スケーラブルデータベースサーバ HiRDB Version 8 SQLリファレンス

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DECLARE CURSOR 形式1(カーソル宣言

機能

問合せ指定の検索結果をFETCH文で1行ずつ取り出すために,カーソルを宣言します。

形式1では,直接指定したカーソル指定に対するカーソルの宣言をします。

使用権限

なし。

形式1<直接指定したカーソル指定に対するカーソルの宣言>

 
 DECLARE カーソル名 CURSOR
WITH HOLD〕〔{WITH RETURN | WITHOUT RETURN}〕 FOR
 〈カーソル指定 形式1〉
  〈問合せ式〉
   〈問合せ指定〉
   {SELECT 〔{ALL|DISTINCT}〕{選択式〔,選択式〕…|*}
    〈表 式〉
    FROM 表参照〔,表参照〕…
       〔WHERE  探索条件〕
       〔GROUP  BY  値式〔,値式〕…〕
       〔HAVING  探索条件〕
    | 問合せ式 }
    〔ORDER BY {列指定|ソート項目指定番号}〔{ASC|DESC}〕
       〔,{列指定|ソート項目指定番号}〔{ASC|DESC}〕〕… 〕
    〔LIMIT {〔オフセット行数,〕{リミット行数|ALL}
        | {リミット行数|ALL} 〔OFFSET オフセット行数〕}〕
 〈排他オプション  〔〔{WITH {SHARE|EXCLUSIVE}LOCK
    |WITHOUT LOCK〔{WAIT|NOWAIT}〕}〕
  〔{WITH ROLLBACK|NO WAIT}〕〕
    〔FOR{UPDATE 〔OF列名〔,列名〕…〕〔NOWAIT〕|READ ONLY}〕
    〔UNTIL DISCONNECT
 

オペランド

カーソルの名称を指定します。

UAP中に指定する場合は,SQLの予約語と同じ名称でも,引用符(")で囲まないでください。ただし,SQLの予約語と同じ名称を手続き中に指定する場合は,引用符(")で囲んでください。

カーソル名については,「1.1.7 名前の指定」を参照してください。

ホールダブルカーソルを使用する場合に指定します。

WITH HOLDは,UNTIL DISCONNECTを指定した場合の機能と同じなので,説明はUNTIL DISCONNECTを参照してください。また,この指定がUNTIL DISCONNECTと重複してもしなくても,機能差はありません。

問合せの内容を表すカーソルを指定します。

カーソル指定については「2.1.1 カーソル指定 形式1」を,問合せ式については「2.2 問合せ式」を,問合せ指定については「2.3 問合せ指定」を,表式については「2.5 表式」を,探索条件については「2.7 探索条件」を参照してください。

問合せをする場合の排他制御モードと,ほかのユーザが資源を占有していた場合の処置を指定します。

排他オプションについては,「2.19 排他オプション」を参照してください。

FOR UPDATE 〔OF列名〔,列名〕…〕をFOR UPDATE句といいます。

FOR UPDATE
カーソルを使用して検索中の表に対して,そのカーソルを使用した行の更新,又は削除をして,更にカーソルを使用しない行の更新,削除,又は追加をする場合に指定します。
指定したカーソルを使用して行を更新するUPDATE文,又は削除するDELETE文がモジュール中に含まれている場合に,FOR UPDATE OFを省略するとFOR UPDATEが仮定され,すべての列を更新,追加,又は削除できます。
カーソルを使用して検索中の表に対して,そのカーソル,及びほかのカーソルを使用した行の更新,削除がなく,カーソルを使用しない行の更新,削除,及び追加もしない場合は,オペランドを省略してください。SQL中の排他オプションを省略した場合,排他オプションはPDISLLVLの指定値,又はSQLコンパイルオプションで指定するデータ保証レベルの指定値によって決まりますが,PDFORUPDATEEXLOCKにYES,又はSQLコンパイルオプションのデータ保証レベルの後にFOR UPDATE EXCLUSIVEを指定することで,この指定のあるカーソルに対する排他オプションはWITH EXCLUSIVE LOCKに仮定されます。詳細については,マニュアル「HiRDB Version 8 UAP開発ガイド」を参照してください。

