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JP1 Version 12 JP1/Network Node Manager i セットアップガイド


19.4.4 HA用にNNMiを設定する(Linuxの場合)

ここでは,Linux環境でHA用にNNMiを設定する手順を説明します。

NNMiのHA設定では,新規にNNMi用のリソースグループを作成します。このため,対象のリソースグループがない状態から設定作業を行ってください。

NNMiのHA設定を行うスクリプト(nnmhaconfigure.ovpl)は,内部的にクラスタソフトに対してリソースグループや各リソースを作成する処理を行います。設定作業が完了すると,次のリソースグループが設定されます。

表19‒9 Veritas Cluster ServerまたはSymantec Cluster ServerでのNNMi用リソースグループの構成

リソース名

リソースタイプ

説明

<resource_group>-ip

IP

仮想IP アドレスを制御する

<resource_group>-dg

DiskGroup

ディスクグループを制御する

<resource_group>-volume

Volume

ボリュームを制御する

<resource_group>-mount

Mount

共有ファイルシステムを制御する

<resource_group>-app

Application

NNMiの起動/停止/監視を制御する

VCSまたはSCSの場合,nnmhaconfigure.ovplhagrpharesなどのコマンドを内部的に実行して上記のリソースの設定処理を行います。

各リソースの設定内容の例を次に示します。

(例)VCSまたはSCSの設定ファイルmain.cfの定義例

<>で囲んだ部分は,nnmhaconfigure.ovplで指定した設定項目の値になります。

group <resource_group> (
  SystemList = { <node1> = 1 , <node2> = 1}
  UserStrGlobal = "NNM_INTERFACE=<virtual_host>;HA_LOCALE=<LOCALE>;HA_MOUNT_POINT=<mountpoint>"
  )
 
  Application <resource_group>-app (
     StartProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -start <resource_group>"
     StopProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -stop <resource_group>"
     CleanProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -clean <resource_group>"
     MonitorProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -monitor 
                       <resource_group>"
     OnlineTimeout = 1800
     )
  DiskGroup <resource_group>-dg (
     DiskGroup = <disk_group>
     )
  IP <resource_group>-ip (
     Device = <network_interface_of_virtual_host>
     Address = "10.208.228.159"
     NetMask = "255.255.255.0"
     )
  Mount <resource_group>-mount (
     MountPoint = "<mountpoint>"
     BlockDevice = "/dev/vx/dsk/<disk_group>/<volume_group>"
     FSType = <type_of_shared_file_systems>
     FsckOpt = "-y"
     )
  Volume <resource_group>-volume (
     Volume = <volume_group>
     DiskGroup = <disk_group>
     )
  <resource_group>-app requires <resource_group>-ip
  <resource_group>-app requires <resource_group>-mount
  <resource_group>-mount requires <resource_group>-volume
  <resource_group>-volume requires <resource_group>-dg
  <resource_group>-volume requires <resource_group>-ip
表19‒10 HAモニタでのNNMi用リソースグループの構成

設定項目

設定内容(制御スクリプト)

name (起動)

/var/opt/OV/hacluster/<resource_group>/cm2_start.sh

termcommand (停止)

/var/opt/OV/hacluster/<resource_group>/cm2_stop.sh

patolcommand (監視)

/var/opt/OV/hacluster/<resource_group>/cm2_monitor.sh

重要

HAモニタの場合は,nnmhaconfigure.ovplを使わずに設定作業を行います。設定方法については,リリースノートを参照してください。

〈この項の構成〉

(1) プライマリクラスタノードでのNNMiの設定

プライマリクラスタノードで次の手順を実行します。

(a) 前準備

  1. 19.2 HA用NNMiを設定するための前提条件の検証」の作業が完了していることを確認する。

  2. NNMiがインストールされていない場合は,インストールする。そして,NNMiが正しく動作することを確認する。

  3. 次のコマンドを使って,NNMi設定をバックアップする。

    (例)

