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JP1 Version 12 JP1/Performance Management - Remote Monitor for Virtual Machine


1.4.5 ディスクリソースの監視

ここでは,VMwareシステムのディスクリソースを監視する方法について説明します。

〈この項の構成〉

(1) 概要

VMwareシステムでは,物理ディスク上にデータストアを作成して,複数の仮想マシンで物理ディスク上のデータストアを共有します。各仮想マシンには,データストア上に作成した仮想ディスクを割り当てます。仮想マシン上で稼働するOSは,割り当てた仮想ディスクを通常の物理ディスクとして認識します。OSは,仮想ディスクを論理的に分割した論理ディスクとして使用します。

ディスクリソースには,次の2種類があります。

物理ディスクは仮想環境で共有されるため,各仮想マシンから同時にアクセスされます。ディスクコマンドが重複して発行された場合,仮想環境ソフトウェアで設定するシェア比に基づいて,ディスクI/Oリソースが配分されます。

シェア比が大きく設定されている仮想マシンのディスクコマンドは,優先的に実行されます。シェア比が小さい仮想マシンでは,ディスクコマンドが実行されないで破棄される場合があります。破棄されたディスクコマンドは,時間を空けたあとに再度実行されます。

コマンド破棄率が高くなると,ディスクへのアクセスが遅れるため,仮想マシンの性能が低下します。ディスクI/Oリソースのパフォーマンスデータを監視することで,こうした仮想マシンの性能低下を把握できるため,対策を講じることができます。

また,ディスクの領域が不足しているかどうかは,ディスク領域リソースのパフォーマンスデータで監視できます。

ディスクリソースを監視するレコードには,次の6つがあります。レコードの詳細については,「5. レコード」を参照してください。

  1. PI_HPDIレコード

    物理ディスクのパフォーマンスデータを監視できます。これは,物理サーバから見たディスクI/Oリソースを示します。

  2. PI_VPDIレコード

    仮想マシンが利用している物理ディスクのパフォーマンスデータを監視できます。これは,仮想マシンから見たディスクI/Oリソースを示します。

  3. PI_HLDIレコード

    物理サーバのデータストアのパフォーマンスデータを監視できます。これは,物理サーバから見たデータストア領域リソースを示します。

  4. PI_VLDIレコード

    ゲストOSの論理ディスクのパフォーマンスデータを監視できます。これは,ゲストOSから見たディスク領域リソースを示します。

  5. PI_VVDIレコード

    仮想マシンが利用している仮想ディスクのパフォーマンスデータを監視できます。これは,仮想マシンから見た仮想ディスクI/Oリソースを示します。

  6. PD_VDKDレコード

    仮想マシンが利用している仮想ディスクのパフォーマンスデータを監視できます。これは,物理サーバから見た仮想ディスクの割り当て領域リソースを示します。

次の図に,それぞれのレコードのパフォーマンスデータ収集範囲を示します。

図1‒22 レコードとデータ収集範囲の対応

[図データ]

重要

VMwareのデータストアの「空き容量」はデフォルトでは定期的に更新されません。PI_HLDIレコードのLast Updateフィールドを使用して,VMwareのデータストアの「最終更新日時」が定期的に更新されることを確認してください。

詳細は,「2.5.1(5) Host Logical Disk Status(PI_HLDI)レコードの確認」を参照してください。

(2) 監視例

ここでは,host1という物理サーバで稼働するvhost1〜2のディスクリソースの監視を例に,ディスクリソースに関連して発生する可能性のある問題と,その対処方法を説明します。次の図に,ここで取り上げる監視項目と対処の流れを示します。

図1‒23 監視項目と対処の流れ

[図データ]

(a) 仮想マシンが利用している物理ディスクのディスクコマンド破棄率を監視する例

仮想マシンが利用している物理ディスクのディスクコマンド破棄率は,PI_VPDIレコードのAbort Commands %フィールドで確認できます。なお,この監視項目は,監視テンプレートに用意されているアラームで監視できます。

