JP1/Integrated Management - Manager 導入・設計ガイド
「13.2 性能評価モデルケース」で説明した業務システムに次のユーザー要件でJP1/IMを導入すると仮定します(太字はJP1/IMのキーワード)。
- 監視用サーバを新たに1台設置し,それによって業務システムを集中監視する。また,必要に応じて障害発生マシンの調査を実施する。
→システムの階層構成(IM構成),セントラルコンソールによる集中監視,イベント検索
- 監視スタイルは従来どおり3人でそれぞれ役割を決めての監視とする。
→ユーザーフィルターの活用
- 業務システムの目的に合わせ,グルーピングして監視する。
→セントラルスコープの利用(監視範囲設定を実施)
- 夜間などに緊急度の高い障害が発生したときには,自動的に監視者に通知が来るようにする。
→自動アクションの利用
- 日々の障害履歴を残すようにする。
→イベント一覧情報の保管(CSV出力)
上記ユーザー要件を満たすため,JP1/IMに適切な値を設定する必要があります。ここでは次のように設定したと仮定します。
- システムの階層構成(IM構成)
- 監視用サーバを新たに1台設置し,それによって業務システムを集中監視する。
- →マネージャー1台,エージェント60台のシステム構成
- セントラルコンソールによる集中監視
- 次の要件でエージェントからの監視用サーバに転送されるイベントを抑止する。
- バッチ処理サーバから転送されるイベント:優先度高いため「警告」以上
→1日1台当たり20件〜30件程度転送されてくると仮定
- Webサーバから転送されるイベント:優先度高いため「警告」以上
→1日1台当たり10件〜20件程度転送されてくると仮定
- OAマシンから転送されるイベント:優先度低いため「エラー」以上
→1日1台当たり1件〜2件程度転送されてくると仮定
- 数値を多い方で見積もると1日370件程度発生となる。これに監視用サーバで発生する監視対象イベント(「警告」以上が20件〜30件程度)を加え,1日400件程度。ゆとり分+100件とし,これを常時JP1/IM - Managerで保持する件数(イベントバッファー数)と定義する。
- なお,過去に発生したイベントも同時にチェックしたい,ということも想定し,2日分はJP1/IM - Managerで保持するよう,イベントバッファーの設定を1,000件とする。
- また,各監視マシン(3台)から必要に応じてイベント検索を実行すると仮定,検索時に障害発生マシンから取得してくるイベント件数(検索時のイベント取得件数)を100件とする。
- ユーザーフィルターの活用
- 監視要件に合わせ,監視対象イベントをフィルタリングする。その上で,それぞれJP1/IM - Viewで保持しなければならないイベント件数(スクロールバッファー数)を次のように算出する。
- オペレーターA:バッチ処理サーバの監視ということで,500件((30件×7台+ゆとり分40件)×2日)とする。
- オペレーターB:Webサーバの監視ということで,200件((20件×3台+ゆとり分40件)×2日)とする。
- システム管理者:システム全体の監視ということで,イベントバッファー数と同じ値1,000件とする。
- セントラルスコープの利用(監視範囲設定を実施)
- 次の形で監視ツリーを作成。
- 全体の監視ノード数(JP1/IM - Managerで管理する監視ノード数)は,監視グループ数4,監視オブジェクト数60となる。
- 監視範囲設定により,JP1/IM - Viewに表示される監視ノード数は次のようになる。
- オペレーターA:監視グループ数1,監視オブジェクト数7
- オペレーターB:監視グループ数1,監視オブジェクト数3
- システム管理者:監視グループ数4,監視オブジェクト数60
- 自動アクション
- 障害検知・簡易対処をスムーズにするため,自動アクションを要件に合わせて20定義。そのうちAND条件※を指定した自動アクションは五つ。
- 注※ AND条件を満たすまでは,条件対象のイベントをメモリーで保管期限(デフォルト60分)が来るまで保持する。状況にもよるが,60分単位で30件程度保持すると仮定(1日イベントの発生を500件 / 24時間+10程度で見積もり)。
- イベント一覧情報の保管(CSV出力)
- 退勤時など,監視業務に区切りを付ける際にJP1/IM - Viewに表示されているイベント情報をCSV出力する。
- その他
- ログサイズ変更など,ディスク容量を増加させる設定変更はしないで,デフォルト値のまま運用。
JP1/IM導入後のシステム運用イメージは次のようになります。
図13-2 業務システムの運用例(JP1/IM導入後)
- 参考
- JP1/IMによるシステム運用管理で必要となるメモリーには,次の二つがあります。
- JP1/IM稼働中に常に必要となるメモリー
- JP1/IMを操作することによって発生(増減)するメモリー
- 1.に該当するのが,上図でいうと,JP1/IM - Managerの「イベントバッファー数」「監視ノード数」,JP1/IM - Viewの「スクロールバッファー数」「(表示される)監視ノード数」となります。
- 2.に該当するのが,上図でいうと,JP1/IM - Managerの「検索時のイベント取得件数」「ANDイベント数」,JP1/IM - Viewの「イベント一覧情報の保管(CSV出力)」となります。
- JP1/IMで必要なメモリーを見積もるときは,1.と2.の最大値を足したもので見積もってください。
以上のような形で要件を見積もり,これを基にJP1/IMが使用するメモリー所要量,ディスク占有量を,JP1/IM - ManagerおよびJP1/IM - Viewのリリースノート記載の計算式で見積もります。
計算の結果,JP1/IMを導入しても,各マシンのリソースに余裕があることを確認してください。メモリーやディスク容量が足りない,といった場合には,メモリーやディスクの増設を検討する必要があります。また,それが無理な場合には,現行の各マシンのスペック内で収まるよう,上で見積もった要件の見直しを実施する必要があります。
また,突発的な障害によって,JP1/IMの取得・処理するイベント数が瞬間的に増大した場合でも,イベントの表示や自動アクションの実行性能で問題が発生しないことを検証してください。
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