2.1.9　サービスプリミティブ

TP1/NET/OSI-TPが提供するサービスプリミティブのインタフェースについて説明します。

サービスプリミティブとは，OSIが規定するOSI参照モデルで，それぞれの階層が利用するサービスです。TP1/NET/OSI-TPでは，サービスプリミティブを利用して，メッセージの送受信をします。

サービスプリミティブは，UAPのコーディング時に設定します。このとき，まずUAPの引数を設定してから，使用するサービスプリミティブの領域と具体的な指定値を設定します。また，サービスプリミティブは複数連結して送信できます。

TP1/NET/OSI-TPがメッセージ送受信で提供する基本サービスプリミティブを表2-3に，サービスプリミティブとUAPとの対応を表2-4に，サービスプリミティブの連結パターンとUAPとの対応を表2-5に示します。

表2‒3　基本サービスプリミティブ
サービスプリミティブ	機能	全二重	半二重
			制御権あり		制御権なし
			送信	受信	送信	受信
TP-BEGIN-DIALOGUEreq/ind	ダイアログ開始要求／指示	−	−	−	−	−
TP-BEGIN-DIALOGUErsp/cnf	ダイアログ開始応答／確認	○	○	○	○	○
TP-END-DIALOGUEreq/ind	ダイアログ終了要求／指示	○	○	×	×	○
TP-END-DIALOGUErsp/cnf	ダイアログ終了応答／確認	○	×	○	○	×
TP-U-ERRORreq/ind	エラー発生の通知要求／指示 TP-HANDSHAKEreq確認型 TP-END-DIALOGUEreq TP-HANDSHAKE-AND-GRANT-CONTROLreqに対する拒否応答	○	○	○	○	○
TP-U-ABORTreq/ind	UAPでのダイアログ異常終了要求／指示	○	○	○	○	○
TP-P-ABORTind	TP1/NET/OSI-TPでのダイアログ異常終了指示	○	○	○	○	○
TP-HANDSHAKEreq/ind	ハンドシェイク要求／指示	○	○	×	×	○
TP-HANDSHAKErsp/cnf	ハンドシェイク応答／確認	○	×	○	○	×
TP-DATAreq/ind	データ転送要求／指示	○	○	×	×	○
TP-GRANT-CONTROLreq/ind	制御権委譲要求／指示	×	○	×	×	○
TP-REQUEST-CONTROLreq/ind	制御権要求要求／指示	×	×	○	○	×
TP-HANDSHAKE-AND-GRANT-CONTROLreq/ind	制御権委譲付きハンドシェイク要求／指示	×	○	×	×	○
TP-HANDSHAKE-AND-GRANT-CONTROLrsp/cnf	制御権委譲付きハンドシェイク応答／確認	×	×	○	○	×

（凡例）

○：使用できます。

×：使用できません。

−：該当しません。

表2‒4　サービスプリミティブとUAPとの対応
サービス	プリミティブ	UAP			サービスプリミティブ種別コード
サービス	プリミティブ	C言語	COBOL言語^※1	データ操作言語	サービスプリミティブ種別コード
TP-BEGIN-DIALOGUE	req	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	ENABLE	BDR
	ind	receive	RECEIVE	RECEIVE	BDI
	rsp（受諾）	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	ENABLE	BDPA
	rsp（拒否）	sendsync	SENDSYNC	DISABLE	BDPN
	cnf	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	BDC
TP-END-DIALOGUE	req	sendsync sendrecv^※2	SENDSYNC SENDRECV^※2	DISABLE	EDR
	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	EDI
	rsp	sendsync	SENDSYNC	DISABLE	EDP
	cnf	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	EDC
TP-U-ERROR	req	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	UER
TP-U-ERROR	ind	recvsync	RECVSYNC	RECEIVE	UEI
TP-U-ABORT	req	sendsync	SENDSYNC	DISABLE	UAR
TP-U-ABORT	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	UAI
TP-P-ABORT	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	PAI
TP-HANDSHAKE	req	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	HSR
	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	HSI
	rsp	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	HSP
	cnf	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	HSC
TP-DATA	req	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	TDR
TP-DATA	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	TDI
TP-GRANT-CONTROL	req	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	GCR
TP-GRANT-CONTROL	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	GCI
TP-REQUEST-CONTROL	req	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	RCR
TP-REQUEST-CONTROL	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	RCI
TP-HANDSHAKE-AND-GRANT-CONTROL	req	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	HGR
	ind	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	HGI
	rsp	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND	HGP
	cnf	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE	HGC