OF列名〔,列名〕…
カーソルを使用して検索中の表に対して,そのカーソルを使用した検索行の更新だけをする場合に,更新する列を指定します。
SELECT文の選択式で指定していない列でも指定できます。ただし,同じ列を2回以上指定できません。
カーソルを使用して検索中の表に対して,そのカーソル及びほかのカーソルを使用した行の更新,削除がなく,カーソルを使用しない行の更新,削除,及び追加もしない場合には,オペランドを省略してください。
指定する列名は,AS列名に指定した列名ではなく,最も外側の問合せ指定のFROM句に指定した表の列を指定します。

〔NOWAIT〕
FOR UPDATE句を指定し,かつ排他オプションにWITH EXCLUSIVE LOCK NO WAITを指定した場合と同じ動作をします。ただし,排他オプションを指定した場合,NOWAITは指定できません。
排他オプションにWITH EXCLUSIVE LOCK NO WAITを指定した場合の動作については,「2.19 排他オプション」を参照してください。

FOR READ ONLY
カーソルを使用して検索中にほかのカーソル,又は直接探索条件を指定して更新する場合に指定します。この指定は,検索中の更新が検索結果に影響を与えないようにするためです。

ホールダブルカーソルを使用する場合に指定します。

この指定をしたときの機能は,WITH HOLDを指定した場合と全く同じです。また,この指定がWITH HOLDと重複してもしなくても,機能差は生じません。

なお,ホールダブルカーソルについては,マニュアル「HiRDB Version 8 UAP開発ガイド」を参照してください。

ホールダブルカーソルについての規則を次に示します。

  1. 次の場合,ホールダブルカーソルは使用できません。
    • リモートデータベースアクセス
    • プラグインを使用した抽象データ型の列を指定した場合
    • プラグインを使用した関数呼出しを指定した場合
    • プラグインを使用した関数呼出しを指定して導出した,名前付きの導出表に対する問合せ
    • 外部表,又は外部表を基表とするビュー表
  2. ホールダブルカーソルが開いている場合,定義系SQLは実行できません。
  3. ホールダブルカーソルを使用したSELECT文に対してOPEN文を実行後,そのSELECT文中で使用している表に対してPURGE TABLE文を実行すると,カーソルは閉じた状態になります。
  4. ホールダブルカーソルを使用したSELECT文に対してOPEN文を実行してからDISCONNECTするまでの間に,そのSELECT文中で使用している表に対して,ほかのユーザが定義系SQL文を発行すると,定義系SQLは排他待ちの状態になります。また,ホールダブルカーソルを使用したSELECT文に対する前処理が有効な間に,そのSELECT文中で使用している表に対して,ほかのユーザが定義系SQL文を発行すると,定義系SQLは排他待ちの状態になります。

共通規則

  1. 宣言したカーソルは,閉じた状態になります。
  2. DECLARE CURSOR中のSELECT文で指定した埋込み変数,SQL変数,又はSQLパラメタの値は,カーソルを開いてからカーソルを閉じるまでこのカーソルのOPEN文実行時の値が有効です。値を変更したい場合は,いったんカーソルを閉じてから,再度開いてください。
  3. 1個のUAPでは,最大1,023個のカーソルを宣言できます。
  4. カーソル指定,又は排他オプション中に次のどれかの指定を含む場合は,そのカーソルを使用した更新,及び削除はできません。また,FOR UPDATE句の指定もできません。
    ただし,リモートデータベースアクセスで(j)の指定を含む場合,FOR UPDATE句の指定はできますが,カーソルを使用した更新及び削除はできません。
    (a) UNION 〔ALL〕,又はEXCEPT〔ALL〕
    (b) 最も外側の問合せ指定のFROM句に指定した表を,副問合せのFROM句に指定
    (c) 最も外側の問合せ指定での表の結合
    (d) 最も外側の問合せ指定でのFROM句の導出表
    (e) 最も外側の問合せ指定でのSELECT DISTINCT
    (f) 最も外側の問合せ指定でのGROUP BY句
    (g) 最も外側の問合せ指定でのHAVING句
    (h) 最も外側の問合せ指定に対する集合関数
    (i) 最も外側の問合せ指定に対するウィンドウ関数
    (j) 最も外側の問合せ指定のFROM句に外部表を指定
    (k) 最も外側の問合せ指定のFROM句中で,次に示すどれかのビュー表を指定
    • ビュー定義文で上記(a)〜(j)を指定して定義したビュー表
    • ビュー定義文で最も外側の問合せ指定のSELECT句に,列指定以外の値式を指定して定義したビュー表
    • ビュー定義文でREAD ONLYを指定したビュー表
    (l) WITHOUT LOCK NOWAIT
    (m) WITH句を指定した問合せ式本体の最も外側の問合せ指定のFROM句に問合せ名を指定
  5. そのカーソルを指定した行の更新,又は削除がある場合FOR READ ONLY句は指定できません。
  6. FOR READ ONLY句を指定した場合,次に示す制限があります。
    (a) 選択式中に,結果が次のデータ型になるスカラ演算,関数呼出し,及びコンポネント指定は指定できません。
    • BLOB
    • 最大長が32,001バイト以上のBINARY
    • BOOLEAN
    • 抽象データ型
    (b) 選択式中のWRITE指定の出力BLOB値には,列指定だけ指定できます。
    (c) GET_JAVA_STORED_ROUTINE_SOURCE指定は指定できません。
  7. 外部表,又は外部表を基表とするビュー表を指定したSQL文では,カーソルを使用した更新及び削除はできません。

