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HiRDB データ連動機能 HiRDB Datareplicator Version 10


6.9.2 系切り替え機能を使うときの準備(HAモニタの場合)

HAモニタによる系切り替え機能を使うときに準備する項目を次に示します。ここで説明している項目は,「6.9.1(1) 系切り替えの種類」で説明した系切り替えすべてで有効です。

HAモニタについては,マニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ」を参照してください。

〈この項の構成〉

(1) HAモニタの準備

HAモニタのserver定義文で,Datareplicatorの動作環境を設定します。Datareplicatorは,HiRDBと連動して系切り替えを行います。server定義文の指定例を次に示します。

HAモニタのリソースサーバ機能を使用する場合の定義例
     /****  Resource   ***/
     resource alias          REPres                     ,
              group          groupA                     ,
              initial        online                     ,
              disk           /dev/vg00:/dev/vg01        ,
              lan_updown     use                        ;
 
     /****  Replicator   ***/
     server   name           /HAmon/etc/replica.up      ,
              alias          repl                       ,
              acttype        monitor                    ,
              initial        online                     ,
              termcommand    /HAmon/etc/replica.down    ,
              lan_updown     nouse                      ,
              parent         REPres                     ,
              group          groupA                     ;

[図データ]

HAモニタのリソースサーバ機能を使用しない場合の定義例
     /****  Replicator   ***/
     server   name           /HAmon/etc/replica.up      ,
              alias          repl                       ,
              acttype        monitor                    ,
              initial        online                     ,
              termcommand    /HAmon/etc/replica.down    ,
              disk           /dev/vg01                  ,
              lan_updown     use                        ,
              group          groupA                     ;

[図データ]

抽出側Datareplicatorの系切り替えでは,データ連動用連絡ファイルをHiRDB本体と共用しています。そのため,データ連動用連絡ファイルのボリューム配置や,HiRDB本体とDatareplicatorとの起動タイミングを調整する必要があります。

HAモニタがリソースサーバ機能をサポートしているバージョンである場合,抽出側Datareplicatorの系切り替えでは,HAモニタのリソースサーバ機能を使用することで,起動タイミングの調整が不要になります。系切り替え環境の構築を簡略化できる,リソースサーバ機能を使用することをお勧めします。

次に,Datareplicatorに関するserver定義文の各オペランドの指定について説明します。詳細はマニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ」を参照してください。

(a) リソースサーバの定義

リソースサーバの定義に関する各オペランドの指定について説明します。

alias

HAモニタで使うコマンドや,出力するメッセージのためのリソースサーバの識別名を指定します。

group

HiRDB本体及びDatareplicatorと連動系切り替えをするように,HiRDB本体及びDatareplicatorと同じサーバグループ名を指定します。

initial

サーバ起動時の状態を指定します。現用系ではonlineを,予備系ではstandbyを指定します。

disk

HiRDB本体及びDatareplicatorについて,切り替えが必要なファイルを格納した共有ディスク装置の,ボリュームグループのパス名を指定します。

共有ディスク装置に作成するファイルについては,「表6-18 系切り替え機能を使うときのファイルの準備」を参照してください。

lan_updown

useを指定します。これは,系切り替え後,抽出側Datareplicatorに抽出マスタプロセスと抽出ノードマスタプロセスとの通信を行うためにIPアドレスの切り替えが必要となるためです。

また,上記のIPアドレス切り替えを行うためのLANの状態設定ファイル(サーバ識別名.upファイル,及びサーバ識別名.downファイル)を作成する必要があります。

(b) Datareplicatorに関する定義

Datareplicatorの定義に関する各オペランドの指定について説明します。

name

Datareplicatorを開始するコマンドを記述したシェルを絶対パス名で指定します。シェルの記述例を次に示します。

sleep 5                                                      1.
su - hirdbdba -c /opt/hirdbds/bin/hdestart 2> /tmp/start_log  2.
注※

抽出側Datareplicator又は反映側Datareplicatorでリソースサーバ機能を使用する場合は,sleepは必要ありません。

  1. HiRDB本体とDatareplicatorで共用するデータ連動用連絡ファイルのディスクの切り替えは,HiRDB本体のserver定義文で指定します。そのため,HiRDB本体の切り替えが完了してデータ連動用連絡ファイルを参照できるまでのタイムラグを考慮して,Datareplicatorを起動する前に5〜10秒程度の待ち時間を設定します。

  2. シェルはHAモニタからスーパユーザで実行されますが,Datareplicatorの起動コマンドはDatareplicator管理者で実行する必要があるため,suコマンドを使ってDatareplicator管理者(上記の例ではhirdbdba)でDatareplicatorを起動します。