注※1: COBOL言語のインタフェースは，プログラム名CBLDCMCFで使用するデータ名を示します。
注※2: サービスプリミティブのパラメタConfirmationが'True'の場合だけ使用できます。

表2‒5　サービスプリミティブの連結パターンとUAPとの対応
サービスプリミティブ連結パターンの分類（サービスプリミティブ連結パターン例）	UAP
サービスプリミティブ連結パターンの分類（サービスプリミティブ連結パターン例）	C言語	COBOL言語^※1	データ操作言語
先頭がBDRまたはBDPA （BDR+TDR,BDPA+TDRなど）	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	ENABLE
先頭がBDI （BDI+TDI,BDI+TDI+EDIなど）	receive	RECEIVE	RECEIVE
先頭がBDRまたはBDPAで最後がEDR （BDPA+TDR+EDR,BDR+TDR+EDR^※3など）	sendsync sendrecv^※2	SENDSYNC SENDRECV^※2	DISABLE
最後がEDR （TDR+EDR,BDPA+EDR,HSP+EDRなど）	sendsync sendrecv^※2	SENDSYNC SENDRECV^※2	DISABLE
その他の送信（TDR+HSR,TDR+TDRなど）	sendsync sendrecv	SENDSYNC SENDRECV	SEND
その他の受信（TDI+EDI,BDC+TDI,BDC+EDI,BDC+TDI+EDI,TDI+TDIなど）	recvsync sendrecv	RECVSYNC SENDRECV	RECEIVE

注※1: COBOL言語のインタフェースは，プログラム名CBLDCMCFで使用するデータ名を示します。
注※2: サービスプリミティブのパラメタConfirmationが'True'の場合だけ使用できます。
注※3: この組み合わせではBDRは拒否応答型だけ，EDRは確認型だけ使用できます。

〈この項の構成〉

(1)　メッセージの形式
(2)　パラメタとの関係
(3)　パラメタの詳細
(4)　突き合わせ項目

(1)　メッセージの形式

送受信メッセージ

TP1/NET/OSI-TPで送受信するメッセージの形式を次の図に示します。送受信メッセージは，UAPで複数のAPDUを連結し，一括して処理できます。

図2‒16　送受信メッセージの形式

セグメント

セグメントは，UAPが送受信するデータ単位です。セグメントは一つ以上のサービスプリミティブから構成されます。

サービスプリミティブ

サービスプリミティブは，制御情報，パラメタ，およびユーザ情報から構成されます。また，サービスプリミティブは複数連結できます。連結をしない場合，セグメントとサービスプリミティブは1対1に対応し，連結をする場合は1対nに対応します。