参照制約に関する規則

  1. ホールダブルカーソルを使用して,外部キーの定義されている表を検索している場合,検索中の表が検査保留状態となったときは,カーソルは閉じた状態になります。

留意事項

  1. カーソル名は,埋込み変数名と同様に,コンパイル単位のモジュール内で有効な名前であり,同じカーソルに対する複数のSQLを,複数のモジュールにわたって使用できません。
  2. カーソル宣言は,この宣言で使用したカーソル名を参照するどのSQL文よりも先行して記述する必要があります。
  3. DECLARE CURSORは実行文ではないため,SQLCODEにリターンコードは返されません。したがって,リターンコードの判定はしないでください。
  4. SQL最適化オプションの更新SQLの作業表作成抑止を適用して,更にインデクスキー値無排他機能を使用すると,FOR UPDATE又はFOR UPDATE OFを指定しないカーソルの使用中に,行の更新,追加,又は削除ができます。
  5. FOR READ ONLYを指定している場合,HiRDBが作業表を作成することがあります。このとき,作業表の行長によっては,FOR READ ONLYの処理が制限されることがあります。作業表の行長については,マニュアル「HiRDB Version 8 システム導入・設計ガイド」を参照してください。

使用例

  1. 在庫表(ZAIKO)から,行を1行ずつ取り出すためにカーソル(CR1)を宣言します。
     
    DECLARE CR1 CURSOR FOR
        SELECT SCODE,SNAME,COL,TANKA,ZSURYO
            FROM ZAIKO
     
  2. 在庫表(ZAIKO)から,単価(TANKA)が5,000円以上の行を1行ずつ取り出すためにカーソル(CR1)を宣言します。
     
    DECLARE CR1 CURSOR FOR
        SELECT * FROM ZAIKO
            WHERE TANKA >= 5000
     
  3. 在庫表(ZAIKO)から,カーソル(CR1)を使用してすべての行を検索しながら単価(TANKA)を1割引にし,更に行を挿入します。
     
    DECLARE CR1 CURSOR FOR
        SELECT * FROM ZAIKO
            FOR UPDATE
    OPEN CR1
      FETCH CR1 INTO <各列を取り出す変数名>
    UPDATE ZAIKO
        SET TANKA = <単価の1割引の値>
            WHERE CURRENT OF CR1
    INSERT INTO ZAIKO VALUES(<各列の挿入値>)
    CLOSE CR1
     
  4. 在庫表(ZAIKO)から,カーソル(CR1)を使用してすべての行を検索しながら単価(TANKA)を1割引にします。
     
    DECLARE CR1 CURSOR FOR
        SELECT * FROM ZAIKO
            FOR UPDATE OF TANKA
    OPEN CR1
    FETCH CR1 INTO <各列を取り出す変数名>
    UPDATE ZAIKO
        SET TANKA = <単価の1割引の値>
            WHERE CURRENT OF CR1
    CLOSE CR1
     
  5. 在庫表(ZAIKO)からカーソル(CR1)を使用してすべての行を検索中に,カーソルを使用しないで,直接商品名(SNAME)がセーターの行を削除します。
     
    DECLARE CR1 CURSOR FOR
        SELECT * FROM ZAIKO
            FOR READ ONLY
    OPEN CR1
    FETCH CR1 INTO <各列を取り出す変数名>
    DELETE FROM ZAIKO
        WHERE SNAME=N'セーター'
    CLOSE CR1