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JP1 Version 11 パフォーマンス管理 基本ガイド(サービスレベル管理編)


4.4 傾向監視によるしきい値超過の事前検知とは

傾向監視は,監視対象サービスのサービス性能の傾向を算出して,傾向からサービス性能のしきい値超過を事前に検知する監視方法です。傾向監視は,監視項目ごとに監視します。

傾向とは,現在のサービス性能から算出した近似直線です。N時間前から現在時刻までの期間のサービス性能の近似直線が算出されます。この近似直線が現在時刻からN時間以内にしきい値を超過する場合に,サービス性能の異常の予兆として検知されます。Nは[設定]画面で指定する数値です。

[設定]画面での数値の指定方法については,「4.6.2 サービス性能の監視項目を設定する」を参照してください。

傾向監視でしきい値の超過が事前に検知された例を次の図に示します。

図4‒6 しきい値の超過が事前に検知された例

[図データ]

この図では,平均応答時間を監視しています。N時間前から現在時刻までの期間のサービス性能から傾向を算出して,傾向がN時間以内にしきい値を超過する場合に検知されます。

N時間以内のしきい値超過を事前に知るための傾向の算出には,N時間分のサービス性能の蓄積が必要となります。これは,長時間の傾向監視による誤差を小さくするためです。そのため,1時間後までのしきい値超過を事前に知りたい場合は,1時間分のサービス性能の蓄積が必要となります。

近似直線は60秒ごとに更新され,そのたびにしきい値を超過するかどうかが判定されます。検知された場合,警告となって画面に表示されます。

画面に警告が表示された例を次の図に示します。

図4‒7 画面に警告が表示された例(傾向監視)

[図データ]

画面には,警告のアイコン,検出日時,サービス性能がしきい値を超過すると予測される時刻,警告の対象となったサービスグループの名称,サービスの名称などの情報が表示されます。傾向がしきい値を超過し続ける場合は,最初に検知された時点の警告だけが表示されます。表示された警告の前後のサービス性能はグラフで確認できます。

グラフを表示した例を次の図に示します。

図4‒8 グラフを表示した例(傾向監視)

[図データ]

グラフでは,傾向のしきい値超過を検知した時刻が警告のアイコンで示されます。また,サービス性能がしきい値を超過すると予測される時刻と,傾向のしきい値超過を検知した時刻が黄色の帯で表示されます。

傾向監視をするためには,[設定]画面で次の項目を設定する必要があります。

しきい値

監視対象サービスの状況を判断する基準となるしきい値を設定します。

傾向を算出する基準となる時間

傾向を算出する基準となるN時間を設定します。N時間は次のように使用されます。

  • N時間前から現在時刻までの期間のサービス性能で傾向が算出されます。

  • 現在時刻からN時間以内に傾向がしきい値を超過するとわかったら検知されます。

監視項目については「4.2 JP1/SLMの監視方法および監視項目について」を参照してください。ただし,エラー率については,傾向監視はできません。

傾向監視の詳細については,マニュアル「JP1/Service Level Management」の傾向監視の説明を参照してください。