JP1/IT Service Level Management

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3.3.2 監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援(設定例)

ここでは,監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援について,ある条件に基づいて具体的にどのように検討・設定するとよいかを,例を用いて説明します。

<この項の構成>
(1) 前提条件
(2) パス,クエリ,Cookieの情報からのWebアクセス条件の定義とシステム要件からのしきい値の定義
(3) Webトランザクションの設定
(4) 監視項目の設定

(1) 前提条件

この設定例の条件は,次のとおりです。

(2) パス,クエリ,Cookieの情報からのWebアクセス条件の定義とシステム要件からのしきい値の定義

JP1/ITSLMでのWebトランザクションの設定に向けた作業
すべてのサービスの監視者は,サービスの委託元の担当者を経て,監視する処理のパス,クエリ,およびCookieの情報をサービスの保守SEから入手しました。また,監視する処理のシステム要件を基に,監視項目のしきい値を検討しました。入手したパス,クエリ,およびCookieの情報とシステム要件から定義した,Webアクセス条件,セッション条件および監視項目のしきい値を次に示します。
  • Webアクセス条件
    Webアクセス条件 パス クエリ Cookie
    Webアクセス条件1 /top.html q=.*
    time=.*
    session=.*
    exp=10
    Webアクセス条件2 /middle.html q=.* session=.*
    exp=10
    Webアクセス条件3 /bottom.html q=.* session=.*
    exp=10
    Webアクセス条件4 example/index.html q=.*
    qqq=1
    session=.*
  • セッション条件
    クエリ条件:q
    Cookie条件:session
  • 監視項目のしきい値
    平均応答時間:12,000ミリ秒
    スループット:1,600件/秒
    エラー率:4.0%
また,監視項目については,しきい値での監視だけでなく監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常を予兆段階で検知・対処する必要があったため,外れ値検知もすることにしました。
作業の結果
Webトランザクション名を「Transaction1」と決めて,定義したWebアクセス条件を設定することにしました。また,Transaction1にWebアクセス条件を設定したあと,監視項目を設定することにしました。

(3) Webトランザクションの設定

JP1/ITSLMでの作業
すべてのサービスの監視者は,サービスの保守SEから入手した情報を基に,Webトランザクションを設定することにしました。WebトランザクションのWebアクセス条件は,自動検出したURIから取り込む方法で設定します。設定は次の流れで実行しました。
  1. JP1/ITSLM - Managerにログインして[設定]画面の[Webトランザクション設定]エリアを表示します。
    [設定]画面の[Webトランザクション設定]エリアを次に示します。

    図3-29 [設定]画面の[Webトランザクション設定]エリア(設定例)

    [図データ]

    この図では,サービスグループ「Group01」のサービス「Service01」に対してWebトランザクションを設定しようとしています。
  2. [サービス一覧]でGroup01のService01を選択後,Webトランザクションの各項目を設定するために,[新規登録]ボタンをクリックして[Webトランザクション登録]画面を表示します。
    [Webトランザクション登録]画面を次に示します。

    図3-30 [Webトランザクション登録]画面(設定例)

    [図データ]

    ここでは,Webトランザクション名として「Transaction1」と入力しています。
  3. Webトランザクション「Transaction1」のWebアクセス条件を設定するために,[条件追加]ボタンをクリックして[Webアクセス条件追加]画面を表示します。
  4. 自動検出したURIからWebアクセス条件を取り込むため,「検出開始」ボタンをクリックします。検出結果の例を次に示します。

    図3-31 検出されたURIの例

    [図データ]

    図の3行目のURIを編集して,Webアクセス条件を取り込むことにします。パスが「top.html」,クエリが「q=1」,「time=2」となっているため,パスはそのままでクエリを「q=.*」,「time=.*」に変更して,Webアクセス条件1と同じにします。
  5. CookieもWebアクセス条件1と同じにするため,3行目のURIを選択した状態で,[Cookie編集]ボタンをクリックします。
    [Cookie編集]画面を次に示します。

    図3-32 [Cookie編集]画面(設定例)

    [図データ]

