Hitachi Dynamic Link Manager ユーザーズガイド(Solaris用)

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3.14.3 VxVMでのデバイスの無効化

VxVMは,HDLMが管理するLUにアクセスする場合に,HDLMデバイスを使用します。このため,LUに対応するデバイスのうち,HDLMデバイス以外のデバイス(sdまたはssdデバイスなど)は,VxVMの管理から除外する必要があります。

ここでは,デバイスをVxVMの管理から除外することを,「デバイスの無効化」と呼びます。

以降では,まず無効化する必要があるデバイスについて説明します。そのあとで,無効化の手順を説明します。

この項の構成
(1) VxVMで無効化する必要があるデバイス
(2) コントローラ単位で無効化する場合の設定方法
(3) パス単位でデバイスを無効化する場合の設定方法
(4) sdまたはssdデバイスがVxVMで無効化されていない場合の対処

(1) VxVMで無効化する必要があるデバイス

デバイスを無効化する前にVxVMが認識しているデバイスを次の図に示します。

図3-26 デバイスを無効化する前にVxVMが認識しているデバイス

[図]

VxVMが認識しているデバイスのうち,HDLMデバイス以外の,次に示すデバイスを無効化する必要があります。次に示すデバイスが,VxVMの管理の対象となっている場合,ロードバランス,フェイルオーバなどのHDLMの機能が正常に動作しません。

HDLMデバイス以外のデバイスを無効化したあとにVxVMが認識するデバイスを次の図に示します。

図3-27 デバイスを無効化したあとにVxVMが認識するデバイス

[図]

実際に作成されるHDLMデバイス(c5t0d0)だけが認識されています。この場合,ロードバランス,フェイルオーバなどのHDLMの機能が正常に動作します。

注意事項
VxVMインストール後,vxdiskadmユティリティを使用してVxVMからのデバイスの無効化やDMPの無効化を行っていない場合,/etc/vx/vxvm.excludeファイルなどの設定ファイルが存在しないことがあります。これらのファイルが存在しない場合,デバイスの無効化が正しく行えないことがあります。
vxdiskadmメインメニューからメニュータスク17Prevent multipathing/Suppress devices from VxVM's view)または18Allow multipathing/Unsuppress devices from VxVM's view)を選択し,VolumeManager/Disk/ExcludeDevicesまたはVolumeManager/Disk/IncludeDevicesメニューからメニュータスク8List currently suppressed/non-multipathed devices)を選択することによって,デバイスの無効化に必要な設定ファイルが作成されます。

(2) コントローラ単位で無効化する場合の設定方法

1つのLUに接続する物理パスが,異なるHBAを経由している場合,コントローラ単位またはパス単位でデバイスを無効化します。ここでは,コントローラ単位でデバイスを無効化する手順を,「図3-28 HBAポートが複数ある場合の構成例」に示す構成を例として説明します。この図は,デバイスを無効化する前にVxVMで認識されている構成を示しています。

図3-28 HBAポートが複数ある場合の構成例

[図]

  1. VxVM設定ファイル作成支援ユティリティ(dlmvxexclude)を使用して,コントローラ番号とデバイスの対応を取得します。
    VxVMで無効化する必要のあるデバイスが,dlmvxexcludeユティリティの実行結果のpathsセクションに出力されます。
    dlmvxexcludeユティリティの詳細については,「7.11 dlmvxexclude VxVM設定ファイル作成支援ユティリティ」を参照してください。
    dlmvxexcludeユティリティの実行例を次に示します。
    [図]
    網掛けの部分は,次の手順で/etc/vx/vxvm.excludeファイルに記述する部分です。
  2. /etc/vx/vxvm.excludeファイルのcontrollersセクションに無効化するデバイスのコントローラのエントリを記述します。
    手順1に示した,dlmvxexcludeユティリティの実行結果の網掛けの部分を,/etc/vx/vxvm.excludeファイルに記述します。設定内容は,ホストを再起動したあとに有効になります。
    /etc/vx/vxvm.excludeファイルの記述例を次に示します。

    図3-29 /etc/vx/vxvm.excludeファイルの記述例(controllersセクション)

    [図]

    網掛けの部分が記述したエントリです。
  3. 設定内容を有効にするために次に示すコマンドを実行して,ホストを再起動します。
     
    # reboot
     
  4. HDLMコマンドのview -pathオペレーションを実行してVxVMが認識する必要のあるHDLMデバイスを確認します。
    次にコマンドの実行例を示します。
    [図]
    HDevNameに表示されるデバイス(網掛けの部分)が,VxVMが認識する必要があるHDLMデバイスです。上記の例では,c5t0d0およびc5t0d1の2つになります。
  5. vxdiskコマンドを実行してVxVMに認識されているデバイスの一覧を表示します。
    次にコマンドの実行例を示します。
    [図]
    HDLMコマンドのview -pathオペレーションで出力されたHDLMデバイス(網掛けの部分)が表示されていれば,HDLMデバイスがVxVMによって認識されています。
    HDLMデバイスが表示されていない場合,「3.14.3 VxVMでのデバイスの無効化」の「(4) sdまたはssdデバイスがVxVMで無効化されていない場合の対処」を実行してください。
  6. vxdiskコマンドで表示されたHDLMデバイスに対してvxdmpadmコマンドを実行して,同一LUにアクセスしているデバイスの一覧を表示します。vxdmpadmコマンドは,vxdiskコマンドで表示されたデバイスごとに実行してください。
    次にコマンドの実行例を示します。
    [図]
    HDLMデバイス以外のデバイスがENABLEDになっているときは,「3.14.3 VxVMでのデバイスの無効化」の「(4) sdまたはssdデバイスがVxVMで無効化されていない場合の対処」に記述されている手順を実行して,vxvm.excludeを再設定してください。
    vxdmpadmコマンドの表示結果が次の表に示す状態の場合,vxvm.excludeの再設定は不要です。