    起動コマンドの指定は,抽出側Datareplicatorと反映側Datareplicatorで異なります。

    抽出側Datareplicatorの場合:/opt/hirdbds/bin/hdestart

    反映側Datareplicatorの場合:/opt/hirdbds/bin/hdsstart

    なお,起動コマンド実行時のエラーメッセージは,標準エラー出力に対して出力されます。シェル内で起動コマンドを実行する場合は,標準エラー出力をワークファイル(上記例では/tmp/start_log)に出力するようにしてください。

alias

HAモニタで使うコマンドや,出力するメッセージのための識別名を指定します。

acttype

monitorを指定します。

initial

サーバ起動時の状態を指定します。現用系ではonlineを,予備系ではstandbyを指定します。

termcommand

HAモニタのmonendコマンドだけでシステムを終了させたり,monswapコマンドだけでシステムを計画切り替えしたりするときに,Datareplicatorを停止するコマンドを記述したシェルを絶対パス名で指定します。

シェルの記述例を次に示します。

      su  - hirdbdba  -c  "/opt/hirdbds/bin/hdestop  -t  sendterm -w" 2> /tmp/stop_log    1.
  1. Datareplicatorが完全に停止するのを確認する必要があるため,hdestopコマンドを-wで実行します。シェルはHAモニタからスーパユーザで実行されますが,Datareplicatorの停止コマンドはDatareplicator管理者で実行する必要があるため,suコマンドを使ってDatareplicator管理者(上記の例ではhirdbdba)でDatareplicatorを停止します。

    停止コマンドの指定は,抽出側Datareplicatorと反映側Datareplicatorで異なります。

    抽出側Datareplicatorの場合:/opt/hirdbds/bin/hdestop -t sendterm -w

    反映側Datareplicatorの場合:/opt/hirdbds/bin/hdsstop -t force -w

     注※ -t sendterm及び-t forceオプションについては,計画系切り替えの場合に-t immediateを指定するなど,目的に応じてオプションの指定を変更してください。

    なお,停止コマンド実行時のエラーメッセージは,標準エラー出力に対して出力されます。シェル内で停止コマンドを実行する場合は,標準エラー出力をワークファイル(上記例では/tmp/stop_log)に出力するようにしてください。

disk

共有ディスク装置に作成するファイルを指定します。共有ディスク装置に作成するファイルについては,「表6-18 系切り替え機能を使うときのファイルの準備」を参照してください。

リソースサーバ機能を使用しない場合に,切り替えが必要なファイルを格納した共有ディスク装置のボリュームグループのパス名を指定します。ただし,データ連動用連絡ファイルを格納するディスクはHiRDB本体からもアクセスされるため,HiRDB本体に関するserver定義文のdiskオペランドに指定してください。

リソースサーバ機能を使用する場合,リソースサーバの定義で指定しているので,指定する必要はありません。

lan_updown

抽出側と反映側のシステムで指定は同じです。

抽出側システム

useを指定します。これは,系切り替え後,抽出マスタプロセスと抽出ノードマスタプロセスとの通信が行えるようにIPアドレスの切り替えが必要となるためです。

また,上記のIPアドレス切り替えを行うためのLANの状態設定ファイル(サーバ識別名.upファイル,及びサーバ識別名.downファイル)を作成する必要があります。LANの状態設定ファイルで,IPアドレスの切り替え制御を行うホスト名をDatareplicatorの抽出システム定義のnode_hostオペランドに指定してください。

反映側システム

useを指定します。これは,系切り替え後,抽出側Datareplicatorから再接続できるようにIPアドレスの切り替えが必要となるためです。

また,上記のIPアドレス切り替えを行うためのLANの状態設定ファイル(サーバ識別名.upファイル,及びサーバ識別名.downファイル)を作成する必要があります。

parent

リソースサーバの識別名(aliasオペランドに指定した値)を指定します。

group

HiRDB本体と連動系切り替えをするようにHiRDB本体と同じサーバグループ名を指定します。Datareplicatorはモニタモードのため,切り替え種別の指定は必要ありません。

(2) ハードウェアの準備

系切り替え機能を使うためには,Datareplicatorのファイルを共有ディスク装置に割り当てる必要があります。割り当てが必要なDatareplicatorのファイルについては,「表6-18 系切り替え機能を使うときのファイルの準備」を参照してください。

表6-18 系切り替え機能を使うときのファイルの準備」で示したファイルを現用系と予備系とで共有する外付けハードディスク(キャラクタ型スペシャルファイル)に作成し,互いのDatareplicatorから同じパスでこれらのファイルを参照できるように設定してください。なお,共有ディスク装置として,Datareplicatorファイルシステム領域を使えます。