パラメタおよびユーザ情報がない場合，または指定しない場合は，LL2またはLL3に(0002)₁₆を設定します。

サービスプリミティブの形式を次の図に示します。

図2‒17　サービスプリミティブの形式

制御情報

制御情報は，転送手順とサービスプリミティブ種別コードから構成されます。サービスプリミティブ種別コードについては，表2-4を参照してください。

制御情報の形式を次の図に示します。

図2‒18　制御情報の形式

パラメタ

パラメタの形式を次の図に示します。該当するパラメタを指定しない場合は，そのパラメタに対応するLLに(0002)₁₆を設定します。

図2‒19　パラメタの形式

ユーザ情報

ユーザ情報は，APDU連結状態とユーザデータから構成されます。

ユーザ情報の形式を，次の図に示します。

図2‒20　ユーザ情報の形式

APDU連結状態は，次に示す値を16進数字で設定します。

(A0)：単一APDU（構造化されている）

(80)：単一APDU（構造化されていない）

(A1)：連結APDU（構造化されている）

(81)：連結APDU（構造化されていない）

(A2)：ビット列データ（構造化されている）

(82)：ビット列データ（構造化されていない）

ユーザデータは，任意のデータを転送構文形式で設定します。

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(2)　パラメタとの関係

サービスプリミティブは，機能ごとに，設定するパラメタが異なります。

省略した場合，省略したパラメタに対応する領域の長さは(0002)₁₆となります。

サービスプリミティブとパラメタとの対応を次の表に示します。

表2‒6　サービスプリミティブとパラメタとの対応
サービス	プリミティブ	パラメタ1	パラメタ2	パラメタ3	パラメタ4	パラメタ5	パラメタ6	パラメタ7	ユーザ情報の設定
TP-BEGIN-DIALOGUE	req	(1)^※1	(2)^※1	(3)^※1	(4)^※2	(5)^※1	(6)^※2	(7)^※2	○
	ind	(1)^※3	(4)^※2	(7)^※2	−	−	−	−	○
	rsp	(8)^※2	−	−	−	−	−	−	○
	cnf	(4)^※3	(8)^※2	(9)^※3	(10)^※2	−	−	−	○
TP-END-DIALOGUE	req	(7)^※2	−	−	−	−	−	−	×
	ind	(7)^※2	−	−	−	−	−	−	×
	rsp	−	−	−	−	−	−	−	×
	cnf	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-U-ERROR	req	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-U-ERROR	ind	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-U-ABORT	req	−	−	−	−	−	−	−	○
TP-U-ABORT	ind	(10)^※2	−	−	−	−	−	−	○
TP-P-ABORT	ind	(9)^※2	(10)^※2	−	−	−	−	−	×
TP-HANDSHAKE	req	(11)^※3	−	−	−	−	−	−	×
	ind	−	−	−	−	−	−	−	×
	rsp	−	−	−	−	−	−	−	×
	cnf	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-DATA	req	−	−	−	−	−	−	−	◎
TP-DATA	ind	−	−	−	−	−	−	−	◎
TP-GRANT-CONTROL	req	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-GRANT-CONTROL	ind	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-REQUEST-CONTROL	req	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-REQUEST-CONTROL	ind	−	−	−	−	−	−	−	×
TP-HANDSHAKE-AND-GRANT-CONTROL	req	(11)^※2	−	−	−	−	−	−	×
	ind	−	−	−	−	−	−	−	×
	rsp	−	−	−	−	−	−	−	×
	cnf	−	−	−	−	−	−	−	×

（凡例）

(1)：Initiating-TPSU-Title

(2)：Recipient-AP-Title

(3)：Recipient-TPSU-Title

(4)：Functional-Units

(5)：Quality-of-Service

(6)：Application-Context-Name

(7)：Confirmation

(8)：Result

(9)：Diagnostic

(10)：Rollback

(11)：Confirmation-Urgency

◎：設定は必須です。

○：設定できます。

×：設定できません。

−：該当しません。

注※1

ユーザが選択して設定できます。設定しない場合は，領域だけを確保してください。

注※2

必ず設定します。

注※3

条件が一致する場合だけ設定できます。

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(3)　パラメタの詳細

Initiating-TPSU-TitleおよびRecipient-TPSU-Title

[図データ]

●型コード

TPSU名称の型を設定します。

61：T61 String（T61文字列）

PR：Printable String（印字可能文字列）

IN：Integer（整数）

●TPSU-Title

TPSU名称を設定します。名称の長さは最大64バイトです。

Initiating-TPSU-Title：起動側TPSU名称

Recipient-TPSU-Title：受信側TPSU名称

Recipient-AP-Title

[図データ]

●Recipient-AP-Title: 受信側AP名称を設定します。TP1/NET/OSI-TPでは，領域だけを設定します。パラメタのLLには(0002)₁₆を設定してください。

Functional-Units

[図データ]

●FU

使用する機能単位を16進数字で設定します。

(40)₁₆：全二重機能を使用します。

(48)₁₆：全二重機能およびハンドシェイク機能を使用します。

(80)₁₆：半二重機能を使用します。

(88)₁₆：半二重機能およびハンドシェイク機能を使用します。

●予備領域

TP1/NET/OSI-TPが使用する領域です。1バイトの長さの領域を設定してください。

Quality-of-Service

[図データ]

