3.1.1 JP1/SLMの監視方法および監視対象の種類
JP1/SLMが監視する利用者からの1つのリクエストからレスポンスまでをWebアクセスといいます。
JP1/SLMでは,次の2種類の方法でWebアクセスを監視できます。
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すべてのWebアクセスを監視する(All Web Accessの監視)
監視対象サービス全体に対するWebアクセスを監視する方法です。この場合の監視対象をAll Web Accessといいます。
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特定のWebアクセスを監視する(Webトランザクションの監視)
監視対象サービスに含まれる特定の処理に関するWebアクセスを監視する方法です。この場合の監視対象をWebトランザクションといいます。
また,JP1/PFMと連携することで,システム性能も監視できます。
この項では,All Web Accessの監視,Webトランザクションの監視,およびJP1/PFMと連携した監視について仕組みとそれぞれの監視項目を説明します。
- 〈この項の構成〉
(1) すべてのWebアクセスを監視する(All Web Accessの監視)
監視対象サービスに対するすべてのWebアクセスを監視する方法です。この方法で監視している場合,画面には監視対象として「All Web Access」が表示されます。
すべてのWebアクセスを監視する場合の監視対象の範囲を次の図に示します。
サービス利用者から監視対象サービスへ図中の1〜3に示すWebアクセスが発生しています。この監視方法では,1〜3それぞれのWebアクセスの監視結果を平均または合計したものが監視項目のサービス性能となります。
(2) All Web Accessの監視項目
All Web Accessを監視する場合の,3つの監視項目の関係を次に示します。
平均応答時間(単位:ミリ秒)
図中の1.から3.が完了するまでの平均時間を測定したものです。レスポンスにはエラーレスポンス※も含まれます。
スループット(単位:件/秒)
1秒間に,図中の1.から3.まで実施された件数です。レスポンスにはエラーレスポンス※も含まれます。ただし,JP1/SLM - URがリクエストの収集でタイムアウトしたリクエストは含みません。1.から3.まで完了して1件と数えます。
エラー率(単位:%)
1秒間に,図中の1.の件数に対して3.がエラーレスポンス※になった件数およびJP1/SLM - URがリクエストの収集でタイムアウトした件数の割合です。
- 注※
HTTPステータスが400番台,500番台のエラーとなったレスポンスです。
リクエストやレスポンスのHTTPパケットは,スイッチを通過した時点でJP1/SLM - URによって収集されます。
(3) 特定のWebアクセスを監視する(Webトランザクションの監視)
監視対象サービスに対するすべてのWebアクセスのうち,特定の条件を満たす複数のWebアクセスを一連の処理として監視する方法です。この監視対象となる一連の処理をWebトランザクションと呼びます。これによって,監視対象サービスに含まれる特定の処理の状況を個別につかめるため,サービス性能に問題があると予想される処理をいち早く特定できます。Webトランザクションは,1つの監視対象サービスに対して複数個設定できます。なお,複数のWebアクセスの中から,Webトランザクションとして扱うWebアクセスを特定するための条件を,Webアクセス条件といいます。
Webトランザクションの監視は,JP1/SLM - ManagerおよびJP1/SLM - URのバージョンが09-51以降の場合に実行できます。
特定のWebアクセスを監視する場合の監視対象の範囲を次の図に示します。
サービス利用者から監視対象サービスへ,図中の1〜5に示すWebアクセスが発生しています。このうち,1〜3のWebアクセスが,あらかじめ登録していたWebアクセス条件に一致したとします。この場合,1〜3のWebアクセスがWebトランザクションとして監視されます。
Webトランザクションの監視では,Webトランザクションの最初のリクエスト(図の場合は1)が送信されてから,Webトランザクションの最後のレスポンス(図の場合は3)が送信されるまでの監視結果を平均または合計したものが監視項目のサービス性能となります。
JP1/SLMは,Webアクセス条件に設定した順序で発生するWebアクセスだけをWebトランザクションとして監視します。発生順序が決まっていないWebアクセスはWebトランザクションに含められません。
Webアクセスが対象のWebトランザクションに含まれるかどうかは,次の流れで判定されます。
Webアクセスがあるたびに,Webアクセス条件と一致するかどうかが,Webアクセス条件の順序ごとに判定されます。
1つ目のWebアクセス条件に一致するWebアクセスが検出された場合,以降のWebアクセスでは,2つ目のWebアクセス条件に一致するかどうかが判定されます。
