10.6.1 クラスタシステム運用時の注意事項
クラスタシステム運用時の注意事項を次に示します。
- 〈この項の構成〉
(1) JP1/AJS3全体に対する注意事項
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JP1/AJS3で使用できる論理ホスト名の最大長は32バイトです。このため,JP1/Baseで作成する論理ホスト名には,32バイト以下の名称を指定してください。また,UNIXで強制終了コマンド(jajs_killall.clusterコマンド)を使用する場合は,論理ホスト名の先頭から15バイトまでで一意になるような名称を指定してください。詳細については,「(3) UNIXに対する注意事項」を参照してください。
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クラスタシステムでJP1/AJS3のセットアップを実施する場合は,物理ホストおよび既存の論理ホストで動作しているJP1/AJS3のサービスを必ず停止してください。JP1/AJS3のサービスを停止しないままセットアップを実施した場合,JP1/AJS3のサービスが正しく動作しなくなります。この場合は,サーバを再起動して回復させてください。
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クラスタシステムでJP1/AJS3を多重起動する場合,多重起動する論理ホストの数だけ,システムのリソースが必要になります。
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キューレスエージェントサービス,キューレスファイル転送サービスはホストに一つのサービスです。しかし,クラスタソフトによる共有ディスクおよび論理IPアドレスの移動に伴い,論理ホストごとに処理を切り分けることで,クラスタシステムに対応しています。
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クラスタソフトによっては,障害をシミュレーションする機能があります。JP1/AJS3に対してシミュレーション機能を使用する場合,クラスタソフトがJP1/AJS3を停止しない,または停止を待たないで障害扱いとすることがあるため,JP1/AJS3の再起動に失敗するなど意図しない動作をすることがあります。クラスタソフトによって再起動間隔を調整することで回避できますが,再起動間隔を調整できないクラスタソフトでは,障害をシミュレーションする機能は使用できません。
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クラスタソフトによっては,JP1/AJS3サービスの起動時間または停止時間を監視し,一定時間内に起動または停止が完了しない場合はタイムアウトすることがあります。JP1/AJS3サービスの起動時間または停止時間は,スケジューラーサービス数などの環境によって異なるため,環境に応じてクラスタソフトのタイムアウト値を調整してください。
なお,JP1/AJS3サービスの起動時間または停止時間は,クラスタソフトではなく,サービスまたはコマンドを使用した起動時間または停止時間を目安にしてください。
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JP1/AJS3サービスの停止直後,JP1/AJS3のプロセスの一部が残っている場合があります。クラスタソフトで再起動設定している場合,JP1/AJS3の再起動に失敗することがありますが,クラスタソフトの再起動間隔,または再起動回数を増やすことで回避できます。
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QUEUEジョブ,サブミットジョブで使用するデータベース(ISAM),および内部ファイルの二重化はサポートしていません。RAIDディスクなどを利用して,ディスクシステム自体で信頼性を確保してください。
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NFSなどの,ネットワークを介したファイルシステムにマウントされたディスクは,クラスタシステムの共有ディスクとして使用できません。
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クラスタシステムでJP1/AJS3のセットアップを実施すると,接続元制限の設定は物理ホストと論理ホストで同じになります。物理ホストと論理ホストで異なる設定にする場合は,論理ホストで接続元制限の設定を変更する必要があります。物理ホストと同じ設定で問題ない場合でも,自ホストのIPアドレスとして論理ホスト用IPアドレスが新たに割り当てられることになるため,物理ホストおよび論理ホストの接続許可設定ファイルに論理ホスト用IPアドレスを追加してください。接続元制限の設定を変更する手順については,「7.11 接続元制限の設定を変更する」を参照してください。
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物理ホストと論理ホストのIPアドレスを同一にする場合は,論理ホストからの操作命令が物理ホストからの操作命令であると判断される場合があります。そのため,ユーザーマッピング定義の[サーバホスト名]には物理ホストおよび論理ホストの両方を指定するか,または「*(アスタリスク)」を指定するようにしてください。
(2) Windowsに対する注意事項
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クラスタシステム運用時,論理ホスト上で起動されるJP1/AJS3サービスは,JP1/AJS3のプロセスが異常終了した場合には縮退運転しないで,すべてのプロセスを終了します。異常終了したJP1/AJS3のプロセスを再起動するように設定している場合,再起動の設定は無効になります。
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環境変数JP1_HOSTNAMEをシステム環境変数,ユーザー環境変数として設定しないでください。サービスの起動などができなくなることがあります。環境変数JP1_HOSTNAMEは,コマンドプロンプトまたはバッチファイルで設定してください。論理ホスト名の指定方法については,「10.1.1(4) 論理ホスト名の条件」を参照してください。
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クラスタソフトによっては,Windowsの[コントロールパネル]ウィンドウの[サービス]または[管理ツール]−[サービス]で論理ホストのJP1/AJS3サービスを停止すると,JP1/AJS3の停止を待たないで障害扱いにすることがあるため,JP1/AJS3の再起動に失敗するなど意図しない動作をすることがあります。
(3) UNIXに対する注意事項
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クラスタシステム運用時,論理ホスト上で起動されるJP1/AJS3サービスは,JP1/AJS3のプロセスが異常終了した場合には縮退運転しないで,すべてのプロセスを終了してください。異常終了したJP1/AJS3のプロセスを再起動するように設定している場合,再起動が優先されるため,設定を解除してください。再起動設定の詳細については,「6.3.1 異常終了したJP1/AJS3のプロセスを再起動する」を参照してください。
なお,論理ホスト上で-HAオプションを指定して起動するJP1/AJS3サービスは,JP1/AJS3のプロセスが異常終了した場合には縮退運転しないで,すべてのプロセスを終了します。また,異常終了したJP1/AJS3のプロセスを再起動するように設定している場合であっても,再起動の設定は無効になります。
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環境変数JP1_HOSTNAMEが設定されている環境で,物理ホストの停止・起動を行う場合は,一時的に環境変数JP1_HOSTNAMEを削除した,シェルなどから実行するようにしてください。なお,自動起動および自動終了する場合の設定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 15.10.1(10) 環境変数JP1_HOSTNAMEに依存しないJP1/AJS3サービスの自動起動および自動終了を設定する」を参照してください。
