JP1/Integrated Management - Central Information Master システム構築・運用ガイド
JP1/IMによるシステム管理が必要な背景として,ITシステムの進化に伴って生じるシステム管理の課題があります。
ITシステムは現在,多くの企業にとってビジネスの基盤として,また,社会生活を支えるインフラとして,欠くことのできない存在となっており,ビジネスや生活で情報をいつでもどこでも安全に提供できることが求められています。
ITシステムがインフラ(インフラストラクチャー)としての重要性を増すのに合わせて,高いサービス品質がシステムに求められ,さまざまな要求を満たすためにシステムは大規模化,複雑化しています。これに伴って,システムの管理負担は重く,管理コストは増大しており,これらを最適化することが重要な課題となっています。
- <この項の構成>
- (1) システムのライフサイクル
- (2) JP1/IMによるシステム統合管理
ITシステムには,サーバ,ネットワーク,ストレージなどのハードウェア,Webサーバ,メールサーバ,データベースなどのソフトウェア,また,ハードウェア,ソフトウェアを利用したジョブ実行やセキュリティ監視,といったように非常に多様なリソースがあります。
図1-2 システム管理の課題
これらの多種多様なリソースを適切に管理し続けるのは非常に困難です。管理作業には,今あるリソースを整理し業務要求に合わせて配置する,リソースで発生した事象を迅速に検知し問題に対策する,などがあります。システムを管理する上では,これらの作業を継続して行っていく必要があります。
システムは常に安定した稼働が望まれるため,それを支える管理作業も多様になります。システムを安定して稼働させるための体制を作る一連の流れをシステムのライフサイクルといいます。リソースの整理や配置,また,リソースで発生した問題の検知や対策などは,システムのライフサイクルの中での一作業に相当します。システムのライフサイクルと,それに対応する管理作業を次の図に示します。
図1-3 システムのライフサイクル
図に示したとおり,システムのライフサイクルの各フェーズで,必要な管理作業は異なります。このため,各フェーズで管理対象となる情報も異なります。
設計,構築フェーズでは,業務の実現のためのリソースを検討し,リソースの配置などの作業をします。これらの作業のため,システムを構成する要素の情報を管理する必要があります。これをシステムの構成管理といいます。
運用フェーズでは,システムの安定稼働を支えるため,システムを構成する要素であるリソースを常時監視します。このため,システムの稼働情報や障害情報などを管理する必要があります。これをシステムの運用管理といいます。
また,再設計,再構築フェーズでは,システム構成を見直し,問題があるようなら,リソースの再配置などの作業をします。運用フェーズでの運用情報を基に,システムを運用していく上で何が問題なのかを追求し,システムの構成情報を整理し直す必要があります。これらの作業は,これまでの設計,構築,運用フェーズでの構成管理と運用管理とを基盤とするものであるといえます。
システムの情報は,システムが大規模化,複雑化するのに伴って膨大な量になります。それらのシステムの情報を適切に管理するには,高度なスキルと膨大な作業量を必要とするため,情報管理に掛かるコストは著しく増大します。
JP1/IMは,システムのライフサイクルの各フェーズで,システム情報の管理を最適化し,システムを統合管理します。システムの設計から,構築,運用,再設計,再構築までの一連の流れをトータルに支援し,システムの安定稼働を支えるための基盤を提供します。
以降では,システムのライフサイクルの各フェーズでのシステム管理の課題について説明します。
設計,構築フェーズでは,システム全体の構成を検討した上で,既存システムのリソースを正確に把握し,新たに業務を実現するためのリソースの配置を設計,構築する必要があります。さらに,システムの設計,構築を終えたあとも,システムの本番稼働前に十分なテスト期間を設け,予定していた業務が実現できるのかを確認する必要もあります。
設計,構築フェーズでは,リソースの把握,システム構成の策定,リソースの配置,実運用前のテスト・見直しが繰り返し行われます。
図1-4 設計,構築フェーズの作業概要