なお,1つのWebアクセス条件と一致したWebアクセスは,以降の順序のWebアクセス条件と一致するかどうかは判定されません。例えば,1つ目のアクセス条件に一致したWebアクセスが2つ目のWebアクセス条件とも一致していたとしても,該当のWebアクセスは1つ目のWebアクセス条件に一致したとだけ判定されます。
最後のWebアクセス条件に一致するWebアクセスが検出された場合に,一連のWebアクセスがWebトランザクションとして識別されます。
ただし,最後のWebアクセス条件まで一致する前に,同じWebトランザクションの最初のWebアクセス条件に一致するWebアクセスがあった場合は,途中の順位まで判定していた状態が破棄されて,最初のWebアクセス条件に一致したWebアクセスが検出された状態になります。
例を示します。この例では,WebトランザクションのWebアクセス条件が「Webアクセス条件1→Webアクセス条件2→Webアクセス条件3」の順序で設定されています。
- Webトランザクションとして判定されるWebアクセスの例
Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス3の順序で発生したWebアクセス
Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス4→Webアクセス3の順序で発生したWebアクセス(ただし,Webアクセス4はWebトランザクションの監視項目のエラー率の算出には含まれません)
Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス2→Webアクセス3の順序で発生したWebアクセス(ただし,2回目のWebアクセス2はWebトランザクション監視項目のエラー率の算出には含まれません)
- Webトランザクションとして判定されないWebアクセスの例
Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス1→Webアクセス3の順序で発生したWebアクセス
この場合,2回目のWebアクセス1が測定された時点でそれまでのWebアクセス1→Webアクセス2の順序の記録は破棄されます。以降のWebアクセスは,Webアクセス1→Webアクセス3の順序で発生したものと見なされるため,Webトランザクションとは判定されません。
Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス3→Webアクセス3の順序で発生したWebアクセス
同じWebトランザクション内で同一のWebアクセスを監視することはできません。この場合は「Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス3」として監視してください。ただし,監視できるWebアクセスは「Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス3(1つ目)」となります。「Webアクセス1→Webアクセス2→Webアクセス3(2つ目)」を監視することはできません。
(4) WebトランザクションのWebアクセス条件の構成要素
Webアクセス条件は,Webアクセスに含まれるURIとCookieで構成されます。なお,URIのうち,Webアクセス条件として指定できるのは,パスとクエリの情報です。
Webアクセスに含まれるURI,Cookieの構成を次の例に示します。
- URI
http://ホスト:ポート/パス?クエリ
例1 http://hitachi.XXX:1234/YYY/ZZZ.html
例2 http://hitachi.XXX?division=1§ion=2
- Cookie
キー=値
例1 year=2011
例2 month=08
指定したWebアクセス条件に一致するWebアクセスがWebトランザクションとなります。複数のWebアクセス条件を指定した場合は,指定したすべてのWebアクセス条件に一致するWebアクセスの組がWebトランザクションとなります。
また,Webアクセス条件に一致するWebアクセスが複数ある場合も同じWebトランザクションとして判定されます。
例えば,「WebトランザクションX」が次のように設定されていたとします。
- WebトランザクションXの設定内容
Webアクセス条件1→Webアクセス条件2→Webアクセス条件3の順序で発生する。
Webアクセス条件は次のように設定されている。
Webアクセス条件
パス
クエリ条件
Cookie条件
Webアクセス条件1
/top.html
a=1
指定なし
Webアクセス条件2
/middle.html
b=.*
指定なし
Webアクセス条件3
/bottom.html
c=3
指定なし
- WebトランザクションXとして監視されるWebアクセスの組み合わせ
次のどちらのWebアクセスの組み合わせもWebトランザクションXとして監視されます。
「パス:/top.html クエリ:a=1」「パス:/middle.html クエリ:b=2」「パス:/bottom.html クエリ:c=3」の順に発生したWebアクセス
「パス:/top.html クエリ:a=1」「パス:/middle.html クエリ:b=4」「パス:/bottom.html クエリ:c=3」の順に発生したWebアクセス
