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uCosminexus Service Coordinator Interactive Workflow システム構築・運用ガイド


1.1.3 ワーク管理システムの特長

〈この項の構成〉

(1) 高いオープン性による異種システムの統合

ワーク管理システムは,企業内の多様なシステムをわたって進行するような業務をワークフロー的に管理するために,高いオープン性を備えています。

一般的に企業内では,OA系システム,C/S系システム,ホスト系システムなど,さまざまな種類のシステムが運用されています。そのため,1つの業務を複数のシステムにわたって処理することがあります。例えば,「発注」という業務では,OA系システムでバイヤーが需要を予測し,C/S系システムで発注スケジュールの策定や発注処理をし,ホスト系システムに仕入・買掛登録をするといった流れが考えられます。

このような「1つの業務を複数のシステムにわたって処理する」という傾向は,業務変化に応じてシステムの部分更新を重ねるごとに強まっていきます。その結果,業務の全体状況が迅速に把握できないといった問題が発生します。

ワーク管理システムでは,多様なシステムの連携によって実現するような業務をワークフロー的に管理するため,次の標準的なインタフェースを採用しています。

●アプリケーション構築基盤としてJavaEEの採用

アプリケーション構築基盤として,標準仕様であるJavaEEに従うJavaEEアプリケーションサーバを採用しています。

●データアクセスインタフェースとしてのRDBの採用

案件推進に必要な各種データは,ワーク管理システム外部のRDBを直接参照して取得します。具体的には,案件の制御条件を判定するためのデータや,案件の作業担当者を選択するデータとして,ワーク管理システム外部の業務データ(RDB)を利用します。

上記の標準的なインタフェースを備えることで,既存のシステムを最大限に生かしたまま,ワークフロー型業務システムを構築できます。また,システムの拡張や分散化にも柔軟かつ迅速に対応できます。

このように,ワーク管理システムは,企業内で運用されているさまざまなシステムをつなぎ合わせ,1つのワークフロー型業務システムとして統合する役割を果たします。

(2) 高度なビジネスプロセス表現能力による適用業務の拡大

ワーク管理システムは,さまざまなタイプの業務をワークフロー的に管理するために,高度なビジネスプロセス表現能力を備えています。

従来のワークフローシステムの多くは,手続き的なビジネスプロセスの表現方式を採用しています。これは,作業の順序や分岐条件を明確に事前定義し,1つの業務を規格化された作業手続きとして表現するものです。

一方,実際の業務には,手続き的に表現できない要素を含むものがあります。典型的な例としては,プロジェクト管理のような非定型業務が挙げられます。また,定型業務でも,現場が臨機応変に作業手順を変更し,運用面での効率向上を図る場合があります。

ワーク管理システムは,多様な業務タイプに適用するため,より表現力の高い状態遷移型モデルをビジネスプロセスの表現方式として採用しています。ワーク管理システムの状態遷移型モデルでは,案件の進行を業務状態(業務ステップ)の進行ととらえ,各状態に対して複数の作業を割り当てます。これは,「業務の状態の進行に応じて,実施できる作業群が入れ替わっていく」プロセスの表現だと言えます。

この表現方式では,業務タイプに合わせて次のような使い分けができます。

●あらかじめ作業手順を規定できる業務の場合

業務状態(業務ステップ)を細かく設定し,業務ステップと作業を1対1にすることで,作業手順を規定した手続き的なプロセス表現になります。

●作業手順を規定しにくい業務の場合

業務状態(業務ステップ)を大きく設定し,業務ステップと作業を1対複数にすることで,「ある業務状態での作業の順番は運用に任せる」という柔軟なプロセス表現になります。

これに加えて,ワーク管理システムでは,従来のワークフロー製品にない,次のような実行時制御機能を提供しています。

●各種組み込み作業

ビジネスプロセスに組み込み作業を定義することで,案件の実行時に業務データを参照し,作業を動的に生成したり,その状態を制御したりできます。

上記の機能を利用することで,「状況に応じて細かい調整が必要な処理」など,事前定義が困難な業務タイプにも対応できます。

このように,ワーク管理システムは,従来のワークフローシステムでは適用が困難だった業務を含め,企業内のさまざまなタイプの業務に適用できるような機能を備えています。

(3) 変化に強い柔軟なシステム構造と運用機能

ワーク管理システムは,企業内のシステム全体を変化に強い構造にすることを目的としています。そのためには,ワーク管理システム自体の構造や機能が,変化に強いものであることが必要です。

ワーク管理システムは,状態遷移の表現方法や実行時のプロセス制御機能によって,事前定義しておくビジネスプロセスの細かさを調整できます。そのため,さまざまな業務タイプや業務上の例外を吸収しやすくなっています。つまり,ワーク管理システムのビジネスプロセス表現は,変化に対する強さを持っていると言えます。

これに加えて,ワーク管理システムは,次のような変化対応の仕組みを備えています。

●業務データの外付け構造

ワーク管理システムは,案件の流れを制御したり,作業担当者を選択したりするデータを内部には持たないで,外部の業務データを参照する構造となっています。そのため,組織変更や人事異動などが発生した場合でも,組織や社員を管理しているデータベースを修正するだけで,ワーク管理システム側に変更が反映されます。ビジネスプロセス定義などを変更する必要はありません。

●ビジネスプロセス定義の部分変更機能

ワーク管理システムでは,ビジネスプロセス定義の運用段階に次のような変更を加えることができます。

ワーク管理システムでは,ビジネスプロセス定義の運用段階で分岐条件や案件の制御条件を変更できます。

このような「運用段階の変更」は,従来のワークフローシステムの多くで制限となっていた処理です。ワーク管理システムでは,コマンドを使用して上記の処理を実行できます。

このように,ワーク管理システムは,業務内容の変更,組織の変更などに対して,柔軟に対応できる構造や機能を備えています。したがって,ワーク管理システムを利用して構築された業務システムは,変化に強い構造を備えることができます。