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UNIXで強制終了コマンド(jajs_killall.clusterコマンド)を使用する場合は,論理ホスト名の先頭から32バイトまでで一意になるような名称を指定してください。このコマンドは,論理ホスト名を先頭から32バイトまでで判定して,対応するプロセスを強制終了します。名称が33バイト以上の論理ホストが複数存在する場合,強制終了コマンドに指定した論理ホスト名の先頭から32バイトまでが同じであるすべての論理ホストが強制終了の対象になります。
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AIXでは,メモリー不足が発生するとシステムがSIGKILLを発行し,JP1/AJS3のプロセスが終了することがあります。この現象を回避するには,JP1/AJS3を運用している物理ホストおよび論理ホストに次のとおり環境変数を設定し,JP1/AJS3を起動してください。
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PSALLOC=early
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NODISCLAIM=true
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(4) イベントジョブの実行環境に関する注意事項
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クラスタシステム運用のセットアップをすると,論理ホストのファイル更新モードを定義する環境設定パラメーターFileWriteModeには推奨値である「sync」(同期)が設定されます。ファイル更新モードを非同期で運用したい場合は,クラスタシステム運用のセットアップ後に,jajs_configコマンドで環境設定パラメーターFileWriteModeを「nosync」(非同期)に変更してください。
環境設定パラメーターFileWriteModeの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 20.6.2(2) FileWriteMode(マネージャープロセス用)」またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 20.6.2(21) FileWriteMode(エージェントプロセス用)」を参照してください。
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クラスタシステム運用のセットアップをすると,論理ホストの詳細プロセス終了時オプションを定義する環境設定パラメーターEVProcessHAには推奨値である「Y」が設定されます。イベント・アクション制御の詳細プロセスが終了した場合に,イベント・アクション制御エージェントプロセスを終了しないで縮退運転をしたい場合は,クラスタシステム運用のセットアップ後に,jajs_configコマンドで,環境設定パラメーターEVProcessHAを「N」に変更してください。
環境設定パラメーターEVProcessHAの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 20.6.2(22) EVProcessHA」を参照してください。
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Outlookを使用するメールシステム連携機能を使用している場合,物理ホストまたは論理ホストのうち,どれか一つのJP1/AJS3だけで連携できます。論理ホストで連携する場合でも,Outlookを使用するメールシステム連携機能の環境設定パラメーターは物理ホストに定義してください。また,UNIXホストでのメールシステム連携機能でメール受信監視ジョブを実行する場合は,環境設定パラメーターExecModeを物理ホストに定義し,環境設定パラメーターExecMode以外の環境設定パラメーターは,論理ホストに定義してください。
環境設定パラメーターの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 連携ガイド 2.3.4 メールシステム連携のための環境設定をする」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 連携ガイド 2.4.2 メール受信監視ジョブのための環境設定をする」(UNIXの場合)を参照してください。
なお,Outlookを使用するメールシステム連携機能やUNIXホストでのメールシステム連携機能では,待機系でこれらの連携ができません。
(5) QUEUEジョブ,サブミットジョブの実行環境に対する注意事項
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クラスタシステム運用時,実行系で実行中のジョブがある状態でJP1/AJS3サービスを停止した場合,実行中のジョブは強制終了されてから待機系に移行します。しかし,強制終了されたジョブの状態は,待機系ではすぐには終了状態とは認識されません。数分後に終了状態になります。
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JP1/OJE for VOS3と連携するために,jpqreguserコマンドでVOS3ユーザー情報を登録する場合は,実行系ホストおよび待機系ホストの両方にユーザー情報を登録する必要があります。実行系ホストのユーザー情報を追加・変更・削除した場合は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jpqreguser」のクラスタシステムで運用する場合の注意事項に示す手順に従って,待機系ホストのユーザー情報を追加・変更・削除してください。
(6) キューレスジョブ実行環境に関する注意事項
キューレスジョブ実行環境に関する注意事項の詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 8.2.7(3) キューレスジョブ使用時に論理ホストを自動でアタッチ・デタッチする場合の注意事項」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 17.2.7 キューレスジョブ実行環境の設定」(UNIXの場合)を参照してください。
(7) 定義内容の事前チェック機能に関する注意事項
定義内容の事前チェック機能に関する注意事項については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(業務設計編) 8. 定義内容の事前チェック」を参照してください。
(8) 非クラスタ環境の論理ホスト使用時の注意事項
非クラスタ環境の論理ホストでは,共有ディスク上の管理情報が引き継がれないため,フェールオーバーに対応していません。複数のホストで論理ホストIPを引き継ぐ運用はしないでください。
(9) フレキシブルジョブの実行環境に関する注意事項
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宛先エージェントおよび一斉配信エージェントはクラスタ構成に対応していません。
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中継エージェントを使用しない構成で,フレキシブルジョブを他ホストで実行中にJP1/AJS3 - Managerにフェールオーバーが発生した場合,フレキシブルジョブは「強制終了」状態になります。一方,中継エージェントを使用した構成では,フレキシブルジョブは「実行中」のまま継続できます。このため,クラスタシステムでフレキシブルジョブを使用する場合,中継エージェントを使用することを推奨します。