Hitachi Command Suite ユーザーズガイド

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14.4.5 Universal Replicatorの性能指標

C/Tデルタを悪化させる要因に関連する各メトリックについて説明します。

C/Tデルタの悪化は副ボリュームや副ジャーナルへの書き込みが遅くなることで起こります。

副ボリュームや副ジャーナルへの書き込みが遅くなる要因を特定したい場合,次のような観点でコピーグループが使用するリソースの状態を確認する必要があります。

各リソースのメトリックの値が,あらかじめシステムが設定したしきい値を超えているとき,状態の確認が必要なメトリックとして一覧やグラフに表示されます。

代表的なメトリックを次の図に示します。

図14-4 C/Tデルタを悪化させる要因に関連する代表的なメトリック

[図]

各メトリックの評価の目安となる値を,次の表で説明します。

表14-10 Universal Replicatorの性能指標

種類 メトリック しきい値 初期値(ガイドライン) 説明
副ボリュームへの書き込み キャッシュ書き込み待ち率(%) 30% - 副ボリュームの処理を担当するMPブレードまたはMPユニットが使用するキャッシュの書き込み待ち率です。
MPブレードまたはMPユニット利用率(%) 40% - 副ボリュームの処理を担当するMPブレードまたはMPユニットの稼働率です。
副ジャーナルへの書き込み 副ジャーナル使用率 - - 副ジャーナルの使用率です。参考値であり,C/Tデルタの直接の悪化要因にはなりません。
キャッシュ書き込み待ち率(%) 30% - 副ジャーナルの処理を担当するMPブレードまたはMPユニットが使用するキャッシュの書き込み待ち率です。
MPブレードまたはMPユニット利用率(%) 40% - 副ジャーナルの処理を担当するMPブレードまたはMPユニットの稼働率です。
正ジャーナルからの読み込み 正ジャーナル使用率 - - 正ジャーナルの使用率です。参考値であり,C/Tデルタの直接の悪化要因にはなりません。
MPブレードまたはMPユニット利用率(%) 40% - 正ジャーナルの処理を担当するMPブレードまたはMPユニットの稼働率です。
正ジャーナルへの書き込み 正ジャーナルデータ流入量 設定値※1 250MB/秒 ホストから正ジャーナルへの,コピーグループごとのデータ流入量です。
正ジャーナル書き込みIOPS 設定値※1 12,000回/秒 ホストから正ジャーナルへの,コピーグループごとのデータ書き込み要求の回数です。
正ジャーナル書き込みブロックサイズ - - ホストから正ジャーナルへの,書き込み1回あたりのデータ量です。
正ボリュームへの書き込み 正ボリュームデータ流入量 - - ホストから正ボリュームへのデータ流入量です。
正ストレージシステムと副ストレージシステム間の転送 ポートデータ流出量 設定値※2 - MCUからRCUへの,リモートパスごとのデータ転送量です。
正ジャーナルデータ流出量 設定値※1 250MB/秒 MCUからRCUへの,コピーグループごとのデータ転送量です。
正ジャーナル読み込み処理時間 - - MCUが,RCUからのジャーナルデータのプル要求を受信してから,データ転送の完了通知をRCUに送信するまでの時間です。
副ジャーナルデータ取得時間 - - RCUが,ジャーナルデータのプル要求をMCUに送信してから,データ転送の完了通知をMCUから受信するまでの時間です。
副ジャーナル転送・処理時間 - 同一パスグループを利用しているコピーグループの値※3 正ジャーナルと副ジャーナル間のネットワークの転送遅延時間です。

(凡例)
-:指定できない

注※1
正ジャーナルしきい値設定]で設定した値です。

注※2
ネットワークしきい値設定]で設定した値です。

注※3
同一のパスグループを利用しているコピーグループでしきい値が設定されている場合は,その値が初期値として設定されます。同一のパスグループを利用しているコピーグループが複数あり,それぞれのしきい値が異なる場合は,小さい方の値が設定されます。