    /opt/OV/bin/nnmbackup.ovpl -scope all -target <directory>

    このコマンドの詳細については,「20. NNMiのバックアップおよびリストアツール」を参照してください。

    NNMiのクラスタ環境構成において初期状態では,プライマリクラスタノードのデータと,セカンダリクラスタノードのデータが完全に一致している必要があります。このため,ここで取得したバックアップデータを,セカンダリクラスタノードの設定手順でリストアし,データを一致させます。

(b) データの共有ディスクへのコピー

  1. 共有ディスクのマウントポイントになるディレクトリを作成する。

  2. NNMi HAリソースグループ用に,共有ディスクを用意する。

    重要

    用意した共有ディスクが,次の条件を満たすことを確認してください。

    • フォーマット済みである

    • 十分な空き容量がある

    • ほかのリソースグループで使用されていない

  3. 共有ディスクをアクティブ化して,マウントする。

    (例)

    • Linux VCSまたはSCSでディスク管理にVxVM/VxFSを使う構成の場合

    vxdg import <disk_group>
    vxvol -g <disk_group> startall
    mount -t vxfs /dev/vx/dsk/<disk_group>/<volume> <HA_mount_point>

    共有ディスクのマウントポイントディレクトリが,ユーザーはroot,グループはrootで,パーミッションには755が設定されていることを確認します。

    (例)

    ls -l
  4. NNMiを停止する。

    • systemd でサービスを管理しているディストリビューションの場合

      /opt/OV/bin/ovstop -c

      /opt/OV/bin/nettrap stop

    • それ以外のディストリビューションの場合

      /opt/OV/bin/ovstop -c

      /etc/init.d/nettrap stop

  5. NNMiファイルを共有ディスクにコピーする。

    /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhadisk.ovpl NNM -to <HA_mount_point> 
    重要

    指定したマウントポイント直下に,ディレクトリ「NNM」が作成されます(<HA_mount_point>/NNM)。

    格納先ディレクトリ名を変更することはできません。

  6. 共有ディスクをマウント解除し,非アクティブ化する。

    (例)

    • VCSまたはSCSかつVxVM/VxFS使用構成の場合

      umount <HA_mount_point>

      vxvol -g <disk_group> stopall

      vxdg deport <disk_group>

(c) NNMiのHA設定

  1. NNMi HAリソースグループを新規に作成する。

    /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM

    このコマンドの設定項目については,「19.9.2 NNMiに付属しているHA設定スクリプト」を参照してください。

    共有ディスクタイプはnoneではなく,必ずdiskを指定してください。

    (設定例)

    HA設定項目は,nnmhaconfigure.ovplに対話形式で入力する項目を表示順に並べています。「19.4.2 HA用にNNMiを設定する」の「表19‒3 NNMi HAプライマリクラスタノードの設定情報」の説明によって検討した内容を入力してください。

    HA設定項目

    設定例

    HAリソースグループの名前

    jp1ha1

    仮想ホストの名前

    lhost1

    仮想ホストのネットワークインタフェース

    lan0

    共有ファイルシステムのタイプ

    disk(必ずdiskを指定)

    ディスクタイプ

    vxfs

    ディスクグループ(VCSまたはSCSだけ)

    shdg3

    ボリュームグループ

    vg03

    マウントするディレクトリ

    /shdsk1

    重要

    設定コマンドを実行する前に,次の注意事項を確認してください。

    • HA構成のNNMiはnnmhaconfigure.ovpl実行時のロケールを使用して起動します。nnmhaconfigure.ovpl実行時に操作する画面に適切なロケール(LANG環境変数)が設定されていることを確認してください。

      Linux VCSまたはLinux SCSの場合:ja_JP.UTF-8,C または zh_CN.utf8

      HA構成の設定後にロケールを変更する場合は,「19.6 HA設定のメンテナンス」を参照してください。

    • すでにほかのリソースグループやリソースで使われている値をnnmhaconfigure.ovplに指定すると,リソースの作成が失敗するなどエラーが発生します。ほかで使われていないことを確認してから,nnmhaconfigure.ovplを実行してください。

