スケーラブルデータベースサーバ HiRDB Version 8 システム運用ガイド(UNIX(R)用)

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15.6.1 RDエリアのオープン契機を変更する前に

<この項の構成>
(1) RDエリアのオープン契機とは
(2) 適用基準
(3) オープン契機を変更できるRDエリア
(4) 注意事項

(1) RDエリアのオープン契機とは

RDエリアのオープン契機とは,HiRDBが行うRDエリアのオープン処理の実施時期のことです。通常,RDエリアのオープン処理はHiRDBの開始時に行われます。このため,RDエリアの数に比例してHiRDBの開始時間が長くなります。このRDエリアのオープン処理をHiRDB開始時に行わないで,RDエリアへのアクセス処理が発生したときに行うことができます。このようにRDエリアのオープン契機を変更できます。RDエリアのオープン契機には,次の表に示す三つの属性があります。

表15-2 RDエリアのオープン契機

属性 初期状態 オープン契機 クローズ契機 長所 短所
INITIAL オープン状態
  • HiRDB開始時
  • pdopenコマンド実行時
pdcloseコマンド実行時 初回SQLから高速実行 システムの開始に時間が掛かる
DEFER クローズ状態
  • RDエリアの初回アクセス時
  • pdopenコマンド実行時
pdcloseコマンド実行時
  • システムの開始が高速
  • 初回アクセス以後は通常SQLも高速
各RDエリアの初回アクセスに時間が掛かる
SCHEDULE クローズ状態
  • トランザクション内でのRDエリア初回アクセス時
  • pdopenコマンド実行時

  • トランザクション終了時
  • pdcloseコマンド実行時

  • システムの開始が高速
  • ファイルオープンの集中を回避(DVD-RAMライブラリ装置向き)
各トランザクションごとにRDエリアの初回アクセスが高負荷となる

(2) 適用基準

RDエリアのオープン契機は,最初はINITIAL属性です。次に示す場合にRDエリアのオープン契機の変更を考えてください。

各属性の適する運用形態を次の表に示します。

表15-3 各属性の適する運用形態

属性 適する運用形態
INITIAL システム開始時にHiRDBファイルシステム領域をオープンして,RDエリア情報をメモリ上に常駐します。RDエリアの初回アクセス時にも,そのサーバプロセス上でオープンします。ただし,この場合にはRDエリア情報の再作成をしないため,初回SQLから高速な運用ができます。
システム開始時のRDエリア初期状態はオープン状態であり,以降は障害閉塞への遷移を除いて,運用コマンドの入力がないかぎりRDエリアの状態は遷移しません。
特殊な運用形態を用いない場合は,この属性を推奨します。
この属性のとき,クローズ状態のRDエリアに対してはアクセスできません。
DEFER システム開始時にHiRDBファイルシステム領域のオープンをしないで,RDエリアに対する初回アクセス時にオープンし,RDエリア情報をメモリ上に常駐します。2回目以降のアクセスでは,HiRDBファイルシステム領域のオープン以降の処理をしないため,高速な運用ができます。
システム開始時のRDエリア初期状態はクローズ状態であり,各RDエリアに対する初回アクセス時に該当するRDエリアをオープン状態にします。以降は障害閉塞への遷移を除いて,運用コマンドの入力がないかぎりRDエリアの状態は遷移しません。
多数のHiRDBファイルシステム領域に対するオープンが重なるケースを回避したい場合や,HiRDBの開始時間を短縮したい場合に,この属性を指定します。
HiRDBを再開始する場合は,回復処理時に回復対象RDエリアをオープンします。
この属性を指定した場合,クローズ状態のRDエリアに対してもアクセスできます。
SCHEDULE システム開始時にHiRDBファイルシステム領域のオープンをしないで,システム開始後,各トランザクション内でのRDエリアに対する初回アクセス時にオープンし,RDエリア情報をメモリ上に常駐します。トランザクションの終了時に,そのトランザクション内でオープンしたHiRDBファイルシステム領域をクローズします。以降もトランザクションが変わるとRDエリアに対する初回アクセス時にオープン以降の処理をするため,トランザクションに掛かる負荷は増加します。
システム開始時のRDエリアの初期状態はクローズ状態であり,アクセスのあったRDエリアのトランザクション処理中だけオープン状態とします。トランザクション終了時に,トランザクション内でオープン状態としたすべてのRDエリアをクローズ状態にします。
pdopenコマンドを入力すると,次回閉塞クローズ状態になるまでの間オープン状態を継続できます。そのほかの運用コマンドを用いて,RDエリアのステータスを任意に遷移させることもできます。障害を検知したときは障害閉塞となります。
DVD-RAMライブラリ装置を使用するなど,多数のHiRDBファイルシステム領域のオープンが重なることを回避したい場合や,システムの開始時間を短縮したい場合に,この属性を指定します。
HiRDBを再開始する場合は,回復処理時に回復対象RDエリアをオープンして,回復処理の終了後にクローズします。
この属性を指定した場合,クローズ状態のRDエリアに対してもアクセスできます。

