2.2.3 バッチアプリケーションの実行環境の構築と運用
ここでは,バッチアプリケーションの実行環境の構築方法と,運用方法について説明します。また,バッチアプリケーションの実行環境と連携できるプログラムについても説明します。
(1) バッチアプリケーションの実行環境の構築
バッチアプリケーションの実行環境は,Smart Composer機能,サーバ管理コマンドを使用して構築します。バッチアプリケーションの実行環境の構築手順を次に示します。
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Smart Composer機能を使用してシステムを構築します。
簡易構築定義ファイルでシステム構成を定義し,Smart Composer機能で提供するコマンドを使用して,システムを一括構築します。
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サーバ管理コマンドを使用して,リソースアダプタを設定します。
バッチアプリケーションからデータベースに接続する場合だけ実施します。
Smart Composer機能,サーバ管理コマンドについては,マニュアル「アプリケーションサーバ システム構築・運用ガイド」の「4.6 バッチアプリケーションを実行するシステムの構築」を参照してください。
- 注意事項
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バッチサーバを複数構築する場合,サーバで使用するTCP/IPのポート番号を重複しないよう変更する必要があります。また,バッチサーバはJ2EEサーバで使用しているTCP/IPのポート番号を使用します。複数のバッチサーバを同時に起動する場合,およびバッチサーバとJ2EEサーバを同時に起動する場合は,使用するポート番号が重複しないように設定してください。ポート番号については,マニュアル「アプリケーションサーバ システム設計ガイド」の「3.15 アプリケーションサーバのプロセスが使用するTCP/UDPのポート番号」を参照してください。
- 参考
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バッチアプリケーションの実行環境は運用管理ポータルを使用して構築することもできます。運用管理ポータルを使用したバッチアプリケーションの実行環境の構築については,マニュアル「アプリケーションサーバ 運用管理ポータル操作ガイド」の「5. バッチアプリケーションを実行するシステムの構築と削除」を参照してください。
(2) バッチアプリケーションの実行環境の運用
バッチアプリケーションの実行環境は次の順序で運用します。
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システムの起動
Smart Composer機能で提供するコマンドを使用して,バッチサーバを含むシステム全体を起動します。バッチアプリケーションからリソースに接続する場合は,DB Connectorも開始します。
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バッチアプリケーションの実行
cjexecjobコマンドを使用してバッチアプリケーションを開始します。
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バッチサーバの停止
Smart Composer機能で提供するコマンドを使用して,バッチサーバを含むシステム全体を停止します。
- 参考
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運用管理ポータルを使用したバッチアプリケーションの実行環境の起動および停止については,マニュアル「アプリケーションサーバ 運用管理ポータル操作ガイド」の「6.1 システムの起動と停止」を参照してください。
JP1/AJSと連携する場合は,JP1/AJSからバッチサーバおよびバッチアプリケーションを開始できます。また,JP1/AJS,BJEX,およびJP1/Advanced Shellと連携する場合はJP1/AJSからバッチサーバを,BJEXまたはJP1/Advanced Shellからバッチアプリケーションを開始できます。
システムの起動および停止の詳細については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 運用/監視/連携編」の「2.6 システムの起動と停止の設定」を参照してください。バッチアプリケーションの開始方法については,「2.3.2 バッチアプリケーションの実行」を参照してください。
バッチアプリケーションを実行するシステムでは,次の運用機能が使用できます。
(a) システムの日常運用を支援する機能
システムの起動・停止のほかに,バッチサーバの稼働状況や,バッチサーバのリソースの使用状況を監視できます。システムの日常運用を支援する機能の概要について説明します。
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稼働情報の監視(稼働情報収集機能)
バッチサーバの稼働状態を定期的に監視し,サーバ性能やリソースの情報などの稼働情報を取得します。
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運用管理コマンドによる稼働情報の出力
運用管理コマンドを使用して,運用管理ドメイン内の論理サーバを監視し,稼働情報を取得します。
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リソースの枯渇監視
バッチサーバを対象に,メモリやスレッドなどのリソースを監視します。監視対象のリソースについての情報は,一定間隔でファイルに出力されます。また,監視対象のリソースの状態が設定したしきい値を超えた場合には,アラートが発生します。アラートが発生すると,メッセージを出力し,Management Serverに対してイベントを通知します。
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Managementイベントの通知とManagementアクションによる処理の自動実行
バッチサーバが稼働中に出力するすべてのメッセージを契機にしてManagementイベントを発行できます。Management Server側では,Managementイベントが通知されたときの動作を定義しておくことで,Managementイベントが発生すると自動的にアクションを実行できるようになります。
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CTMの稼働統計情報の収集
バッチアプリケーションのスケジューリング機能を使用する場合に,CTMから出力された稼働統計情報を収集できます。この情報を基に,CTMの処理性能を分析できます。
システムの日常運用を支援する機能については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 運用/監視/連携編」の「1.2.1 システムの日常運用を支援する機能」を参照してください。
(b) システムの保守を支援する機能
バッチサーバなど,運用管理エージェントによって起動されるプロセスの情報をコンソールログとして出力できます。コンソールログ出力の概要について説明します。
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コンソールログ出力
運用管理エージェントが起動したプロセスの標準出力や標準エラー出力などのコンソール出力情報をコンソールログに出力できます。コンソールログ出力については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 運用/監視/連携編」の「11. コンソールログの出力」を参照してください。
