JP1/Automatic Job Management System 2 解説
コマンドでジョブネットの実行登録情報を操作(計画一時変更,再実行,強制終了,中断,ジョブ状態変更)する場合,操作対象となる世代を,次のどれかの方法で指定できます。
- 世代の自動判定
- 実行IDでの指定
- 実行登録番号での指定
ここでは,世代の自動判定と登録番号について説明します。実行IDについては,「4.2 ジョブネットの世代管理」を参照してください。
なお,GUIで操作する場合は,実行IDで指定したときと同じ動作になります。
- <この項の構成>
- (1) ジョブネットの世代の自動判定
- (2) 実行登録番号について
ここでは,コマンドで操作した場合の,世代の自動判定の動作について説明します。
(a) 世代の自動判定について
毎日実行するジョブネットなどを実行登録した場合,通常,その世代単位に実行IDが割り振られます。実行IDはスケジューラーサービス単位にユニークに(重複しないように)割り振られますが,バッチ処理の運用で保留解除などの操作を実行する場合は,その世代を特定するのが困難です。
そのため,操作するコマンドに実行IDを指定しない場合,JP1/AJS2が世代を検索し,操作対象となる世代を決定します。これを「世代の自動判定」といいます。
(b) 自動判定の優先度について
操作対象となる世代を指定しないで各種操作をする場合は,対象となる世代は自動判定によって選択されます。自動判定は,ルートジョブネットが持つ各世代の状態を基に判定し,次の表に示す優先度に従って選択されます。ネストジョブネットまたはジョブを指定した場合でも,ルートジョブネットの状態で自動判定されます。
表10-6 世代の自動判定の優先順位
操作 優先度 高い やや高い やや低い 低い 計画一時変更 再実行中※1 実行中※2 次回予定 前回の終了※4 ジョブの状態変更,
再実行再実行中※1 実行中※2 前回の終了※3 次回予定※4 中断,
強制終了再実行中※1 実行中※2 前回の終了※4 次回予定※4
- 注※1
- 「再実行中」は,再実行によって次の状態に遷移した世代のことです。
- 実行中
- 警告検出実行中
- 異常検出実行中
- 開始時刻待ち
- 保留中
- 注※2
- 「実行中」は,次の状態に遷移した世代のことです。ただし,再実行によって遷移した世代は除きます。
- 実行中
- 警告検出実行中
- 異常検出実行中
- 保留中
- 監視中
- 注※3
- 「前回の終了」は,実行終了時刻が現在時刻にいちばん近い世代のことです。ただし,起動条件付きジョブネットの場合,実行世代は除きます。
- 注※4
- 各操作ができない状態の世代のため,操作がエラーになる場合があります。
「再実行中」の世代がなく「実行中」の世代が複数ある場合,または「再実行中」の世代が複数ある場合,起動条件の使用有無によって判定基準が異なります。操作対象の判定基準について次に説明します。
- 起動条件を使用しないとき
- 実行開始時刻が現在時刻にいちばん近い世代が操作対象になります。
- 起動条件を使用するとき
- 監視中の監視世代と実行中の実行世代がある場合は,監視中の監視世代が操作対象になります。
- 監視が終了した監視世代と実行中の実行世代がある場合は,起動条件の成立によって最初に実行された実行世代が操作対象になります。
- 監視世代(監視が終了した監視世代も含む)が複数ある場合は,監視世代の中で実行開始時刻が現在時刻に近い世代を優先し,優先した監視世代が監視中であればその世代が操作対象になります。優先した監視世代が監視中でなければ,起動条件の成立によって最初に実行された実行世代が操作対象になります。
- 監視中の監視世代と再実行中の実行世代がある場合は,再実行中の実行世代が操作対象になります。
次回実行予定の実行開始予定時刻に到達したり,実行中の世代が正常終了したりするなど,ルートジョブネットの状態が変わるタイミングで自動判定による操作をすると,意図しない世代に対して操作してしまうおそれがあります。1日に何回も実行する場合や次回実行予定の実行開始時刻が現在時刻に近い場合など,コマンドを実行するときに状態が変わるおそれがある場合は,ajsshowコマンドを実行して世代の実行IDを取得し,実行IDを指定して実行登録情報を操作してください。ajsshowコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsshow」を参照してください。
実行登録番号とは,ジョブネットの世代に対して開始時刻順に付けられた通し番号で,「YYYYMMDDNNN」の形式で表されます(YYYY:実行年,MM:実行月,DD:実行日,NNN:実行日の世代の実行順)。
ジョブネットが1日に2回実行される場合の,実行登録番号の割り当て例を次に示します。
図10-23 実行登録番号の割り当て例
ジョブネットの実行日を2006年8月10日とします。この場合,1回目に実行される世代の実行登録番号は「20060810001」,2回目に実行される世代の実行登録番号は「20060810002」となります。
このように,1日に複数回実行されるジョブネットには,世代の実行順に「YYYYMMDD001」,「YYYYMMDD002」,という形式で実行登録番号が割り当てられるため,実行IDなどよりも容易に世代を特定できます。
なお,実行登録番号を指定して操作を行う場合は,それを使用する時点で存在する世代に対応づけられるため,タイミングによっては意図した世代と異なることがあります。起動条件の成立前と成立後で,実行登録番号と対応する世代が変化する例を次に示します。
図10-24 起動条件の成立前後で実行登録番号と対応する世代が変化する場合
この場合,起動条件の成立前の実行登録番号「20060810002」は世代1-2に対応していますが,起動条件成立時の保存世代数の管理によって世代1-2が削除されたため,起動条件の成立後の実行登録番号「20060810002」は世代1-3と対応していることになります。
実行登録番号と対応する世代が変化する例としては,例に示した起動条件以外にも保存世代数の超過による世代の削除,日時変更による世代の追加・移動,期間指定または日付指定による確定実行登録,即時実行登録による予定の追加,実行中止による世代の削除などがあります。
このようなジョブネットの世代更新が頻繁に起こるような運用をしている場合には,実行登録番号ではなく実行IDを指定して操作することをお勧めします。
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