(3) オープン契機を変更できるRDエリア

オープン契機を変更できるRDエリアを次に示します。

(4) 注意事項

  1. オープン契機を変更するRDエリアは,pdhold -cコマンドで閉塞かつクローズ状態にしておきます。
  2. オープン契機を変更したRDエリアを使用するには,pdrels -oコマンドで閉塞状態を解除してオープン状態にする必要があります。
  3. 同じHiRDBファイルシステム領域中にあるRDエリアのオープン契機は統一してください。
  4. 高速系切り替え機能の対象になる待機系ユニットは,待機状態のときにRDエリアをオープンしていません。また,系の切り替え時間を最小限に抑えるため,系切り替えの発生時に全面回復で必要なRDエリアだけをオープンして,そのほかのRDエリアはオープンしません。したがって,待機系のRDエリアのオープン契機はINITIAL属性になりません。INITIAL属性のRDエリアはDEFER属性になります。
  5. スタンバイレス型系切り替え機能では系の切り替え時間を最小限に抑えるため,系切り替えの発生時に全面回復で必要なRDエリアだけをオープンして,そのほかのRDエリアはオープンしません。したがって,正規BES又は代替部のRDエリアのオープン契機は次のようになります。
    ・系切り替えが発生した場合,代替部のRDエリアのオープン契機はSCHEDULE属性になります。
    ・障害が回復して正規BESに系を切り戻した場合,正規BES下のINITIAL又はDEFER属性のRDエリアのオープン契機はDEFER属性になります。SCHEDULE属性のRDエリアはSCHEDULE属性のままです。
  6. オープン属性によるUAPのRDエリアへのアクセス可否を次の表に示します。
 

表15-4 オープン属性によるUAPのRDエリアへのアクセス可否

RDエリアの
オープン契機
RDエリアの状態 RDエリアの
アクセス可否
INITIAL 閉塞なし オープン
クローズ ×
コマンド閉塞 オープン ×
クローズ ×
参照可能閉塞 オープン ※1
クローズ ×
参照可能バックアップ閉塞 オープン ※1
更新可能バックアップ閉塞 オープン
障害閉塞 オープン ×
クローズ ×
ログレス閉塞 オープン ※2
クローズ ×
同期化閉塞 オープン ×※3
クローズ ×※3
オンライン再編成閉塞 オープン ※4
クローズ ※4
DEFER又は
SCHEDULE
閉塞なし オープン
クローズ
コマンド閉塞 オープン ×
クローズ ×
参照可能閉塞 オープン ※1
クローズ ※1
参照可能バックアップ閉塞 オープン ※1
クローズ ×
更新可能バックアップ閉塞 オープン ×
クローズ
障害閉塞 オープン ×
クローズ ×
ログレス閉塞 オープン ※2
クローズ ※2
同期化閉塞 オープン ×※3
クローズ ×※3
オンライン再編成閉塞 オープン ※4
クローズ ※4

(凡例)
○:アクセスできます。
△:一部のSQLだけアクセスできます。
×:アクセスできません。

注※1
参照系SQLだけアクセスできます。

注※2
PURGE TABLEだけ実行できます。

注※3
排他待ちとなります。

注※4
カレントRDエリアにアクセスするログ取得モードのSQLだけ実行可能です。ただし,次に示すSQLを除きます。
  • CREATE TABLE
  • CREATE INDEX
  • DROP TABLE
  • DROP INDEX
  • DROP SCHEMA
  • ALTER TABLE
  • PURGE TABLE
  • LOCK文