    表3-30 vxvm.excludeの再設定が不要な状態

    vxdmpadmコマンドの表示 無効化が不要な理由
    HDLMデバイスが表示されない 内蔵ディスクなどのHDLM管理対象外デバイスです。
    HDLMデバイスだけ表示される 管理対象デバイスに対応するデバイスのうち,HDLMデバイス以外のデバイスを無効化できています。
    HDLMデバイス以外のデバイスがDISABLED状態 管理対象デバイスに対応するデバイスのうち,HDLMデバイス以外のデバイスを無効化できています(設定後再起動していないためDISABLEDと表示されています)。
  7. vxvm.excludeを再設定した場合,設定内容を有効にするために,次に示すコマンドを実行して,ホストを再起動します。
     
    # reboot
     
    vxvm.excludeを再設定しなかった場合は,手順8に進んでください。
  8. VxVM のvxdiskadm ユティリティを使用して無効化の設定状況を確認します。
    ユティリティを起動して,vxdiskadmメインメニューからメニュータスク19(List currently suppressed/non-multipathed devices)を選択すると,無効化されているデバイスが表示されます。

(3) パス単位でデバイスを無効化する場合の設定方法

1つのLUに対する物理パスが同じHBAを経由している場合には,パス単位で,デバイスを無効化します。パス単位でデバイスを無効化する手順を次の図に示す構成を例として説明します。この図は,デバイスを無効化する前にVxVMで認識されている構成を示しています。

図3-30 HBAポートが1つの場合の構成例

[図]

  1. dlmvxexcludeユティリティを使用して,コントローラ番号とデバイスの対応を取得します。
    VxVMで無効化する必要のあるデバイスがdlmvxexcludeユティリティの実行結果のpathsセクションに出力されます。
    dlmvxexcludeユティリティの詳細については「7.11 dlmvxexclude VxVM設定ファイル作成支援ユティリティ」を参照してください。
    dlmvxexcludeユティリティの実行例を次に示します。
    [図]
    網掛けの部分がVxVMで無効化する必要のあるデバイスです。
  2. /etc/vx/vxvm.excludeファイルのpathsセクションに,無効化するデバイスのエントリを記述します。
    手順1に示した,dlmvxexcludeユティリティの実行結果の網掛けの部分を,/etc/vx/vxvm.excludeファイルに記述します。設定内容は,ホストを再起動したあとに有効になります。
    /etc/vx/vxvm.excludeファイルの記述例を次に示します。

    図3-31 /etc/vx/vxvm.excludeファイルの記述例(pathsセクション)

    [図]

    網掛けの部分が記述したエントリです。
  3. 設定内容を有効にするために次に示すコマンドを実行して,ホストを再起動します。
     
    # reboot
     
  4. HDLMコマンドのview -pathオペレーションを実行して,VxVMが認識する必要のあるHDLMデバイスを確認します。
    次にコマンドの実行例を示します。
    [図]
    HDevNameに表示されるデバイス(網掛けの部分)が,VxVMが認識する必要があるHDLMデバイスです。上記の例では,c4t0d0になります。
  5. vxdiskコマンドを実行してVxVMに認識されているデバイスの一覧を表示します。
    次にコマンドの実行例を示します。
    [図]
    HDLMコマンドのview -pathオペレーションで出力されたHDLMデバイス(網掛けの部分)が表示されていれば,HDLMデバイスがVxVMによって認識されています。
    HDLMデバイスが表示されていない場合,「3.14.3 VxVMでのデバイスの無効化」の「(4) sdまたはssdデバイスがVxVMで無効化されていない場合の対処」を実行してください。
  6. vxdiskコマンドで表示されたHDLMデバイスに対してvxdmpadmコマンドを実行して,同一LUにアクセスしているデバイスの一覧を表示します。vxdmpadmコマンドは,vxdiskコマンドで表示されたデバイスごとに実行してください。
    次にコマンドの実行例を示します。
    [図]
    HDLMデバイス以外のデバイスがENABLEDになっているときは,「3.14.3 VxVMでのデバイスの無効化」の「(4) sdまたはssdデバイスがVxVMで無効化されていない場合の対処」に記述されている手順を実行して,vxvm.excludeを再設定してください。
    vxdmpadmコマンドの表示結果が次の表に示す状態の場合,vxvm.excludeの再設定は不要です。

