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uCosminexus Service Coordinator Interactive Workflow システム構築・運用ガイド


1.1.2 従来のワークフローシステムとワーク管理システムの違い

企業内の業務をシステムとしてとらえた場合,その仕様の変化はさまざまな形で発生します。業務仕様の変化を大別すると,「流れの変化」と「処理の変化」とに分けられます。このうち「流れの変化」は,組織変更のたびに伝票の回付ルートが変わるなど,頻繁に発生します。また,商品の種類ごとに処理の流れが異なるといった多様性を持っています。

したがって,アプリケーションプログラム内に「流れの制御」と「処理本体」のコーディングが混在している場合,頻繁に発生する業務仕様の変化に伴って,多くのプログラムを見直す必要があります。その結果,業務仕様の変化に対するシステムの対応が遅れることになります。混在の量が多いほど,また混在のしかたが無秩序であるほど,システムは硬直化し,小さな変化に対してもその見直しに多大なコストが掛かります。

こうした問題点を解決するための手段としてワークフローシステムがあります。一般にワークフローシステムは,業務の流れをビジネスプロセスとして定義し,それに従って個々の業務処理を進行させるシステムです。ワークフローシステムを利用することで,業務の流れ(ビジネスプロセス)と業務の処理本体(アプリケーションプログラム)とが明確に区別され,アプリケーションプログラムの処理から「流れの制御」に関するコーディングを排除できます。その結果,システムの硬直化を防止したり,改善したりできます。

また,ワークフローシステムは,「システムの簡易開発ツール」という側面も持っています。ワークフローシステムの「流れの制御を切り離す」という特長と,簡易言語,フォームなどの「プログラムの簡易開発ツール」とを組み合わせることで,効率の良いシステム構築を実現できます。

従来のワークフローシステムは,このような「システムの簡易開発ツール」として発展してきたため,適所に応用することで高い生産性を発揮します。反面,生産性を向上するために,ツールとして特定の業務タイプに特化する必要があり,結果的に応用範囲が局所化されてしまいます。そのため,「多様な業務タイプを広く扱うような業務」や「手順が不確定な業務」への適用は不得意でした。

ワーク管理システムは,「個々の業務タイプごとではなく,企業の業務システム全体にワークフロー的な仕組みを適用したい」,「手順をあらかじめ規定できないような業務にもワークフロー的な仕組みを適用したい」といった要求にこたえることを目的としています。ワーク管理システムを利用することで,企業内のさまざまなアプリケーション,業務システム,業務データなどを,柔軟で自由度の高いビジネスプロセス定義によって連携できます。これによって,企業内の多様なシステムをわたって進行するような業務をワークフロー的に管理できます。その結果,企業内の業務システム全体が,変化に即応できる柔軟な構造となります。

このように,ワーク管理システムは,従来のワークフロー製品と異なる「新しいタイプの汎用アプリケーション構築基盤」として開発されました。