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ノンストップデータベース HiRDB Version 10 解説


1.1.2 HiRDBを導入するメリット

HiRDBは並列一括更新と並列リカバリ技術を実装しているリレーショナルデータベースです。HiRDBの特長を次に示します。

〈この項の構成〉

(1) スケーラビリティに優れている

HiRDBには,サーバマシン1台で動作するHiRDB/シングルサーバと,複数台のサーバマシンで動作するHiRDB/パラレルサーバがあります。業務の特長によって,HiRDB/シングルサーバにするか,HiRDB/パラレルサーバにするかを選択できます。さらに,HiRDBでは,HiRDB/シングルサーバをHiRDB/パラレルサーバに変更したり,HiRDB/パラレルサーバのサーバマシンを増やしたりできます。これによって,業務の規模の拡大に合わせて段階的にシステムを拡張できます。

HiRDBでは,並列処理に適したShared Nothing方式を採用しているため,プロセサ数に比例して,処理性能を向上できます。つまり,増やしたサーバマシンの台数分だけ,処理性能を向上できます。サーバマシンを追加した場合にフレキシブルハッシュ分割機能を使用すると,HiRDBによってハッシュ関数が自動的に変更され,追加したサーバマシンにも自動的にデータが格納されます。

(2) 高性能システムの実現

(a) 並列処理による性能向上

表の並列検索・更新

データベースの検索又は更新処理を複数のサーバマシンに分散でき,表のデータも各サーバマシンに分割できます。このため,表を並列に検索又は更新でき,サーバマシンの台数分だけ処理性能が向上します。

負荷の高いデータベース処理の分散

HiRDBでは,ソートやジョインなどの負荷が高い処理を別のサーバマシンに割り当て,データへのアクセスと並列に処理できます。これによって,検索結果の出力までの時間を短縮できます。

大量データのバッチ処理時間の短縮

HiRDBでは,システム構築時などの大量データの格納も並列処理できるため,処理時間を短縮できます。

データベースの再編成の並列化

HiRDBでは,データベースの再編成をサーバごとに並列に実行できるため,再編成の処理に掛かる時間を短縮できます。

並列バックアップ/リカバリ処理

HiRDBでは,一つのコマンドの実行によって,バックアップの取得や,障害発生時のデータベースの回復処理をサーバごとに並列に実行できます。このため,バックアップ又はデータベースの回復に掛かる時間を短縮できます。

(b) グローバルバッファによるきめ細かなバッファ制御

HiRDBでは,アクセス頻度が高いインデクスのデータなどを専用のバッファに割り当てられます。これによって,インデクス検索やデータの全件検索などの様々な処理が混在する環境でも,バッファ間の干渉をなくし,安定したレスポンスを確保できます。

(c) シンクポイントダンプ処理方式による性能の向上

HiRDBでは,ある時点までの更新情報をデータベースに反映し,その時点での回復情報をファイルに取得しています。この処理をシンクポイントダンプ処理といいます。従来のシステムでは,シンクポイントダンプ処理中はトランザクションの受け付けが中断されるため,処理性能が低下していました。HiRDBはシンクポイントダンプ処理中でもトランザクションの受け付けを制限しないため,シンクポイントダンプ処理が原因で処理性能が低下しないようにしています。

(d) 高速リランによる短時間でのシステム回復

HiRDBでは定期的なシンクポイントダンプ処理によって,障害時の回復範囲を小さくし,短時間で回復処理を完了できます。

また,システム回復時には,ロールバックと新規トランザクションの受け付けを同時に開始するディレードリラン方式を採用しているので,速やかにシステムを再開始できます。

(3) 高信頼システムの実現

(a) システムやデータベースの回復に必要な情報のファイルへの取得

システム再開始時に必要な情報の取得

HiRDBでは障害が発生した場合に備えて,HiRDB稼働中に,再開始に必要な情報(システムステータス情報)をファイルに格納します。このファイルをステータスファイルといいます。

データベース回復時に必要な情報の取得

HiRDBでは障害が発生した場合に備えて,データベースを回復するときに必要なデータベースの更新履歴情報(システムログ)をファイルに格納します。このファイルをシステムログファイルといいます。システムログファイルによって,障害が発生した場合でも障害直前の状態にデータベースを正しく回復できます。

ファイルの二重化

HiRDBではステータスファイル及びシステムログファイルを二重化して,システム及びデータベースの回復に必要な情報を取得できます。二重化することで,片方のファイルに異常が発生してももう一方のファイルを使用できるため,システムの信頼性を向上できます。

(b) システムの自動再開始

軽度の障害であれば,HiRDBではステータスファイルを使用して自動的にシステムを再開始します。このとき,オペレータの操作は不要です。

(c) 系切り替え機能による不稼働時間の短縮

業務処理中のサーバマシンとは別に待機用のサーバマシンを準備すれば,業務処理中のサーバマシンに障害が発生した場合にも,スムーズに待機用のサーバマシンに業務処理を切り替えられます。これを系切り替え機能といいます。

(4) 運用・操作性の向上

(a) 特定のサーバマシンからの集中管理

HiRDB/パラレルサーバの場合,特定のサーバマシンからシステムを一元的に集中管理できます。例えば,あるサーバマシンでコマンド又はユティリティを実行して,すべてのサーバマシン又は特定のサーバマシン上のHiRDBを開始又は終了できます。

(b) HiRDBの環境設定支援【Windows版限定】

Windows版のHiRDBでは,環境設定を支援するツールを提供しています。提供しているツールを次に示します。

  • 簡易セットアップツール

    GUIでHiRDBの環境を設定できます。運用ディレクトリ及びセットアップディレクトリを指定すれば容易に環境設定ができる「標準セットアップ」と,より詳細な設定ができる「カスタムセットアップ」のどちらかを選択できます。また,作成又は編集したシステム定義を更新できます。

  • バッチファイル

    バッチファイルを実行すると,基本的なHiRDBの環境を自動的に設定できます。

(5) オープンな環境での柔軟なシステムの実現

(a) X/OpenのXAインタフェースの装備

HiRDBでは,X/OpenのXAインタフェースを使用してOLTPと連携できます。HiRDBのトランザクション処理をトランザクションマネジャで制御するために,HiRDB XAライブラリを提供しています。

(b) ODBC,JDBC,OLE DBインタフェースの装備

HiRDBは業界標準のODBC,JDBC,OLE DBに対応しているので,ODBC,JDBC,OLE DBに従ったアプリケーションを使用できます。また,ADO(ADO.NETにも対応),DAO,及びRDOも使用できます。

(6) ノンストップサービスへの対応

ネットビジネスが盛んになり,24時間365日ノンストップでオンライン業務を行いたいというニーズが増えています。HiRDBは24時間連続稼働を想定した機能を提供しています。24時間連続稼働を想定した機能については,マニュアル「HiRDB システム運用ガイド」を参照してください。