイルです。作成方法を次に説明します。

(a) 上位接続先情報ファイルの形式

上位接続先情報ファイルには、管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲と対応する接続先の組み合わせを、1行につき1件定義します。1行のバイト数は、1,023バイト以内です(バイト数は、半角文字:1バイト、全角文字:2バイトで換算)。各項目間は「,」(コンマ)で区切ってください。行の先頭に「;」(セミコロン)を付けると、その行はコメントと見なされます。なお、最終行の改行はしないでください。

ファイルの形式を次に示します。

形式
最小のIPアドレス,最大のIPアドレス,接続先,接続種別[,接続先,接続種別]…[,マルチキャスト配布用アドレス
説明
最小のIPアドレス(必ず指定)

管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲で最小のIPアドレスを指定します。半角数字を使用して「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式で指定してください。

最大のIPアドレス(必ず指定)

管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲で最大のIPアドレスを指定します。半角数字を使用して「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式で指定してください。

接続先(必ず指定)

接続先のホスト名またはIPアドレスを指定します。接続先の運用キーの設定がホスト名であればホスト名を、IPアドレスであればIPアドレスを指定してください。ホスト名の場合、半角英数字64文字までを使用して指定してください。IPアドレスの場合、半角数字を使用して「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式で指定してください。

接続種別(必ず指定)

接続先が管理用サーバであれば「netmdm」を、中継システムであれば「netmdmw」を指定してください。

マルチキャスト配布用アドレス(省略可能)

管理対象のコンピュータにジョブをマルチキャスト配布したい場合、接続先に設定しているマルチキャストアドレスを指定します。半角数字を使用して「xxx.xxx.xxx.xxx」の形式で指定してください。マルチキャストアドレスとして使用できるアドレスの範囲は、「224.0.1.0〜239.255.255.255」です。

注※

1行に接続先と接続種別のセットを最大8個まで指定できます。複数の接続先と接続種別を指定した場合、先に指定した接続先の方が優先順位が上位となります。

注意事項
  • 管理対象のコンピュータのIPアドレスが定義した範囲に含まれない場合、接続先の設定は変更されません。

  • 管理対象のコンピュータのIPアドレスがループバックアドレス(127.0.0.1)の場合、接続先の設定は変更されません。

  • 管理対象のコンピュータのIPアドレスの範囲が重複する複数の定義をした場合は、先に定義した行が有効となります。

  • 次の場合は、指定行の定義が無効になります。

    ・1〜4番目の項目に省略があった場合

    ・IPアドレスに無効な値を指定した場合

    ・「接続先」に半角65文字以上の値を指定した場合

    ・接続種別に「netmdm」および「netmdmw」以外を指定した場合

  • 「マルチキャスト配布用アドレス」の指定を省略した場合、または無効な値を指定した場合、マルチキャストアドレスの設定はできません。ただし、1〜4番目の項目で定義した、IPアドレスの範囲と対応する接続先の組み合わせは有効になります。

  • 1行に1〜5番目以外の項目を指定した場合、その項目は無視されます。

  • 1行の文字数が1,023文字を超えた場合、1,024文字目以降は無視されます。

(b) 上位接続先情報ファイルの作成例

上位接続先情報ファイルの作成例を次に示します。

;上位接続先情報
172.17.12.1,172.17.12.250,dmsub01,netmdmw,dmsub02,netmdmw,dmman01,netmdm
172.17.13.1,172.17.13.250,dmman01,netmdm,dmman02,netmdm
172.17.11.1,172.17.11.60,dmsub02,netmdmw
0.0.0.0,255.255.255.254,dmman02,netmdm

この例では、管理対象のコンピュータのIPアドレスが「172.17.11.6」の場合、4行目の「172.17.11.1〜172.17.11.60」の範囲に該当するため、接続先の上位システムは「dmsub02」というホスト名の中継システムになります。

なお、上位接続先情報ファイルの最終行に、すべてのIPアドレスを範囲とする「0.0.0.0〜255.255.255.254」を定義しておくと、該当するIPアドレスがなかった(IPアドレスが172.17.12.1〜172.17.12.250、172.17.13.1〜172.17.13.250および172.17.11.1〜172.17.11.60以外の)管理対象のコンピュータの接続先の上位システムは、「dmman02」になります。また、2行目や3行目のように複数の接続先を指定した場合、先に指定した接続先の優先順位が上位(2行目ではdmsub01、3行目ではdmman01が1位)となります。

(c) 上位接続先情報ファイルを配布したあとの注意事項

上位接続先情報ファイルを管理対象のコンピュータに配布して接続先が設定されたあと、接続先ホストのIPアドレスを変更するときは、それまで適用していた上位接続先情報ファイルを該当する管理対象のコンピュータから削除しておいてください。削除しないと、接続先ホストのIPアドレス変更を契機に接続先の自動変更が動作し、想定した上位システムとは別の接続先が設定されることがあります。