    表3-31 vxvm.excludeの再設定が不要な状態

    vxdmpadmコマンドの表示 無効化が不要な理由
    HDLMデバイスが表示されない 内蔵ディスクなどのHDLM管理対象外デバイスです。
    HDLMデバイスだけ表示される 管理対象デバイスに対応するデバイスのうち,HDLMデバイス以外のデバイスを無効化できています。
    HDLMデバイス以外のデバイスがDISABLED状態 管理対象デバイスに対応するデバイスのうち,HDLMデバイス以外のデバイスを無効化できています(設定後再起動していないためDISABLEDと表示されています)。
  7. vxvm.excludeを再設定した場合,設定内容を有効にするために,次に示すコマンドを実行して,ホストを再起動します。
     
    # reboot
     
    vxvm.excludeを再設定しない場合は,手順8に進んでください。
  8. VxVMのvxdiskadmユティリティを実行して無効化の設定状況を確認します。
    ユティリティを実行して,vxdiskadmメインメニューからメニュータスク19(List currently suppressed/non-multipathed devices)を選択すると,無効化されているデバイスが表示されます。

(4) sdまたはssdデバイスがVxVMで無効化されていない場合の対処

次の条件で実行したdlmvxexcludeユティリティの出力を使用して,vxvm.excludeファイルを作成すると,ホストを再起動したあとでも,sdまたはssdデバイスの正しいコントローラ番号の情報が取得できず,VxVMでのsdまたはssdデバイスの無効化が正常に行われない場合があります。

sdまたはssdデバイスの無効化が正しく行われていない例を次に示します。次に示すview -pathオペレーションの実行結果中で,網掛けされているHDLMデバイスが認識されていない場合を例として説明します。

[図]

(例1)
vxdiskコマンドの出力結果にHDLMデバイスが表示されず,HDLMデバイスに対応するsdまたはssdデバイスが表示されている場合
[図]
vxdiskコマンドの出力結果に,HDLMデバイスc5t0d0ではなく,HDLMデバイスに対応するSCSIデバイスc3t0d0が表示されています。

(例2)
vxdmpadmコマンドの出力結果にHDLMデバイス以外のデバイスが表示され,STATE欄がENABLEDとなっている場合
[図]
vxdmpadmコマンドの出力結果に,HDLMデバイスc5t0d0以外に,c3t0d0とc4t1d0が表示され,ENABLEDとなっています。

(例1),(例2)に示したように,sdまたはssdデバイスの無効化が正しく行われていない場合,次の対処をしてください。

  1. vxdmpadmコマンドを実行します。
    HDLMデバイスc5t0d0が作成されている場合に,HDLMデバイス以外のデバイスがENABLEDとなっている場合の例を次に示します。
    (例1)で示したようにHDLMデバイス(c5t0d0s2)が表示されない場合は,HDLMデバイスに対応するSCSIデバイス(c3t0d0s2)をvxdmpadmコマンドに指定してください。
    [図]
  2. viなどのテキストエディタで,/etc/vx/vxvm.excludeファイルを開きます。
  3. 次に示すデバイスの論理デバイスファイル名(cUtXdYs2形式)を比較し,tXdY部分が一致するデバイスを探します。
    • vxdmpadmコマンドで表示される,ENABLED状態のデバイスのうち,HDLMデバイス以外
    • /etc/vx/vxvm.excludeファイル内の,dlmndrv@が含まれていないデバイス
  4. tXdY部分が一致したデバイスについては,/etc/vx/vxvm.excludeファイルに記載されているコントローラ番号を,vxdmpadmコマンドで表示されたコントローラ番号に変更します。
    /etc/vx/vxvm.excludeファイルの編集前の例を次に示します。

    図3-32 /etc/vx/vxvm.excludeファイル(編集前)

    [図]

    図3-33 /etc/vx/vxvm.excludeファイル(編集後)

    [図]

    vxdmpadmコマンドで表示される,ENABLED状態のデバイス(HDLMデバイスは除く)の中には,論理デバイスファイル名(cUtXdYs2形式)のtXdY部分が一致するデバイスが複数あることがあります。この場合は,/etc/vx/vxvm.excludeファイルに記載されているコントローラ番号を,現在割り当てられているコントローラ番号と異なるものに変更してください。
  5. /etc/vx/vxvm.excludeファイルで無効化されていないsdまたはssdデバイスのエントリの修正がすべて完了したあとに,vxdctlコマンドを実行してVxVMのデーモンを再起動します。
    次に実行例を示します。
     
    # vxdctl enable
     
  6. vxdiskコマンドで出力されたデバイスをvxdmpadmコマンドに指定しデバイスの無効化を確認します。
    STATE欄がDISABLEDとなっている場合,デバイスが無効化されています。次に実行例を示します。
    [図]
    手順4で割り当てるコントローラ番号の候補が複数ある場合,一度の操作ではVxVMからデバイスが無効化されないことがあります。この場合,手順4で変更したデバイスのコントローラ番号を,vxdmpadmコマンドで表示された別のコントローラ番号に変更し,手順5および手順6を再度実行してください。