システムを構成するリソースの数が増えるにつれ,個々のリソースの把握も容易ではなく,これに比例してシステムの構成管理も困難になります。システムの構成を管理するためのリソースの管理台帳などがありますが,これらのメンテナンスも手間がかかります。
JP1/IMは,リソースの情報を1か所に収集し,また,管理者の任意のくくりで整理,管理できるような機能を提供します。管理者の管理しやすい視点でのリソース情報の整理,組み替えを容易にすることで,システムの構成管理を支援します。これによって,情報過多のシステムに対しても構成管理を最適化します。
運用フェーズでは,常にシステムが正常に稼働していることを,監視し続ける必要があります。また,問題が発生した場合には,業務への影響を最小限にするために,問題を迅速に検知して適切に対処する必要があります。
システムの運用では,監視,問題の検知,調査,対策が一連のサイクルとして繰り返し行われます。
システムが大規模で複雑になり,管理するリソースの数や種類が増大するのに従い,システムの運用サイクルのそれぞれの作業は加速度的に困難になります。システムの規模に合わせて管理作業の量が増加するだけではなく,多岐にわたるリソースを適切に管理するには幅広く高度な運用技術がシステム管理者に求められます。したがって,運用管理の負担が増えるとともに,システム管理者の育成も困難になります。
JP1/IMは,システムを常時監視し続け,問題が発生すると迅速に管理者に通知するとともに,問題個所を把握し調査するための運用操作の基盤を提供します。このように運用の監視から対策までのサイクルを統合的に支援し,大規模で複雑なシステムでも運用管理を最適化します。
再設計,再構築フェーズでは,システムの運用情報を基に,稼働システムの性能を評価し,必要に応じてシステム構成情報を整理する,つまり,システム構成の再検討をします。
特定のリソースに障害が頻発し,業務の実現に対する課題となる場合には,リソースの再配置を検討する必要があります。リソースの再配置によるシステムへの影響は,周囲のリソースだけにとどまるとは限りません。設計,構築フェーズでのシステムの構成情報による十分なシステム構成の把握と,運用フェーズで積み上げた運用情報を基に,適切なリソースを選択し配置しなければなりません。
JP1/IMは,これまでに述べた設計,構築フェーズでの構成情報および運用フェーズでの運用情報の管理を最適化することによって,システムの再設計,再構築の場面でも管理者を支援します。これによって,システムの再設計,再構築で管理者の負担を最小限に抑えるとともに,設計,構築,運用フェーズでの管理情報を最大限に活用することができます。
システムのライフサイクルの各フェーズで管理情報が異なり,これらをどう効率良く管理していくかが,システム管理の課題であることはこれまでに述べてきたとおりです。
JP1/IMは,システムのライフサイクルの各フェーズでの情報の一元管理と,その情報を基点にした管理作業の最適化を図るための基盤を提供します。これにより,JP1/IMは,システム管理の統合基盤として,管理者の負担を軽減し,システムの安定稼働を強力に支援します。
JP1/IMによるシステム統合管理をシステムのライフサイクルに則して表すと次の図のようになります。
図1-6 JP1/IMによるシステム統合管理
JP1/IMは,設計,構築フェーズでは,システムの構成管理を支援するシステム情報管理によって,運用フェーズでは,システムの運用管理を支援する統合コンソール,統合スコープによって,システムを統合管理します。これらを組み合わせて使うことでシステムのライフサイクルでの管理作業の負担を軽減でき,システム管理者の業務を最適化できます。
- 注意
- このマニュアルで説明するJP1/IM
- このマニュアルでは,システムの運用管理を支援するシステム情報管理について説明します(ここで説明するシステム情報管理は,プログラムプロダクト JP1/Integrated Management - Central Information Master(略称:JP1/IM - CM)を指します)。
- システムの運用管理を支援する統合コンソール,統合スコープについては,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager システム構築・運用ガイド」を参照してください。
All Rights Reserved. Copyright (C) 2006, 2007, Hitachi, Ltd.