(5) Webトランザクションの監視項目
Webトランザクションを監視する場合の,3つの監視項目の関係を次に示します。
平均応答時間(単位:ミリ秒)
Webトランザクションの最初のWebアクセス(図中の1.)のリクエストが送信されてから,最後のWebアクセス(図中の2.)のレスポンスが送信されるまでの平均時間を測定したものです。レスポンスにはエラーレスポンス※も含まれます。
スループット(単位:件/秒)
1秒間に,Webトランザクションの最初のWebアクセス(図中の1.)のリクエストの送信から,最後のWebアクセス(図中の2.)のレスポンスの返却までが実施された件数です。レスポンスにはエラーレスポンス※も含まれます。ただし,JP1/SLM - URがリクエストの収集でタイムアウトしたリクエストは含みません。Webトランザクションの最初のWebアクセス(図中の1.)のリクエストが送信されてから,最後のWebアクセス(図中の2.)のレスポンスまで完了して1件と数えます。
エラー率(単位:%)
1秒間に,WebトランザクションのWebアクセス(図中の1.から2.まですべて)のリクエストの件数に対してWebトランザクションのWebアクセス(図中の1.から2.まですべて)のレスポンスがエラーレスポンス※になった件数およびJP1/SLM - URがリクエストの収集でタイムアウトした件数の割合です。
- 注※
HTTPステータスが400番台,500番台のエラーとなったレスポンスです。
リクエストやレスポンスのHTTPパケットは,スイッチを通過した時点でJP1/SLM - URによって収集されます。
(6) システム性能を監視する(JP1/PFMとの連携)
JP1/PFMと連携することで,システム性能を監視できます。
システム性能は,監視対象サービスに割り当てたJP1/PFMの監視エージェントごとに個別に収集された性能データを基に監視します。JP1/SLMの画面上では,収集元の監視エージェントごとに階層が分離して表示され,階層別に結果が通知されます。
(7) システム性能の監視項目
システム性能には次の2種類の監視項目があります。
JP1/PFMがデフォルトで提供している監視項目
ユーザーがJP1/PFMで設定した監視項目
JP1/SLMでは,これらの監視項目を区別しないで監視できます。
システム性能の監視項目の詳細ついてはマニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の監視項目に関する説明を参照してください。
また,システム性能の性能データは,レコードという単位で収集されます。レコードは,監視項目によって次の2種類があります。
単数インスタンスレコード
複数インスタンスレコード
- 単数インスタンスレコード
単数インスタンスのレコードは,1回のデータ収集で収集された1行のデータです。
単数インスタンスのレコードの例を次に示します。
各行がある時刻での性能データを表すレコードです。このレコードには,監視対象のホストのCPU利用率,メモリ使用率などの性能データが格納されています。
- 複数インスタンスレコード
複数インスタンスのレコードは,1回のデータ収集で収集された複数行のデータです。
複数インスタンスのレコードの例を次に示します。
この例では,各収集時間でCドライブとDドライブの性能データが異なる行にまたがって収集されています。そのため,ある時刻での性能データを検索するときは,収集時間のほかに,ドライブの値を指定する必要があります。
インスタンスレコードについての詳細は,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」のパフォーマンスデータについての説明を参照してください。
(8) 補足事項
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Webトランザクションの監視の場合,Webトランザクションを構成するWebアクセスは,Webトランザクションを設定する監視対象サービスを監視するJP1/SLM - URの監視範囲に限られます。監視範囲外のWebアクセスを監視したい場合は,監視したいWebアクセスが監視範囲内となる監視対象サービスのWebトランザクションとして監視してください。
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Webトランザクションを監視する場合,同一ユーザーからのWebアクセスかどうかを識別するときには,Webトランザクションにセッション条件を指定してください。セッション条件にはクエリおよびCookieのキーが設定できます。指定したクエリおよびCookieのキーの値が同じWebアクセスが,同一のユーザーによるWebアクセスだと見なされます。
JP1/SLMが監視できるHTTPパケットの長さは,IPヘッダおよびTCPヘッダを含めて1,500バイトまでです。1,500バイトより長いパケットは,1,500バイト以内に監視対象の情報が含まれていれば正常に監視できます。1,501バイト目以降は破棄されるため,監視できません。