また,バッチアプリケーションのログをユーザログとして出力できます。ユーザログ出力は拡張機能の一つです。ユーザログ出力の概要について説明します。
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ユーザログ出力
バッチアプリケーションで例外が発生した場合に,メッセージおよびログをトレース共通ライブラリ形式で出力できます。ユーザログについては,「8. アプリケーションのユーザログ出力」を参照してください。
(c) システムの監査を支援する機能
システムの構築者や運用者がアプリケーションサーバのプログラムに対して実行した操作や履歴を出力できます。また,バッチアプリケーションがデータベースにアクセスした際に使用したアカウントを記録できます。システムの監査を支援する機能の概要について説明します。
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監査ログの出力
監査ログに,システムの構築者や運用者がアプリケーションサーバのプログラムに対して実行した操作,およびその操作に伴うプログラムの動作の履歴を出力することで,システムの監査に利用できます。
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データベース監査証跡機能との連携
データベースが提供するデータベース監査証跡機能と連携することで,バッチアプリケーションがデータベースにアクセスした際に使用したアカウントを記録できます。
システムの監査を支援する機能については,次の個所を参照してください。
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マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 運用/監視/連携編」の「6. 監査ログ出力機能」
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マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 運用/監視/連携編」の「7. データベース監査証跡連携機能」
(d) システムの保守のための機能
バッチサーバの障害を検知したときに,トラブルシューティングの資料を取得できます。システムの保守のための機能の概要について説明します。
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トラブルシューティング
障害検知時コマンドを使用すると,Management Serverが論理サーバの障害を検知した場合に,トラブルシューティングの資料を取得できます。また,アプリケーションサーバの構成ソフトウェアのsnapshotログを出力,収集できます。
例えば,システムにトラブルが発生した場合には,トラブルシューティング情報としてsnapshotログを自動的に収集できます。
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性能解析トレースを使用したシステムの性能解析
性能解析トレースは,アプリケーションサーバの各機能が出力する性能解析情報を収集する機能です。この情報を基に,システム性能およびボトルネックを分析できます。
システムの保守のための機能については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 保守/移行編」を参照してください。
(3) ほかのプログラムとの連携
バッチアプリケーションを実行するシステムでは,次に示すプログラムと連携できます。
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JP1との連携
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クラスタソフトウェアとの連携
JP1との連携については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 運用/監視/連携編」の「12. JP1と連携したシステムの運用」を参照してください。クラスタソフトウェアとの連携については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 運用/監視/連携編」の「15. クラスタソフトウェアとの連携」を参照してください。
(a) JP1連携による運用管理機能の概要
JP1連携による運用管理機能の概要について説明します。
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システムの集中監視(JP1/IMとの連携)
業務システム全体のリソースの状態を集中監視することで,稼働性能を把握,調査したり,トラブルの発生を検知して,原因を究明して対策したりできます。この機能はJP1/IMと連携して実現できます。
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ジョブによるシステムの自動運転(JP1/AJSとの連携)
サーバやアプリケーションの開始や停止のスケジュールをあらかじめ定義して自動化することで,効率的なリソースの配分や業務の効率化,省力化を図れます。JP1/AJSと連携することで,カスタムジョブによるシステムの自動運転が実現できます。
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監査ログの収集および一元管理(JP1/Audit Management - Managerとの連携)
システムの監査で使用する監査ログを,自動で収集して,一括管理できます。この機能はJP1/Audit Management - Managerと連携して実現できます。
(b) クラスタソフトウェアとの連携による系切り替え機能の概要
クラスタソフトウェアとの連携による系切り替え機能の概要について説明します。連携できるクラスタソフトウェアは,Windows Server Failover Cluster※(Windowsの場合),およびHAモニタ(AIX・Linuxの場合)です。
- 注※
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使用できるOSは,Windows Server 2022 Standard/Datacenterとなります。
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1:1系切り替えシステム
実行系と待機系が1対1になるシステム構成です。バッチアプリケーション実行環境の場合,アプリケーションサーバの1:1系切り替えシステムでの運用をサポートしています。実行系サーバでの障害発生時またはシステムの保守時に,あらかじめ待機させておいたサーバに自動的に切り替えて,業務処理を続行するための機能です。これによって,システムの不稼働時間を短縮し,クライアントの業務処理への影響を減らせます。
なお,バッチアプリケーション実行環境の場合,運用管理サーバを配置しないため,運用管理サーバの1:1系切り替えシステムは使用できません。
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相互系切り替えシステム
1:1系切り替えシステムの構成で,2台のサーバがそれぞれ現用系として動作しながら,互いの予備系になるシステムです。アプリケーションサーバの相互系切り替えシステムでの運用をサポートしています。
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ホスト単位管理モデルを対象にした系切り替えシステム
ホスト単位管理モデルの実行系N台と予備系1台を配置したシステム構成です。ホスト単位管理モデルのアプリケーションサーバの系切り替えシステムの運用をサポートしています。