    図のCookieは「index=0」「area=000」となっているため,テキストボックスを編集し,Webアクセス条件1と同じ「session=.*」「exp=10」となるように変更して,[OK]ボタンをクリックします。
  6. [URI候補]3行目がWebアクセス条件1と一致するURIとなったことを確認して,3行目のURIを選択した状態で[∨ URI候補取り込み]ボタンをクリックします。
    [Webアクセス条件定義]に,3行目のURIと同じパス,クエリ,Cookieの情報が表示されます。
    パス,クエリ,Cookieの情報が表示された[Webアクセス条件追加]画面の例を次の図に示します。

    図3-33 パス,クエリ,Cookieの情報が表示された[Webアクセス条件追加]画面の例

    [図データ]

    なお,この状態で[∧ Webアクセス条件適用]ボタンをクリックすると,入力した[Webアクセス条件定義]が目的のWebアクセスと一致するかどうかを確認できます。
  7. Webアクセス条件定義が入力されたら,[条件追加]ボタンをクリックします。
    Webアクセス条件1がTransaction1に追加されます。
  8. Webアクセス条件1の追加の完了後,残りのWebアクセス条件についても同様に追加します。4つのWebアクセス条件の追加が完了したら,[閉じる]ボタンをクリックして[Webトランザクション登録]画面に戻ります。
    Webアクセス条件の追加が完了した[Webトランザクション登録]画面を次に示します。

    図3-34 Webアクセス条件の追加が完了した[Webトランザクション登録]画面(設定例)

    [図データ]

  9. Webアクセス条件を追加したあと,Webアクセスが同一ユーザーだと識別するために,セッション条件を指定します。[クエリ条件候補]から「q」を選択して[クエリ条件]に移動し,[Cookie条件候補]から「session」を選択して[Cookie条件]に移動します。
    セッション条件を指定したら,[登録]ボタンをクリックしてTransaction1を登録します。
作業の結果
Transaction1が登録できたため,すべてのサービスの監視者はTransaction1について監視項目を設定することにしました。

(4) 監視項目の設定

JP1/ITSLMでの作業
すべてのサービスの監視者は,[設定]画面の[監視設定]エリアを表示し,Webトランザクションの監視項目を設定することにしました。
Webトランザクションの監視項目の設定例を次の図に示します。

図3-35 Webトランザクションの監視項目の設定例

[図データ]
この図では,サービスグループ「Group01」のサービス「Service01」の「Transaction1」に対して監視項目を設定しています。監視項目の設定内容は,次のとおりです。
[SLO監視設定]

表3-8 [SLO監視設定]での設定内容例

チェックボックス 項目名 しきい値 チェックボックス 傾向監視
チェックする 平均応答時間 12000 チェックする 5
チェックする スループット 1600 チェックする 5
チェックする エラー率 4.0
(凡例)
-:設定できません。

 
[SLO監視設定]では,SLOの定義内容をしきい値として設定した上で,平均応答時間とスループットについて監視対象サービスのサービス性能の異常をいち早く察知するために,傾向監視を設定しました。
また,サービス性能の異常発生時には,別の担当者にも連絡を取って対処しなければならないため,少なくとも5時間前までにサービス性能の異常を察知する必要がありました。そのため,傾向監視の設定時間は5時間としました。
[予兆検知設定]

表3-9 [予兆検知設定]での設定内容例

ベースライン算出日数 開始日数 チェックボックス 項目名 感度 相関項目
20 5 チェックする 平均応答時間 スループット
チェックする スループット
チェックする エラー率
(凡例)
-:設定できません。

 
[予兆検知設定]では,できるだけふだんのサービス性能に基づいた監視をするために,20日分のサービス性能でベースラインを算出することにしました。ただし,監視は5日後から開始したいと要望があったため,開始日数は5日としました。
また,すべての監視項目について外れ値検知をすることにした上で,ベースラインから離れたサービス性能が得られた場合に,敏感に検知できるよう感度を高く設定することにしました。さらに,複数の監視項目を組み合わせた外れ値検知も実施して,外れ値検知の精度を上げるよう設定しました。
作業の結果
「Service01」に対して,Webトランザクション「Transaction1」の設定と監視項目の設定が完了したため,「Service01」の監視と合わせて「Transaction1」の監視を実行することにしました。監視の実行例については,「4.6.2 監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援(実行例)」を参照してください。