物理ディスクのディスクコマンド破棄率の監視例を次の図に示します。

図1‒24 ディスクコマンド破棄率の監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

VM Disk Abort Commands

確認する監視テンプレートアラーム

VM Disk Abort Cmds

ディスクコマンド破棄率が高い仮想マシンがある場合,シェア比を調整します。この例では,vhost2が利用している物理ディスクのディスクコマンド破棄率が高くなっているため,vhost2のシェア比を大きく設定することで対処できます。シェア比の調整方法については,仮想環境ソフトウェアのマニュアルを参照してください。

(b) 物理サーバの論理ディスクの領域使用率を監視する例

物理サーバの論理ディスクに十分な空き容量があるかどうかは,領域使用率を基に評価します。なお,この監視項目は,監視テンプレートに用意されているアラームで監視できます。

領域使用率は,PI_HLDIレコードのUsed %フィールドで確認できます。

論理ディスクの領域使用率の監視例を次の図に示します。

図1‒25 物理サーバの論理ディスクの領域使用率監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

Host Disk Used

確認する監視テンプレートアラーム

Host Disk Usage

この例では,ディスク2の領域使用率が高くなっています。領域使用率が高い場合,物理ディスクを追加して,論理ディスク領域を拡張することで対処できます。ディスク領域の拡張方法については,仮想環境ソフトウェアのマニュアルを参照してください。

(c) 仮想マシンの論理ディスクの領域使用率を監視する例

仮想マシンの論理ディスクに十分な空き容量があるかどうかは,領域使用率を基に評価します。領域使用率は,PI_VLDIレコードのUsed %フィールドで確認できます。なお,この監視項目は,監視テンプレートに用意されているアラームで監視できます。

論理ディスクの領域使用率の監視例を次の図に示します。

図1‒26 仮想マシンの論理ディスクの領域使用率監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

VM Disk Used

確認する監視テンプレートアラーム

VM Disk Usage

この例では,vhost1が利用しているディスク2の領域使用率が高くなっています。領域使用率が高い場合,仮想マシンに割り当てる論理ディスク領域を拡張することで対処できます。ディスク領域の拡張方法については,仮想環境ソフトウェアのマニュアルを参照してください。

(3) その他の監視例

(2) 監視例」で説明した監視テンプレート以外の監視テンプレートでの監視例を次に示します。

(a) 物理サーバのディスクI/O状態を表示するレポート

図1‒27 物理サーバのディスクI/O状態の監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

Host Disk I/O

(b) 仮想マシンのディスクI/O状態を表示するレポート

図1‒28 仮想マシンのディスクI/O状態の監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

VM Disk I/O

(c) 物理サーバ上の論理ディスクの使用状態を表示するレポート

図1‒29 物理サーバ上の論理ディスク使用状態の監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

Host Disk Used Status

(d) 仮想マシンが利用している論理ディスクの使用状態を表示するレポート

図1‒30 仮想マシンが利用している論理ディスクの使用状態の監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

VM Disk Used Status

(e) 仮想マシンに割り当てている仮想ディスクの容量を表示するレポート

図1‒31 仮想マシンに割り当てている仮想ディスクの容量の監視例

[図データ]

確認する監視テンプレートレポート

VM Virtual Disk Allocation Value

このレポートをCSV出力して最新の値を集計することで,データストアに割り当てている仮想ディスクの容量が把握できます。

複数の物理サーバでデータストアを共有している場合は,各物理サーバの情報を取得して,同じDatastore IDまたはDatastore Nameフィールドのデータを集計します。これによって,システム全体で割り当てている仮想ディスクの容量が把握できます。

また,監視対象がESXi 6.5以降の場合,Disk UUIDフィールドを使用すると,複数の仮想マシンで共有している仮想ディスクが把握できます。