付録I.1 SNMPトラップ変換機能によるイベント変換の仕組み
SNMPトラップをJP1イベントに変換してイベントDBに登録する流れを次の図に示します。
SNMPトラップ変換を使用するには,SNMPトラップ変換動作定義ファイル(imevtgw.conf)およびSNMPトラップ変換フィルターファイル(snmpfilter.conf)を作成し,JP1イベントに変換するSNMPトラップの条件や変換するJP1イベントの重大度などを指定しておきます。その後,NNMを起動すると,SNMPトラップ変換が起動します。
SNMPトラップ変換が起動すると,SNMPトラップ変換フィルターファイル(snmpfilter.conf)に指定した条件と一致するSNMPトラップを取得してJP1イベントに変換します。取得する情報は,メッセージ,重要度,エンタープライズ名,エンタープライズID,オブジェクト名,オブジェクトID,およびソースリストです。SNMPトラップ変換が起動していないときに出力されたSNMPトラップはJP1イベントに変換できません。JP1イベントとして登録できるメッセージは,1,023バイトまでです。JP1イベントに変換するメッセージが1,023バイトを超えた場合,1,023バイト以降のメッセージを切り捨てます。
JP1イベントのイベントIDは,00003A80で固定です。JP1イベントの属性については,「付録I.5 SNMPトラップ変換のJP1イベント」を参照してください。
なお,SNMPトラップ変換は,動作定義ファイルおよびSNMPトラップ変換フィルターファイル(snmpfilter.conf)を読み込む際,ファイル内の構文不正をチェックします。構文不正があった場合は,メッセージを表示します。
- 〈この項の構成〉
(1) クラスタシステムでの運用
SNMPトラップ変換機能は,物理ホストでしか動作しません。また,NNMの機能の一つとして動作し,NNMの起動と停止に連動します。このため,JP1/Baseのフェールオーバーとは無関係に動作します。
初期設定では,JP1イベントは物理ホストのイベントサービスに登録されます。論理ホストのイベントサービスへ登録したい場合は,SNMPトラップ変換動作定義ファイルのimevt_serverパラメーターに論理ホストのイベントサーバ名を指定してください。ただし,NNMを非クラスタシステムで使用し,変換したJP1イベントを直接論理ホストに登録する構成の場合,待機系で受信したSNMPトラップは監視できません。
NNMをクラスタシステムで使用し,直接論理ホストに登録する場合の構成例を次の図に示します。
NNMをクラスタシステムで使用する場合は,実行系・待機系の両方で「付録I.2 SNMPトラップ変換を設定する」を参照してNNMの設定をしてください。また,NNMとJP1/Baseを同じクラスタグループにしてください。
NNMをクラスタシステムで使用し,JP1/Baseを非クラスタシステム,つまり物理ホストだけで使用する場合は,実行系・待機系の両方で物理ホストのJP1/Baseを起動しておく必要があります。
(2) 変換できるSNMPトラップの条件
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各定義ファイルの1行のサイズ
各定義ファイル(imevtgw.conf,snmpfilter.conf,trapd.conf)の1行のサイズが1,023バイト以内である。
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エンタープライズ名
trapd.confで定義されているエンタープライズ名の先頭に「#」,「!」,「+」を含まないSNMPトラップ。
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イベント名
trapd.confで定義されているイベント名の先頭に*(アスタリスク)を含まないSNMPトラップ。
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オブジェクトID
trapd.confで定義されているオブジェクトIDに*(アスタリスク)を含まないSNMPトラップ。なお,trapd.confに定義されているオブジェクトIDと発生したSNMPトラップのオブジェクトIDが完全に一致したものだけが,JP1イベントに変換されます。
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ソースリスト
NNMの[イベント設定]画面で表示される[イベントの変更]画面−[ソース]タブで,「指定ソースのみ」を選択してソース(ノード)を指定している場合,指定したソースで発生したSNMPトラップだけをJP1イベントとして変換できます。
また,ソースを記述したファイルを指定することもできます。なお,ファイル内では「#」をコメントアウトとして使用できません。1ソース当たりの文字列長の上限は511バイトです。ソース(ノード)名は正規表現には対応していません。
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メッセージ
trapd.confから取得したメッセージ中に$変数が含まれている場合,SNMPトラップ変換機能ではJP1イベント変換時にこの$変数をSNMPトラップに含まれる情報で展開します。SNMPトラップ変換機能で対応している$変数は次のとおりです。これ以外の$変数については展開しないで,そのまま出力されます。
SNMPトラップ変換動作定義ファイル(imevtgw.conf)でパラメーターが省略されていると,$変数は展開されません。$変数も展開したい場合は,SNMPトラップ変換動作定義ファイル(imevtgw.conf)で設定してください。設定方法については,「付録I.4(1) SNMPトラップ変換動作定義ファイル(imevtgw.conf)」を参照してください。
$変数の情報展開時にエラーが発生した場合,KAVA2108-Eのメッセージが出力されます。エラーをJP1イベントとして検知したい場合は,統合トレースログに出力されるKAVA2108-Eのメッセージを条件に,ログファイルトラップで監視してください。
なお,$変数の展開後の出力は,NNMの出力するメッセージと表示が異なる場合があります。NNMの出力するメッセージを確認する方法には,次に示す二つの方法があります。
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JP1/IM - Viewの統合機能メニューを利用して,ネットワーク管理を選択し,NNM画面を開いて確認する。
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JP1/IM - Viewの[イベント詳細]画面からNNMをモニター起動して,NNMのアラーム・ブラウザで確認する。
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一般トラップ
SNMPトラップ変換機能では,一般トラップを変換できます。
SNMPトラップ変換フィルターファイル(snmpfilter.conf)に一般トラップを変換対象として定義した場合,「エンタープライズID付き一般トラップ」も一般トラップとして変換されます。また,trapd.confに一般トラップと「エンタープライズID付き一般トラップ」の両方が定義されている場合,NNMでは「エンタープライズID付き一般トラップ」として変換され,SNMPトラップ変換機能では一般トラップとして変換されます。そのため,NNMで表示されている内容と,JP1/IM - Viewで表示される内容が異なる場合があります。この現象を回避したい場合は,変換したい「エンタープライズID付き一般トラップ」の定義をSNMPトラップ変換フィルターファイル(snmpfilter.conf)に追加してください。一般トラップと「エンタープライズID付き一般トラップ」の例を次に示します。
- (例)一般トラップ
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エンタープライズ名:snmpTraps
イベント名:SNMP_Link_Down
オブジェクトID:.1.3.6.1.6.3.1.1.5.3
- (例)エンタープライズID付き一般トラップ
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エンタープライズID:hitachi
イベント名:HI_Link_Down
オブジェクトID:.1.3.6.1.6.3.1.1.5.3.1.3.6.1.4.1.116
なお,次に示すNNM内部で使用されるSNMPトラップはJP1イベントに変換できません。
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OpenView.OV_Ack_Alarm
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OpenView.OV_Delete_Alarm
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OpenView.OV_Unack_Alarm
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OpenView.OV_ChgSev_Alarm
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OpenView.OV_ChgCat_Alarm
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ECSエンジンに起因するイベント(OpenView.OV_Corr_Indicなど)
詳細についてはNNMのマニュアルを参照してください。
(3) 注意事項
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SNMPトラップをJP1イベントに変換する際に,イベントサービスとの接続に失敗した場合,エラーメッセージが表示され,該当するイベントデータは破棄されます。