●Quality-of-Service: サービス品質を設定します。TP1/NET/OSI-TPでは，領域だけを設定します。パラメタのLLには(0002)₁₆を設定してください。

Application-Context-Name

[図データ]

●Application-Context-Name: アプリケーションコンテキスト名を設定します。TP1/NET/OSI-TPでは，領域だけを設定します。パラメタのLLには(0002)₁₆を設定してください。

Confirmation

[図データ]

●Confirmation

ダイアログ開始および終了の要求に対して，応答が必要かどうかを確認するための値を設定します。

ダイアログ開始（TP-BEGIN-DIALOGUE）の場合

AL：すべての要求に対して，応答が必要です。

NE：要求を拒否する場合だけ，応答が必要です。
ダイアログ終了（TP-END-DIALOGUE）の場合

TR：応答が必要です。

FA：応答は必要ありません。

Result

[図データ]

●Result

サービスの要求に対して，受け入れたかどうかの結果を示す値を設定します。

AC：要求を受け入れました。

RP：要求を拒否しました（TP1/NET/OSI-TP）。

RU：要求を拒否しました（UAP）。

Diagnostic

[図データ]

●Diagnostic

診断を示す値を16進数字で設定します。

ダイアログ開始（TP-BEGIN-DIALOGUE）の場合

(0001)₁₆：受信側TPSU名称が定義されていません。

(0002)₁₆：TPSUが利用できません（永続的）。

(0003)₁₆：TPSUが利用できません（一時的）。

(0004)₁₆：受信側TPSU名称の指定が必要です。

(0005)₁₆：機能単位が提供されていません。

(0006)₁₆：機能単位の組み合わせが提供されていません。

(0008)₁₆：その他の理由
ダイアログ異常終了（TP-P-ABORT）の場合

(0001)₁₆：永続的障害が発生しました。

(0002)₁₆：トランザクションの開始を拒否します。

(0003)₁₆：一時的障害が発生しました。

(0004)₁₆：プロトコルエラーです。

(0005)₁₆：ダイアログ終了同士の衝突が発生しました。

Rollback

[図データ]

●Rollback

ロールバックするかどうかを示す値を設定します。

FA：ロールバックしません。

Confirmation-Urgency

[図データ]

●Confirmation-Urgency

即時確認をするかどうかを示す値を設定します。

ただし，半二重でのハンドシェイク（TP-HANDSHAKE）の場合，設定できません。

UR：即時確認をします。

NR：即時確認をしません。

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(4)　突き合わせ項目

メッセージを送受信する場合，TP1/NET/OSI-TPは，相手システムから受信したサービスプリミティブを，自システムで設定したパラメタと突き合わせます。突き合わせたパラメタが一致しない場合は，該当するサービスプリミティブを処理しないで，相手システムに異常を通知します。

サービスプリミティブの突き合わせ項目を，表2-7および表2-8に示します。

表2‒7　サービスプリミティブの突き合わせ項目（コネクション確立時）
突き合わせ項目	チェック内容
protocol-version	version1が設定されていること。
contention-winner-assignment	コネクション定義（mcftalccn -y）で指定した値と対応していること。^※

注※: MCF通信構成定義との対応については，「6.　システム定義」の「相手システムの通信定義と関連づける内容」を参照してください。

表2‒8　サービスプリミティブの突き合わせ項目（ダイアログ開始時）
突き合わせ項目		チェック内容
Functional-Units	Shared Controlまたは Polarized Control	どちらかが設定されていること。
Functional-Units	Handshake	設定されていること，または設定されていないこと。

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2.1.9 サービスプリミティブ

(1) メッセージの形式

(2) パラメタとの関係

(3) パラメタの詳細

(4) 突き合わせ項目

2.1.9　サービスプリミティブ

(1)　メッセージの形式

(2)　パラメタとの関係

(3)　パラメタの詳細

(4)　突き合わせ項目