    • すでに使われているリソースグループ名,IP アドレスやディスクを指定した場合,リソースを作成するために実行したクラスタソフトのコマンドがエラーとなります。エラー発生時点でnnmhaconfigure.ovplは異常終了し,それまでに作成されたリソースグループやリソースは残ったままとなります。エラーを対処してnnmhaconfigure.ovplを再実行する前に,クラスタソフトの操作で残っているリソースを削除してください。

    • nnmhaconfigure.ovpl実行時に,次のメッセージが出力される場合がありますが,内部処理でのメッセージであり問題ありません。

      「ディスク グループが見つかりません。インポートを試みます。」

      「Unable to perform the security token exchange with cmclconfd on node xxxxx

      Cannot connect to configuration daemon (cmclconfd) on node xxxxx」

    (実行例)

    設定例の値を指定した場合の画面表示例です。" ? "の後ろが入力する項目です。

    • VCSまたはSCS (Linux)の場合の実行例

    # /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM
    質問: HA リソース グループの名前を入力してください:  ? jp1ha1
     
    プライマリ ノードの設定が検出されました。
     
    質問: 有効な仮想ホストの名前を入力してください:  ? lhost1
    情報: ネットワーク インタフェース情報の使用:
     
    ネットワーク インタフェース: bond0
    ネットワーク サブネット マスク: 255.255.255.0
     
    選択可能な値:
    1: disk
    2: none
    質問: 共有ファイル システムのタイプを入力してください (disk,none):  ? 1
     
    選択可能な値:
    1: vxfs
    2: ext2
    3: ext3
    質問: ディスク タイプの名前を入力してください:  ? 1
    質問: ディスク グループの名前を入力してください:  ? shdg3
    ディスク グループが見つかりません。インポートを試みます。
    質問: ボリューム グループの名前を入力してください:  ? shvol3
    質問: ディスクをマウントするディレクトリを入力してください:  ? /shdsk1
    リソース グループを作成しています。
    VCS NOTICE V-16-1-10136 Group added; populating SystemList and setting the Parallel attribute recommended before adding resources
    HA 値の /var/opt/OV/shared/nnm/conf/ov.conf を設定しています。
    ブート スクリプトを削除しています。
    注: 指定されている仮想ホスト名に一致するようにNNMi FQDNを更新しています。fqdn を lhost1 に設定しています。
     
    ドメインを xxx.xxx に設定しています。
     
    新しい SSL 証明書を生成しています。
     
    lhost1.xxx.xxx.selfsigned のキーストアの証明書を生成しています。 
    [成功]
     
    生成された証明書をトラストストアにエクスポートしています。
     
    証明書がファイル<temporary.cert>に保存されました。
    証明書がキーストアに追加されました。
    #
  2. プライマリクラスタノード上で,サービスの自動起動を無効にする。

    次のコマンドを実行し,サービスの自動起動を無効化します。

    • RHEL 6 の場合

      unlink /etc/rc0.d/K01nettrap

      unlink /etc/rc1.d/K01nettrap

      unlink /etc/rc2.d/K01nettrap

      unlink /etc/rc3.d/S98nettrap

      unlink /etc/rc5.d/S98nettrap

      unlink /etc/rc6.d/K01nettrap

    • それ以外のディストリビューションの場合

      systemctl disable netmgt.service

      systemctl disable nettrap.service

      systemctl stop netmgt.service

      systemctl stop nettrap.service

  3. VCSまたはSCSの場合,作成したリソースを有効化(Enabledを1に設定)する。

    hares -modify <resource_group>-app Enabled 1

    hares -modify <resource_group>-dg Enabled 1

    hares -modify <resource_group>-ip Enabled 1

    hares -modify <resource_group>-mount Enabled 1

    hares -modify <resource_group>-volume Enabled 1

    その後,VCSまたはSCSの設定を読み取り専用にして,VCSまたはSCSの設定ファイルmain.cf を出力させます。

    haconf -dump -makero

    VCSまたはSCSがネットワークインタフェースを監視するリソース(VCSまたはSCSのNIC,MultiNICA,MultiNICBなど)は設定されていませんので,必要に応じて追加設定をしてください。

