JP1/IT Service Level Management

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3.3.1 監視対象サービスのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援(設定例)

ここでは,監視対象サービスに対するサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援について,ある条件に基づいて具体的にどのように検討・設定するとよいかを,例を用いて説明します。

<この項の構成>
(1) 前提条件
(2) SLAからのSLOの定義
(3) 監視項目の設定

(1) 前提条件

この設定例の条件は,次のとおりです。

(2) SLAからのSLOの定義

JP1/ITSLMでの監視項目の設定に向けた作業
すべてのサービスの監視者は,SLAの内容を確認して,しきい値とするSLOを検討することにしました。
その結果,SLAの契約内容に,応答性能達成率95%以上,サービス可用性99.8%以上などの項目があったため,SLOは次のように定義しました。
  • 平均応答時間:3000ミリ秒
  • スループット:400件/秒
  • エラー率:1.0%
また,SLOというしきい値での監視だけでなく,サービス性能の異常を予兆段階で検知・対処する必要があったため,外れ値検知もすることにしました。
作業の結果
SLOが定義できたため,すべてのサービスの監視者は各監視対象サービスについて,監視項目を設定することにしました。

(3) 監視項目の設定

JP1/ITSLMでの作業
すべてのサービスの監視者は,JP1/ITSLM - Managerにログインして[設定]画面を表示し,定義したSLOに基づき,監視対象サービスの監視項目を設定することにしました。
SLOに基づいた監視対象サービスの監視項目の設定例を次の図に示します。

図3-27 SLOに基づいた監視対象サービスの監視項目の設定例

[図データ]
この図では,サービスグループ「Group01」のサービス「Service01」に対して監視項目を設定しています。監視項目の設定内容は,次のとおりです。
[SLO監視設定]

表3-6 [SLO監視設定]での設定内容例

チェックボックス 項目名 しきい値 チェックボックス 傾向監視
チェックする 平均応答時間 3000 チェックする 5
チェックする スループット 400 チェックする 5
チェックする エラー率 1.0
(凡例)
−:設定できません。

 
[SLO監視設定]では,SLOの定義内容をしきい値として設定した上で,平均応答時間とスループットについて監視対象サービスのサービス性能の異常をいち早く察知するために,傾向監視を設定しました。
また,サービス性能の異常発生時には,別の担当者にも連絡を取って対処しなければならないため,少なくとも5時間前までにサービス性能の異常を察知する必要がありました。そのため,傾向監視の設定時間は5時間としました。
[予兆検知設定]

表3-7 [予兆検知設定]での設定内容例

ベースライン算出日数 開始日数 チェックボックス 項目名 感度 相関項目
20 5 チェックする 平均応答時間 スループット
チェックする スループット
チェックする エラー率
(凡例)
−:設定できません。

 
[予兆検知設定]では,できるだけふだんのサービス性能に基づいた監視をするために,20日分のサービス性能でベースラインを算出することにしました。ただし,監視は5日後から開始したいと要望があったため,開始日数は5日としました。
また,すべての監視項目について外れ値検知をすることにした上で,ベースラインから離れたサービス性能が得られた場合に,敏感に検知できるよう感度を高く設定することにしました。さらに,複数の監視項目を組み合わせた外れ値検知も実施して,外れ値検知の精度を上げるよう設定しました。
作業の結果
サービスグループ「Group01」のサービス「Service01」について設定が完了したため,残りの監視対象サービスについても同様に監視項目の設定をすることにしました。
すべての監視対象サービスの設定が完了したあと,監視を実行することにしました。監視の実行例については,「4.6.1 監視対象サービスのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援(実行例)」を参照してください。