各メトリックの値の関係や推移によって特定できるC/Tデルタの悪化要因について,次の表で説明します。

表14-11 メトリックの分析とC/Tデルタの悪化要因

メトリック メトリックの分析の流れとC/Tデルタの悪化要因
キャッシュ書き込み待ち率(%)
  • キャッシュ書き込み待ち率がしきい値を超えており,かつMPブレードまたはMPユニット利用率もしきい値を超えているときは,そのストレージシステムのMPブレードまたはMPユニットに負荷が集中していることが考えられます。
  • キャッシュ書き込み待ち率がしきい値を超えていても,MPブレードまたはMPユニット利用率がしきい値を超えていないときは,そのストレージシステムのパリティグループに負荷が集中しているか,またはキャッシュの容量が不足していることが考えられます。
MPブレードまたはMPユニット利用率(%)
正ジャーナルデータ流入量
  • 正ジャーナルデータ流入量がしきい値を超えているときは,コピーグループを利用しているホスト上の業務アプリケーションからのデータ書き込み量が増加していることが考えられます。
  • 正ジャーナル書き込みIOPSと比較してどちらか一方が,C/Tデルタが悪化する直前に大きく変化しているときは,アプリケーションの運用が変更されていることが考えられます。
正ジャーナル書き込みIOPS
  • 正ジャーナル書き込みIOPSがしきい値を超えているときは,コピーグループを利用しているホスト上の業務アプリケーションからのデータ書き込み頻度が上がっていることが考えられます。
  • 正ジャーナルデータ流入量と比較してどちらか一方が,C/Tデルタが悪化する直前に大きく変化しているときは,アプリケーションの運用が変更されていることが考えられます。
正ボリュームデータ流入量
  • ネットワークデータ流出量がしきい値を超えているか,またはしきい値に近い値が一定期間続いているとき,正ジャーナルデータ流出量を確認して,対象のリモートパスを使用しているコピーグループのうち,データ量が増加しているものを特定します。さらに,そのコピーグループに関連する正ボリュームデータ流入量を確認して,データ量が増加しているホストや業務を特定します。
  • 正ジャーナルデータ流入量がしきい値を超えているとき,正ボリュームデータ流入量を確認して,正ジャーナルを使用しているホストや業務のうち,データ量が増加しているものを特定します。
ポートデータ流出量
  • ポートデータ流出量がしきい値を超えているか,またはしきい値に近い値が一定期間続いているときは,対象のリモートパスを使用しているコピーグループのデータ量が増加しているか,またはネットワーク環境に問題が発生していることが考えられます。
  • 複数のコピーグループがリモートパスを共有している場合は,正ジャーナルデータ流出量を確認して,データ量が増加しているコピーグループを特定します。
正ジャーナルデータ流出量
  • 正ジャーナルデータ流入量と比較して,正ジャーナルデータ流出量が小さいときは,副ストレージシステムまたは正ストレージシステムのMPブレードまたはMPユニットに負荷が集中しているか,またはネットワーク環境に問題が発生していることが考えられます。
正ジャーナル読み込み処理時間
  • 正ジャーナル読み込み処理時間が長いときは,正ストレージシステムのMPブレードまたはMPユニットに負荷が集中しているか,またはネットワーク環境に問題が発生していることが考えられます。
副ジャーナルデータ取得時間
  • 正ジャーナル読み込み処理時間と比較して,副ジャーナルデータ取得時間だけが長いときは,副ストレージシステムのMPブレードまたはMPユニットに負荷が集中しているか,またはネットワーク環境に問題が発生していることが考えられます。
副ジャーナル転送・処理時間
  • C/Tデルタが悪化しても副ジャーナル転送・処理時間が増えていないときは,MCUからRCUへのネットワーク遅延以外の要因が考えられます。
  • 副ジャーナル転送・処理時間が増えても正ジャーナル読み込み処理時間が増えていないときは,MCUからRCUへのネットワーク遅延,または副ジャーナルでの書き込み遅延が考えられます。

関連項目

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