    重要

    HTTPS通信を使用してNNMiサーバーにアクセスする場合,証明書を使用するように設定します。詳細については,「10.3.6 高可用性環境での証明書の使用」を参照してください。

(d) 起動の確認

  1. NNMi HAリソースグループを起動する。

    /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhastartrg.ovpl NNM <resource_group>

    このコマンドは, HAリソースグループの起動を待ってから,プロンプトを返します。本コマンドでリソースグループの起動を確認してください。

    NNMiを正常に起動できなかった場合は,「19.8 HA設定のトラブルシューティング」を参照してください。

これで,NNMiがHA下で動作するようになりました。

重要

HA構成のNNMiの通常のオペレーションでは,ovstartコマンドやovstopコマンドは使わないでください。これらのコマンドは,メンテナンスを目的として操作手順に明示されている場合だけ使用します。HA構成のNNMiの起動や停止は,クラスタソフトの操作によってHAリソースグループを起動または停止するようにしてください。

(2) セカンダリクラスタノードでのNNMiの設定

(a) 前準備

  1. 19.2 HA用NNMiを設定するための前提条件の検証」の作業が完了していることを確認する。

  2. NNMiがインストールされていない場合は,NNMiをインストールし,正しく動作することを確認する。

  3. リストアをする。

    (1) プライマリクラスタノードでのNNMiの設定」の(a)の手順3.で取得したバックアップデータをセカンダリクラスタノードにリストアします。

    /opt/OV/bin/nnmrestore.ovpl -force -partial -source <backup_data>

    このコマンドの詳細については,「20. NNMiのバックアップおよびリストアツール」を参照してください。

(b) NNMiのHA設定

  1. 共有ディスクのマウントポイントを作成する。

    このマウントポイントでは,「(1) プライマリクラスタノードでのNNMiの設定」の(b)の手順1.で作成したマウントポイントと同じ名前を使う必要があります。

  2. NNMiを停止する。

    • systemd でサービスを管理しているディストリビューションの場合

      /opt/OV/bin/ovstop -c

      /opt/OV/bin/nettrap stop

    • それ以外のディストリビューションの場合

      /opt/OV/bin/ovstop -c

      /etc/init.d/nettrap stop

  3. NNMi HAリソースグループを設定する。

    /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM

    コマンドの要求に応じて,HAリソースグループ名を指定します。

    (実行例)

    # /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM
     
    質問: HA リソース グループの名前を入力してください:  ? jp1ha1
    セカンダリ ノードの設定が検出されました。
    Completed the cluster update
    ブート スクリプトを削除しています。
    注: 指定されている仮想ホスト名に一致するようにNNMi FQDNを更新しています。fqdn を lhost1.xxx.xxx に設定しています。
     
    ドメインを .xxx.xxx に設定しています。
     
    新しい SSL 証明書を生成しています。
     
    #
  4. セカンダリクラスタノード上で,サービスの自動起動を無効にする。

    次のコマンドを実行し,サービスの自動起動を無効化します。

    • RHEL 6 の場合

      unlink /etc/rc0.d/K01nettrap

      unlink /etc/rc1.d/K01nettrap

      unlink /etc/rc2.d/K01nettrap

      unlink /etc/rc3.d/S98nettrap

      unlink /etc/rc5.d/S98nettrap

      unlink /etc/rc6.d/K01nettrap

    • それ以外のディストリビューションの場合

      systemctl disable netmgt.service

      systemctl disable nettrap.service

      systemctl stop netmgt.service

      systemctl stop nettrap.service

  5. VCSまたはSCSの場合,HAクラスタに設定変更を反映させる。

    haconf -dump -makero
  6. 設定が正常に行われたことを確認する。

    /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaclusterinfo.ovpl -group <resource_group> -nodes

    このコマンドの出力には,指定したHAリソースグループに設定されたすべてのノードがリストされます。

  7. (任意)プライマリクラスタノードのリソースグループをオフラインにし,セカンダリクラスタノードのリソースグループをオンラインにすることで,設定をテストする。