2.5.1 バージョンアップの注意事項
バージョン11-00では,SAPシステムとの通信に利用するRFCライブラリを,クラシックRFCライブラリからSAP NetWeaver RFC Libraryに変更しています。SAP NetWeaver RFC Libraryでは,クラシックRFCライブラリで提供されていたsaprfc.iniファイルの名称やパラメーターの仕様が変更されているため,バージョン10-00以前でsaprfc.iniファイルを使用していた場合には,次の仕様変更に注意して移行作業をする必要があります。
(1) ファイル名称の変更
従来のsaprfc.iniファイルは,sapnwrfc.iniファイルに名称が変更されています。バージョン10-00以前のsaprfc.iniファイルは,sapnwrfc.iniファイルにリネームしてください。
また,SAP NetWeaver RFC Libraryでは,sapnwrfc.iniファイルの名称は固定名称となりました。バージョン10-00以前で,同一のフォルダに任意名称のsaprfc.iniファイルを複数格納していた場合は,複数のファイルを別々のフォルダに分けて格納するなどの対応が必要です。
(2) パラメーター定義の変更
ファイル内に記述するパラメーターの定義が変更されています。JP1のサポート範囲では,SAP接続タイプパラメーター(TYPE)が廃止となりました。saprfc.iniファイルで,TYPEパラメーターを設定していた場合は,sapnwrfc.iniでは削除してください。
バージョン11-00以降のJP1がサポートするパラメーターを次の表に示します。
パラメーター |
説明 |
---|---|
DEST |
あて先を指定します。 |
ASHOST |
SAPシステムのホスト名を指定します。 |
SYSNR |
SAPシステムを識別するためのシステム番号を指定します。 |
MSHOST |
メッセージサーバのホスト名を指定します。 |
R3NAME |
SAPシステムのシステムIDを指定します。 |
GROUP |
ログオングループを指定します。 |
CLIENT |
ログオン先のSAPシステムで有効なクライアント番号を指定します。 |
USER |
ログオン先のSAPシステムで有効なユーザー名を指定します。 |
PASSWD |
USERに指定したSAPユーザーに対応するパスワードを指定します。 |
LANG |
ログオンに使用する言語種別を指定します。 |
CODEPAGE |
コードページ番号を指定します。 |
DEFAULT |
sapnwrfc.iniの共通セクションであることを表す項目です。 |
RFC_TRACE_ENCODING |
RFCライブラリが出力するトレースファイルのエンコーディングを指定する項目です。 エンコーディングには,次を設定してください。
この項目を指定しない場合,RFCライブラリが通信エラー時に出力するトレースファイル(dev_rfc.trc)に内容が正しく出力されないことがあるため,コメント行にしないでください。 |
(3) 環境変数RFC_INIの変更
環境変数RFC_INIにsaprfc.iniファイルのパスを定義している場合には,(1)の定義変更に伴い,sapnwrfc.iniファイルのパスに定義し直してください。
なお,環境変数RFC_INIの定義変更を軽減するため,次の互換機能を用意しています。
- 互換機能
-
環境変数RFC_INIに"sapnwrfc.ini"で終わらないファイル名が指定された場合には,フォルダ名までを有効とし,そのフォルダ下のsapnwrfc.iniファイルを参照します。
この機能により,従来のsaprfc.iniファイルと同じフォルダにsapnwrfc.iniファイルを作成した場合には,環境変数RFC_INIの値を変更しなくてもsapnwrfc.iniファイルを参照できるようになります。
(4) そのほかの注意事項
バージョンアップ時のそのほかの注意事項について説明します。
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JP1/AJS3 for EAPに対して上書きインストールまたはバージョンアップインストールする場合は,同一形名製品にしてください。
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JP1/AJS3 for EAP 11-00-01で,トレースレベルのデフォルト値を1から2に,トレースサイズのデフォルト値を12,288(KB)から307,200(KB)に変更しています。JP1/AJS3 for EAP 11-00以前のバージョンから上書きインストール,またはバージョンアップを実施した場合,変更されたトレースレベル,及びトレースサイズは反映されません。
次の手順でトレースレベル,およびトレースサイズの変更をしてください。
変更対象ファイルは次のとおりです。
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ジョブ制御機能を使用する場合
ジョブ制御用の環境設定ファイル
Windowsの場合:インストール先フォルダ\conf\conf
Linuxの場合:/etc/opt/jp1_am_r3/conf/conf
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インフォパッケージまたはプロセスチェーン制御を使用する場合
インフォパッケージまたはプロセスチェーン制御用の環境設定ファイル
Windowsの場合:インストール先フォルダ\bwsta\conf\conf
Linuxの場合:/etc/opt/jp1_am_r3/bwsta/conf/conf
trace(トレースセクション)のLevel,及びSizeを変更します。変更例を次に示します。
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変更前
[Trace]
Level=1
Size=12288
-
変更後
[Trace]
Level=2 ※1
Size=307200 ※2
※1 トレースレベルを指定します。2(詳細レベル)を指定することを推奨します。
※2 トレースファイルのサイズを指定します。デフォルト値は307,200(KB)です。
運用されている環境でのコマンドの実行頻度,及びトレースを残したい期間から,トレースファイルのサイズを指定してください。
トレースファイルのサイズ(KB)= 1コマンド当たりのトレース量(KB/回) ×
コマンドの実行頻度(回/日) ×
トレースを残したい期間(日)
1コマンド当たりのトレース量および環境設定ファイルの詳細については,「2.2.1 JP1/AJS3 for EAP(ジョブ制御)の動作環境を設定する」または「2.3.1 JP1/AJS3 for EAP(インフォパッケージまたはプロセスチェーン制御)の動作環境を設定する」のtrace(トレースセクション)を参照してください。トレースファイルサイズを307,200キロバイトに設定した場合,トレースレベル2で100回/時間(2,400回/日)のジョブを実行したときに,少なくとも7日間分のトレースデータを記録できます。
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