(3) ネットワークの準備

次のネットワーク構成は,IPアドレスを引き継ぐ構成にしてください。

(4) ファイルの準備

系切り替え機能を使うためには,共有ディスク装置に割り当てなければならないファイルや,現用系と予備系とで同じディレクトリ名下に複写しておかなければならないファイルがあります。

共有ディスク装置に割り当てるファイルは,現用系及び予備系のHiRDB Datareplicatorから同じパス名で参照できるように,シンボリックリンクを作成しておく必要があります。シンボリックリンクの作成方法については,「4.6.2 抽出側Datareplicatorで使うファイルの準備」及び「4.7.2 反映側Datareplicatorで使うファイルの準備」を参照してください。

系切り替え機能を使うときのファイルの準備を次の表に示します。

表6‒18 系切り替え機能を使うときのファイルの準備

区分

ファイル名

共有ディスク装置

同一ディレクトリ名

抽出側Datareplicator

抽出システム定義ファイル

同一

抽出環境定義ファイル

同一

送信環境定義ファイル

同一

抽出定義ファイル

二重化定義ファイル

同一

二重化制御ファイル

同一

抽出定義プリプロセスファイル

D

抽出情報キューファイル

D

抽出マスタステータスファイル

D

抽出サーバステータスファイル

D

抽出マスタエラー情報ファイル

抽出ノードマスタエラー情報ファイル

稼働トレースファイル

データ連動用連絡ファイル

H

コマンドログファイル

反映側Datareplicator

反映システム定義ファイル

同一

反映環境定義ファイル

同一

反映定義ファイル

同一

二重化定義ファイル

同一

二重化制御ファイル

同一

反映情報キューファイル

D

反映ステータスファイル

D

反映マスタステータスファイル

D

反映エラー情報ファイル

稼働トレースファイル

未反映情報ファイル

コマンドログファイル

SAMファイル

同一

更新情報定義ファイル

同一

抽出対象外データ格納ファイル

同一

ユーザ作成の文字コード変換用マッピングテーブル

同一

回復情報ファイル

D

(凡例)
D:

共有ディスク装置に割り当てる必要があります。

HiRDB Datareplicatorの系切り替えと連動して切り替えることができる共有ディスク装置上のボリューム・グループに割り当てる必要があります。切り替えタイミングが異なるため,Hで示されるファイルとは異なるボリューム・グループに割り当てる必要があります。

また,割り当てたボリューム・グループは,HiRDB Datareplicatorの系切り替えと連動して切り替えられるようにHAモニタのサーバ対応環境設定で設定しておく必要があります。

H:

HiRDBの系切り替えと連動して切り替えることができる共有ディスク装置上のボリューム・グループに割り当てる必要があります。

切り替えタイミングが異なるため,Dで示されるファイルとは異なるボリューム・グループに割り当てる必要があります。ただし,リソースサーバ機能を使用する場合は,Dで示されるファイルと同じボリューム・グループに割り当ててもかまいません。

また,割り当てたボリューム・グループは,HiRDBの系切り替えと連動して切り替えられるようにHAモニタのサーバ対応環境設定で設定しておく必要があります。

同一:

現用系マシン上のファイルを,予備系マシン上の現用系マシンと同じディレクトリ名下にあらかじめ複写しておく必要があります。また,ファイルの内容を更新した場合も,更新後のファイルをあらかじめ予備系マシンに複写しておく必要があります。

−:

該当しません。

注※

現用系マシン上のファイルを,予備系マシン上にあらかじめ複写しておく必要があります。

(5) HiRDBで高速系切り替え機能を使う場合のDatareplicatorの定義方法

抽出側Datareplicatorでは,抽出マスタプロセスから抽出ノードマスタプロセスへの通信用にIPアドレスを引き継ぐホスト名を割り当てる必要があります。このとき,HiRDBで使用するホスト名とは別のホスト名を割り当てる必要があります。

抽出側Datareplicator用に割り当てたIPアドレスを引き継ぐホスト名は,抽出システム定義のnode_hostオペランドに,抽出対象HiRDBのシステム共通定義のpdstartコマンド,又はpdunitコマンドの-xで指定したホスト名と対応付けて指定する必要があります。

抽出側システムのサーバと主要なプロセスの関係を次の図に示します。

図6‒29 抽出側システムのサーバと主要なプロセスの関係

[図データ]

抽出対象HiRDBのシステム共通定義のpdstartコマンド,又はpdunitコマンドの-xで指定したホスト名と,抽出ノードマスタプロセスを起動するホスト名との対応付けを定義に指定します。抽出マスタプロセスは,抽出ノードマスタプロセスを起動するホストに対して接続します。

[図データ]